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2026-10-24 10:48

515_「すごい授業」だけが授業じゃない ~それぞれのブレイクスルー~

附属校で見た「理想の授業」は確かに素晴らしい。けれど、教室に座ることがやっとの生徒が座って取り組めたなら、それも同じくらい大きなブレイクスルーではないでしょうか。今回は、定時制でのワークシートやゲームアプリの工夫、学力差のあるクラスでの漫画のセリフ入れの実践などをもとに、生徒の実態ごとに違う「それぞれのブレイクスルー」を語ります。目立たない場所で前進を生み出している先生をどう評価するか、一緒に考えてみませんか。

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サマリー

国語教育における「ブレイクスルー」は、完成度の高い模範授業だけに現れるものではなく、生徒や学校の実態によって形が異なると語る。付属校や国立大附属校で見た、発言が活発で学びを社会問題へ広げる授業を紹介する一方、地域性や生徒、教員の存在によって学校の状況は大きく変わると説明する。定時制などでは、教室に入る、座る、課題に取り組むこと自体が大きな前進であり、ワークシートやゲーム型アプリによって学びへのきっかけを作れるという。学力差のあるクラスでの漫画のセリフ入れでは、理解を深める、教材を見直す、隣の生徒に教えてもらうなど、生徒ごとに異なるブレイクスルーが起きる。目立たない現場の前進も評価すべきだが、その方法はまだ見つかっておらず、カリキュラム・オーバーロードの中で教師が授業を工夫しやすくなる教育政策を望んでいる。

授業の理想形と多様な学校の実態
皆さん、こんにちは。今日も明日も授業道、黒瀬直美です。 この番組では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、デジタル教育についてゆるっと配信しています。
今日は515回、すごい授業だけが授業じゃない、それぞれのブレイクスルーというタイトルでお届けしたいと思います。
今日はね、ちょっときっちり結論を決めずに、考えながらポツポツ話していきたいと思います。
私はこれまでいろいろな学校に勤めてきたので、多様な生徒の実態を知っているということが自分の大きな強みだと思っています。
その経験から、授業がうまくいったとか、生徒が伸びたという瞬間は、学校や生徒によって全く違う形をしているのではないかと感じています。
今日はそのそれぞれのブレイクスルーについて考えてみたいと思います。
それでは今日も、国語教育をゆるっと語っていきましょう。
私はこれまでたくさんの授業を見てきましたが、中でも一番すごいなと思ったのは、ある付属小学校の先生が大きなホールで行った模擬授業です。
その授業の児童たちは優秀な子ばかりで、発言は積極的ですし、先生の話もよく聞いていました。
大きな会場でも臆することなく、自分の考えをのびやかに発表していました。
先生の発問の意図を汲み取って、ど真ん中をズバッと突く子もいれば、少し変わった視点から発言する子もいて、意見のバリエーションも豊かでした。
何を言っても周りが笑ったり温かく受け止めたり、それはちょっと違うんじゃないとかいうふうにおどけて返したりして、教室全体がとてものびのびしていました。
そしてその多様な意見が一つのところに収束していき、児童が自分の考えをまとめる時間が最後に取られていました。
圧巻だったのはそのまとめ、そのまとめた考えを全国から集まった参観者の先生たちの前で堂々と一人一人会場に散らばって発表し始めたことです。
導入、展開、集結、そして会場に飛び散ってのパフォーマンスという流れが一時間に詰まっていて、授業の一つの理想形を見せてもらったと思いました。
もう一つ印象に残っているのは、国立大附属校での授業で導入、展開、集結に加えて社会問題へと学びを拡張していく素晴らしい国語の授業でした。
こうした授業を見ると、自分もこういう授業をしたいなというイメージが具体的になります。
けれども同時に、生徒の実態によってはこういう授業をすることが本当に難しいということも痛感しますね。
小学校は地域の教育力や家庭の教育力に大きく影響を受けるので、地域性が学校の特徴に強く現れます。
最もよくできる子もいれば、そうでない子もいるというのは、どこの学校でも普通のことだと思います。
ただ地域性があると、その差がよりはっきりと表に出てくるのだと思います。
中学校も地域性は大きいのですけれども、それに加えて核になる生徒がいるかいないか、その数が多いか少ないかで学校の雰囲気が大きく変わってくると思います。
さらに中心になる先生の存在も大きく影響します。
例えば、生徒指導で組織を巻き込む力のある先生や、探求的な学びで学校改革を進める先生、
学校改革のイメージを明確に持った管理職がいるかどうかで学校のカラーは変わってきます。
中学生は感受性がとても鋭い時期なので、その難しい年頃を上手に導き育てられる先生がいるかどうか、この影響は特に大きいと思っています。
厳しい教室で起きる小さなブレイクスルー
一方、高等学校はある意味、学力によって輪切りにされています。
学力の高い生徒が多い学校もあれば、非常に厳しい学校もあり、
さらに学校ごとにいろいろな特色もあって、高校には高校なりの難しさがあります。
こうなると、付属校の授業を理想としてしまうと、
その前提となる生徒実態のあまりの多様さに、いろいろ納得がいかなかったり、しっくりこなかったりすることがあるんじゃないかなと思います。
厳しい生徒実態の学校では、まず教室に入ることがやっとという場合があります。
座らない生徒がいれば、まず座ることがやっとですし、座ったとしても授業とは関係のないことをしている場合もあります。
私が定時制に勤めていたときはそういう状況でした。
そうした教室では、座らせるための手立てと取り組ませるための手立てができれば、それだけでブレイクスルーだと思っています。
そしてそれは、先ほどの付属校の素晴らしい授業に負けず劣らずのブレイクスルーだと、私は結構本気で考えています。
だから私はとにかくワークシートを工夫して作ってきました。
そのワークシートを見た生徒が、ちょっとこれ面白そうじゃん、やってみようかと思ってくれたら、もうそれでブレイクスルーなんじゃないかと思っています。
また、座ってはいるけれども、わいわい騒いでなかなか集中できない生徒たちもいます。
そういう生徒には、ちょっとしたゲームのようなアプリを作って導入で使うという手もあると思います。
アプリで集中させて、なんか面白いなと思わせたところで、じゃあこれやってみようよと載せていくんです。
そういうふうに、ゲームでやったことと関連付けて、ワークシートで取り組みを延長させていくと学びがつながっていくと思います。
一つの課題から生まれる生徒ごとの学び
次に、私から見ればごく普通のクラスの話をします。
授業を一生懸命聞いて理解している生徒もいれば、楽しみながら適当に聞いている生徒もいて、全然わからない生徒もいるという学力差のあるクラスです。
ある教材を学習した後、本当に理解しているかを確かめ、もう少し深めたいと思ったときに、例えば漫画のセリフ入れをよくやらせます。
理解の深い生徒は、セリフ入れを自分の世界の中でさらに深め、物語を生き生きと豊かに描き出そうと工夫を一生懸命します。
セリフそのものを工夫したり、背景にちょっとしたものを加えて書き入れてみたり、セリフ以外にもと書きを加えたりして、物語の世界をわかりやすく表現しようとします。
適当にしかわかっていない生徒は、このセリフには何が入るんだっけというふうに立ち止まり、そしてもう一回教科書とかノートやプリントを見直して、自分の読みを確かめ、深め、そしてより正確に表現しようとします。
全然気が乗らなかった生徒は、まず絵を見て面白がります。そこから、そもそもこれってどんな話なんというふうに隣の生徒に聞いて教えてもらい、学び合いや教え合いが始まります。
こんなふうに一つの課題の中で、それぞれの生徒がそれぞれのブレイクスルーをしているんじゃないかと思うんです。厳しい生徒実態であっても、こちらが工夫すれば、一人一人にあったブレイクスルーを起こすことはで
きます。
そういう工夫こそ、私たちが積み重ねていくべきものなのではないかと思っています。大切なのは、それぞれの生徒の実態でブレイクスルーが起きるように、授業を工夫すること、授業を設計することです。
見えにくい前進を評価するために
そのためには、一人一人の力をしっかり見て、その子がどうしたら夢中になれるのか、ブレイクスルーの瞬間を授業の中にどう入れ込めるかを考える必要があります。
授業参観をしていても、この生徒たちにとってはもうこれで十分じゃないとか、本当によく頑張ってるわというふうに思う授業に出会うことがあります。私はそういう授業の価値を見抜ける人間になりたいと思っています。
付属校のような完成度の高い授業だけを物差しにすると、厳しい現場で起きている大きな前進が見えにくくなってしまいます。世の中には目立たないところでブレイクスルーを起こしている先生がたくさんいらっしゃるは
ずです。
そういう先生こそリスペクトし、そういう授業をもっと評価していくべきだと思っています。ただ、それをどうやって評価して、どうやって光を当てていけばいいのかについては、まだいいアイディアが見つかってい
ません。
今現在、日本の教育界はカリクラムオーバーロードと言われる状況にあって、本当に大変で、その中で多くの先生が一生懸命頑張っていらっしゃいます。次の学習指導要領の改定が、そういう先生たちがもっとやりやすく
なる方向に向かうことを私は強く望んでいます。
ブレイクスルーは一種類ではなく、生徒の実態ごとに、そして一人一人の生徒ごとに違う形をしているんじゃないかと思います。皆さんの教室では今日、どんなブレイクスルーが起きているでしょうか。この番組では
リスナーさんからのメッセージをお待ちしております。概要欄のメールフォームからお気軽に感想やメッセージをお寄せください。
それでは今日の配信はここまでです。聞いてくださりありがとうございました。またお会いいたしましょう。
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