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字の書き方。中谷浮一郎、山崎美子夫人が新書道を提唱されて、漢字廃止の問題の前に、誰でも3ヶ月習えば相当な字が書けるようになるという書道を主張しておられるのは、ちょっと達見である。
それは、東欧の船の中で思いついたので、インド洋の航海の間に漢字の方は出来上がったそうである。全ての漢字を正方形の枠の中に入れ、横線は全部水平、縦線は全部垂直、斜線は45度の方向に引くという書道なのである。
そして字体は、扇子に習ったという話であったが、なかなか立派な字が出来上がっているので感心した。ひらがなの方はそうはいかぬので、だいぶ苦心されたよしであるが、結局全部を円の中に入れることにしたら、上手くいったそうである。
一番苦心し、また時間もかかったのは、のの字であって、これが出来たら後の仮名は全部すらすらと出来てしまったという話も面白かった。こういう書道は、いわゆる書の大化に言わすと邪道なのかもしれないが、私たちにはなかなか立派に見える。
私たちばかりでなく、家にもらってある掛軸を小宮さんとか津田清風さんとかいう方々が見られて、なかなか良い字だと言っておられるのだから相当なものなのであろう。ところが、この頃久しぶりで字を書いてみると、この方法が大変有効なことがよくわかった。
それでこの上は、線の美しさを出しさえすればよいのだと思って、その問題をちょっと考えてみた。結局それは、筆を常に一定速度で動かすというのが一番必要な弁法のように思われた。子供の時に字を教わった時、力を入れろということをやかましく言われたが、子供ごころには何のことかわからなかった。
しかし、筆を紙に押し付けることでないことだけはわかった。どうもあれは、字の線のどこにも気を抜いた箇所がないようにという意味もあるらしい。それならば技術的に現代語に翻訳すれば、第一近似としては、どの線の部分も常に一定速度で筆を運べということになるであろう。
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