宮﨑駿さんの漫画で特に大好きな『風の谷のナウシカ』に出てくる、ナウシカの言葉に、改めて感動し、深く考えさせられました。
曰く、
「その人達はなぜ気づかなかったのだろう
清浄と汚濁こそ生命だということに」
「私達の神は一枚の葉や
一匹の蟲にすら宿っているからだ」
ここから私は思いました。
1、清浄だけでは生命は強くなれない
2、矛盾を消さずに抱える
3、異質なものから新しい生命が生まれる
1、清浄だけでは生命は強くなれない
実は、私は映画の方を見ていたので、このセリフがあったのかどうか定かではないのですが、めちゃくちゃ深い言葉だなあと、心に突き刺さりました。
部屋を片付けるのが苦手な私ですが、本音のところでは、周りがきれいな方が嬉しいし、心地の良いものに囲まれていた方が落ち着くよなあを思います。
だからこそ、ナウシカの、「清浄と汚濁こそ生命だ」という言葉には衝撃をいただきました。
ミネソタ大学の生態学者デイヴィッド・ティルマンさんらは、草原で10年間にわたって植物種の数を操作する実験を行った結果
植物の種類が多い生態系ほど、長期的な生産性が高く、年ごとの環境変動に対しても安定していましたことを発見したそうです。
つまり自然は、
一種類の「優れたもの」だけで強くなっているのではなく
違うものが一緒に存在することで、全体として強くなっている。
自分が心地が良いと思う環境を整えることと、生命力を高めることは、実は同じではないのかもしれないなあと、思わせていただきました。
2、矛盾を消さずに抱える
清浄と汚濁というのは、まさに相入れにくい、矛盾を孕んだ関係性だと思います。
できれば、清浄に倒したい。しかしそれでは、生命力を高めることはできない。だからこそ、その矛盾を抱えたまま、進まなければならない
オライリーさんの両利きの経営の話を知っていても、気がつくとどちらかに体重がのってしまう、ということがあると思います
デラウェア大学のウェンディ・スミスさんとマリアンヌ・ルイスさんは、組織の「パラドックス理論」を研究しています。
二人は、変化の激しい環境では相反する要求そのものが強まり、どちらかを消すのではなく、矛盾する要求の間を動き続けることが、持続的な成果につながるというモデルを提示しました。
私は、ここにナウシカの「清浄と汚濁こそ生命」と同じものを感じます。
矛盾したものが同時に存在する状態を引き受ける。
もしかすると、生命も組織も、矛盾がないから生きられるのではなく、矛盾を抱えているから変化し続けられるのかもしれないなあと思いました
3、異質なものから新しい生命が生まれる
「私達の神は一枚の葉や一匹の蟲にすら宿っているからだ」
私はここに、自分とは違うものの中にも、たくさんの価値があるという思想を感じました。
ノッティンガム大学のワン・ジエさんらは、文化的に多様なチームと創造性・イノベーションについて、過去の研究を統合するメタ分析を行い
単に国籍など表面的に多様であるだけでは、創造性との明確な関係はなかった一方
価値観や考え方など「深いレベルの多様性」は、チームの創造性・イノベーションと正の関係を示し、特に、一緒に仕事をし、互いに依存して課題を解くチームで、その関係が見られたとのことです。
これは、まさにオープンイノベーションにも通じると思います。
自分と同じものだけを集めるのではなく、企業も、スタートアップも、研究者も、顧客も、異なる価値観や知識を持ったまま出会う。
そして、違いを消して一つにするのではなく、違ったまま、つながる。
その間から、誰も最初には持っていなかった新しいものが創発する。
私は、それこそがイノベーションなのではないかと思いました。
生命とは、異なるものがあり、矛盾があり、時には汚れ、失敗し、ぶつかりながら、それでも一緒に生きていくことで、新たな力を得るものなのかもしれないなあと思いました。
異質なものを排除することからではなく、異質なものと生きることから始まる。
一言で言えば、
汚濁と生きるノベーション。
そんな話をしています。
参考
宮﨑駿『風の谷のナウシカ』。
NHK「こころの時代〜宗教・人生〜 ファンタジーに秘められた宗教(6)『火の鳥』『風の谷のナウシカ』」、2026年9月7日。番組は両作品から「生命とは何か」「生きるとはどういうことなのか」を考える内容です。
デイヴィッド・ティルマン、ピーター・ライヒ、ヨハネス・ノップス「10年間の草原実験における生物多様性と生態系の安定性」『Nature』441、2006年。
ウェンディ・スミス、マリアンヌ・ルイス「パラドックス理論に向けて――組織化の動的均衡モデル」『Academy of Management Review』36巻2号、2011年。
ジエ・ワンほか「文化的に多様なチームにおけるチーム創造性・イノベーション――メタ分析」『Journal of Organizational Behavior』40巻、2019年。
NHK出版「『火の鳥』『風の谷のナウシカ』から見る、現代日本の死生観」
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