ドラトゥールのいかさま師
ボイスドラマ、ラトゥール、いかさま師。ルネッサンス以降の華やかな光と色彩の時代を経て、17世紀のヨーロッパ絵画は、ある画家によってより深い、心理的な闇と光の世界へと引き込まれます。その名はジョルジュ・ドラトゥール。
今、私たちは彼の代表作の一つ、いかさま師の前に立っています。
ドラトゥール、名前は知っています。光と影のコントラストが強烈なあの画家ですね。彼の作品は視覚に訴える力が強いと聞きますが、マリアさん、このいかさま師はどんな絵なんですか?
はい、トミーさん、とてもドラマチックで思わず息を飲むような作品です。全体を通して、ラトゥール特有のロウソクの光という人工的な光に包まれた静かで緊迫した一瞬が描かれています。ナレーター、全体の構図と色彩。
まず絵の全体像です。この作品は横長の画面に4人の人物が描かれた室内画、風俗画です。構図は非常にシンプルですが、人物の配置と視線、そして光の使い方が物語の緊張感を最大限に高めています。
まず絵の画面を左右に分けたとすると、左側には豪華な衣装の裕福そうな若者が一人、そしてその前に二人の女性がいます。右側にはこちら側、つまり絵を見る私たちの方に顔を向けている一人の男性がいます。人物は皆、画面の上半身を中心に描かれ、テーブルを囲んでいます。
4人の人物、色彩は派手ですか?それとも抑えられていますか?
色彩はラトゥールらしく非常に限定的に使われています。背景はほとんどが暗い焦げ茶色か黒。その闇の中から人物の衣装の赤、黄色、白がまるでスポットライコーを浴びたかのように出現して浮き上がっています。
特に女性の着ている服に使われている鮮やかな朱色と、若者の着ている服の淡い金色が、この緊張した場面に豪華さと同時に淡ゆさを与えているんです。
ナレーター
人物の詳細と視線、物語の革新
それでは、物語の中心となる人物たちに焦点を当てていきましょう。
人物の役割とテーマ
この絵のテーマは文字通りイカ様です。
まず最も豪華な衣装を身に着けている被害者の若者から説明します。
彼は画面の左上に座っています。
裕福な若者、カモ。髪は金髪に近い明るい茶色で、少しカールしています。肌は陶器のように青白くて、まだ経験の浅そうな少し浮気した表情をしています。
彼はテーブルの上に置かれたカードと、その隣に座る女性に熱中しており、彼の視線は画面中央下のカードゲームの進行に集中しています。
彼が身に着けているのは、当時高価だった豪華な淡い金色のサテンジの服で、その光沢が彼の無防備な裕福さを強調しています。
彼がターゲットなんですね。では、その隣にいる女性は?
この女性が共犯者の一人、高級勝手だと言われています。彼女は画面の左下、若者のすぐ横にいます。
高級勝手。彼女の視線がこの絵の緊張感を一気に高めます。
彼女は若者の方ではなく、画面の右側にいるもう一人の共犯者、つまりイカサマ氏の方へ冷徹な横目を送り、目で合図を送っています。
彼女の髪は濃い茶色で、肌は少し血色の良い健康的な色をしています。
彼女は鮮やかな朱色の胸元が大きく開いたドレスを着ており、首には真珠のネックレス、絵にも真珠のイヤリングをつけています。
その豪華な装飾品は、彼女がこの悪事の報酬を期待しているかのように見えます。
なるほど、女性はサインを送っているんですね。そのサインを受けている右側のイカサマ氏はどんな分物ですか?
彼がこの絵のタイトルロールです。画面の右端に私たちの方に向くように座っています。
イカサマ氏または手品氏。彼の顔は暗がりにあって目元に影が落ちていますが、彼の視線は鋭く観客、つまり絵を見る私たちに向いています。
これは今からお見せしましょうと、悪事の瞬間を共有させるような観客への挑発です。
彼の髪は短く濃い茶色です。彼の肌は若者と比べて少し日焼けしたような色をしています。
彼は一見して裕福には見えない地味な服を着ていますが、決定的な証拠となるのは彼の背中の後ろです。
彼はトランプを数枚服の帯に隠し持っているんです。これはトランプゲームで不正を行うための準備で、この絵のクライマックスを示唆しています。
観客への視線はまるで彼の共犯者にされたような気持ちになりますね。残りのもう一人の女性は?
画面の中央にいる使い橋の女性、あるいはもう一人の共犯者と見られる人物です。使い橋、共犯者。
彼女は若者と高級少子の間、テーブルの向かい側に座っています。
彼女もまた若者の方ではなく、イカサマ氏の方へ静かで冷たい視線を送っています。
彼女は淡い黄色の頭を覆うスカーフをかぶっていて、質素な服装です。
彼女の役割はイカサマ氏の不正を助けるもう一つの目線、つまり監視役のように見えます。
ナレーター、光と影、キアロスクーロ。
この絵を語る上で欠かせないのがラトゥール特有のキアロスクーロ、つまり光と影の劇的な対比です。
はい、この絵では光源がどこにあるかははっきりとは描かれていませんが、
おそらく画面の左上、あるいは人物のすぐ近くにある人工的な光、
例えばロウソクやランプの光だと推測されます。
その光は若者の白い肌とサテンの服と高級少子の朱色のドレスを強烈に照らし出し、
彼らの豪華さと無防備さを強調しています。
一方、背景は完全に闇に閉ざされ、余計なものを一切排除することで、
私たちの注意を4人の人物とその間に繰り広げられる悪事の結局だけに集中させています。
照明がまるで舞台のスポットライトのようですね。
闇の中に欲望と自願が浮き上がっています。
その通りです。
ラトゥールはこの劇的な光と影によって単なる風俗画を超えた人間の内なるもの、
つまり欺く者の残酷さと欺かれる者の愚かという普遍的なテーマを私たちに投げかけています。
ジョルジュ・ド・ラトゥール・イカサマ氏。
静寂の中にこれから始まるであろう若者の破滅の瞬間を閉じ込めた17世紀ヨーロッパ絵画の傑作です。
マリアさん、本当に詳しく鮮やかに説明してくれてありがとう。
ロウソクの光の中でイカサマ氏の氷とした視線が観客である私に向けられている様子がはっきりと頭の中に浮かびました。
どういたしまして、富井さん。また別の絵についても一緒に想像を巡らせてみましょう。