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Extra10 子供の細胞が母親の中で生き続ける、次の妊娠までは
2025-02-27 20:14

Extra10 子供の細胞が母親の中で生き続ける、次の妊娠までは

初回公開:2023年

妊娠中に胎児の細胞が母親へ移動し、その後、何年も母親の体の中で生き続けます。この現象はその後の妊娠で流産を防ぐ働きを持つという話です。

https://www.nature.com/articles/nature11462

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867415008430?via%3Dihub#bib50

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adf9325

感想

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みなさん、こんにちは。今日は番組アーカイブからのお届けになります。
僕のお気に入りのもので、マイクロキメリズムに関するものなんですが、
エピソードの最後の方では、当番組に加わったばかりの葵さんとの、不慣れな会話を聞くことができます。
ぜひ、お聞きください。
あの、妊娠・出産っていうのは、あらゆる意味で奇跡のようなことで、不思議なことっていうのが無数にあるんですね。
一つ挙げると、胎児が母親の体の中にいて、排除されないっていうのは、免疫っていうものを考えると不思議なんです。
免疫っていうのは異物を排除するシステムなんですよね。
だから、ウイルスとか細菌が入ってくると、それを無毒化して排除するわけなんです。
例えば、臓器移植なんかをしたときに拒絶されることがあるんですけれども、
これっていうのは、免疫が臓器を異物として認識しているからなんですね。
で、兄弟とか親子からの移植であっても認識されることがあって、
それで免疫抑制剤を使わないといけなかったりするわけなんです。
で、胎児っていうのは母親の子供なわけで、だから半分は母親の遺伝子を持っているんだけれども、
もう半分は父親から来ているわけで、母親から見ると自分とは違う分子を持っている存在なわけです。
だから、胎児っていうのは異物として認識されるので、免疫細胞によって拒絶されてもおかしくないわけなんです。
で、もちろん一部の妊娠っていうのは流産に終わるんですけど、
多くの場合は問題なく胎児は母親の体の中に留まっているわけなんですね。
で、それには母子間免疫関与っていう胎児に対して攻撃しない仕組みがあるんです。
その免疫関与っていうのは、例えば自分自身みたいな攻撃しなくていいものには攻撃しないっていうシステムなんですね。
で、この免疫関与には制御性T細胞と呼ばれる免疫細胞が働くんです。
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この細胞が胎児の分子を記憶して、これには攻撃しなくていいっていう指令を出すんです。
この仕組みがうまく機能しないことが流産の原因の一つではないかと考えられているんです。
でですね、一度妊娠をすると次の妊娠での流産のリスクが減るっていうことがわかっているんです。
で、それにはですね、2012年に発表された論文で最初の妊娠で免疫関与が起きるんですけれども、
その時にできた胎児の分子を覚えている制御性T細胞がその記憶を次の妊娠まで維持していて、それで流産が減るっていうことが示されたんです。
でも謎が残っているんですね。
こういうふうに免疫の記憶が維持されるためには、少量でいいんだけど、その認識している分子が存在して記憶を思い出すようなことをしないといけないんです。
例えば自分自身に対する免疫関与であれば、その自分の分子っていうのはいつでもそこにあるわけなんですね。
でも胎児に対する免疫関与の場合は、出産後は子供はもうそこにいないんです。
で、この謎の答えなんですけど、実は母親の体の中には子供の細胞がずっと生きて存在し続けているんです。
ホットサイエンティストへようこそ。
今日紹介する研究は、シンシナティ大学のシンシンウェイのグループによる一連の研究で、2012年、15年、23年にそれぞれネーチャーセルサイエンスに掲載されたものです。
妊娠中に子供の細胞が母親の体の中に移動することが少し前から知られていたんですね。
しかもその子供の細胞っていうのは、母親の体の中で長い間、何年も何十年も生きているんです。
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どうもこういった細胞っていうのは体中にあって、その母親の細胞と一緒に機能しているみたいなんですね。
でも量としては多くなくて、その細胞全体で見ると100万個のうちの1個ぐらいの割合なんだそうです。
この状態のことをマイクロキメリズムって呼んでいるんですね。
このキメリズムっていうのはキメラという言葉から来ていて、その複数の生き物が混ざってできた生き物っていうことですね。
それがごく少量なのでマイクロキメリズムと呼ばれているわけです。
普通生物っていうのは同じ遺伝子を持った細胞が集まってできていると考えられていて、
こんなふうに子供の細胞が母親の中で生きているなんていうのは驚きなんですけれども、
こういった細胞の働きについてはまだ未知な点が多いんです。
このウェイラの研究は主にマウスを使って行われました。
そのマウスでも2回目以降の妊娠の方が流産する率が下がるんですね。
2回目の妊娠で流産が減るのについては、免疫関与に働く制御性T細胞の機能が最初の妊娠の時から維持されているからなんですけれども、
この彼らの2015年の論文では、そういうふうに少量の子供の細胞が母親の体の中で生き続けているので、この制御性T細胞の記憶が維持されているということを示しているんです。
さらにですね、母親から胎児へ母親の細胞も移動するんですね。
この母親の細胞っていうのも子供の中で何年も強制し続けるんです。
この論文では、こういった母親の細胞が子供が大きくなって妊娠した時に、胎児に対する免疫関与が起こりやすくするっていうことも示しているんです。
というわけで、子供の細胞が母親の中、それから母親の細胞が子供の中で長い間生き続けているんですね。
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そういった細胞は、その個体が妊娠した時に助けてくれているっていうことなんです。
こういうことが起こっているとすると、妊娠をするたんびに新しい細胞が体の中に入ってくるっていうことなんですよね。
そんなふうに新たに細胞が入ってきた時に、どんなことが起きるのかっていうのを調べたのが2023年の論文なんです。
この論文では、すでに子供を産んだことのある母親マウスがもう一回妊娠した時に、その体の中の細胞がどうなっているかを調べていたんです。
そうしたらですね、最初の妊娠の時に最初の子供の細胞が母親の体の中に入って生き続けているんですけれども、
次の妊娠をした時にその細胞がいなくなって、新しく妊娠した子供の細胞に置き換えられているっていうことを明らかにしたんです。
だから100万個に1個ほどしかなくて、しかも体中にバラバラになって存在している最初の子供の細胞っていうのがすべていなくなってたっていうことなんですね。
こうなると主に次の子供に対する免疫関与が記憶されているっていうことになるんですけれども、
でも前の子供のことを完全に忘れているわけではないようです。
数は少ないんですけれども、前の子供に反応する制御性T細胞も残っていて、免疫の記憶は弱くなってはいるんだけど残っているという結果でした。
それからですね、子供は母親の細胞も持っているっていうことだったんですけど、その細胞がどうなっているかっていうのも調べています。
その子供が大きくなって妊娠をすると、その胎児の細胞がその子に入ってくるわけなんですけれども、そうした時に母親からもらった細胞っていうのは置き換えられるっていうことも明らかにしています。
というわけで、妊娠すると子供の細胞がずっと母親の体の中で生き続けているっていうことで、その細胞っていうのは次に妊娠した時に妊娠を助けてくれるわけなんです。
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娘っていうのも母親の細胞を持っていて、それもその娘が妊娠した時に助けてくれるわけなんですね。
でもその後に妊娠した時には、すでにそこにいた細胞っていうのはいなくなって、新しく妊娠した子供の細胞に置き換わるっていうことがこの研究でわかったわけなんです。
こんなことが起きる意味は何なのかっていうのが疑問として湧くわけです。
免疫関与を覚えておくメリットっていうのは、後で起きる妊娠が同じ父親によるものである時が大きいわけですね。
論文の中では子供の視点から考えると、母親に自分の細胞を残しておくことにはメリットがあると論じています。
自分に対する免疫関与が維持されていれば、自分の次に妊娠した子供が自分とよく似ていた時に流産の可能性が低くなるわけですね。
そうすると自分と同じような遺伝子を持っている個体の生存率が上がるわけです。
それであれば自分の遺伝子が残る確率が間接的に上がるわけなので、自分の遺伝子を残すという目的に合致するわけです。
このウェイラのグループは主にマウスを使って研究しているんです。
だから今日話したことすべてが人にも当てはまることが確認されているわけではないんですけれども、その他の研究から人を含めていろいろな哺乳類でマイクロキメリズム自体が起きているということみたいです。
今回見つかった細胞が置き換わるということなんですけれども、体中にバラバラになって100万個に1個程度が存在しているという状態なんですけれども、それが置き換わるというのはすごいことだなと思うんです。
でもこのメカニズムは今のところ不明ということになります。
このマイクロキメリズムというのが見つかったの自体が割と最近で、僕も全然知らなくて今回この話を聞いて非常に驚いたんです。
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だからまだ新しい研究分野でむしろどんどん疑問が湧いているというエキサイティングな段階なんです。
葵さん、こんにちは。
こんにちは。
今日の話なんですけれども、子どもの細胞が母親の中でずっと生きていると、それが母親の健康に何か影響があるんじゃないかと思ったんですけど、これまでの研究を葵さんに調べてもらっています。
葵さん、その内容を紹介していただけますか。
はい、もちろんです。
この最後に妊娠した子どもの細胞が母親の体内に残るマイクロキメリズムですが、詳細なメカニズムはまだ明らかになっていないものの、ガンや自己免疫疾患との関連が様々な研究の対象になっています。
まず胎児の細胞は肝細胞である可能性が示唆されています。
細胞は臓器ごとに機能が異なるのですが、肝細胞はまだ特定の性質のない細胞なので、これからどの細胞になることもできるんです。
このまだ増殖して分化することのできる肝細胞が胎児から来て、母親の体内にいるということなんですね。
母親の健康への影響ですが、まず一つ目に、胎児の細胞は母体の臓器の再生や、低応切開によってできた傷の治癒に関わっていると考えられています。
母体の傷ついた組織に胎児の細胞が集まって、そこで部分的に増殖をすることで組織の修復をしているようです。
なるほど。肝細胞だから増殖して、そこの組織の細胞になることができるから修復できるということですね。
はい、そうなんです。他には、自己免疫疾患とマイクロキメリズムとの関係も注目されています。
自己免疫疾患とは、自分の免疫が自分の組織を攻撃してしまう病気ですが、関節リウマチや全身性エリテマトーデスをはじめとするこの自己免疫疾患は、
女性での発症が男性に比べて多く、ある研究では自己免疫疾患の80%以上は女性で発症しているとしています。
なので、自己免疫疾患とマイクロキメリズムの関係に興味を持った研究者がいたわけです。
その結果はまだはっきりとはしないのですが、自己免疫疾患でも胎児の細胞が母体を守る働きをしているとする説があり、免疫関与がその鍵になっていると考えられています。
そうなんですね。その自己免疫疾患が女性で多いっていうことなんで、子どもの細胞が自己免疫疾患の発症に関わっているのかなと思ったんだけど、その逆でむしろ守っているっていうのが今のところの考えなんですね。
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そうなんです。さらにはガンとの関係にも注目が集まっています。
妊娠を経験した女性は、その後乳がんに罹患するリスクが低いことが明らかになっています。
さらに調べてみると、乳がんに罹患した母親は血液中の胎児の細胞が少なかったりすることが明らかになっています。
はいはい。妊娠をした方がリスクが低いってことだから、胎児の細胞が多いほど乳がんのリスクが減るっていうことですね。
その通りです。この理由として、胎児の細胞がガン細胞を識別するのを助けている、また乳がんにおける腫瘍の成長を制御している可能性があることが示唆されています。
ただ、ガンの種類によっては胎児の細胞がガン細胞として腫瘍の成長を助けることもあるようで、マイクロキメリズムが母体にとって必ずしも良い影響を与えるとは言い切れなさそうです。
乳がんの場合は守ってくれてるんだけれども、いつもそうではなくて、ガンによってはむしろマイナスってこともあるってことなんですね。
はい。まだわからないことがたくさんあるマイクロキメリズムですが、ガンや自己免疫疾患との関係はありそうなので、さらに研究が進めば治療の鍵になるかもしれませんね。
母親の体内で子供の細胞が生き続けるというのは、なんとも不思議で神秘的だと思います。
まさにその通りだと思います。
じゃあ、あおいさん、調べ物どうもありがとうございました。
ありがとうございます。
じゃあ今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。
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