現場の見積もりをアプリ化
先輩、ちょっと改まって報告があるんですけど。 自分、ついにGoogle本社を裏から牛耳る闇のITフィクサーになりました。
やかましいわ。お前、昨日まで現場で電球交換しながら、 脚立の上で、「先輩、揺らさんといてください。衣装まだ書いてないんです。」 言うて半泣きやったやろ。
高所恐怖症をばらすな。 いやねえ、先輩、現場でマンションのオーナーさんから、「ここの照明LEDに変えたらいくら?」 って聞かれること、アホほどあるでしょ。
あるある。あれ、ほんまにしんどいね。 事務所戻って、埃かぶった過去の見積書タワーから化石発掘みたいに書類探して、片番調べて電卓叩いて、半日解けるからな。
そう、現場でパパッと出せたら神なのに。 せやから自分、プログラミング未経験のくせに、現場でスマホから3秒で概算が出る 業務ウェブアプリを開発してやったんです。
はあ? お前、パソコンの再起動すら、電源ボタン長押しで無理やり息の根止めるタイプやんけ。 アプリなんか作れるわけないやろ。
失礼な。 息の根は止めてません。 可視状態にしてるだけです。
いや、GoogleのAIに全部コード書かせたんですよ。 しかも開発費もサーバー代も完全に0円です。
0円? アプリのサーバー維持費とかデータベースって、毎月チャリンチャリン金かかるんちゃうの?
誰が払うかいな。 個人の口座から毎月500円でも引き落とされたら、自分ショックで血へど吐いて救急車呼びますわ。
どんな貧弱な欠陥しとんねん。 1円も払いたくないから、Google Appsスクリプトとスプレッドシートの無料枠を限界までしゃぶり尽くす、完全無課金ドケチ婦人を強いたんです。
言い方、しゃぶり尽くす言うな。 響きがドロドロしとんねん。
Geminiとエラー地獄の開発
でね、最初は順調やったんですけど、機能を増やしたらコードが長すぎて、AIが、ちょ、待って、息切れするわってフリーズしだしたんです。
そら何千行も書かせたら、AIかて血へ熱出るわなぁ。
そこに彗星のごとく現れた救世主が、ジェミニ3.8フラッシュですよ。
フラッシュ? なんか知らんけど強そうやなぁ。
強いどころちゃいますよ。 こっちがここ変えてって言った瞬間、何千行ものHTMLとJavaScriptをドババババって顔面にマシンガンで打ち込んでくるんです。
例えるなら、吉野家で牛丼並みのギュッて言うた瞬間に、のどちんこに牛肉直接ねじ込まれるスピード。
窒息するわ。味わう暇ないやろが。 そっから開発は超爆速。
でもね、そこから始まったんですよ。 地獄のエラー大運動会が。
大運動会ってなんやねん。
まず、スプレッドシートと連携した瞬間、関数が見つかりません言うて、画面がピタッと止まりました。
おー定番のエラーやなぁ。
焦ってコード貼り直したら、今度は画面が真っ白になって、英単語のファンクションドゥゲットって文字だけが画面いっぱいにびっしり敷き詰められまして。
うわぁ、画面の皮膚病みたいになってるやんけ。
ホラーですよ。画面にお経びっしり書かれて、俺は令和の耳なし方位置かと思いましたわ。
耳持ってかれるわ。早よ直せ。
さらに印刷ボタンを押したら、プレビュー画面がポン、ポンって2連発で飛び出してくんね。
なんで2個出んねん。見積書のドッペルゲンガーか。
ほんで一番ちびりそうになったんが、ゾンビ現象ですわ。
なんやねんゾンビって。昼間の現場でそんな話すんなや。
入力欄の初期値を空欄にしたくて、プログラム何回書き直してもね、ページ開き直したら消したはずの文字が
消えると思うたか、言うてバーってよみがえるんです。
ひっ、なにそれ。怨念?
オートセーブと帳票の工夫
お前のパソコン、井戸の底にでも沈んでたんか。今すぐファブリーズ負け。
ブラウザのオートセーブ機能でした。
くそこら。なんやねんオートセーブって。
俺の冷えと鳥肌返せ、めちゃくちゃ親切な機能やないか。
良かれと思ってブラウザが前回の入力を律儀に復元してくれてました。
AIに相談したら、あ、それオートセーブですね。真顔って1秒で論破されました。
AIに冷たい目で見られとるやないか。
でもね先輩、機能だけやなくて現場のスタッフへの愛も詰め込みましたよ。
アテナもプルダウンで、様、音柱、貴様、我、から選べるようにして。
後半、ケンカ売っとるやないか。現場で我って見積もり渡せるか。
一番こだわったんは、帳票の末尾に自動で入るトラブル防止の面積事項3行です。
あー、外産なので現地調査で金額変わります的な、クレーム予防のやつな?
そう。
1.この金額は現場のノリです。
2.文句はAIに言うてください。
3.そもそも部屋を明るくする必要ありますか?の3行。
ただの悪徳哲学やろうやないか。どんな面積やねん。部屋は明るくせえ。
冗談ですって。ちゃんと現地調査後に確定しますって綺麗な日本語で入れましたよ。
完成と共有設定のオチ
で、すべてのエラーをねじ伏せて、ブラウザを更新して、印刷ボタンを押したとき。
おお?どうなった?
画面に寸分の狂いもない美しい見積もり書が、ポンッと1枚だけ立ち上がって、
スプレッドシートにデータがシュパッと保存されたんです。
その瞬間、事務所でキターって叫んで、自分の椅子でスピンタウン決めましたもん。
へえ。プログラミング1行もかかれへんかったど素人が、
AIと二人三脚で、ほんまに現場の業務改善アプリ作りきったんやな。
ま、そこだけは素直に褒めたるわ。
ありがとうございます。
AIは魔法じゃないけど、文句一つ言わずに泥沼に付き合ってくれる最高の相棒でした。
これで明日から社内のみんなの業務が劇的に楽になりますよ。
よっしゃ。ほな早速現場の連中にURL配ってアプリ使わせたろ。
あー、それは無理です。
は?なんでやねん。
ヘッダーに付けた利用マニュアルのGoogleドキュメント、
共有権限非公開にしたまま固めたんで、今これ使えるの地球上で自分だけです。
誰が使えんねん。完璧なセキュリティか。ええかげんにせえ。