S2E34 望み通りの子供
2025-03-20 24:11

S2E34 望み通りの子供

子供の受精卵の遺伝子を改変して親の望む性質の子供を作る「デザイナーベイビー」と関係する着床前遺伝子検査と多遺伝子編集についての話です。


前半は2023年に公開したものを再録音したもの、後半は新作です。


着床前検査

https://www.nature.com/articles/s41431-021-01000-x

https://www.nature.com/articles/s41591-022-01735-0

https://www.nature.com/articles/d41586-022-02961-9

多遺伝子編集

https://www.nature.com/articles/s41586-024-08300-4

感想

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みなさん、こんにちは。今日は、デザイナーベイビーについての話を最初にします。
これは以前に公開した話を再度録音し直したものになります。それから、最近この分野で興味深い論文が発表されていたので、番組後半ではそれについての話もしています。
ぜひお聞きください。 デザイナーベイビーっていうのがありますよね。
映画なんかでよく扱われるんですけど、 子供の受精卵の遺伝子を改変して、親の望むような性質の子供を作るっていうやつです。
だから例えば、背が高くて、綺麗で、頭が良くて、もちろん病気の遺伝子も持ってない、そんな感じの赤ちゃんをデザインして作るっていう、そういうやつのことなんです。
でもまあ、現時点では普通に実現しているわけではなくて、あくまでフィクションの世界の話っていうことになるわけなんですよね。
で、こういうふうにデザインするっていうのは倫理的な問題があるわけなんです。
そもそもそうやって遺伝子を改変した人を作っていいのかっていう問題もありますし、 こういう技術ができたとしても当然すごくお金がかかるだろうから、
こういうのがお金持ちはできるんだけど一般人はできないっていうのはいいのかっていう、そういう問題もあるわけなんです。
でもまあ現時点ではそういうデザイナーベイビーが現実に生まれているわけではないんですよね。
で、デザイナーベイビーを実現するには2つ技術的に必要になってくるんです。
まず一つは遺伝子を改変する技術です。
でもこれっていうのはもうすでにあるんですよね。
割と最近ノーベル賞を受賞したクリスパーっていう遺伝子編集技術があって、
基本的には遺伝子のどの部分でも望んだ形に改変できる方法っていうのがすでにあって、
人以外の生物であれば研究目的で日常的に使われているんです。
人間も同じ生物ですから、人間で行うことも技術的には可能です。
でも話したように倫理的な問題があるので、人の遺伝子操作っていうのは今のところ禁止されているんです。
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なんですが一つ例外があります。
2018年に中国の研究者のジエン・クイっていう人が、遺伝子改変をした人間の子供を誕生させたっていう出来事があったんですね。
これはエイズのウイルス、HIVに抵抗性を持つ、そういう遺伝子を持った人を誕生させたっていう事例なんです。
本人は善意でやってたわけなんですが、当然これは倫理的に大問題なんです。
でその後この人は盗獄されるっていう、そういう事件があったんです。
でもこれは本当に例外中の例外で、人間の遺伝子改変っていうのは多くの国で禁止されているっていうのが現状なんです。
それから2つ必要な技術のもう一つっていうのは、どの性質がどの遺伝子で決まっているかっていうのを理解することなんですね。
遺伝子を改変することができたとしても、どれを改変すればどうなるっていうのがわかってないと、望むような子供が作れるわけではないんですよね。
これに関してはわかっていることもたくさんあるんですけど、わからないことの方がはるかに多いんです。
遺伝で伝わる病気、遺伝病っていうのがたくさんあるんですが、それを決めている原因遺伝子が結構わかってきてるんです。
でもわかってないものもたくさんありますし、多くの病気は多数の遺伝子の影響で発症しやすさが決まるんですが、そういうものに関してはまだよくわかってない面が多いっていうのが現状になります。
それから頭の良さとか性格とか身長とかスポーツができるかっていうのも少しずつわかってきてるんですけど、やっぱりわからないことの方が多いんです。
なので、遺伝子が自由に改変できたとしても望み通りの人を作れるわけではないっていうのが今の状況なんです。
さらに話したように遺伝子を改変すること自体が禁止されてますから、デザイナーベイビーっていうのはまだ現実的ではないっていうふうに少なくとも僕は思っていたんです。
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でも望んだ子供を作るのにはもう一つ別のやり方っていうのがあって、実はもうすでに行われ始めているんです。
で、その別のやり方っていうのが受精卵を選ぶっていう方法なんですね。
同じカップルの子供であってもいろんな子供が生まれるわけですよね。
兄弟っていうのは似てるケースも多いんだけど全然似てない場合もよくあるじゃないですか。
だから同じカップルからでもいろんな性質を持った子供が生まれてくるわけなんです。
で、その理由は遺伝的に違う子供が生まれてくるからなんですよね。
その性子と卵子が結構な数が作られるわけなんですけど、基本的には一個一個その性子なり卵子が持っている遺伝子が違うんですね。
だからどの性子とどの卵子から子供が生まれたかによって違う子供が生まれてくるっていうことなんです。
ですから受精卵の遺伝子を調べて、いいと思う遺伝子を持っている受精卵だけ発生させて子供にするっていう、
そういうふうにしてやればある程度望んだ子供が得られるっていうことなんです。
でも普通に自然妊娠をしてできる受精卵っていうのは1回妊娠してやっと1個なんです。
双子であっても2個なわけです。
しかもその受精卵っていうのが母親の体の中にあるので、その遺伝子を調べるのが結構大変なんですね。
そして調べた上で望んだような子供でなければそれを中絶してまた妊娠するなんていうのは全く現実的ではないわけなんです。
でも人工受精の場合にはこういうことができるんです。
人工受精は普通は不妊の場合の治療として行われるわけなんですよね。
精子と卵子を取ってきてシャーレの上で受精させて受精卵を作るわけなんです。
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そんなにたくさんの受精卵を作れるわけではないんですけど、複数個を作ることができるわけなんです。
このできた受精卵っていうのは細胞分裂して細胞が増えていくんですけど、
ある程度細胞が増えた段階で母親の体の中に入れて着症させるわけなんです。
それで妊娠して子供が生まれるっていう形なんですけど、この着症させる前の段階で少し増えた細胞の一部を取ってきてその遺伝子を解析するっていうことができるんです。
で、これをやればより望ましいと思う受精卵を選ぶっていうことができるんです。
で、こういうふうに受精卵を検査することを着症前遺伝子検査って呼びます。
普通は不妊でもなければ人工受精っていうのはしないんですね。
でも不妊のために人工受精をしている人たちが、ついでにこういう遺伝子検査をしているっていう場合があって、それをサポートする会社っていうのがあるんです。
着症前検査が制限されている国っていうのも結構多いんですが、アメリカでは規制されていなくて、そういうサービスがアメリカにはあるっていうことなんです。
ちなみに日本なんですけど、日本も今のところは規制がないみたいです。
で、よくやられるのは特定の病気の遺伝子の解析です。
例えば親が何か一つの病気の遺伝子を持っているっていうことがわかっている場合で、その遺伝子が子供に伝わらない方がいいので、その遺伝子を持ってない子供、持ってない受精卵を選ぶっていうのがよく行われているみたいなんです。
で、まあこれだと直感的には倫理的な問題がなんか小さいような気がするんですよね。
でもやりたいと思えば、すでにわかっている病気の原因遺伝子をすべて調べるっていうこともできるんです。
さらにはポリジェニックテスティングっていうのがあるんです。
これはこれまでの遺伝子解析の結果からすごくたくさんの遺伝子とすごくたくさんの病気の関係のデータっていうのがあるんですけど、それを機械学習させて、そこから病気のリスクを特定していくっていうやり方なんです。
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これを提供している会社っていうのがあって、1個の受精卵の遺伝情報からどの病気がどれぐらいの確率で起きるみたいな数字を一覧にして出してくれるそうなんです。
で、その結果をもとにどの受精卵を選ぶか決めることができるっていうことになります。
ただ、このタイプの解析の信頼度が現時点ではかなり低いっていうことなんです。
それでもこんなサービスを提供する会社が存在していて、こういう解析を使った人がもうすでに数百人ぐらいはいるっていうことみたいなんです。
で、こういう会社はこういうのをやるとすごくいいですよみたいに宣伝をしているわけなんですね。
で、そういうのを見ると人によっては不妊ではなくて人工受精は必要ないんだけど、こういう解析をして子供を産みたいと考えて、わざわざ人工受精をしたいと思う人がいるかもしれないんです。
でも今まだそれだけ信頼できるわけではないにもかかわらず、そういうふうに誘導しているのであれば、それは倫理的に問題だっていうことになります。
でも原理的にはこういう方法って、もっとデータが集まれば精度が上がって現実的になってくるんですね。
さらには病気だけではなくて身長とか頭の良さとかそういうこともこういう技術で予測できるようになるわけです。
で、そうなってくると冒頭でも話したように、このような産み分けをしてもいいのかっていう倫理的な問題になるわけです。
またこのようなサービスは当然非常に高額なので、金持ちだけがこんなふうに望んだ子供を産むことができるのがいいのかっていう、そういう問題も出てくるわけなんです。
というわけで、望んだ子供を産むっていう、ほんのちょっと前までは完全にSFの世界だったことがもうすぐそこまで来てるんですね。
というか驚くことに、すでに部分的には行われているっていうことなんです。
ただ、さらに付け加えると、これは着症前検査とは違うんですが、ダウン症の出生前診断っていうのがあるんですよね。
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これっていうのは妊娠中に染色体っていう遺伝子の塊を調べてダウン症かどうか調べるっていうやり方なんです。
で、これはもうすでに結構な数行われていて、その診断で子供がダウン症の確率が高いってわかると、ほとんどの親が中絶を選んでいるんです。
その今回の話っていうのは、すごくたくさんの遺伝子について調べる方法で、
しかも着症前にやるから目当たらしい話なんですけど、遺伝子による命の選別っていうのはもうすでに行われているっていうことなんです。
今日お届けしたエピソードでは着症前遺伝子検査の話をしたわけです。
この方法では、精子と卵子からできた受精卵の遺伝子を解析して、遺伝的な疾患を持たない受精卵を選ぶっていうことが行われます。
カップルが単一遺伝病の遺伝子を持っている場合なんかには有効で、実際に使われているんですが、
検査できる受精卵の数がそんなに多くないので、あらゆる病気のリスクが少ない子供を選別するっていうのは難しいですし、
そもそも親が持っていない遺伝子を持つ子供は作れないわけです。
途中で話に出てきた自炎クイの例みたいに、クリスパーという技術を使って特定の遺伝子を直接改変すれば、理論的には様々な病気のリスクを減らすことが可能です。
でも倫理的に問題があって禁止されていますし、今のところあまりたくさんの遺伝子を一度に改変することはできないんですが、どれくらい改変すればどれだけ効果があるのかっていうのは、今後のために知っておいてもいい情報だと言えます。
これを数理モデルで解析した研究が最近発表されていて、ピーター・ヴィッシャーらによるもので、2025年1月のネイチャーに掲載されていました。
多くの病気には遺伝的要因があるんですが、一つの遺伝子で決まっているっていうのは稀で、たくさんの遺伝子が少しずつ影響してなりやすさが決まっているっていう病気が多いんです。
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近年では非常にたくさんの人の遺伝子を解析して、どの遺伝子とどの病気に関係があるかを調べるバイオバンクっていう大規模なプロジェクトが行われていて、その結果、この遺伝子がこの病気と関係あるっていうのがたくさんわかってきています。
だから、一つの遺伝子に配列の違ういくつかのタイプがあるんですけど、このタイプを持っている人はこの病気の割合が多いみたいな組み合わせが無数にわかってきているんですね。
それで、一個の病気に関係ある遺伝子が何百とか何千もわかってきているんです。
でも、一個一個の遺伝子の病気に対する影響っていうのは非常に小さいものがほとんどなんです。
でも時々、稀な保護アレルっていうのがあるんですね。
アレルっていうのは特定の遺伝子のタイプっていう意味で、例えば血液型だったらA、B、Oの遺伝子のバージョンがあって、これがアレルなんです。
で、Aの方がBよりも多いみたいに特定のアレルを持っている人の割合が違うんですね。
で、病気によっては稀なんですが、病気を防ぐ働きのあるアレルっていうのが存在するんです。
で、これもバイオバンクのデータからこのアレルを持っているとどれぐらい病気になりにくいかっていうのがわかってますし、一つの病気に対して保護的なアレルがたくさんわかっているっていう状態なんです。
で、今回の研究は、こういうアレルになるように遺伝子改変した子どもを作ったらどうなるかっていうのを計算していったっていうものになります。
だから全て理論的にはどうだっていう話なんですね。
遺伝子改変は全てうまくいくっていう仮定で、これまでの遺伝子解析の結果は全て正しいっていう仮定で、さらに保護作用も複数のアレルを組み合わせたときに足し算で効果が出るっていう仮定で計算しています。
その結果なんですが、例えばアルツアイマ病だと普通の人が生涯でかかる可能性が5%ぐらいなんですけど、仮に10個遺伝子の改変を行ったら0.6%にまで下がるっていうことでした。
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他にも糖合失調症とか糖尿病とかいくつかの病気について調べていて、ものによるんですが10個遺伝子を改変するとかなりリスクが低下する病気が多いっていう結果でした。
ですからおそらく、病気のリスクを高めるアレルを遺伝子改変で変えていくよりも、保護作用のあるアレルを入れていく方が効果が大きくて、より少ない遺伝子改変で効果が出るっていうことを考えて、そこに目をつけて実際そうだっていうことを示したっていうのがポイントだというところです。
もちろんいろいろ仮定をしているので、本当にどれだけ効果があるのかは疑問が残ります。
特にゲノム解析では本当に特定の遺伝子変異が病気を起こしているのかっていうのはわからないっていう問題があるんですね。
それから当然倫理的な問題もあります。
論文ではこれらについても詳しく紙面を裂いて議論していました。
その遺伝子改変の技術はどんどん進歩しているんですね。
子どもに伝わる遺伝子改変っていうのは禁止されているわけですが、次世代には伝わらない細胞、体細胞の遺伝子をクリスパーで改変して病気を治すっていう治療はすでに実用化されています。
赤血球に異常のある病気に対して、赤血球を作り出す細胞を採取して、遺伝子改変をした後に体に戻すっていう治療なんですが、1年ほど前にイギリスとアメリカで承認されています。
ですから、たくさんの遺伝子を改変してデザイナーベイビーを作るっていう技術も、そう遠くないうちに可能になるかもしれません。
今回の論文の意味合いとしては、どれくらい遺伝子改変技術が進歩すれば、病気に強い子どもがデザインできるかを大雑把に示したっていうことになります。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。
最後までお付き合いありがとうございました。
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