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2021-12-20 03:00

#16【青空文庫】文章と言葉と

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芥川龍之介「文章と言葉と」

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Akutagwa Ryunosuke title:Sentences, words, and....

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文章と言葉と 芥川龍之介
文章
僕に文章に懲りすぎる、そう懲るなという友達がある。 僕は別談必要以上に文章に凝った覚えはない。
文章は何よりもはっきり書きたい。 頭の中にあるものをはっきり文章に表したい。
僕はただそれだけを心がけている。 それだけでもペンを持ってみると、めったにスラスラ言ったことはない。
必ずゴタゴタした文章を書いている。 僕の文章上の苦心というのは、
もし苦心と言えるとすれば、 そこをはっきりさせるだけである。
他人の文章に対する注文も、僕自身に対するのと同じことである。 はっきりしない文章はどうしても関心することはできない。
少なくとも好きになることはできない。 つまり僕は文章上のアポロ主義を包図るものである。
僕は誰に何と言われても、 法解析のようにはっきりした、曖昧を許さぬ文章を書きたい。
言葉 50年前の日本人は、神という言葉を聞いたとき、
大抵、神を見面にゆい、 首の周りにマガタマをかけた男女の姿を感じたものである。
しかし今日の日本人は、 少なくとも今日の青年は大抵、
長々とあごひげを伸ばした西洋人を感じているらしい。 言葉は同じ神である。
が、心に浮かぶ姿はこのくらいすでに変遷している。 なお見たし、花に灼けゆく神の顔。
かつらぎ山。僕はいつか小宮さんとこういう場所の句を論じ合った。 四季小路の考えるところによれば、この句は解逆を漏したものである。
僕もその説に依存はない。 しかし小宮さんはどうしても壮言な句だと主張していた。
画力は500年、 書力は800年に尽きるそうである。
文章の力の尽きるのは、 何百年くらいかかるものであろう。
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