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その、誰でも感じることだと思うんですが、 睡眠不足の時は集中力が落ちますよね。
パソコンの画面を見ていて、ふっと眠りに落ちてしまうっていうのもあるんですが、 それとは別に、目は開いていて覚醒していても、
しっかり眠った後と比べると、集中力が落ちているっていうのは感じたことがあるんではないでしょうか。
パソコンの前に座っている時なんかはまだいいんですが、 運転中なんかに注意力不足になると危険ですし、
原始の人とか、動物の場合では、そういう状態だと捕食者に捕まって食べられてしまいます。
このような大きなリスクがあるにも関わらず、 睡眠不足により注意力が落ちるっていうことは、
睡眠は脳にとってどうしても必要で、睡眠不足による注意力の低下は避けられないものである可能性があります。
しかしなぜ、睡眠が足りないと注意力が落ちるのかは、まだよくわかっていません。
睡眠が不足すると注意力の低下だけではなくて、 感情面の異常や免疫機能の低下、代謝異常も起きます。
また人間以外の動物でも睡眠は見られますし、 眠らせないとそれを補うように眠気が強くなり、寝るのが避けられなくなります。
ですから動物にとって睡眠は必須であるわけです。
睡眠が何の役に立っているのかですが、いくつかの機能があると考えられています。
一つは、起きている間にあった体験についての情報を脳の中で整理して、 記憶を強化したり神経回路を調整したりするのを睡眠中に行っているっていうのが以前から言われています。
また2010年以降に注目されるようになった考えとして、 睡眠中に脳内の老廃物を除去しているっていうものがあります。
脳の中には脳脊髄液っていう液体があって、これが睡眠中にはよく流れるようになって、 覚醒中に蓄積した代謝産物が洗い流されるということが15年ほど前に示されました。
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この仕組みについてはまだ議論があるんですが、脳脊髄液の流れが脳の健康に重要であると考えられるようになってきています。
では、睡眠が不足するとどうなるかですが、 寝不足の人や動物で脳の神経の活動を調べた研究によって、脳全体の活動パターンが変化しているということがわかっています。
さらに、寝不足の個体では、起きている時に一時的に寝ている時のような脳波の活動パターンが見られることが示されていて、これが寝不足による注意力の低下と関係がありそうだっていうところまでわかっています。
それでも、睡眠不足による注意力の低下のメカニズムについてはまだ不明な点が多いですし、脳脊髄液の流れとの関係はよくわかっていませんでした。
今日は、睡眠不足の人に連続的に課題を出すことで、脳の状態と注意力の関係を調べた研究を紹介します。
ホットサイエンティストへようこそ。サトシです。
今日紹介するのは、マサチューセツ工科大学のジン・オン・ヤン・ラニオル研究で、2025年10月のネイチャーニューロサイエンスに発表されたものです。
この研究では、26人の実験参加者について、一晩徹夜したときと普通に寝たとき2回の計測を行うことで、同じ人での変化を調べることができるデザインにしています。
実験参加者には、サイコモータービジュランステストっていう注意力を測るテストをやってもらいます。
これには聴覚刺激のものと視覚刺激のものがあって、聴覚の方ではイヤホンから音が鳴ったらすぐにボタンを押すっていう形です。
視覚の方では画面上に×、十字があるんですけれども、それが四角形に変化したらすぐにボタンを押すっていう形になっていて、このような課題をずっと繰り返します。
ボタンを押すまでにどれだけ時間がかかるかが集中力の指標となります。
また時々刺激があったことに気がつかないでボタンを押せないミスっていうのがあるわけなんですが、これが明確に注意力がなかった瞬間ということになります。
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このテストを受験参加者はずっとやっているわけなんですが、これをMRIの中でやってもらいます。
ファンクショナルMRIはよく脳の活動を測定するのに使うんですが、ここでは高速なファンクショナルMRIを使って脳の血管の活動とか脳脊髄液の流れ、流入と流出を測定しています。
さらに脳波形と目の動向の大きさを測定する装置を取り付けてもらって、脳波と動向の変化も連続的に測定しています。
これによって注意力と脳の内外の変化にどのような関係があるかを調べていったということになります。
では結果です。まず注意力を測るテストの結果ですが、一晩徹夜した人ではこのテストの成績が悪いことが確認されました。
ボタンを押すまでにかかる時間が長くなっていたし、見落としミスも増えていたという結果でした。
ですから今回の条件で睡眠不足による注意力の低下は確かに起きているということになります。
次に脳脊髄液の流れについてです。
今回の実験では、実験参加者は課題をやっている途中で寝てしまうことがあるんですね。
それは脳波などから確認することができます。
まず眠ってしまった時と起きている時を比較すると、確かに脳脊髄液の流れは眠っている時の方が大きいことが確認されました。
ですからこれまでに報告されていたことが今回の研究でも確認できているということになります。
さらに睡眠不足だけど起きている状態の人ではどうなっていたかですが、時々脳脊髄液の流れが観察されたということでした。
つまり寝ている人で見られるような流れが、睡眠不足の人では覚醒時に時々見られるということになります。
次にこの脳脊髄液の流れと注意力の変化がどのようなタイミングで起きているかを見ていきます。
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注意力を測るテストで刺激を見逃してミスするのは注意力が低下していたタイミングですから、このミスがあった瞬間の前後では脳脊髄液の流れのシグナルはどうだったかというのを見ていきました。
もちろん寝てしまうとミスするわけなんですが、ここでは脳波とか目が開いているかを見て、目が覚めているけど見逃したというミスだけを対象にしています。
そうするとミスの10秒程度後に脳脊髄液の流れが増えていたことがわかりました。
そのミスと流れに何の関係もなければこういった対応は見られないはずです。
でもミス、つまり注意力の低下と脳脊髄液の流れには関係があってリンクしていたということなんです。
ただし全く同じタイミングではなくてミスの少し後に脳脊髄液の流れが起きるということになります。
次に同じように動向とミスの関係も調べています。
動向の大きさは覚醒度、目の覚めている度合いと関係があるんですね。
覚醒度が低いときには動向は小さくなりますし、覚醒度が高いときには動向が大きくなります。
テストでミスしたタイミングの前後で動向がどうなっているかを見てみると、ちょうどミスをしたあたりで動向が小さくなっていることがわかりました。
ですからこれは予想通りとも言えますが、注意力の低下と動向の縮小、つまり覚醒度の低下はだいたい同じタイミングで起きていることがわかりました。
それから脳波の測定から、このタイミングでは脳波も覚醒度が低下したような状態を示していたということでした。
これに少し遅れて脳脊髄液の流れが起きているということになるわけです。
今回の研究では、ファンクショナルMRIで脳の血管の体積の変化というのも調べています。
血管というのは収縮して大きさが変わるんですが、脳脊髄液の流れはこういった血管の収縮によって引き起こされるという考えがあるので、血管の変化がどのようなタイミングで起きているのかも調べたんです。
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その結果、血管の変化はテストでのミスよりも少し後、でも脳脊髄液の流れのピークよりは少し前に起きるということが示されました。
ですから注意力の低下と覚醒度の低下がまず起きて、その後血管が変化して脳脊髄液の流れが起きるという順番で起きることがわかったということになります。
まず、睡眠不足だと一様に覚醒度が下がっているわけではなくて、一時的に覚醒度が下がって、寝ている時のような脳の状態になる。そしてそれによって注意力が低下すると以前からも示唆されていました。
今回の研究では、脳脊髄液の流れというのもこれと関連するタイミングで起きるということを示しています。ただし、脳脊髄液の流れが起きることが注意力を低下させているわけではないと考えられます。
この流れは、注意力の低下の少し後で起きているので、原因ではなくて、覚醒度の低下と一緒に起きる事象であると考える方が自然ということになります。
ですから、何か覚醒度をコントロールするものがあって、そこで変化が起きると、動向の縮小や覚醒度の低下と一緒に脳脊髄液の流れが増えるようになると考えることができます。
ヒッシャラは、この覚醒度と脳内の流れを両方コントロールするものの候補として、神経伝達物質のノルアドレナリンをあげていました。
ノルアドレナリンには覚醒度を上げる働きがありますし、近年の研究でノルアドレナリンは血管の運動と脳脊髄液の流れに関係があることが示されています。
睡眠中に脳脊髄液が流れることで、脳内の老廃物を排出している、そしてこれが睡眠が必要な理由であるという仮説があります。
ですから、寝てない時にはこの働きが足りなくて、覚醒時にもこの流れが起きるようになっているという可能性が考えられるわけです。
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ただし、今回の研究では脳脊髄液の流れは見ていますが、それで何かが運ばれているかは見ていません。
ですので、睡眠不足の時に、覚醒時に脳脊髄液の流れが起きることの役割っていうのはまだ未解明ということになります。
それから、なぜ注意力の低下と脳脊髄液の流動が一緒に起きるようになっているのかは謎です。
老廃物の排出が必要であるとしても、それを覚醒度を下げないで行うことができれば、その方が都合がいいようにも思えます。
可能性としては、脳脊髄液が流れている時は、あまり脳機能を高く働かせることができなくて、この2つをリンクさせることで流れている時にはあえて覚醒度を下げるようになっているのかもしれません。
今日はお知らせがあります。当番組は過去2年、4月にシーズン終了、何週間か休んでから新シーズンスタートという形でやってきました。
今年も同じにするつもりで、あと数回したらしばらく休みっていう予定でいます。一応事前のご報告でした。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。