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2025-09-16 04:30

59 マグリット「白紙委任状」

世界の名画ランキング第59位 マグリット「白紙委任状」のご紹介

サマリー

マリアさんとトミーさんは、ルネ・マグリットの「白紙委任状」について、絵の不思議な構図やその背景を解説し、見ることの意味について考察しています。

絵の構図とキャラクターの描写
美術館の静寂の中に二つの足音が響く。トミーとマリア。彼らの間に流れる空気はいつも絵画を前にしたときと同じ穏やかで満たされたものだ。
トミーの隣に立つマリアは、ゆっくりと話し始める。
トミー、今私たちの目の前にあるのは、ルネ・マグリットが描いた白紙委任状という絵よ。
うん、お願い。
まず、この絵の不思議な構図について説明するわね。
画面全体にまるでパズルのピースが散らばったかのように、森と馬に乗った女性の姿が複雑に重なり合っているの。
ある場所では森が手前にあり、その向こうに女性が見える。でも、別の場所では女性が手前にいるのに、彼女の体の一部を森が隠しているのよ。まるで視界が途切れ途切れになっているような不思議な感覚になるの。
森と人が交互に現れる。
そう、絵の右側から見ていくわね。画面の右端には濃い緑の葉をつけた木々が描かれている。そして、その木立ちの奥から白い馬に乗った女性が右を向いて駆けてくる。この女性は黒い常馬服を着ているわ。ジャケットもパンツもすべて漆黒で。
黒い服の女性ね。
ええ、彼女が乗っているのはとても美しい白い馬。縦髪も尻尾も白くて滑らかよ。そして馬の柱は右を向いているのに、女性の顔はなぜか左を向いているの。まるで何かを振り返るかのようにね。
女性の顔の肌はほんのりピンクがかった健康的で生き生きとした色をしているわ。彼女の髪は金髪で風になびいている。
彼女の目はどんな色なの?
彼女の目は濃い青色。正面から見ると彼女の視線は遠くどこかを見つめているように感じるわ。でも馬の体が森の中に消えたりまた現れたりしているからその表情をはっきりと捉えることはできないの。
背景と不思議な重なり
ナレーター、マリアが今度は絵の背景について説明を始める。
そしてこの絵の背景は全体的に暗い森なの。木の葉は緑色、幹は茶色でどの木も背が高くて細い。森の奥にはわずかに明るい空が見えるけれどそれもごく一部。全体的に夕暮れ時のような少し薄暗い印象を受けるわ。
うーん、聞こえてきた。馬のガロッピングと森のざわめきが。
よかった。そしてこの絵の最も奇妙な点に戻るわね。馬に乗った女性の体がパズルのピースのように森と重なり合っているの。森の幹が女性の体を突き抜けていたり逆に女性の体が森を隠していたりする。
物理的にありえない論理の枠を超えた世界が広がっているの。
慣れた。マグリットはこの絵で私たちの見るという行為を問いかけている。私たちは見ているものが本当にそこにあると信じている。しかしそれはもしかしたら私たちが勝手に作り上げた偽人像に過ぎないのかもしれない。
トミーとマリアは言葉のパズルを解き明かすようにこの絵の謎をゆっくりと解き明かしていく。
トミー、ありがとう。もう一度この絵を心で見てみようか。
ええ、何度でも一緒に。
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