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利他に溢れる世界ノベーション(2012回)
2026-10-31 21:23

利他に溢れる世界ノベーション(2012回)

利他心について、アメリカのウィスコンシン大学の研究者ヘレン・ウェンさんらが2013年に発表した研究と、ジェームズ・ファウラーさん、ニコラス・クリスタキスさんらが2010年に発表した研究に、人間の持つ素晴らしい可能性を教えていただきました。


ヘレンさん曰く、

「思いやりは、大人になってからでも訓練し、学ぶことができるのでしょうか。思いやりを実践すれば、もっと他人を気遣えるようになるのでしょうか。私たちの研究結果は、イエスだと示しています。」


また、研究論文では、思いやりの訓練を受けた参加者が、比較群の1.84倍のお金を他者のために使ったと報告されています。


ジェームズさん曰く

「これらの結果は、人間の社会的ネットワークにおいて、協力行動が連鎖的に広がることを実験的に示しています。」


ここから私は思いました。

1、利他は育てられる
2、利他は伝染する

3、利他を広げる仕組みづくり


1、利他は育てられる

ヘレンさんたちは、参加者に2週間、毎日30分、思いやりを育てるトレーニングを行ってもらいました。


まず、自分の大切な人を思い浮かべ、その人が苦しみから解放され、幸せになることを願う。


そして、自分自身、見知らぬ人、さらには苦手な人へと、思いやりの対象を広げていく。


実験では、ある人が10ドルを持っているのに、別の人には1ドルしか分け与えないという、不公平な場面を参加者に見せました。


参加者は、自分に与えられた5ドルの一部を使って、不公平な扱いを受けた人を助けることができる仕組みです。


その結果、思いやりのトレーニングを受けた人たちは、比較群の約1.8倍のお金を使って、その人を助けた。とのことです。


思いやりのトレーニングは効果がある。思いやりという利他の心は、実は育てることができる。


この結果は、生まれつきの性格や育ってきた環境だけで決まるのではなく、大人になってからでも、利他の心や行動を育てられる可能性があるという希望を教えてくれているように感じました。


私がいつも話している、情熱のポートフォリオでは、パッションの源には、大好き、利他、個性、成長という4象限があります


各々の性格や人生のステージによって、それは重み付けが変わりますが、みんなパッションの源の特性の一つとして持っているものだと思っています。


情熱の源一つである、利他の心は、実は育てることができる。


この事実は、何ちゃらファーストや、ギブアンドテイクや、ウィナーテイクスオールのような、価値観とは違う価値を、この世の中に作り上げることができる可能性を、示唆してくれているような気がしました


2、利他は伝染する


ジェームズさんたちの研究では、240人の参加者に、4人ずつのグループで、お金を使ったゲームをしてもらいました。


それぞれが20単位のお金を持ち、その一部をみんなのための共同資金に出すか、自分の手元に残すかを決めます。


共同資金は増額され、グループ全員に分配されます。


つまり、自分のお金を出せば、みんなが得をする。でも、自分だけ出さずに、ほかの人が出してくれたお金の恩恵を受けることもできる。


そんなゲームを6回繰り返すのですが、毎回グループのメンバーを入れ替え、同じ人とは二度と組まないようにしたのです。


すると、ある人が多くのお金を共同資金に出すと、それを見た人が、次に別の人たちと組んだときにも、多くのお金を出す傾向が見られた。


つまり、協力的な行動を見た人が、さらに別の人たちに協力する。


その影響は、直接会ったことのない、最大3段階先の人にまで広がっていた。


しかも、最初の人が共同資金への拠出を1単位増やすと、その影響によって、ほかの人たちの拠出が、実験期間全体で合計約3単位増えると推計された。とのことです。


つまり、協力行動が人から人へ連鎖していった。しかもそれは、恩返しではなく、別の人への協力として3段階先まで広がり、最初の協力行動による追加拠出が、全体では約3倍の追加拠出につながると推計されたのです。


協力行動が人から人へ連鎖するのであれば、その源にある利他の心も、人から人へ広がっていく可能性があるのではないか。そんな希望を感じました。


つまり、誰もが持っている、パッションの源のなかの、利他パッションは、育てることもできる。そして、そこから生まれる協力行動は、人から人へ連鎖していく可能性がある。


それは、利他で溢れる世界も、創ることができる。


そんな可能性を思わせていただけるお話かと思いました


3、利他を広げる仕組みづくり


もちろん、これらは、限定された環境下での実験なので、全てに当てはまるというものではないと思います


でも、その可能性を感じさせてくれるお話と思います


だとすると、それらを、仕組み化することによって、利他に溢れる世界を目指すことだってできるのではないかと思います


私が思ったのは、利他の心を育てるためには、まずは、全く知らない人、例えば違う国の人たちなどと、出会う場や、機会を増やすことも、一つの方法になるのではないかと思います


そして、その人たちと心が通じる体験をすることができることが大事ではないかと思います。


私が世界20都市でオープンイノベーションコンテストを実施していた際には、様々な国の人たちと、新しいビジネスを創出するという目的で一致して


現場に行って、ビジネスの話もするし、一緒に現地の美味しいご飯を食べながら、飲んで、馬鹿話もしながら、騒いで、一つの目的に向かっていく


こんな活動も、全く知らなかった国や人種の人たちも、自分たちと全く同じなんだと、いう感覚を得るだけで、利他の気持ちが芽生えやすくなるのではないかと思いました


また、米国バークレーのカルマ・キッチンのように、食事をしたら、請求書には〇円と書いていて、自分は、次のお客様の食事代を自由に贈ることができる。


そんな恩送りの経験を仕組みとしてする機会が増えたら、利他をもらった時の気持ちや、自分が利他をした時の気持ちを実際に味わってもらって、どんどん伝染していく


こんな仕組みも、すでにこの世の中にはあります


私が主催している、Startup Emergence Ecosystem(SEE)も、そんな恩送りの一つとして、起業がうまくいかなかった挑戦者に、また挑戦できる機会を得てもらう。


そして、その機会を得て、成功した人は、また次の挑戦する人の成功も応援するし、万が一うまくか無くなっても、また挑戦できる場を与えてくれる


そんな利他にも溢れた仕組みにでいたらいいなあと、思いました


ということで、一言で言えば


利他に溢れる世界ノベーション


これは夢物語ではない


そんなことを思いました


出典・参考

  • ヘレン・Y・ウェンほか(2013年)「思いやりのトレーニングは利他的行動と、他者の苦しみに対する脳の反応を変化させる」『心理科学(Psychological Science)』
  • ジェームズ・H・ファウラー、ニコラス・A・クリスタキス(2010年)「人間の社会的ネットワークにおいて協力行動は連鎖的に広がる」『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』

※論文タイトルは日本語訳です。引用文は英語原文からの私訳です。

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