新しく手に入ったハウスに名前をつけるという、小さいが決して軽くない行為について、中島はしばらく悩んだ。K はかぶる。では何か。山の上にあった庭園。山の上。Y。——決まった、と声に出したとき、それはただの記号ではなく、土地とのはじめての約束になっていた。
畑に名前をつけるのは、地図を読むためではない。ゴリラに見える岩、ぶら下がっていた水鉄砲、そして今度は山の上の庭園。名前はいつも、その場所で起きた何かの残像だ。中島の農場の地名は、だから記憶の地層でもある。
ホースはハウスの外に置いておくことにした。もう夜間気温は高い。前回凍らせた経験を踏まえながら、それでも今回は外に置く判断をする——それは楽観ではなく、季節への信頼に近い。
草取りはやる気がなくてもやり始める。皿洗いと同じで、始めてしまえばできる。できないことの方が多いけれど、と正直に付け加えながら、それでも今日は晴れで、風もなく、気分は4だった。
隣のキャンプ場にユンボと軽トラが行き来していた。しばらく動いていなかったあの場所が、また動き出すかもしれない。チェーンソーの音もそうだったのかもしれない。林が切り開かれれば、電波も届くようになる。向こうの声は聞こえるのに、こちらの声が届かない——そういう片方向の通話が、ここでは珍しくない。
図書館で野鳥図鑑を借りてきた。録音の中で鳥の声がする。胸が茶色で、白も混じっていた。名前は一度調べたのに、忘れてしまった。帰ったらまた調べる、とつぶやいて、今日のログは終わった。
感想
まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!
07:38
コメント
スクロール