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スポットライト・ノベーション(1983回)
2026-10-01 17:56

スポットライト・ノベーション(1983回)

世界最大級の物流企業のUPSで配送ルート最適化システム「ORION」の開発を率いたジャック・レヴィスさんの言葉に、めちゃめちゃ考えさせられました。


曰く、

「社内には、私と私のチームはどうかしていると思っている人たちがいました。」


「イノベーターは、人々の前で愚かに見えることを恐れてはいけない。そして私たちは、間違いなくそう見えていたと思います。」


「自分のアイデアへの深い信念と、打たれ強さが必要だ」


「経営トップのところへ行った時、私たちはアイデアではなく、結果を見せました。」


ここから私は思いました。


1、スポットライトに出る日は来る

2、信念を貫くためには

3、打たれ強くなるためには


1、スポットライトに出る日は来る


昨日はステルス・ノベーション(1982回)として、まだ弱いアイデアを、社内のスポットライトに出る前に、ステルスでいかに進めていくかという話をしました。


しかし、ステルスがうまく行った後に、必ず社内の人目に触れる場所、つまりスポットライトの前に、出なくてはならない日は来ます。


ORIONは、100年近く効率化を続けてきたUPSで、「もう改善余地などほとんどない」と思われている中で始まったと言われています。


イノベーションプロジェクトには、必ずと言っていいほど、その道をずっとやってきたプロが社内にいます。


「そんなことは、ずっと前から考えている」

「できるんだったら、とっくにやっている」


そんな批判を甘んじて受けなければならない時が来る。


しかも、その時にはまだ、自分たちが正しいとは証明できていない。


そこには、まさにジャックさんが言われているように、


「自分のアイデアへの深い信念と、打たれ強さが必要だ」


と思います。


では、その深い信念と打たれ強さは、どうやって身につけたらいいのか?という問いが生まれました。


2、信念を貫くためには


心理学者アルバート・バンデューラさんの「自己効力感」の研究が、とても関連することだなあと思いました。


バンデューラさんは、「自分にはできる」という感覚をつくる最も強い源泉の一つとして、自分自身の成功経験、Mastery Experienceを挙げています。後続研究でも、自己効力感を形成する4つの源泉の中で、習熟経験は一般に最も強いものとされています。


ORIONは、プロトタイプをつくって実際の配送現場で試し、顧客サービスを維持しながら、より低コストのルートをつくれることを一つずつ確かめていったそうです。


これはまさに小さな成功体験を、仮説検証を何回も回すことで、自らに積み上げていったということかと思います。


それによって、もちろん、ソリューションも練り上げられましたが、ジャックさんの成功経験が積み重なっていって、「自分にはできる」という信念を形作っていったのかもしれないなあと思いました。


信念がある、ない、とは、性格でも資質でもなくて、小さな成功体験を積み重ねていった経験の結果、生まれているものなのかもしれないなあと思いました。


3、打たれ強くなるためには


心理学者ドナルド・マイケンバウムの「ストレス・イノキュレーション・トレーニング」というのがあって、


マイケンバウムは、ストレスへの対処について、


「ストレスの原因やストレス反応を、解決すべき問題として定義する」


としています。


つまり、「みんなから馬鹿だと思われている」ということを、


「なぜ信じてもらえないのか」

「何を実証すれば、信じてもらえるのか」


という、解くべき問題に変えてしまう。ということなのかと思いました。


レヴィスさんたちは、まさにプロトタイプをつくり、実際の配送現場で試していき、最終的には、経営トップに対して、


「私たちはアイデアではなく、結果を見せました。」


と言っています。


これは、「みんなから馬鹿だと思われている」というストレスを、


「何を実証すれば、信じてもらえるのか」


という解決すべき問題として定義し直して、


ストレスにただ耐えるのではなく、次に何をすればいいのかという方向性を見つけて、実践した、ということなのかもしれないと思いました。


つまり、打たれ強いとは、何を言われても傷つかないことではなく、批判を「自分への評価」で終わらせず、「解くべき問題」に変えられること。


そういうことなのかもしれないなと思いました。


小さな成功が、信念を育てる。

批判を解くべき問題に変えることが、打たれ強さを育てる。


だから、信念も、打たれ強さも、挑戦する前に持っていなくていい。挑戦しながら育てていけばいい。


その二つを繰り返していくうちに、最初は「どうかしている」と思われたアイデアが、最後には経営に見せられる「結果」になっていく。


昨日は、スポットライトからアイデアを守る話でしたが、でも、いつかスポットライトに出る日は来る。


そこで必要なのは、生まれつきの強い心ではない。


小さな実装によって信念を育てる。

批判を解くべき問題に変えることで、打たれ強くなる。

そして最後には、アイデアではなく、結果を見せる。


一言で言うと、


スポットライト・ノベーション。


そんな話をしています。


参考


ジャック・レヴィス「イノベーションで最も難しい一歩? 人前で愚かに見えること」TED@UPS

ロベルト・V・ジカリ「イノベーション・マネジメントについて――ジャック・レヴィスへのインタビュー」ManageMagazine、2023年

アルバート・バンデューラ『Self-Efficacy: The Exercise of Control』1997年

ドナルド・マイケンバウム『Stress Inoculation Training』1985年

ドナルド・マイケンバウム、ジェリー・デフェンバッハー「Stress Inoculation Training」『The Counseling Psychologist』1988年


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