それでね、検査の日数なんだけれども、
うーん、そうだね。
3日間この部屋で入院してもらおうと思っている。
はい。
まあ、見ての通りと言って伝わるかわからないが、
ここは病室ではなく手術室でね、
他に病室が埋まっていて君が泊まれるような部屋がないんだ。
悪いが、ここで寝泊まりしてもらっても構わないかな。
あ、それは全然問題ないです。
そうか、話が通じるようで、通じるというか話が早くて何よりで。
うーん、そうだね。
じゃあ、君自身から何か聞きたいこととかはあるかな。
うーん、なんだろう。
何にも思いつかないです。
まあ、記憶がない状態で何か聞きたいことと言われても、
なかなか難しいからね。
そうです。
ああ、そうだそうだ。
君が運ばれてきた理由なんだけれどもね、
私があくまでも救急隊員から聞いた話なんだが、
雷に撃たれたようなんだよ。
それで、その時に持ち物もほぼほぼ燃えてしまったようでね。
君の身元を特定するものもほぼほぼなかったような状態で、
保険証とかもなかったんだよ。
うーん、そうなんだ。
その中で唯一、燃え残った紙切れ、
名刺なのか単なるメモなのかはわからないけども、
紙片があってね、そこに京ちゃんっていうふうに書いてあって、
何か聞き覚えとかはあるかな?
いや、全く何のことかわからないですね。
そうか。もしかしたら君がそういうふうに呼ばれていたのかもしれないし、
君が誰かに対してそういうあだ名をつけていたのかもしれないね。
ああ、なるほど。
うん。
仮に君の名前だとしてこれから、
君の名前は、
ああ、なるほど。
うん。
仮に君の名前だとしてこれから、
京ちゃんと呼ばせてもらってもいいかな?
はい、問題ないです。
はい。
じゃあ、そうだね。
これから早速君の記憶を取り戻す手がかりになるかもしれない。
まあ、といっても、
手術をしちゃうりするわけではなくてね。
はい。
うん。
まあ、記憶っていうのは思い出そうとしても思い出せないけども、
何かのきっかけがあれば連鎖的に思い出したりとかするものなんだよ。
はい。
だから、僕とこうやって話をして、
そのきっかけを通して君が何か思い出せるかっていうのを
これからやっていこうと思っている。
わかりました。よろしくお願いします。
うん。よろしくお願いします。
じゃあ、まずなんだけれども、
君は囚人のジレンマという思考実験を知っているかな?
あるいは覚えているかな?
いや、ありません。
そうか。
じゃあ、そうだな。
じゃあ、まず簡単にその囚人のジレンマについて説明していくよ。
はい。
まあ、これは思考実験といって、いわゆるゲーム理論。
まあ、状況の過程をまず作って、
その中で君自身がどうするかっていうのを考える。
まあ、正解のない問いみたいなもんなんだよ。
うーん。
それで、この囚人のジレンマなんだけれども、
例えば、この囚人AとBと書いているけど、
仮にこれが僕ときょうちゃんの2人が囚人AとB
それぞれに入ると思ってくれてかまわない。
はい。
2人は共犯で何かしらの犯罪を行って、
その後、警察に捕まりました。
うんうんうん。
そして、口裏合わせをしないように、
それぞれに隔離された状態で尋問を行われる。
うん。
その時に、そうだね、例えば2人とも何も答えない目標を選んだ場合は、
うん。
罪が確実に立証できないと思ってくれてかまわない。
その結果、2人は2年懲役刑を受けることになる。
はい。
逆に2人とも自白を選んだ場合は、
そうだな、まあ、罪がしっかりと確定して裁判を受けたと思ってくれてかまわない。
その場合は、懲役刑は5年それぞれに降りかかる。
うんうん。
ただ、仮にどちらかが自白して、どちらかが目標をした場合、
例えば僕が目標をして君が自白をした場合、
その場合は君が司法取引をしたと考えてもらっていいかな。
うんうん。
君が自分、君が罪をすべて僕になすりつけたと考えてもかまわないね。
その場合、自白をした君は懲役刑が0年。
つまり捕まらずそのまま釈放される。
うんうん。
対して目標をした僕は懲役が10年。
うん。
つまり10年刑務所の中に入らなければならない。
うんうんうん。
逆に君が目標をして僕が自白をした場合は、自白をした僕はそのまま捕まらずに釈放。
うん。
目標をした君は懲役10年の刑に処されることになる。
うんうん。
このルールは大丈夫かな?
はい、わかりました。
うん。
じゃあ、肝心なのはここからだね。
はい。
この状態で君と僕はそれぞれ自白をするか目標をするかっていうのを同時に答えることになる。
なるほど。
君は答えはもう決まっているかな?
決まってます。
うん。
では、一緒にせーので答えてみようか。
はい。
自白。
ほう。では、この場合は私が自白をしたので私は釈放。
君は目標をしたので懲役10年となっている。
はい。
さて、ここからが重要なのだが、君はどうして目標をしたのかな?
えー。
あのー、まあ最短で済む可能性もあるし、
少なくとも共犯した人は短く済むかなと思ったんで。
うーん。
では、自分が10年懲役刑になるかもしれないというリスクよりも、
まあ、メリット、相手側のメリットの方を取ったっていうことなのか。
あ、そうですね。そういうことですね。はい。
うんうん。
今の状況だと、私と君はたった今知り合ったばかりの、言ってしまえば赤の他人ではないか。
まあそう、確かに。
それなのに、相手の方が早く刑務所から出れることを優先するのか。
あー。
なるほど。
共犯って言ってた時点で、もうなんか、なんだろう、他人ではないのかなと思っちゃったんで。
うん。
と、まあこんな感じで話をしてみるんだが。
はい。
今まで話した中で何かしら過去の記憶とか、そういったものは思い出せたかな。
何もわかりません。
そうか。まあ、君自身の人となりを思い出すという意味ではある意味思い出せたかもしれないけれども。
はい。
まあ、こんな感じでまた明日からも少しずつ話をしながら思い出せるか試していくから。
はい。
さて、もういい時間だが、私はこれから他の患者さんの方を見に行くけれども。
はい。
君から何か聞きたいこととか、そういったものはあるかな。
僕にないです。
そうか。
うん。
まあ、こんな部屋で悪いけれども、できるだけ気をかけておくから、ゆっくり休んでいてくれると助かるかな。
はい。ありがとうございます。
うん。では失礼するよ。
はい。
そう言って、医者は部屋から出て行きました。
あなたは今、この手術室のベッドの上にいます。
体が重く、ベッドを降りて歩き回るのは難しいでしょう。
ですが、手の届く範囲であれば気になったものを調べることができるかもしれません。
うん。
はい。今このアイコンが出た場所2つが調べられる範囲だと思ってくれて構いません。
わかりました。
うん。どちらから見ていきますか。
モニターみたいな方から。
うんうん。ではこちらにカーソルを合わせると説明が出てくると思います。
あ、できました。
はい。
あ、今チャットも出てきました。
出てきました。
ベッドサイドモニター。ベッドの側には患者の心拍数や血圧などの異常を教えてくれる装置があります。
このような危機が出されているということは非常に危ない状況だったのだろうか。
97と98という数字が画面に表示されています。
その数字が何を意味をするかはわかりません。
うん。はい。
はい。
これはどうした?
まあ、そこからさらにこういうの気になるから調べてみたいとかあるのであれば調べてもいいですし、
調べてもいいですし、まあそんなもんかって思って次に行くのであればそれでも大丈夫ですね。
なるほど。この97、98っていう数字が何なのか知りたい。
うんうん。
じゃあこの機械を調べるって形になりますかね。
そうですね。あ、そうですね。はい。
そうですね。
であればその技能の目星を振ってもらっていいですかね。
目星。はい。
振ります。
はい。
おー。
エクストリーム成功。
おー。
であれば、そうですね。
当然この機械から、機械で測定をするためのコードとかはあるんですけれども、
それが脇にかかったような感じで、今あなたには繋がっていないっていうことがわかります。
ただその数字が何を意味するか単位とかは何も見当たらないっていうのがわかります。
はいはい。じゃあこれは僕の数字じゃないってことになる。
どうでしょうね。
なるほど。
あなたの数字かもしれないし違うかもしれないっていう状態ですね。
そういうことです。わかりました。ありがとう。
はい。
もう一個の方も調べていいんですか。
はい。大丈夫ですね。
機具ですね。
そうですね。
ベッドのそばにある台の上には機具が並べられています。刃物の類はありません。
なるほど。
んー、でもなんだろう。何の機具のとは。
これもさらに調べたいのであれば目星とか、あるいはこういう技能あるけど振ってもいいかみたいなのは提案してもらって大丈夫ですね。
なるほど。
でもそうなるとやっぱり目星ですかね。
ちょっとこの上に乗ってるものが何か気になるので目星を振りたいです。
はい。ではどうぞ。
あー失敗ですね。
うーん。
そうですね。であればそう、まあ先ほどに説明にあったことぐらいしかわかりませんかね。
わからない。
刃物なので例えばメスとかハサミとかそういったものはないなっていうぐらいしかわからないかもしれないですね。
なるほど。わかりました。OKです。
はい。
あとはもう調べると。何かに。
そうですね。今入れるのはこれぐらいですかね。
わかりました。
あとはまあ自分の体のことは確認できますけれども。
まあ動けないなっていう感じですね。
うんうんうん。はい。ありません。
え?誰かいるの?
はい。います。
います。
あ、急に声かけてごめんなさい。隣の部屋にいるんだ。僕も入院してんの。お兄さんも?
そうですそうです。なんか今日から入院することになりました。
どっか悪いの?
なんか雷に撃たれたらしくてあんまりよくわからないんですけれども。はい。
大変。大丈夫?けがは?
けがは?
うん。ちょっと体まだ動かないんですけど、あんまり目立ったけがはないみたいで。はい。
そうなんだ。大変だね。
大変です。
お兄さん?
あ、一応京ちゃんって今呼ばれることになりました。はい。
京ちゃんって呼ばれることになったって。え?どういうこと?
えっと、あんまりちょっといろんな記憶が飛んじゃってまして、自分の名前もわからない状態だったんですけど。
記憶がないの?
はい。記憶ないです。
うん。ないですね。
なんかね、そこの部屋に入る患者さんみんな記憶がないって言うよ。
あ、そうなんですね。
じゃあ僕が初めてじゃないんですね。
なんかそんな人ばっかだからそういう人が入る部屋なんだって思ってた。
はー。もしかしたらそうなんのかもしれないですね。
へー。え、何にも覚えてないの?
そうですね。なんか家族でちょっと何かしらの配信をしてたっていうのはなんとなく覚えてるんですけど、それ以外は何にも覚えてないですね。うん。
配信?
配信。そう、配信。
え、かっけえ。YouTuber?
いや、そこがね、何かまだわかんないんですよ。何かの配信してたんですけど、たぶんYouTuberじゃないというような気がするんですが。
へー。すげー。すげー。
ありがとう。
どんなお話してたんだろうね。
今日の午後にでも機械を準備して、
少し確認をとってみたいと思います。
ありがとうございます。
はい。
目眩とかは大丈夫ですか。
そうですね。
なんとなく大丈夫です。
はい。
そうですか。
それで、記憶については、
あれから一晩経って何か思い出したりとかはしましたか。
あ、あの、
お医者さんの息子さんと少しお話をしまして。
息子。
はい。
あきらと話をしたんですか。
あ、そうです。
きら君とちょっとお話をさせていただきました。
そうですか。
何か、
はい。
何となくですけど、
サッカー好きだったのかなっていうのを思い出しました。
あ、きょうちゃんさんがサッカーが好きだったと。
はい。
そうですか。あきらもサッカーが好きですからね。
もし思い出すことができたら、
ぜひ話し相手になってくれると嬉しいですね。
はい。ぜひお願いしたいです。
はい。
一日経って、私やあきらと話をして、
少しずつ自分自身の記憶というものが
よみがえってきているのかもしれないですね。
そうですね。少しずつ。
では、きょうもまたきのうと同じように
お話をしながら、
新しく記憶がよみがえるかどうかを
試していきましょう。
はい。お願いします。
よろしくお願いします。
では、そうですね。
あなたはテセウスの船という試行実験を知っていますか。
あるいは覚えていますか。
全くわかりません。
そうですか。
こういった試行実験にもともと興味がないのか、
単に記憶がなくなっているのかというのも
気になりますね。
そうですね。
では、まずこちらの絵を見てもらいましょう。
はい。
では、まず説明をしましょう。
はい。
では、まず説明をしていきますね。
はい。
とある場所にテセウスという船乗りが乗っていた船がありました。
まあ、当然周りからテセウスの船と呼ばれていました。
はい。
そのテセウスが乗っていた船は
まあ、乗っているにつれて当然経年劣化をしていきますので、
古くなって悪くなったパーツを新しいパーツに入れ替えていきますね。
はい、はい、はい。
そうしてだんだん入れ替わっていくうちに
気がつけば、まあ元の船から全てのパーツが新しいパーツに置き換わってしまいました。
うん、うん、うん。
ただまあ、パーツ自体は同じ型のものを使っているので
見た目は何一つ変化はありません。
うん。
この場合、この全てのパーツが置き換わった船は
テセウスの船と言えるのかどうかというのが今回の試行実験です。
なるほど。
はい。
まずこの状況の説明については大丈夫ですか?
はい、理解しました。
では、あなたはこの全てのパーツが置き換わった船はテセウスの船だと思いますか?
あるいは元の船とは別の船だと思いますか?
えっと、元々の船だと思います。
うん、うん、うん。
それはどうしてそう思いますか?
もう、何て言ったらいいかわかんないけど、
その船として乗って始めて、
うん、うん、うん。
ちょっとずつ変わっていって、でもそれはちょっとずつ変わった部分も
元の船の、えー、何て言ったらいいのかな、
パーツであってみたいな。
うん、うん、うん。
テセウスの船っていうものを、
何だろう、直して、
直したパーツなんで、
テセウスの船かなって思うんですよね。全部変わったとしても。
うん、うん、うん。
つまり、君はそうだな、
パーツが置き換わるまでの時間が大事、
ということなのかな。
ああ、まあ、そんな感じ、イメージそんな感じです。はい。
では、そうだな、
まあ、意地悪な質問にはなるが、
うん。
仮に、
すべて、船をばらして、すべてのパーツを、
まあ、順々に入れ替えていった、
短期間の間に勢いよくやった場合は、
それは別の船であって、テセウスの船ではないと思うかな。
いや、それもテセウスの船かなっていう風に思うんですよね。
うん、うん、うん、うん。
理由としては、
もともとテセウスの船として成り立ったものであって、
うん、うん、うん、うん。
それが、こう、置き換え、なんか違うパーツで置き換えられたとしても、
一回そのテセウスの船っていうものが存在してしまった以上、
うん、うん、うん、うん。
それが元になっているものは、テセウスの船なのかなって思うからです。
ほう。
であれば、まあ、テセウスが乗っている船であり、
パーツとかも元のと同じものだから、
まあ、すべてのパーツが短期間に入れ替わっても、
テセウスの船であることには変わりはないという感じ。
そうですね。はい、はい、はい、そうです、そういう感じです。
ほう、ほう、ほう、ほう。
そうか、そうか。
では、そうだな。
うーん。
まあ、もともとこの船はテセウスが乗っていたからテセウスの船と呼ばれているよね。
あ、そうですね。はい。
では、違う型の船が来て、テセウスがそちらに乗った場合は、
君はどちらがテセウスの船だと思うかな。
うーん。
うーん。
両方。
ああ。
これもテセウスの船かなと思うんですけど。
元の船もテセウスの船であるし、
新しくテセウスが乗った別の船も、それもまたテセウスの船であると。
うん。
つまりは、そうだな。
船自体よりも、君は乗組員とか、そういったものが重要であると思うのかな。
ああ、まあそういう感じ。歴史というかね、そういうのが大事かなと思います。
うーん、そうか。
うんうんうんうん。
うーん。
例えばなんだけれども。
はい。
すごく意地悪な質問をするよ、これから。
うんうんうん。
例えば人には魂というものが存在するよね。
はい。
例えば君の魂がその体から出て、別の人に乗り移って、
その人の魂として定着した場合、
うんうんうんうん。
どちらが君だと思うかな。
もう一回いいです。
そうだな。君の魂がその体から出て、
はい、出ました。
別の見た目とか年齢とかも違う人に乗り移って、
その体に入ってしまった場合、
元の肉体の君と、新しい別の肉体に取り付いた君、
どちらが本物の君だと思うかな。
本物、うーん、乗り移った自分じゃないですか、本物は。
うんうんうんうん。
じゃああくまでも自分がどちらかっていうのが大事になるのかな。
なんていうか、操縦者じゃないですけど。
うんうんうんうん。
そうですね、その動かしてる人、動かしてるものがそのものなんだと思います。
うーん。
そうかそうか。
まあ船に限らず人もそうだけれども、君はそうだな、
哲学的な思想と言っていいのか分からないが、
自分の意識がどこにあるのか、そのものの本質がどこにあるのかを重要視しているのかもしれないね。
ああ、そういうイメージだったと思います、はい。
うんうんうんうん。
ただ君は、前回の試行実験もそうだけれども、あまり悩まずに答えているね。
そうかもしれない。もう決まってるんだと思う、自分の中で答えが。
ああ。もう普段からしっかり真の通った考え方をしていて、
まあ基本的にはそれから逸脱しないから悩まずにすんなり答えれるっていう考え方なのかもしれないね。
あきらくん、おはよう。
おはよう、あきらくん。
なんか声カラカラしてるけど大丈夫?
ちょっと風邪気味ですいません、本当に。
お水あったら飲んでね。
ありがとうございます。ちょっといただきます。
お水いただきました。ありがとうございます。
はい、どういたしまして。
喉以外の調子はどう?
ちょっと咳と鼻水が少し出るんですけれども、今のところ大丈夫です。はい。
へー、そっか。そこに来て風邪ひく人って初めて聞いたな。
ねー、なんだろうね。知らない環境、たぶん苦手なんじゃないですかね。
そうなんだ。これまではさ、頭がぼーっとするとか、あんまりお話が通じないとか、そういう人が多かったかな。
あー、なるほどね。ちょっと人とは違うタイプみたいですね、そしたら。
あー、でも人と違ってよかった。
よかった?
そう、だってさ、その部屋に運ばれてきた日は平気なんだけど、次の日になったらおかしくなってさ、なんかピンクとマンモスがおじらかんじらーって叫び散らかしててさ、怖かった。
あら、えー、みんなそうなっちゃう人が多かったってことか。
そうそう。だからね、きょうちゃんもそうなったらどうしようって思ってちょっと怖かったの。
そうなんだ。僕はなんか、なんとか平気みたいです。はい。
あー、よかったー。
何か思い出せることあった?
そうだねー。思い出せること、あんまりそこに関しては進展ないかな。
そうかー。えー、あ、なんか昨日は動けないとか言ってたけど、他の体の調子はどう?
あ、少しね、歩けるようになったよ。
あー、いいね。
うんうんうん。明日にはもう少し動けるようになって、退院できるかもって言われてる。
あれ、いいなー。早いね。
早いでしょ。
じゃあ、きょうちゃんも外に行くんだねー。
そうだねー。外にも行くことになれるね。あきらくんもね、早く直して外出れるようになってね。
うん。実はさ、僕ね、目が見えないんだよね。
あ、そうなんだ。うーん。
体も動かせなくってさ。
うん。
だから、外行きたいの。
そうだねー。
そうだねー。
そしたら、あのー、よくなったら、一緒に外行こ。
え、ほんと?一緒に会ってくれる?
もう全然いいよ、それは。
やったー!
えー、じゃあさ、ポッキー公園とか。
もう友達みたいなもんだからね。
友達でいいの?
うんうんうん。もちろん。
じゃあ、一緒にサッカーもしてくれる?
あー、いいよいいよ。やろうよ。
わー、やったー。約束だよ。
そうだね、約束だね。
うん。破ったらね、サッカー連れてってもらうんだからね、スタジアムとか。
スタジアムに。
それはそれでいいけどね。
えー、じゃあ嬉しいなー。早く治したい。
そうだねー。早く治してくれよ。
うん。
えー。
えー。
次。
はい。
はい、みなさん。はい。
昨日の午後、君が寝ている間に検査をして、まあ少し治療をしてみたのだが。
うん。すごく良くなってます。
うんうんうん。
他の体の調子はどうかな?
調子ね、昨日に比べたら全然、はい、動かしやすくなってます。はい。
うん。ちょっと鼻声かな?
そうですね。風邪ひいてまーすと。
風邪ひいてまーすと。
そうかな?
んー、まあ、でもか。
まあ、こんな場所で寝てたら風邪もひくのかな?
まあ、とりあえず体調は大丈夫そうだね。
そうですね。はい。
であれば、まあ予定通り、今日の午後には退院となって、
まあ、記憶に関してはそこから都度通院という形になるかな?
うん。分かりました。
じゃあ、また昨日と同じく思考実験を使って話していきながら、
君の記憶が戻るかどうかということを試していこう。
お願いします。
うん。よろしくお願いします。
では君は、そうだな。
臓器くじという思考実験を知っているかな?
つまり、覚えているかな?
全く分かりません。
分かりません。
そうか。君は本当にこういうものに対して興味がないのかもしれないね。
まずはこちらを見てもらおう。
はい。
まあ、タイトルになっている臓器くじというものだが、
ある人間を一人積極的に殺して、それより多くの人間を助けることはいいことだろうかという思考実験だ。
どう?
まあ、詳しくルールを説明していくけれども、大丈夫かな?
はい。
まず一つ、公平なくじを健康な人に引いてもらう。
それで、当たりが出た場合、その人は殺されてしまう。
次にその殺された人の臓器をすべて取り出して、臓器移植が必要な人々に配る。
そして、その移植が必要な人に対して臓器移植を行うのだが、その移植は必ず成功するものとする。
さらに、このくじ引きに対して不正行為は起きないものとする。
最後に、このくじ引きの臓器くじによって臓器を移植する以外、必要な臓器は得られないものとする。
これらのルールにのっとって、人を殺し、そして助けることは良いことか悪いことかという話なのだが、
まずここまでのルールは理解できたかな?
はい。分かりました。
では、君はこの臓器くじについてどう思うかな?
殺すのはちょっと違うかなって思っちゃったね、まず。
なので、このくじ自体が良いこととは俺は思わないっていう感じで。
それはこの、例えば1人を殺して5人を助けることができるという状況でも、
くじで人を殺すのは良くないことだと思うのかな?
そうですね。
では、例えばくじではなく死眼性の場合はどうかな?
死眼性だったらOKじゃないですか。
死眼、要は本人がそれに賛同した上であれば、人を殺して他の人を助けるのは良いことだ。
良いことというか、そこまで言うか分からないけど、悪いことではないという考えなのかな?
まあ、やってもいいんじゃないかな。死眼性だったらうん、思いますかね。
じゃあ、仮に君の大切な人、そうだな、家族だったり友人だったり、あるいは友達だったり、
じゃあ、仮に君の大切な人、そうだな、家族だったり友人だったり、あるいは恋人がこの臓器を必要とする側であった場合、君はそれに対して死眼をするかな?
自分が犠牲になってその人を助けることですか?
うん、そうだね。
俺はしないと思います。
それはあくまでも自分が生きていることが大事だという考えなのかな?
そうですね。
何て言うか、必要になっちゃった状況が運命ってまず思っちゃってて、必要な人になってしまった人はそれが運命と思ってる上で、
なので、何だろう、そうですね、自分が犠牲になるかって言ったら多分それはしないんじゃないかなと思うっていう感じですかね。
君はある意味この問題に対してすごく客観視というか、そうだな、好悪の感情を背して考えることができているのかもしれないね。
あくまでもその臓器提供する側の意思が全てであり、くじ引きみたいなランダムなものはダメだし、他の人が大切な人が必要としていても自分自身がそれを提供したくないと思わないのであればしない。
そうね、はい。
そうか。
逆に自分が臓器移植が必要で、それがなければ長く生きられない状態であっても、このくじで人を殺して臓器提供を受けるのはダメであると考えるのかな。
そうですね、はい。ダメじゃないか。
うん。
仮にそれで短い期間でも死んでしまうとなっても、それは自分の運命であると。
そうですね、うん。
なんか前回前々回もそうだけども、やはり君は自分の根底にある一つの信念と言ってもいいのかな。考え方があってそれを曲げられるのは特に嫌いなのかもしれないね、くじみたいな。
あるかもしれない。
なかなか頑固そうな人だなってはちょっと思うかな。
そう、頑固だと思う、うん、すごく。
どうかな、もしかしたら職場とかでそういったもので衝突したとかもあるのかもしれないね。
まあ職場じゃなくても人間関係全般だけれども。
わかんない。
これなんなんだろうね。
わかんない。
わかんない。
まあそうだね、これで呼び起こされるとなると大抵トラウマになりそうな強い記憶になりそうだからね。
思い出せないというのはある意味で、まあそれほどまでに悪い記憶がないという証なのかもしれないね。
人形というか機械といってもいいかもしれないね。
はいはいはいはい。
それに君の脳みそを移し変えたんだよ。
なるほど、はいはいはい。
最初はあきらの体をそれで作ろうとしたんだけれどね。
うん。
うまく適合しなかったんだ。
ほー。
機械の体に移し変えるのには少々時間が経ち過ぎていたみたいでね。
そうね。
その体を与えることができずにやむを得ずこの状態であきらには暮らしてもらっているんだ。
うーん。
そして。
うん。
私はあきらに合う体を探し始めた。
はいはいはい。
何人も何人も。
うん。
それこそ気が遠くなるぐらい探してね。
うんうん。
もしかしたら君はあの部屋にあった資料を読んだかな。
あ、読みました。
うん。
ある人はその機械の体になじまずにおかしくなってしまったのでやむを得ず戻し。
うん。
ある人はそもそもその人の体とあきらが適合しなかったんだ。
うんうん。
そうして長い間探していてね。やっと見つけたんだ。君を。
なるほど。
適性率98%の君の体ならきっとこの子になじんでくれる。
そしてその人形の体も君になじんでいるだろう。
そうっすね。
まあちょっと視覚に異常が出たりはしたがそれでも調整で済む範囲だった。
適性率は97%だったからね。
おーすごい。はい。
ここまで聞いて君はそんなに落ち着いていられるんだね。
確かに。
まあ錯乱して叫び回られるよりは私としては話が進むから助かるけれどね。
はい。
私が君に頼みたいのはただ一つ。
うん。
君のこの元の体を。
うん。
あきらに譲ってくれないかな。
君が。
どうなんだ。あごめんなさい。
はい、なんですか。
君がもし体を譲りたくないというのであれば。
うん。
君をこの元の体に戻そう。
あ、戻れるんだ。
うん。その手術は100%成功すると思ってくれて構わない。
はいはいはいはい。
それを説明した上で。
うん。
私は君にこの体を譲ってほしいと。
なるほどね。究極だねそれはさすがに。
うん。さすがに君も同意をしたかな。
そうだ、そうですね。さすがに。
そうなると色々聞きたいこと出てくるな。
うん。何でも聞いてくれて構わないよ。
例えば今の頃体のままロボットみたいな感じになってると思うんですけど。
うん。
死ぬみたいな概念ってあるんですかね。
もちろん壊れてしまえば死んでしまうね。
あ、そっか。壊れるっていう概念。なるほどね。はいはい。
まあ、普通に交通事故とかにあったら壊れてしまうかもしれないし。
うんうん。
そのまま暮らしていても数年は確実に問題はないとは保証できる。
ちなみに、この体は見た目的には普通の人間と一緒な感じなんですか。
もちろん。君も私が説明するまでは気づかなかっただろう。
あー、なるほどね。はいはいはい。
え、だったら別にキラックにあげてもいいような気がする。
そうなのかい。
そうね。
君が雑句口で言ったみたいに、これは君自身の意思で選ばれたのではなく、
ある意味ではクジで選ばれたようなものだが。
確かに。
それでも、アキラに譲ってくれるのかい。
いや、自分が人間として生きてきるんだったらいいんじゃないかなって思うんですけどね。
そうか。君は最初の囚人の事例まで語ったように、
思い入れが少しでもできた相手には、
とてつもない自己犠牲の精神が宿ってしまうのかもしれないね。
確かに。
ありがとう。
では最後にもう一度だけ確認させてもらいたい。
はい。
君のこの元の肉体をアキラのために譲ってくれるかな。
はい。大丈夫です。
ありがとう。
そう、医者が喋るとあなたの視点は安定します。
あなたが気がつくと自分の家に戻っていました。
失われた記憶も戻っています。
そして病院であった出来事も覚えています。
あれは夢だったのか、あるいは現実だったのか。
ふと体のある一部分が、よく見るとわかることだが、
他の部分とは違う色になっていることに気がつきます。
果たしてその体は本物なのか偽物なのか、
それがはっきりするのはもう少し後のことだろう。
では最後に何か一言お願いします。
えっと、思ったより自己犠牲人間でした。
違う、キャラクターとして。
キャラクター。
その体を譲るっていう選択をしたきょうちゃんが。
恥ずかしい。
何を思うかっていうのを一言お願いしていいですかね。
わかりました。
キャラクター君に会いに行かないと。
はい。では、クテルフシンはTRPG片城。
以上にて終幕となります。お疲れ様でした。
お疲れ様でした。ありがとうございました。
心が広い。
あまりにもサクサク行きすぎて大丈夫かなって思いました。
もうダメですよね。今までの人生本当にそういうの、
どんどん受け入れて行ってきてしまったので、
結果これですからね。真似しないほうがいいです本当に。
あと個人的に思ったのが、
一番最後の自分が体を譲って目が覚めて自分の家だって状況で、
自分よりも先にあきらに会いに行かなきゃっていうのが出てきたのが終わってなりましたね。
なるほど。
約束しちゃったなって思ったんで。
いやーよかったです。
プレイヤーとしてこのTRPG片城を遊んでみてどうでしたか?
そうですね。最初記憶がない状態で始まるじゃないですか。
話していくうちにどこまで思い出していいのかっていうのがすごい難しかったというか。
話しているうちに言ってくれるじゃないですか。
サッカーとかみたいな。アントラーズ好きなんだ僕はみたいな。
そこでもうマリノス思い出していいのかな?わかんないなみたいな状態で。
そこがちょっと難しかったんですけど。
でも本当に言われたことに応えていくだけで、
ゲームが成り立ってっていうのがあったので、
普通に楽しんでできましたっていう感じですかね。
楽しんでもらえてよかったですね。
本当に。そちらこそ貴重な機会を与えていただいてありがとうございます。
ありがとうございます。
さくやさんからも何か一言お願いします。
お願いします。
受け入れる心がすごくてすごくてびっくりしました。
なるほど。
その場に見えている景色を全部受け入れてるけど、
見えてないものはあんまり考えていないのかなっていうのもちょっと。
いや本当ね、多分言われたそのまんまだと思います本当に。
疑問に思わなかったですか?
何?どこですか?
名簿とか数値のところとか、
自分の体が2つあるとか。
2つあるは、
さっき魂の入れないとかの話をちょっとしてたから、
多分自分が違う何かに映ってるんだろうなと思ったけど、
別にそういうもんなんだなと思っちゃった。
あそこ皆さんすっごい聞かれるんですよ。
これどういうこと?とかって一緒に詰めていく方が多いんですけど。
なるほど。
あ、そっかそっか。
そういう選択肢がなかったっすね。
PTRPGでも10回以上ですかね。
もう20回近いですね。
そっか。
本当に人によっては、
最後の最後で体を譲るかっていうので、
自分は譲らないっていう選択を取る人もいれば、
人によって考え方が違うゆえに、
どういう展開をしていくかっていうのは全然違ってくるので。
ある意味、僕のこと知ってる人は、
この展開読みやすくて、
どういう展開をしていくかっていうのは全然違ってくるので、
ある意味、僕のこと知ってる人は、
この展開読みやすかったかなっていう感じで。
でも本当に他の人のプレイは確かに見てみたいなと思いました。
ぜひたくさん見ていただければ。
そうですね。
今回は本人としてきましたけど、
また別のシナリオを遊ぶ機会があれば、
今度はまた自分とは別のキャラクターを作ったりとか、
いろんな楽しみ方をしてもらいたいなと思うので。
そうですね。
自分以外のキャラできんのかなって感じですけど、
どうしても自分になっちゃいそうな気がするんですけど。
はいはい。
でも本当に、
これは、
とりあえずTRPGっていうものがどういうものなのかっていうのが、
はっきりとわかったんで、