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馬鹿げたアイデアノベーション(1961回)
2026-09-10 15:28

馬鹿げたアイデアノベーション(1961回)

アート集団「MSCHF」の創設者、ゲイブ・ウェイリーさんのTED「このTEDトークは悪いアイデアだらけ」に感動しました。


彼らは、巨大な赤いブーツをつくったり、銀行口座の残高をその場でランキングしてしまうATMをつくったり、5,000人に同じ一台の車の鍵を売ったり、一見すると馬鹿げたアイデアを次々と実行しています。


ウェイリーさんは言います。

「私にとって、悪いアイデアこそ一番ワクワクします。何が起こるか、わからないからです。」


そして、実際にやってみると、

「それらは自分自身の生命を持ち始め、良くも悪くも、まったく別のものになっていきました。」


最後に、

「悪いアイデアが良いアイデアだ、と言っているわけではありません。ただ、自分が居心地の悪さを感じるようなものを探究する機会を、自分に与えてほしいのです。何が起こるかなんて、わからないのですから。」


ここから私は思いました。

1、心が動く馬鹿げたアイデアを拾う

2、何が起こるかをつぶさに観察する

3、アイデアが自分自身の生命を持ち始める


1、心が動く馬鹿げたアイデアを拾う


よくアイディエーションの会などでは、馬鹿げたアイディアをどんどん出しましょう、みたいに発散のために私もよく言いますが、本当にそれを世の中に送り出している人はどれくらいいるのでしょう?という意味で、ウェイリーさんのお話は衝撃的でした


心理学者のジェニファー・ミューラーさんらは2つの実験から、人は創造性を求めていると言いながら、不確実性が高まると創造的なアイデアに否定的なバイアスを持ち、その創造性自体を認識しにくくなることを示したそうです。


最初は、実現性は度外視してといってアイディアを出しまくりますが、最終的に、やはり実現性や、誰が買ってくれるんだ、みたいなところで、とっても現実的なソリューションになっていく、というのは、悪いことではないですし、むしろ普通な気もします


それを、やっちゃうウェイリーさんからのキーワードは、私は、なぜかそれにワクワクしちゃって、抑えきれなくなっちゃうから


ということに尽きる気がします。


まずは、ワクワクが止まらなくなるくらい、パッションの源や琴線に触れたのであれば、止めることは、逆に心と体に悪いのかもしれないとも思います


とにかく何が起きるかわからないじゃない、面白いじゃない、で始めてみる


それはもしかしたら、もう一つのイノベーション創発方法なのかもしれないと思いました。


2、何が起こるかをつぶさに観察する


一方で、リーンスタートアップがうまくいかないケースとして、面白そうだから色々やってみた。というケースもあるよなあとも思います。


ウェイリーさんの話を聞いてて、一つ、とても大切なのは、それで何が起きるのかを、つぶさに観察しているか、ということがあるような気がしました。


彼らは、カードを入れると銀行口座の残高が表示され、その場で利用者同士をランキングしてしまうATMをつくたら、お金という、人間の欲望や格差をむき出しにするような問題提起になるのでは?ということで実際に作りました。


ところが実際に置いてみると、見知らぬ人たちがATMを囲み、他人の結果を見て盛り上がり、不思議な一体感が生まれたことを発見しました。


ウェイリーさん曰く

「本当のアートはATMではありませんでした。人々がATMを通して築いた関係こそが、本当のアートだったのです。」

と言われています。


アートは、みる観客がいて、初めて完成するとよく言われていますが、そこで起きる変化を、つぶさに観察していたからこそ、自分たちが提供しようとしていた価値以外の価値が生まれたことに気がつけた


その気づきを得られるかどうかに、鍵があるような気がしました


3、アイデアが自分自身の生命を持ち始める


アートは、観客がいて、初めて完成されると、よく言われます。


ウェイリーさんのやり方も、まさにそのやり方を踏襲していると思います。


でも、そこから、さらにそれを観察して、新たに生まれた価値に気づいて、さらにそこからの物語を紡いでいこうとしているところが、単に展示して、皆さんで感じてください。という作品とは、圧倒的に違いを感じます


それは、まるで、オープンソースプロジェクトのように、まずは、自分がワクワクするものを、大海原に投げ込んでみて、そこに集う人たちが、また勝手に解釈して、どんどん違うものに形を変えていく、そんなもののような気がします


それを、ウェイリーさんは

「アイデアが自分自身の生命を持ち始める」

と表現したのではないかと思います


もしかしたら、イノベーションプロジェクトのやり方の一つとして、とにかくワクワクするパッションが沸いて仕方がないものを


とにかく、世の中に出しちゃうっていうのもありなのかもしれないと思いました


そして、それに、何かワクワクすることを感じた人たちが、それに全然想定していない価値をつけていくことによって、まるで生き物のように、進化、変異をし続けていく


それは、まるで、イノベータリップルモデルの、仲間たちが、誰かのパッションに集まってきて、さらなる大義を目指していくのと同様で、それをクローズドな会社の仲間とやるのではなく


極めてオープンな仲間たちと、新たな創造をしていくという、


これまでの枠の中にいる仲間たちとのイノベーションだけでなく

枠の外にいる人も含めた仲間として、イノベーションを形作っていく


イノベーションをアイディアから形作っていく、極めて自由で柔軟なオープンイノベーションの形なのかもしれないなあと思いました


アイデアを世の中に投げる。

心を動かされた人が反応する。

その人たちは緩やかな「仲間」としてまた新しいアイデアを加える。

そして、自分一人では想像できなかった価値が生まれる。


つくる → 売る → 買ってもらう


だけではなく、


問いを投げる → 反応が起きる → 仲間になる → 一緒につくる → 新しい価値が生まれる


というイノベーションもあるのではないでしょうか。


馬鹿げているのに、なぜか心が動いたら、捨てない。

まず世の中に投げてみる。

そして、何が起きるのかをつぶさに観察する。

そこで心を動かされたお客様や観客を、仲間にする。

するとアイデアは、自分一人のものではなくなり、

自分自身の生命を持ち始める。


そこから、自分では想像もしなかったイノベーションが生まれるということもあるのかもしれないなあと思いました


ということで一言で言えば

馬鹿げたアイデアノベーション


そんな話をしています


参考


ゲイブ・ウェイリー「このTEDトークは悪いアイデアだらけ」TED2025 


ジェニファー・S・ミューラー、シムル・メルワニ、ジャック・A・ゴンカロ「創造性に対するバイアス――なぜ人は創造的アイデアを望みながら拒絶するのか」『心理科学』2012年 

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