K圃場の石のベンチに腰を下ろしながら、中島は今年最初の草刈りを終えた余韻の中で録音を始める。例年なら6月を待って刃を入れる斜面が、今年は暖かさに背中を押されて早々と草を伸ばしていた。刈払機(ビーバー)を手に、作物周り・歩道・軽トラ通路をなんとか確保したものの、前掛けを忘れてきた。作業服に積もった草の粉は、準備とはいつも後から気づくものだということを、静かに証明している。
露地ではチョウジソウが咲き、カマシアを市場に送り出した。チョウジソウは去年切りすぎたせいか丈が伸びず、今年は花ではなく葉の紅葉を狙うことにした。目標を変えることは敗北ではなく、植物との交渉の結果だ。Kハウス1棟目に植え付けたエキナセアは風と陽気に乾かされ、灌水しながら草刈りを続ける。凍み上がりから息を吹き返したジャーマンカモミールには、近いうちアブラムシ対策を施す予定だ。Yハウスには防草システムを四分の一ほど敷き、アンモビウムを直蒔きし、残りにはアマランサスを入れる構想が続く。
保育参観で中島は一人で出かけた金曜日、中之条町のメディアコントロールチャレンジに関わる脳科学の先生の講演を聴き、その後は園庭での子どもたちの時間を見守った。娘が同じクラスの子とモグラ叩きゲームの順番を争う場面があった。相手が「じゃんけんで決めよう」と言うと、娘は「にらめっこで決めたい」と言い返した。相手の土俵に乗ることを、こんなに幼くして拒む。帰宅してから妻と笑った。遺伝子のせいかもしれない、と中島は少し誇らしそうに、少し申し訳なさそうに言う。
そして坊主頭に日差しが刺さった。去年も同じ目に遭って、先生から手ぬぐいを借りた記憶がある。それでも帽子を忘れてきた。刈払機の前掛けも忘れてきた。人は成長しないものだ、と中島は笑う。成長しないことを、こうして記録に残す。
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サマリー
中島さんは今年最初の草刈りを終え、作業中に前掛けを忘れたことに気づきます。露地ではチョウジソウが咲き、カマシアを出荷。エキナセアには灌水し、ジャーマンカモミールにはアブラムシ対策を予定。Yハウスでは防草システムの一部敷設と播種を行いました。また、保育参観では娘がじゃんけんではなくにらめっこで順番を決めたがり、その様子に自身の遺伝を感じて面白かったと語ります。帽子も忘れ、人は成長しないものだと笑いながら記録を締めくくります。