1. 残間光太郎の"闘うものの歌が聞こえるか"
  2. あえて教えないノベーション(..
あえて教えないノベーション(1996回)
2026-10-15 16:45

あえて教えないノベーション(1996回)

宇宙探査機「はやぶさ2」を支える特殊なねじを製造した町工場、キットセイコーの社長 田邉弘栄(こうえい)さんの言葉に、現場の重要性と人を育てることの本質について、深く考えさせられました。


曰く、


「職人として一人前になるには、会社で多くの経験を積んでもらう必要があり、普通は10年、20年と掛かります。そこで、できる限り無駄なく、ベテランの技量を若手に承継するために考え出したのが、「マイスター制度」でした。


定年を迎えた職人が退職すれば、その人の数十年分の蓄積が失われます。また、嘱託に待遇を落とせば本人のやる気はもちろん、教わる若手に尊敬の念が生まれません。


それがどうしても嫌だった私は、主に当社で定年した職人を、すべて本人の希望通りの時間で働く〝マイスター〟(名人)として迎えたのです。定年後も安心して働ける会社にし、現役の職人に長くいてもらう目的もありました。」


「あえてマイスターが出社しない日を設け、若手の自立を促した結果、活発に教えを請い、また教えてあげるという長期的な承継の形ができました」


「これを踏まえ、当社は他社のような機械化はあえてせず、工程の約3分の2を職人の手が通るようにしています。このため微妙な加工が要る、他社の嫌がる仕事を受注でき、職人技、人が活きてくるのです。」


ここから私は思いました。


1.現場の人の価値

2.失われゆく価値の高騰

3.あえて教えない


1.現場の人の価値


宇宙探査機「はやぶさ2」というと、最先端の科学技術の結晶というイメージがありますが、その宇宙探査機を支えているものの一つが、町工場の職人たちの技術だということに、私は改めて感動しました。


それを育ててきたのが、工程の3分の2をあえて職人の手が通るようにしているという選択をしてきた結果なのかということにも、衝撃を受けました。


AIの出現により、事務処理のホワイトカラーはどんどん代替されていく代わりに、より現場の人でしかできないことが重要になってくると言われています


キットセイコーのような、あえて現場の人がいるからこそ、出せる付加価値というのは、より希少性を持って迎えられる時代が来たのかもしれないと思いました。


畑村洋太郎さんが言われた、現地、現人、現物の三現主義は、より重要性を持ち、そこに価値を見出して他にはない新しい価値を創出できる企業が競争優位性を持っていける時代に突入しているような気がしました。


2.失われゆく価値の高騰


だとすると、職人の技能継承問題は、もしかすると、古くて新しい課題として、さらに光を当てられる分野なのかもしれないとも思いました


そもそも人生100年時代で、年齢で処遇を変えていくのは、いかにも年功序列型の名残のような気がしていますが


より現場での唯一無二の価値を創れるような人材こそ、長く生き生きと働いてもらえる環境づくりはますます重要になってくると思います。


その中での、「マイスター制度」などは非常に良い事例なのではないかと思いました。


最近では、アメリカで「ブルーカラービリオネア」という言葉まで登場しているそうです。


2026年9月には、坂口孝則さんが『ブルーカラービリオネア エリートより稼ぐ「奴ら」の正体』という本を出版されています。


AIの進展によって、データセンターの建設や設備の維持に必要な熟練技能者の需要が高まり、現場の人材が高い報酬を得るようになっているというのです。


もしかすると、これまでは定年されていたような人たちが、市場価値がとても上がり、むしろ取り合いになるような、そんな時代が来ているような気がしました。


3.あえて教えない


そして、そんな職人を大切にして企業だからこそ、その職人の技能継承の方法についても、一日の長としてのノウハウがあるのかもしれないと思いました。


マイスターに来てもらったとしても、ずっと教え続けていると、実は現場の人は育たないということに、目から鱗がおちる思いでした


来て教えてくれる人、来ないで自分でやらなければならない日を強制的に仕組みとして入れるということは、自律性を高めるという意味では、本当に効果があるのだなあと気づかせていただきました


私も企業向けの研修をやらせていただくことがあるのですが、満足度調査というのがあって、それに高い点数を取ろうとすると、手取り足取り教えることがベストになりがちと思うのですが


本当に自分のものにしてもらうためには、あえて、何にも教えてくれないじゃん、というところから始めて、自分で悩んで悩んで答えを出した時に、初めて自分のモノになるということを思います


その時の満足度調査は、実は低くなって、次の依頼が来なくなったりするのですが、本当に必要なのは、手取り足取りではなく、あえて教えないところから、ギリギリで手を差し伸べる


そこに技能継承においても、何かを教えるについても、秘伝のタレがあるのではないか、と思わせていただきました


今回のお話は、日本における熟練技能者の存在が、きっとこれからの日本を救う存在になるのではないか、という気づきと


その技術を伝承するのは、自律性を重んじた教え過ぎないというやり方が必要となるということ学ばせていただきました


と言うことで

一言で言うと


あえて教えないノベーション


そんな話をしています


参考


致知出版社 WEB chichi「この『宇宙ねじ』に支えられ、はやぶさ2は今日も進む」2021年4月12日公開 https://www.chichi.co.jp/web/20210412_kitseiko_tanabe_kouei/


坂口孝則『ブルーカラービリオネア エリートより稼ぐ「奴ら」の正体』幻冬舎、2026年9月28日発売 https://www.gentosha.jp/article/29725/


感想

まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!

16:45

コメント

スクロール