1. 残間光太郎の"闘うものの歌が聞こえるか"
  2. クラフティングがアートを生成..
クラフティングがアートを生成するノベーション(2016回)
2026-11-04 15:31

クラフティングがアートを生成するノベーション(2016回)

経営学者の名和高司さんが、2025年5月に来日した経営学の世界的権威、ヘンリー・ミンツバーグ教授と対話された際のお話に、イノベーションを生み出すための大切なことを教えていただきました。


名和さんが、経営におけるアート、サイエンス、クラフティングという三要素の動的な関係について質問したところ、ミンツバーグ教授から次のような答えが返ってきたそうです。


曰く、

「経営においては、アートはパーパス同様、未来のありたい姿を描くうえで大切だが、それだけでは夢に終わってしまう。


サイエンスは、確からしさを選択するうえで役に立つが、それだけではアートが描く未踏の地に到達することはできない。


アートの世界を実現するためには、現実と向き合い、試行錯誤の中から、新しい可能性を手繰り寄せるクラフティングがカギを握る。


クラフティングこそが、経営においてアートを生成するプロセスなのである。サイエンスは、そのための補助的な道具にすぎない。ポーターに代表されるサイエンス過多の経営理論は、アートとしての経営にとって、有害無益である」


ここから私は思いました。


1、パッションと大義のアート

2、支える理論・論理としてのサイエンス

3、行動しアートを生成するクラフティング


1、パッションと大義のアート

様々なアーティストと言われる人たちに共通しているのは、自らの内発的なパッションから始まっていることかと思います。


何らかの課題を解決するというよりは、まずは自らの内側からほとばしる思い、それがアートの源泉なのではないかと思います。


それと同時に、アートには、社会に対する「問い」を発する役目と力があるのではないかと思います。


社会の中で当たり前と言われていることに対する、違和感の提示。そこから、もっと違う世界があるのではないかという、新しいビジョンの提示、すなわち大義の組成という面もあると思います。


ビジネスの世界においては、とかく、ユーザーニーズ、お客様の課題感から、それを解決することで価値を生み出すというのが王道かと思いますが、


こと、イノベーションビジネスにおいては、既存の価値を超えた世界を形作ることが求められることが多く、そこには、アートにおけるパッションと、そして新しい問いからの、新たなビジョン、つまり大義、そこが必要になってくるのではないかと思いました。


2、支える理論・論理としてのサイエンス

イノベーションビジネスの世界から見ると、アイデアやビジョンだけでは、真に新しい価値を生み出す行動変容を起こせないので、それを新しい仕組みとして形にする上での、理論や論理が必要となってくるため、サイエンスが非常に重要になってくるということかと思いました。


早稲田大学名誉教授の内田和成さんが言われている、イノベーショントライアングルによると、技術革新と社会構造と心理変化。このトライアングルが満たされるところで、イノベーションになり、最終的な行動変容をもたらすとの話を思い出しました。


サイエンスによる、例えば技術革新だけでは、イノベーションを起こすことはできない。あくまでも社会における行動変容を起こす一つの重要な要素であることは間違いないのですが、


同時に社会構造の変化と心理変化も起こしていかなければならないことを考えると、あくまでもイノベーションの一つの要素であり、かつ厄介な社会構造の変化や心理変化をどう起こしていくかは、むしろ「新たな問い」としてのアートがとても重要なブレイクスルーになるかもしれないとも思いました。


3、行動しアートを生成するクラフティング

さらに、アートからの「新たな問い」だけでは、イノベーションとしての行動変容には結びつかないということが、今回のミンツバーグさんの非常に重要な観点だと思いました。


クラフティングとして、実際に、実世界の中に実装し、試行錯誤をし、何度も作り変えながらも、最終的な社会の行動変容へつなげることができるか。それが、経営としては最も重要なポイントとなるということが、とても心に刺さりました。


コンサルタントが、素敵な未来を描き、拍手喝采を浴びたとしても、実際に、経営の現場・現物・現実に、活動やソリューションが落とし込まれていかない限り、何も変わらない。


私のコンサルタント時代には、自分で良い提案ができたと思っても、実際にお客様のところでその実装が進まない、そんなことがままあって、それがとても歯がゆい思いであったことを思い出します。


それで、コンサルタントを辞めて、自らがリスクを取って実業をやる方向へ舵を切って、自分自身でソリューションのクラフティングを進めていく、楽しさと苦しさの両方を味わったことも思い出しました。


イノベーションプロジェクトにおいては、この最後のクラフティングの部分が最も重要で、ここでまさに現場100回で、最終的な価値を作ることができるかどうか。


まさにここに、イノベーションプロジェクトでアイデアは出るがビジネスにならない、良い問いを出しているのに事業化まで進まない、そんな悩みの根源にもつながるのかもしれないなあと思いました。


そして、行動変容までクラフティングで到達する中で、最初に描いたアートを形にするだけでなく、試行錯誤から新しい可能性を発見し、新たなアートそのものを生成していく。

それが、今回のミンツバーグさんの言葉の本質なのかもしれないなと思いました。


ということで、一言で言うと、


クラフティングがアートを生成するノベーション


そんな話をしています。


参考資料・出典

名和高司 著『アート経営 ありたい未来を描き、創り上げる』東洋経済新報社電子版発行日:2026年9月17日(Ver. 1.0)

感想

まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!

15:31

コメント

スクロール