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自分を破壊するノベーション(1965回)
2026-09-13 15:57

自分を破壊するノベーション(1965回)

火薬で感動的なアート作品を作り続けている、現代美術家の蔡國強さんの言葉に痺れました。


曰く

「私の父は絵を描いていました。

真面目な性格のせいか、父の絵はとても慎重で、とても細かいんです。


私も父の性格を受け継いでしまって絵を描くときに色々と考えすぎて思考にブレーキをかけてしまうんです。


私を暴走させる何かがあれば、私は解放されると思ったんです。


この火薬が私自身を解放するためのいい武器になったんです。だから火薬が最初に破壊したのは私自身です。


アーティストは、いつも破壊されなければならないですから。」


ここから私は思いました。

1、思考のブレーキ

2、制御できないものを味方につける

3、今までと違う自分を試す


1、思考のブレーキ


きっと、思考にブレーキというのは、自分では全く気付かないうちに、かけられているのかもしれないなあと思いました


アイディエーションなどをやると、よく、バカな話ほど出す意義があるからね〜などとお話をしますが、アイディエーションの時はいいけど、いざソリューション化の段階になると、小さいものになってしまっている、みたいな経験をたくさんしてきた気がします


心理学者ジェニファー・ワイリーは、

「専門知識はメンタルセットとして働き、創造的な問題解決において固定化を促してしまうことがある」

と指摘しています。


「過去の知識や経験に引っ張られ、別の見方がしにくくなる状態」を認知的固着と言われていますが、例えば、会社に入ってから2〜3年してくると、仕事の内容がわかってきて、何をしたらお客様や上司に褒められて、何をしたら怒られるのがわかってくる


それはある意味、社会人としての大切な教育という側面もありますが、一方で、身についてきたマナーや専門性が、新しい創造をするときの邪魔をしてくる、まさに思考のブレーキをかけられている状態に、知らない間にハマっている、ということもあるのかもしれないと思いました


一番いいのは、それに自分で気づくことなのですが、自分で気づけないから、厄介なのかもしれないとも思いました


2、制御できないものを味方につける


では、それにどうしたら気がつけるのか、または、どうしたら思考のブレーキを外すことができるのかを考えた時に


新たな創発する場面においては、自らでは制御不能なものを、味方につけて、一緒に創発活動をするという手があるということを、蔡さんの火薬アートから教えていただいた気がしました


火薬は、絵筆のようには完全にコントロールできない。だからこそ、そこに思いもよらない形や表現が生まれてくる、そういう相棒を味方につけるということができたら良いのではないかと思いました


では会社の中での、創発活動などに、制御できないものを味方につけるということを、どうしたら良いのだろう?という問いが生まれました


例えば、全くその分野に詳しくない人たちとして、異分野の人たちと混合させることもあるかもしれないし、まだ社会人生活をしてもいない学生や、さらに子供と混合してやることもあるかもしれない


さらにもっと言えば、風土、文化、言語など、全く違う人たちをそこに加えて、議論をすることによって、これまで凝り固まった思考から、自分では予測できない視点から、新たなアイデアが生まれる思考からの新たなアイディアが出てくる可能性が高まるということもあるかもしれません


私の主催しているStartup Emergence Ecosystem(SEE)では、年齢、性別、業種、業態、職種、規模などなど、全く違う人たちを、意図的に混ぜてます


通常のオープンイノベーションであれば、自分の業種における、特化した課題を、できるだけ効率的に見つけて、早くビジネス化していく、ということが大きな目標になると思いますが


それとは、あえて、真逆をいくことで、これまでにない新しいイノベーションが創発できるのではないかと思ってやっています


各々が、各々の、爆薬になってもらう。


そんな、制御できないものをあえて、入れ込むことで、新たなイノベーションの種が生まれる、ということになるのかもしれないなあと思いました


3、今までと違う自分を試す


しかし、そこで、出会って面白かっただけでは、何も変わらない


そこから、いかに自分自身で動き出して、今までと違う自分として試していく行動を起こすことができるか、ということが、最後のピースになると思います


経営学者のエルミニア・イバーラは、新しい自分に変わっていくためには、「可能性のある未来の自分を、暫定的に実際に試してみる」ことが大切だと考え


「考えることや内省は、行動と実験のあとに来るべきで、その逆ではない」と述べています。


つまり、新しい自分は、考えて見つけるのではなく、試しながら見つけていく。


蔡さん自身も、火薬について、
「時間をかけるうちに、素材のことがだんだん分かってくる」
と語っています。


そして、
「まず、それが制御できないものであり、偶然の要素があることを受け入れなければならない」とも言っています。


つまり、最初からうまくできる必要はない。
試して、失敗して、少しずつ付き合い方を覚えていけばいいということだと思います


でも、その第一歩を踏み出すことができるか

さらに、失敗の連続でも、それを継続していくことができるか


それが、とても大事なことなのかもしれないなと思いました。


「アーティストは、いつも破壊されなければならない」

これは、私たちが何か新しい価値を創発していく時にも、全く同じことが言えると思いました。


固着を壊す。不確実性を入れる。違う自分を試す。


その活動の先に、組織や個人における、新しい価値の創造というものが出てくるのかもしれないなと思いました


一言で言えば

自分を破壊するノベーション


そんな話をしています


参考


・NHK「日曜美術館」放送開始50年特集「アートのチカラ」2026年9月13日放送


・ジェニファー・ワイリー

「専門性というメンタルセット―創造的問題解決における領域知識の効果」

『Memory & Cognition』第26巻第4号、1998年、716–730頁


・エルミニア・イバーラ

「暫定的な自己―専門職への適応におけるイメージとアイデンティティの実験」

『Administrative Science Quarterly』第44巻第4号、1999年


・エルミニア・イバーラ、ジェニファー・ペトリリエリ

「アイデンティティ・ワークとアイデンティティ・プレイ」

『Journal of Organizational Change Management』第23巻第1号、2010年、10–25頁


・エルミニア・イバーラ

『Act Like a Leader, Think Like a Leader』Harvard Business Review Press


・Art21「Cai Guo-Qiang: Spirituality, Chaos, and “Inopportune”」


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