経済学者アルバート・O・ハーシュマンさんの言葉と事例に、めちゃめちゃ心を動かされました。
ハーシュマンさんが取り上げた代表例の一つが、東パキスタン、現在のバングラデシュにあったカルナフリ紙パルプ工場です。
周辺に豊富にある竹を原料にする計画でしたが、その竹の供給が危機に陥るという想定外が起きました。
そこで人々は、各地から竹を集める新しい供給網をつくり、より早く成長する竹を研究し、さらに竹以外の原料まで探しました。
曰く、
「創造性は、いつも私たち自身を驚かせる。」
「私たちは、自分たちの創造性をあらかじめ当てにすることはできない。実際にそれが現れるまでは、それを信じることもできない。」
ここから私は思いました。
1、創造性は新規だけではない
2、創造性が想定外を乗り越える
3、修羅場が創造性を育む
1、創造性は新規だけではない
創造性というと、進化論でいう「変異」のように、新しいものを生み出すための力、企業でいえばイノベーションに必要な能力だと思われがちです。
でも、実はそれだけではないということに、改めて気づかせていただきました。
とても大きな役割として思ったのは、突然襲いくる危機を乗り越える力になりうるということです。
天変地異や、技術革新、別業界からの横展開、さらには破壊的ベンチャー企業の登場など、未曾有の企業の危機というのは、突然訪れることがあります。
それらは、決して想定している範囲内から来るだけではなく、まったくの想定外から来るケースがあって、それが最も恐ろしい脅威になるのかもしれないなと思います。
ハーシュマンが取り上げたカルナフリ紙パルプ工場も、思ってもいない事態が突然襲ってきた、ということかと思います。
そんなときに必要となるのは、実は、きっちりかっちりやり切る能力よりも、いかに危機を乗り越えるかというパッションと創意工夫、つまり創造性なのではないかと思いました。
2、創造性が想定外を乗り越える
カルナフリ紙パルプ工場で、周辺に豊富にある竹の供給が危機に陥るという想定外が起きたときに、発揮された能力がまさに創造性だと思います。
各地から竹を集める新しい供給網をつくり、より早く成長する竹を研究し、さらに竹以外の原料まで探したといいます。
ある意味、使える手段を総動員して、とにかくこの想定外を乗り越えようとする。
その力は、
ハーシュマンさんが言われている、
「創造性は、いつも私たち自身を驚かせる。」
という言葉の通り、自分たちでさえも、そんなことができるとは誰も思っていなかったことを成し遂げることがある、というエビデンスの一つになると思います。
だからといって、
「私たちは、自分たちの創造性をあらかじめ当てにすることはできない。実際にそれが現れるまでは、それを信じることもできない。」
と言われているように、そのときが来ないと、創造性で乗り切ることができるのかどうかも分からない。
これは、まさにイノベーションプロジェクトと同じだと思います。
真っ暗な闇の中を、一筋の光があると信じて進む。
ある意味、それがイノベーションだと思います。
これは、想定外を乗り切ることと、ほとんど同じことなのかもしれないと思いました。
つまり、創造性を育む取り組みは、新規ビジネス部隊だけでなく、通常業務をやっている人たちにも、培っておく必要があることなのだなあと、改めて思いました。
3、修羅場が創造性を育む
新規ビジネスを立ち上げる中で、創造性を育むことができるし、スキルやマインドセットを磨くこともできると思います。
そういう意味では、イノベーションプロジェクトに携わることで、既存の業務の想定外にも対応できる創造性を培うことはできると思います。
もう一つあると思うのは、修羅場を経験することも、そうなのかもしれないと思いました。
ハーバード・ビジネス・スクールのテレサ・アマビールさんらの研究では、創造性が必要な仕事に取り組む人たちの9,000件以上の日誌を分析しました。
その結果、強い時間的プレッシャーは通常は創造性を下げるのですが、例外として、
「なぜ今これを解決しなければならないのか」が明確で、意味のある緊急性に集中できているときには、強いプレッシャーの中でも創造性が発揮されることがある。
彼女たちは、この状態を「on a mission=使命の中にいる」と表現しています。
象徴的なのが、Apollo 13です。
宇宙船で重大なトラブルが起きたとき、NASAのチームは、限られた時間と限られた材料だけで、空気濾過システムの応急策を生み出しました。
まさに、生死がかかったピンチの中で、創造性が生存のための力になった事例だと思います。
つまり、想定外が起きまくっているときに、どれだけ創造性を発揮して、その難局をクリアしていくことができるか。
それは、創造性を育む上では、イノベーションプロジェクトを推進していくのと同様の効果があるのかもしれないなあと思いました。
まとめると、
ハーバード大学の広中先生が、創造性は誰もが持っている、と言われていましたが、
それを鍛えていく、育んでいく活動というのは、
イノベーションや新規ビジネスをする人たちだけがやればいいということではなく、
既存の柱ビジネスをやっている人たちにも、想定外の事態を乗り越えるためには、培っておかなければならないことである。
そして、それを培うためには、イノベーションスキル・マインドセットを学ぶということも必要であり、
意味のある緊急性と集中がある修羅場では、創造性が引き出される。そんな体験をさせる。
そんなふうに思いました。
ということで一言で言えば、
創造性が危機を乗り越えるノベーション
そんな話をしています。
参考
アルバート・O・ハーシュマン
『開発プロジェクトの観察』
ブルッキングス研究所出版、1967年
テレサ・M・アマビール/コンスタンス・N・ハドリー/スティーブン・J・クレイマー
「プレッシャー下の創造性」
『ハーバード・ビジネス・レビュー』、2002年
M・J・キング
「アポロ13号の創造性――制約の中から生まれるイノベーション」
『創造的行動ジャーナル』、1997年
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