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美名麗しい淑女のみなさん、先にはフィロメーナが、ただいまはパンピネアが、私たちの取るに足らない価値や、質に富んだ言葉の美しさについて、的を言ったお話をなされました。
ですから、そのことについてはまたお話を繰り返す必要はございませんが、警句について、今までお話に出たこと以外に、私は警句の性質というものは、羊が噛みつくように利き手を噛むべきものであり、
もし警句が犬のように噛みつけば、警句ではなくなるバリになってしまうから、犬が噛みつくようなものではいけないと思います。警句の性質とはそういったものであることを、皆様に思い出していただきたいのでございます。
オレッタ夫人の言葉や、チスティの返答は、そうしたことを非常にうまくやり遂げました。本当のところ、警句が返答に用いられる場合に、返答をする者が、はじめに犬にでも噛みつかれたようなやり方をされれば、犬のように噛みついたとしても避難すべきものではないでしょうし、
それ故に、どんな風に、いつ、誰に向かって、また同様に、どこで、機知に飛んだ警句を言ったらよろしいのか、注意しなければなりません。
かつて、私たちの高位聖職者がそんなことをあまり注意しなかったため、自分が与えたのと同じような辛辣な言葉を受けました。そのことを私は、短いお話で皆様にご披露いたしたいと存じます。
偉い聡明な高位聖職者のアントニオ・ドルソ氏が、フィレンツェの司教であった時に、ロベルト王の元帥、デーゴ・デンラ・ラッタ氏というカタローニャの貴族が、フィレンツェに参りました。
この者は、常に容姿も美しく、一通りでない大の漁色家でしたが、フィレンツェの婦人の中で、特に一人、大変な美人で、前日の司教の弟の姪にあたる婦人が、気に入ってしまいました。
で、元帥は、彼女の夫が、いい家庭の出であるにもかかわらず、貪欲で悪い男であると聞いておりましたので、自分に一夜その細君と寝させてくれれば、金貨500フィオリーノを与えることにしようとの約束で、彼と話をまとめました。
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そこで、当時使われていた銀貨のポポリーノ貨、ごく僅少な値打ちの貨幣を金メッキさせておいて、細君は嫌がりましたが、これと一緒に寝た上、その金を夫に与えました。
やがてそのことが一般に知れ渡りましたので、その悪い男は、損をした上、物笑いとなりました。
司教は聡明な方でございましたから、そんなことは何も耳に入れていないような風を装っておりました。
そんなわけで、司教と玄水は互いに頻繁に往来しておりましたが、聖ジョバンニの日、6月24日のこと、二人が並んで馬を駆けさせながら、パリオの競争、馬や馬車の競争が行われている通りを、往く女たちを見ているうちに、司教は一人の若い夫人、
この夫人は現在蔓延しているペストで命を奪われましたが、アレシオ・リヌッチ氏のいとこで、その名前をノンナ・デ・プルチ夫人と申しました。――
(皆様もきっとこの方のことはご存知に違いありません。
彼女は当時、みずみずしい、みめ麗しい口の達者な明け話しの希少の夫人でして、少し以前に聖ピエトロモンの夫のところにとついて来ておりました。)
――を目に留めてそれを元帥に示すと、やがて夫人のそばに近寄って行って、片手を元帥の肩にかけて言いました。
「ノンナさん、この方をどう思いますね?この方を征服することができると思いですか?」
ノンナには、こうした言葉がいくらか自分の貞節を傷つけるように思われましたし、大勢いてそれを聞いている人々がきっと自分を不貞な女のように思うだろうという気が致しました。
ですから彼女は、この侮辱をすすごうとは考えないで、しっぺ返しをしてやろうと思って、早速返答をいたしました。
「司教様、たぶんこのお方は私を征服はなさらないでしょう。私は本物のお金が欲しゅうございます。」
その言葉を聞いて、元帥と司教は、一人は司教の弟の姪に不正な行為をした本人であり、他の一人は自分の弟の姪に恥ずかしめを受けたものでしたので、
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どちらも同じように胸を突き刺される思いがして、互いに顔を見合わせることもなく、恥ずかしそうに黙ったまま、そこを立ち去って、その日はもう何も言いませんでした。
こんなわけで、婦人は辛辣な言葉で噛みつかれていたので、その後で警句を吐いて他人に噛みついても、何の非難も受けませんでした。
本日はご視聴ありがとうございました。