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S3E38 永遠を好む生物:生命とは何か
2026-04-23 19:06

S3E38 永遠を好む生物:生命とは何か

地表から数キロメートルの深部にも、たくさんの微生物が存在することが明らかになっています。光が届かずエネルギーがほとんどない世界に太古の昔から存在する細胞が、生命とは何かという問いを突きつけます。


シーズン3最終回です。これまでありがとうございました。再開は5月下旬予定です。


アイオノファイル

https://www.nature.com/articles/s41564-025-02048-x

参考

https://aeon.co/essays/the-discovery-of-aeonophiles-expands-our-definition-of-life

https://journals.asm.org/doi/full/10.1128/mbio.02376-18

https://academic.oup.com/ismej/article/15/10/2830/7474406

https://www.nature.com/articles/s41467-020-17330-1

感想

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生命とは何でしょうか。 その生命の定義っていうのは一つに決められるものではないんですね。
でも学校なんかでは、 細胞でできている、栄養を取りエネルギーを使う、
そして子孫を残す、 この3つのものを行うものっていう風に習ったんではないかと思います。
これに加えて外界からの刺激を感じる能力とか、それに応答して体の内部の状態を一定に保つことを含めたりします。
他によく引用されるのがアメリカ航空宇宙局、NASAの定義です。
これではダーウィン進化が可能な自己維持的な化学システムが生命だとされます。
この自己維持的な化学システムっていうのは、何かしらで外界と分けられていて、
外からエネルギーを取り入れ、それを使って状態を維持するシステムっていうことです。
だから学校で習う細胞、そして栄養を取りエネルギーを使うっていうのに相当する部分です。
ただそれだけでは十分ではなくて、生命であるためにはこのシステムがダーウィン進化をすると言っているわけです。
ですので少しずつ変化が積み重なって進化していくことができるものが生命であるっていう考えです。
進化のためには世代を減る必要がありますから、子孫を残すものっていう点でも学校で習う定義と共通なわけです。
NASAは地球外に生命を見つけることに興味がありますから、地球の生命とは全く別のものがあったとして、それを生命と呼ぶかの基準としてこのような定義を使っているわけです。
仮に地球の生命がすべて持っている細胞とかDNAとかアミノ酸を使わないものでも、それが自身を維持して世代を経て進化するんであれば、それは生命と呼んでいいっていう考えになるわけです。
じゃあ、この逆はどうでしょうか。 蘇生は通常の地球の生物の細胞と全く変わらない細胞があったとします。
つまり細胞膜に囲まれ、遺伝子としてDNAを持っていて、その遺伝子からRNAタンパク質が作られ、様々な生命活動を行うことで、システムが維持されている細胞があったとします。
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でも、この細胞が分裂しなかったとしたら、それは生命でしょうか。大腸菌のような細菌は数十分もあれば分裂し、新しい個体が生まれます。
動物の細胞でも、増殖時は1日あれば分裂します。そしてその繰り返しによって新しい個体が生まれます。
でも、もし何千年も何万年も分裂しないで、ただ存在を維持しているだけの細胞があったとしたら、それは生命と呼べるでしょうか。
今日は、そんな細胞について話していきます。
ホットサイエンティストへようこそ。佐藤です。
今日は、南カリフォルニア大学のカレン・ロイドが提唱した、アイオノファイル、永遠を好む生物という考えについて話していきます。
地下の深い部分、海底下の堆積物や大陸の地下深くの岩石にも、細菌などの微生物が存在することがわかっているんですね。
最初に報告されたのは1920年代になるんですが、石油のために掘った深い穴の岩石とか地下水から細菌が見つかったんです。
しかし当時は、これらの微生物が地表から混入したものではないかという疑いが残っていました。
転機になったのは1990年代の海洋掘削計画です。
地表から何キロメートルも下の海洋の堆積物が直接採取され、厳密な解析でも様々な微生物が検出されました。
2000年代以降になると、DNA解析技術の進歩により、これら微生物についてより詳細に解析を行うことが可能になります。
また、代謝測定などにより、これら微生物が単に存在しているだけではなく、実際に活動していることが明らかになります。
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さらにその後の研究により、地下の深い部分には膨大な数の微生物が存在することがわかり、地球上の全生物量の10%程度が地下深部に存在すると推計されています。
しかし一つ、大きな矛盾がありました。
存在する細胞の数に比べて、使われているエネルギーが小さすぎるという点です。
地表の生物はそのエネルギーを主に光合成により得ています。
植物や微生物が太陽の光からエネルギーとして使える物質を作り、他の生物はそれを食べて生きているわけです。
でも深い部分の堆積物には光が全く届きません。
一部、地球の内部から熱水が噴出する場所があって、そのエネルギーを利用している微生物もいるんですが、
ほとんどの場所ではそのようなエネルギーの供給がありません。
でもそういった深部の堆積物にもたくさんの微生物が存在しているんです。
細胞っていうのは特別なことをしていなくてもある程度エネルギーを使っていますから、
深部の生物の数に対して使われているエネルギーが少なすぎるっていう謎があったんです。
なぜこのようなことになっているかの答えとして、
深部の生物はほとんど分裂していないからだと考えられるようになりました。
この理由としては、まず、遺伝子発現解析によって、
これら微生物では細胞の分裂よりも細胞のメンテナンスに関わる遺伝子が主に働いているというのがあります。
細胞が分裂するには大きなエネルギーが必要ですから、分裂しなければエネルギーはかなり抑えられます。
しかし分裂をしないでいても、細胞の抗生成分が少しずつ壊れていきます。
ですのでDNAとかタンパク質の修復を行わないといけないんですが、
深部生物ではこの修復に関わる遺伝子の発現が見られることがわかっています。
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さらに深部生物はDNAの変化が異常に遅いことが理由として挙げられます。
生物は世代を減るごとに遺伝子に変異が増えていって、DNAの配列が変わっていきます。
例えば同じ像でもインド像とアフリカ像では数%DNAの配列が違います。
これは数百万年前にこの2種が分岐して別々に世代を重ねてきたからです。
しかし深部生物についてはほとんどDNA配列が同じものがアフリカ、アメリカ、ヨーロッパの3箇所、いずれも地下数キロメートルで見つかっています。
このような微生物は地下に埋まっていてほとんど動けないわけですから、大陸移動によってこの生物は複数の場所に生息するようになったと考えられます。
これら3つの場所がくっついていたのは全ての大陸が一緒だったパンゲアの時代、2億年以上前のことです。
ですから3地点でDNAの配列がほぼ同じであるっていうことは、2億年の間この微生物はほとんど分裂していないっていうことになります。
これは極端な例ですが、深部生物はほとんど分裂せず、何千年何万年あるいはもっと長く地中にただ存在し続けていると考えられています。
ただ、本当にこれらの生物は生きているんでしょうか。単に死んでしまった細胞の残骸っていう可能性はないでしょうか。
生命活動を行っている証拠として、まずRNAの存在があります。
遺伝子発現の際にはDNAの情報からRNAが作られるんですが、RNAは非常に不安定な物質で、生きた細胞の中でないとすぐに分解されてしまいます。
しかしRNAの解析を行うとちゃんと配列の解析ができるので、RNAがちゃんと存在できる環境が維持されていると言えます。
また、アミノ酸の異性体比が維持されているっていう点があります。
生き物の体を作るタンパク質はアミノ酸っていう部品からできているんですが、このアミノ酸には鏡に映したような2つの形があって、L型D型と呼ばれます。
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だから例えばグルタミン酸にはLグルタミン酸とDグルタミン酸があるんです。
こういうのを光学異性体と呼びます。
一般的に生きている細胞ではほぼ全てのアミノ酸がL型でできていることがわかっています。
しかし細胞が死んでしまうとこのバランスは徐々に崩れていくんですね。
時間が経つとL型のアミノ酸の一部がD型に変わっていって、最終的にはL型とD型がほぼ半々になります。
心部生物を調べるとアミノ酸の多くがL型であることがわかっています。
これは細胞が死んで放置されているのではなくて、新しくL型のアミノ酸を作り続けていることを示唆しています。
これも心部生物が生命活動を続けていることの証拠となります。
南カリフォルニア大学のカレン・ロイドはこのような心部生物をアイオノファイル、日本語の意味としては永遠のような長い時間を好む生物と呼ぶことを提唱しています。
極端な高温だったり酸性・アルカリ性の場所を好む微生物がいるんですが、これらは他の生物との競合を避けることが生存戦略となっています。
同じように、極端に長い時間単位で生きることが心部生物の生存戦略なのではないかという考えなんです。
つまり、これらの生物は最低限のメンテナンスだけを行って生きながらえることで、いつか栄養がやってくるのを待っているかもしれないということなんですね。
動物や植物、様々な細菌も環境が悪いと休眠状態になります。それによって数ヶ月あるいは数年、栄養なしに生きていくことができます。
心部生物はもっと長いスケールで冬眠する能力を身につけ、何千何万年単位でじっとしているのではないかという考えです。
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何を待っているのかですが、地質学的変化、例えばプレートテクトニクスによる大陸の移動や火山の噴火によってエネルギーが流入しているのを待っているのかもしれません。
この考えを支持する結果として、ごく一部ですが、心部生物の培養に成功しています。
例えば、1億年くらい前の地層から見つかった菌を培養したら分裂したっていう報告があるんです。
ただし、このような微生物では1回の分裂に数週間以上かかります。
通常のものよりはだいぶ遅いので、長い期間生きるために分裂もゆっくりになっているのかもしれません。
人間は自分のタイムスケールで物事を見てしまうので、あまり長い時間はよく理解できないんですよね。
でも例えば、寿命が1週間の宇宙人が地球に来たら、人間は全く成長しない生き物に見えるのではないでしょうか。
あるいは、冬眠中のクマを見れば、その宇宙人の一生の間にクマは全く動かないので、クマというのは全く活動しない生き物だと思うでしょう。
心部生物もこのように、人間には永遠とも思える何千何万年というサイクルで生きる生き物なのかもしれません。
でも、培養に成功しているのはごく一部なんです。
ひょっとしたら、心部生物の中には増殖する能力を失っているものもいるかもしれません。
そして増殖する能力があったとしても、現実にはその機会が訪れることはほぼないわけです。
そのような生命と呼んでいいのかもよくわからないような細胞が、光も届かない暗闇の中に無数に潜んでいて、私たちが生まれるはるか前から全く増えずにメンテナンスだけを続けています。
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こうした存在が指し示すのは、生命とは何かという問いそのものなのかもしれません。
今回がシーズン3の最終回となります。これまでお聞きいただきありがとうございました。
数週間の休みの後、5月下旬の再開を予定しています。ではまたその時お会いしましょう。
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