大村はま先生と現代教育の接点
皆さん、こんにちは。今日も明日も授業道、黒瀬直美です。この番組では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、デジタル教育についていると配信しています。
今日は430回、大村はまは現代教育の答えだった。70年前の個別最適化&生徒が夢中になる単元学習というタイトルでお届けしたいと思います。
大村はま先生、皆さんはご存知ですよね。私がずっと前にオンライン学習会を開いたとき、9割近くの先生が、実践で大村はま先生型の単元学習を実践したことはないという結果が出ていました。
あまり名前は知られているにもかかわらず、実践投入されていないということなんですよね。でも、今の現行の学習指導要領が目指していることというのは、実はもう大村はま先生、とっくにやっていらっしゃったことだったりするんです。
今日は大村はまの実践に学ぶという、今日も明日も授業堂オンライン交流会でやったテーマをもう一度、皆さんのアンコールにお答えして、オンライン学習会を実施したという内容をお伝えしたいと思います。
大村はま先生の経歴と単元学習の誕生
まず、大村はま先生は1906年生まれ、そして2005年に98歳でお亡くなりになった日本を代表する国語教師です。長野や東京のいくつかの学校を経て最後は東京都大田区の石川大中学校にお勤めになられて、1980年に3月31日ひっそりと退職されたということです。
華やかに送り出されるというのは好きじゃなかったんだと思いますね。退職後は大村はま国語教室の会をつくって、国語教室の発展に生涯をかけた方ということになります。
大村はま先生が単元学習というものの基礎をつくったのは、戦後間もない1947年から1956年の約10年間の頃の出来事でした。
当時の教室はどんな状況だったかというと、戦後間もない荒れた時代ですから、生徒実態もとても厳しくて、大村はま先生の言葉をお借りすると壊れかかった机の上を渡り歩く子どもたちに声をかけながら授業していたというような、そういった教室実態でした。
そんなボロボロの教室で単元学習というものが出来上がったのは、大村はま先生が実践を試行錯誤して繰り返しながら、繰り返しながら、そして単元学習という言葉を考えるという状態ではなく、目の前の子どもたちに本当の国語力をつけさせようとして、
一つ一つの実践に取り組みながらやっていくうちに自然と経験単元、生活単元、いわゆる単元学習というものになっていったとおっしゃっています。
国語教育の歴史的変遷と大村はま教育の独自性
理念よりも実践が先だったということですね。
そして国語教育の歴史をもう少し紐解いてみますと、昭和20年代、ちょうど戦後の新しい教育として、欧米の経験主義教育が導入されました。
経験を通して学ぶことは生きた力になるという考え方です。
ところが昭和30年代に入りますと、活動ばかりで基礎学力がつかないという批判が出て、能力主義教育が重要視されるようになりました。
特に説明文の読解力をしっかり鍛えようという、そういう風な流れになりました。
ちょっとこれって今の論理国語、文学国語というそういう風な流れとか、それから現代の国語という教科とか、そういう教科が設定された背景と大変似通っているなという風に思いました。
そして昭和40年代、高度経済成長期の中で落ちこぼれという問題が発生しまして、子どもたちを主体的に学ぶ、そういう風な教育にシフトしていこうというような流れになっていきます。
そして昭和50年代は、いじめや校内暴力、学級崩壊が問題になって、ゆとり教育とか、人間を育成するという教育が求められるようになり、そして平成を経て、生きる力の育成、主体的対話的な深い学びというように変わってきましたけれども、やっぱり基礎学力の低下も問題になるというように、振り子のように揺れ続けてきたというそういう背景があります。
こういう風な歴史的な流れを見ると、この教育界というものは、能力主義的な教育と経験主義的な教育、この間で振り子のように触れてきたといえます。
能力主義的な教育は、先生が教えたいということを教える。そうなると、できる、できないという差ができてしまいがちですし、生徒が主体的でなくなってしまいます。
ところが、経験主義的な教育の場合は、生徒の生活、それから興味関心から課題を設定して、主体的に取り組む、そういう形を求めるので、読む聞く話す覚が総合的に働いて、実生活に生きる力になりやすい、ところが基礎学力がつかないという批判もあります。
大村浜先生は、言葉の活動はつながり合っている。離れ離れでは生きた力はつかないということと、それから能力主義的な教育と経験主義的な教育の両者を同時に成り立たせるという目標を持って、単元学習を構成されていたというのが、大村浜先生の実践の素晴らしいところだと思います。
大村はま先生の単元学習の実践例
そして大村浜先生は、子どもの能力の差はあるのは当然だけれども、子ども自身が優劣を気にすることなく、学習に没頭するという状況を作らなければならないとおっしゃっています。
一人一人に応じた教育、こういうふうな、今でいう個別最適化を大事にされる教育を大村浜先生はすでに実践されていました。
ということで、同じ教材を使っても指導方法を工夫すれば優劣は見にくくすることができる。それぞれが精一杯に取り組めることができるようになると、そういったことを大事にされていました。
じゃあ実際にどうやって単元学習を構成すればいいのかということを、実践例をちょっと引き合いにして説明をしました。
実践時期は昭和36年、石川大小、中学校、中学1年生対象の教科書教材、読書の経験というものをメインの教材としてではなく、一つの教材として使うという、そういうふうな単元構成で、単元名は読書の仕方というものです。
普通なら教科書教材を読んで段落分けして内容を読み取ってという内容だと思うんですけれども、大村浜先生はまず導入の工夫をされました。
生徒一人一人に読書に関する疑問を書かせ、そういうふうな疑問を書かせるときにありきたりな疑問点ではないように工夫をしました。
疑問を書かせるときに、疑問例というのを示した手引きのプリントを配布しました。
その生徒の疑問例、先生が作った疑問例を読むと、生徒の読書に関する疑問が深まるように作られているわけですね。
そうすることで、自分自身のもやもやとした疑問を深まった形にアウトプットできる、そしてこれからの学習に主体的になれるという、そういうふうな知らず知らずの工夫がされていました。
そしてその疑問点を大村浜先生は分類整理して、読書についての疑問集としてプリントにまとめて生徒に配ります。
このことによって生徒は自分自身の疑問点というのが全体の中のどの位置に位置づけられているかということを把握して、ますます自分自身のやる気を起こさせていきます。
そして生徒それぞれの疑問を解決するために教科書教材だけではなく、複数の文章を読んだり、大村浜先生自身が録音テープに録音して、そのテープを聞いたりして、情報を収集するという段階、これを撮ります。
この時大村浜先生はカードに取材させています。難しい教材も入っているんだけども、難しいけれどみんなこれできるかなというふうに与えるということは生徒のプライドをとてもくすぐるというふうにおっしゃっています。
そしてテープを聞いてメモを取るという聞き取りのそういう段階をとられていまして、これも聞く活動をしっかり位置づけられており、そして先生自身はメモの取り方というのを実演してみせるということをされていました。
そして取材したカードをもとに、自分自身の疑問、課題に対してどんな人がどういう意見を言っているかというのを紹介する文章を書かせました。ここにも丁寧な手引きがあって、この文章の構造を5点にまとめて書くように指示してありました。
自分の質問の紹介、この問題を前に考えたことがあるかどうか、いろいろな先生方の意見の紹介、その共通点と相違点、まとめというものです。
特に大村浜先生は子供がいろいろと書いているときに見取りをよくしていらっしゃって、声かけをとても丁寧にされていたと、そういうふうに載っていました。
生徒が書いた内容に対して、本当にこんなことを先生がおっしゃってますか、というような揺さぶりをかけて、そうなると生徒は閉視になって文章を読み戻します。
そういった中で用紙を捉える力、読み取る力、段落構造を読み取る力というのを身につけていくという仕掛けになっていました。
大村はま先生の実践の特徴と現代への示唆
そして最終的には意見発表、これをさせて学習のまとめ、振り返りを書いて単元を締めくくるというふうになっていました。
というのが大村浜先生の実践なんですけれども、特徴を4つにまとめたいと思います。
1番は教科書教材を読む必然的な場を作り出しているということ。
生徒の問いから出発しているということですね。
それから2番目として、生徒が主体的目的的に学習を展開できるような工夫がしてあること。
そして3番目に、読む聞く話す書くが有機的に働くように位置づけられていること。
そして4番目は、生徒一人一人の心を耕すための学習の手引きが丁寧に工夫されていることです。
大村浜先生のこの4つの特徴を端的に私は捉えてこういうふうに言っているんですけれども、
これを実践で真似するだけでも相当授業が深まっていくんじゃないかなというふうに思います。
大村浜先生の理想とする授業は、生徒一人一人が優劣など全く意識しないで夢中になって取り組む中で、
生徒一人一人の能力と可能性を最大限に発揮できる授業でした。
主体的対話的で深い学びとか個別最適化とか、今まさに求められていることを大村浜先生既に行っていらっしゃったんですね。
この大村浜先生の実践をしっかり学んで、単元構想力、授業展開力を磨くことで、
生徒自身が私たちの手を離れた時に自分自身の力で生きて働く力を育てていく。
そういった授業展開を実現してくれるのが大村浜先生の単元学習と言えるのではないでしょうか。
大急ぎで大村浜先生の勉強会でやったことをまとめてお話ししましたけれども、
詳しくはこの勉強会に参加すれば一番良かったんですけど、
大村浜先生の実践の概要だけでも触れてくだされば幸いです。
本当は大村浜先生の全集とか著書とかを読むと、一つ一つの大村浜先生の言葉がぐさぐさと刺さって、
自分自身の実践の拙さとか未熟さを本当に思い知るばかりであります。
ぜひ大村浜先生の著書を読んでいただいて、これからの実践にお役立ていただいて、
子どもたち一人一人が読む、聞く、話す、書く、生きて働く言葉の力をつけるような、
そういうふうな単元コースを少しでも前進させることができればいいなと思っています。
それでは今日の配信はここまでです。
聞いてくださりありがとうございました。またお会いいたしましょう。