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S2E29 食事制限で寿命が延びる仕組み
2025-02-06 25:06

S2E29 食事制限で寿命が延びる仕組み

食事制限により寿命が延びることが以前から知られています。このメカニズムに迫った最近の研究を2つ紹介します。

https://www.nature.com/articles/s41586-024-08026-3

https://www.nature.com/articles/s41586-024-08329-5 

https://www.nature.com/articles/s41586-024-08348-2 

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不老長寿の探求
あの神の始皇帝の話なんかが有名なんですが、すべてを手に入れた時の権力者が最後に望むものが永遠の命で、
国王とか富豪が不老長寿の薬を探し求めたっていう話がいくつも残っているんです。
永遠の命、永遠の若さっていうのは、昔から少なくとも一部の人間には夢であったんですが、もちろんそんな薬は存在しないわけです。
しかし、ここ数十年の老化研究の成果から、近いうちに人工的に寿命を劇的に伸ばすことが可能になるのではないかっていう期待が生まれています。
そして近年、IT長者を中心に巨額の投資を行っていて、老化を遅らせ寿命を伸ばす因子、抗老化因子の研究が大きな盛り上がりを見せています。
かなり前から少なくとも実験動物では寿命を伸ばすことがよくわかっているのが食事制限です。
通常マウスみたいな実験動物は十分な餌がある状態で飼育されていて、食べたい分だけ餌を食べています。
そういう状態で食べる量から20%とか40%を減らした量しか与えないようにして、カロリーを制限すると寿命が伸びることが知られています。
他にも普段は好きなだけ食べさせるんだけど、時々1日とか2日餌を与えないで、時間を区切って断食をさせるっていう方法でも寿命が伸びます。
また、マウスやラットみたいな哺乳類だけでなくて、症状媒とか戦虫といった全く別の種類の実験動物でも同じように寿命が伸びることが知られていて、食事制限の効果は普遍的であると考えられています。
そして、食事制限がどのような仕組みで寿命を伸ばすかが理解できれば、そこを人工的に調節することで寿命を伸ばすことができるはずです。
というわけで、不老長寿へつながる糸口として期待できることもあって、食事制限と寿命の研究はこれまでもたくさん行われてきました。
遺伝の影響の解明
最近、特に興味深い研究がいくつか報告されていたので、今日はそれらを紹介します。
ポッドサイエンティストへようこそ。サトシです。
今日紹介する一つ目の論文は、カリコライフサイエンシーズのアンドレア・ディ・フランチェスコらによるもので、2024年10月のNatureに発表されたものです。
ちなみにこのカリコライフサイエンシーズというのは、Googleによって設立された会社で老化とか健康に関する研究を行っています。
最初にカロリー制限が老化を遅らせることが論文として報告されたのが1935年のことで、これはラットを用いた研究でした。
そしてその後、多くの研究が行われて、マウスなど別の生物でも効果が確認されているわけなんですが、なぜ食事制限が寿命を延ばすのかはよくわかっていませんでした。
一つの説としては、食事制限によって肥満の悪影響が減って、その結果健康になって寿命が延びるっていうのがあったんですが、まだはっきりとはしていませんでした。
それから、食事制限は寿命に対していつも大きな効果があるわけではなくて、同じマウスでも由来の違うマウスを比較すると、食事制限の効果の大きい系統もあれば、あまり効果の見られない系統もあることがわかっています。
また、サルでも同様に効果のばらつきがあって、食事制限の老化に対する効果っていうのは、遺伝的な違いあるいは生育環境の違いの影響を受けることが考えられます。
今回の研究ではその点を明らかにするために、遺伝的に多様なマウスの集団を準備して、生まれてから死ぬまで観察をし続けました。人間は一人一人持っている遺伝子が少しずつ違っていて、それで多様な人がいるわけです。
野生の生物というのもそうなんです。でも、実験用のマウスでは特定の系統のマウスを注文すると、遺伝的にはほとんど同じ個体が入手できます。
通常はこの方が個体差が小さくなるので、実験には都合がいいわけなんです。
いろんな系統があるわけなんですけど、系統ごとには遺伝子がかなり違うわけなんですね。
それで遺伝的に多様なマウスの集団を作るために、いくつかの系統を掛け合わせて、その子孫を使うというやり方があるんですね。
そうすると遺伝的に多様な集団になるわけなんですけれども、これがダイバーシティアウトブレッドマウスと呼ばれています。
今回の研究では、この集団から約1000匹という非常にたくさんのマウスについて実験を行っています。
内容としては、この1000匹を自由にエサを食べるグループと、食べる量を減らすグループ、さらには時間を区切った断食をするグループという風にエサの与え方を変えます。
これらのマウスの寿命を測定するのに加えて、体重とか血糖値みたいな健康上の指標をたくさん集めます。
さらにすべての個体について遺伝子をすべて解析していて、トータルとしてとんでもない量のデータを集めました。
とにかく実験が普通ではありえない規模で行われたという研究になります。
この膨大なデータを使って、どの指標がどの指標と関係あるのか、寿命と関係あるのはどの指標なのかというのを詳しく解析しているんですけれども、ここでは主要な結論だけを話していきます。
まず、食事制限をすると寿命が伸びることが確認されました。
だからこれは過去の研究と合致しているわけですね。
でも、遺伝的に多様な集団で実験した今回の結果では、ばらつきが大きかったんです。
つまり、食事制限には確かに効果はあるんだけど、遺伝の影響の方が大きいということもわかりました。
なんですけど、遺伝子を解析した結果、特に一つ寿命を伸ばす遺伝子があるというわけではなくて、たくさんの遺伝子が少しずつ関わっているということも明らかにしています。
それから、興味深かったのは、体重と寿命が必ずしも関係がないということです。
食事制限をすると寿命が伸びるんですが、体重も減るんですね。
でも、体重が減ったことと寿命が伸びたことに相関があるかというと、そうではなかったんです。
つまり、食事制限でより体重が減ったマウスがより長生きかというと、そうではなくて、むしろ逆だったんです。
だから、食事制限をしているのにも関わらず、体重があまり減らないマウスが長生きという傾向が見られました。
体重が減る食事制限をすると寿命が伸びるんだけど、寿命が伸びているのはそれによって体重があまり減ってない個体だというわけで、ある種のパラドックスが見られるわけです。
AMPKとリトコール酸の発見
免疫細胞など他の指標を見てみると、食事制限はマウスに悪影響があるということも示唆されています。
そこから考えられるのが、食事制限は体重を減らすのとは全く別の何か未知の作用で寿命を伸ばすんだけど、同時に食事制限は体重が減るのを含めて悪いことも起こすという仕組みです。
そしてこの悪い影響が小さく出るような個体では特に寿命が伸びていると考えることができるわけです。
食事制限がどのようなメカニズムで寿命を伸ばすかはずっと謎だったわけですが、この研究で体重が減って健康的になるからではないということが示されたわけです。
じゃあ何なのかっていうところなんですが、次はこのメカニズムに迫る研究を紹介します。
この研究はアモイ大学のシー・チューラによるもので、2024年12月のネイチャーに2つの論文として発表されています。
動物の体の中にあるタンパク質で寿命に関わることがすでにわかっているものがいくつかあるんですね。
その遺伝子に変異があって働かなくなると寿命が伸びたりすることから見つかってきています。
例えば、インスリンのような成長因子に関わるタンパク質がそうですし、サーチュインと呼ばれるタンパク質も活性化すると寿命が伸びることが知られています。
この研究ではAMPKというタンパク質に注目しています。
これは、インスリンともサーチュインとも関係があることが知られていて、食事制限をするとこのAMPKが活性化、働き出すということがすでに知られています。
ですから、食事制限をしたときに何かが起きて、それがAMPKを刺激するというわけなんですが、その何かが長い間わかってなかったわけです。
この論文の筆者らが考えたのは、食事制限をすると何か普段はあまりない物質が体の中でできてきて、それがAMPKを活性化するのだろうということです。
そうであれば、食事制限をしたマウスとそうでないマウスの持っている物質を比較して、量が違うものを一個一個調べていけばわかるだろうと考えて、実際にこの大変な力技の実験を行っていきます。
すべては調べられないので、血液中に出てくる低分子に絞ります。老化というのは全身で起きることなので、全身をめぐる血液を対象にしたと思われます。
まず、食事制限をしたマウスの血液の一部を細胞に振りかけてみたんですね。そうしたらAMPKが活性化したんです。
なので確かに血液にはAMPKを活性化するものがあるということがわかりました。
その後は血液を分離していって、質量分析という手法で食事制限したときに増える物質を導体していきました。
候補となり得るものが数百個あったんですが、一個ずつ細胞に振りかけて、どれがAMPKを活性化することができるのかを調べるという骨の折れる作業をしていって、最終的に一つの物質を突き止めました。
これがリトコール酸というものなんです。
このリトコール酸は単獣に含まれる物質なんですね。
単獣というのは肝臓が作る液体で、肝臓から腸の中へ分泌されます。
食べ物の消化を助けるという働きもありますし、体の中の不要なものを肝臓が分解して、それを単獣と一緒に排出するという役割もあります。
このリトコール酸は動物が肝臓で作っているわけではなくて、肝臓でできた単獣の成分が腸内細菌の働きで変化してリトコール酸ができてきます。
これが血液にも移動していくので、今回は血液から見つかったということになります。
リトコール酸と寿命の関係
さて、ここまでで食事制限をするとリトコール酸という物質が増えるということと、このリトコール酸は寿命の制御に重要なANPKというタンパク質を活性化するということがわかったわけです。
アイデアとしては、食事制限をすると寿命が伸びるのはこの物質のせいではないかということです。
そうであれば、食事制限をしていない動物にリトコール酸を与えれば老化が抑えられるはずです。
次に、年老いたマウスにリトコール酸を投与するという実験をしています。
まずリトコール酸を投与すると体の中でANPKが活性化するということを確認しています。
これは食事制限の時と同じなんですね。
このマウスなんですが、運動のパフォーマンスが良くなっていました。
走ったりとか棒につかまったりとかがよくできるようになってたんですね。
筋肉のパフォーマンスが良くなってたということです。
その食事制限で老化が抑制されるわけなんですけど、この場合は筋肉量が減るんです。
でもリトコール酸を投与した場合は、それは起きてなかったということでした。
また、過励によってマウスも投与病みたいになるんですが、リトコール酸でこれも改善していたという結果でした。
寿命についてなんですが、一部の実験ではリトコール酸によってマウスの寿命が伸びたので、
何らかの効果があると筆者らは言いたそうだったんですが、全体としては統計的には効果がないという結果になっていました。
だから結論としては、マウスではリトコール酸は老化を改善しているようだということですね。
でも寿命には明らかな効果は見られなかったということになります。
さらに、栓臭と症状肺で寿命に対するリトコール酸の効果を調べています。
ですから、食事制限をしていない栓臭とか肺にリトコール酸を与えるということをしているんですけれども、
これについてはリトコール酸で栓臭と肺の寿命が伸びていました。
しかもANPKの変異体、つまりANPKを持っていない栓臭や肺でも実験をしていて、
その時はリトコール酸を与えても寿命が伸びないことを示しています。
だからリトコール酸がANPKを活性化してその結果寿命を伸ばしているのであれば、
ANPKがない時にはリトコール酸を与えても寿命が伸びないはずなんですけど、
まさにその通りの結果だったわけです。
というわけで、少なくとも栓臭や肺ではリトコール酸は寿命を伸ばすことができるということになります。
その食事制限が寿命を伸ばすのはかなり前から知られていたんですが、
なぜ老化を遅らせ寿命を伸ばすのか、体の中で何が起きているのかについてはよく分かっていなかったわけです。
この研究では、食事制限によるリトコール酸の増加とそれによるANPKの活性化が主要な要因ではないかということを示しています。
そのマウスに関してははっきりとしないところがありましたし、
まだ発表されたばかりで今後の評価がどうなっていくかは分からないですけれども、
腸内細菌の役割
長年の疑問に応えるインパクトの大きい研究となる可能性があります。
また、いくつか興味深い点があります。
一つはリトコール酸が腸内細菌によって合成されるという点です。
肝臓ではタンジュ酸というのが作られるんですが、これが腸内である種の細菌によって代謝されてリトコール酸になります。
過去の研究では、食事制限でマウスの寿命が伸びたり伸びなかったりしていたのですが、
この違いが持っている腸内細菌の違いで説明できるかもしれません。
さらに、腸内細菌によって寿命が変わるというようなことを示した研究もあるのですが、
これもリトコール酸と関係がある可能性があります。
さらに、食事制限なしでリトコール酸の投与だけで寿命が伸びるというのも注目すべき点です。
最初の研究で示されていたように、食事制限による体重低下そのものは寿命の延長とは必ずしも関係がないということでした。
むしろ、体重が落ちないマウスが寿命が伸びていたということなので、体重の低下には健康上の悪影響がありそうです。
リトコール酸の投与が老化を止める仕組みだけを働かせて寿命を伸ばしているというのが本当であれば、不老長寿の薬への第一歩として期待が持てるわけです。
じゃあ、もう今からでもリトコール酸を摂取しようって思う人がいるかもしれません。
リトコール酸自体はそんなに高価な物質ではないんですが、現時点では全くお勧めできません。
肝臓に対する毒性があることが知られていますし、場合によってはがんのリスクを高めるとされています。
ちなみに今回のマウスの実験では、そういったリスクがある濃度よりも低い、生体内に存在するような濃度で効果が見られていました。
ですから、将来、人を対象にして慎重に臨床試験を行うことで、薬として使用できる条件が見つかる可能性はあります。
でも、そのようにして効果と安全性が確認されるまでは摂取すべきではないと論文の筆者も警告していました。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。
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