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【蓮月堂奇譚 -2-『ヴィオレッタの願い石』】
2026-10-04 21:22

【蓮月堂奇譚 -2-『ヴィオレッタの願い石』】

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【蓮月堂奇譚 -2-『ヴィオレッタの願い石』】

作:Ene @ene_oeuf 様

BGM:魔王魂


https://giraffe.noor.jp/eng2.html


お借りしました!

#フリー台本


2・4・6・12

16・18・22・26日更新予定


BGM:魔王魂『ピアノ41』

https://maou.audio/bgm_piano41/


【活動まとめ】 https://lit.link/azekura

感想

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00:06
あのう…
はい、いらっしゃいませ。
驚いた。
本当に日本人なのね。ご心配なく。
営業許可はちゃんと取得してますよ。
いいえ、ごめんなさい。誤解しないで。 差別したつもりはないの。
蓮月堂はこちら? 発音が難しくて…
お上手ですよ。
うちは薬屋ですが、何かお困りで。
噂に聞いてきたの。 こちらでは困り事を解決してくださると。
例えば不思議な出来事とか、 超常現象とか、そういうものにあなたがとても詳しいと。
ええ、まあ、計らずもね。
話を聞いていただける? それとも予約が必要かしら?
構いませんよ。 今日は暇ですし、急ぎの仕事もありませんので。
どうぞ、お茶を入れましょう。
グリーンティー?
紅茶ですよ。 僕は物心つく前からこちらに暮らしていますから。
まあ、そうなの。 ご両親もイギリスに?
小児です。 育ての親はいますがね。
ごめんなさい。 私、さっきから失礼なことばかり。
お気になさらず。 むしろあなたは親切な方です。
お客さんによっては、僕の顔を見るなり、 回れ右してお帰りになる方もいますから。
戦争はもう終わったわ。 私たちは相互に理解し合えるはずよ。
特にあなたたち日本人は礼儀正しいし、おとなしいし。 どうぞ、おかけなさい。
ああ、ありがとう。 それで、お話というのはミズ…
キャサリンよ。 キャサリン・アシュワーズ。
では、ミセス・アシュワーズ。 お困り事を伺いましょう。
これを見てくださるかしら。 これはまた珍しいものをお持ちで。
お分かりなのね。 これが何なのか。
もちろん、 ビオレッタの願い石と呼ばれるものです。
本物ではないでしょうが。 失礼。気を悪くしないでください。
何しろこれは偽物が多くてね。 偽物?
03:04
どうぞ、続きを。
元は夫の家に伝わるものだったの。 だけど彼は3年前に事故で亡くなって、
お屋敷と一緒に私がこれの持ち主になった。
でもそこからよ、あまりに奇妙なことが起こり始めたの。 信じてくださるかわからないけど。
これは仮にレプリカでも上手に模倣されていれば、 ある程度は効力を持つことが確認されています。
さぞ恐ろしかったでしょうね。 心の中で願ったことが次々と現実にとって変わるのだから。
そう、そうよ。あの日から私ずっと気が狂いそう。 些細なことも大きなことも。
雨さえ上がるは、まるで私以外のすべてのものが、 私の願いを叶えるために存在しているみたいに。
失礼ですが、マダム。 ご主人は入り向こで?
なぜそれを? 向こ入り前の生はバーノン?
いいえ、ウィンストンよ。それが何か。 いえ、ならいいんです。
この石の本物は長らく行方不明でして、最後に所持していたのが、 ヴィクトリア・バーノンというおばあさんだったってことまでしかわかっていないんですよ。
彼女は生前に誰かにこの石を譲ったそうなんですが、 その譲り先を秘密にしたまま亡くなりましてね。
バーノン家は貴族でこそありませんが、なかなかの名家でして、 もしかしてあなたの夫がその関係者かと思ったのですが、
見る限りあなたは非常に見なりがよろしいので。 夫が私の家に入ったのは、うちが女系だからですわ。
私は4人姉妹で、夫は3人兄弟の末っ子だったから。
さようで。 ええ、腰を折ってすみません。どうぞ続けて。
3年前にこの石を受け継いで以来、私の周りはすっかりおかしくなってしまったわ。
父も母も妹たちも、この石があれば何でも叶うって。 実際そうなった。
だけどこの石は私が願わないとダメなの。 意味がわかる?
願い石は本来は持ち主の身の安全を守る目的で作られたものですからね。 主の命令に反応するようにできています。
これも本物に倣って作られているんでしょう。 最初はよかったの。夫が守ってくれているような気さえしたわ。
私が困らないようにこの石を残してくれたんだと。 だけど。
06:06
だけど。 願いが叶うっていいことばかりじゃない。本当は恐ろしいことなのよ。
最初はほんの小さな種のようなものだったのに、気がつけばどんどん大きくなって。 私たちはもっと早くにそれを理解するべきだった。
私はずっと眠れなくて、自分がいつ正気を失うかと恐ろしくて。 落ち着いて。
お茶を。 ありがとう。ごめんなさい。うまく話すことに慣れていなくて。
構いませんよ。 時間はありますから。
猫が。 メイのアリスが可愛がっていた猫が先日亡くなったの。
もう15年も飼っていたからきっと寿命をよ。 仕方のないことだわ。
私たちは心からあの子を慰めたけど、彼女はまだ幼くて。 どうしても死というものが理解できなくて。
石を使った。 本当にできるなんて思っていなかった。
諦めがつけばいいと思ったのよ。本当よ。これだけは誓うけど失敗すると思っていたわ。 まさか成功するなんて。
どんな奇跡でも思い通りにならないことがあるっていうことを教えるつもりだったの。 命の大切さを学ぶことになればそれでいいと。
でも、 願い石のレプリカはこれまでにいくつか確認されていますが、
そこまでの力を持つものは僕もほとんど記憶にありません。 ことによってはあなたのご主人はバーノン家につながる人間だったのかも。
あの、 なぜレプリカだとお分かりになりますの?
それは死んだ猫を蘇らせることすらできたのに。 簡単です。
本物はもっとこう宝石に近いような輝きを持っていますから。 実物は失われているとおっしゃったわ。
バーノン夫人は新しいもの好きで、当時としては革新的な人でね。 写真を残しているんです。
ご覧になります。 いいえ。
いいえ、ごめんなさい。どうだっていいわ。 私にとってそれは重要じゃない。
メイベルは生き返ったんだもの。 今じゃ元気に家中走り回ってる。
アリスは喜んでいたけど、私は恐ろしくて。 妹の家に遊びに行くこともできなくなったわ。
あれが恐ろしくてたまらない。 あの小さな生き物の命を私がねじ曲げてしまったのだと思うと、
どうしていいかわからない。
09:00
あなたが願ったのでしょう。 願うふりをしただけなの。そのはずよ。でも、
もう自分でもわからないわ。 私、あの子が何度もメイベルのことで家に来るから、だんだん煩わしくなって、
猫さえ生き返れば解放されると思ったのかもしれない。 そのために、
私、そんなことのためにメイベルを生き返らせてしまったの。
それで、 あなたはこの石を手放しにいらした。
ええ、私には過ぎたものだわ。 見上げたかたですね。
普通、レプリカだろうとこの願い石を手にした人間は、大抵ろくな死に方をしません。
欲望の歯止めを失って、石の効果の及ばないところにまで願いの対象を広げてしまうからです。
そうなる前にこれを手放そうというあなたは、とても賢明ですよ。 引き取っていただける?
ええ、少々調べたいこともありますし、これほど精巧なものはなかなか見られませんから。
大抵は一度か二度使ったらその場で壊れてしまうような粗悪なものばかりで。
今でもまだ信じられないわ。一体どうしてそんな小さな石にこんな力があるのかしら。 仕組みは簡単です。
これはただの魔法ですから。 魔法?
魔法というものは何もファンタジーではありません。 明確に定義があります。
現実を上書きする力のことなんですよ。 例えばここにこのようにカップが一つあるでしょう。
このカップの色。 白だわ。
そう、この白いティーカップは現実として今はここにありますね。 しかし誰かが赤がいい、赤であるべきだ、赤であってほしいと強く願ったとする。
願いというのはつまりもう一つの現実を想像し、さらに想像することです。
この2つの言葉は日本語だと全く同じ響きになるのでややこしいですが、 その点英語はわかりやすくてよろしい。
つまりはこうであればいいというその人の思い描く現実を具現化する力。 それが魔法なんですよ。
ではこのカップが白い色をしているという現実はどこかへ行ってしまうの? しかり
その2つは、つまり現実と理想はやがて衝突し、 その衝撃でせめぎ合いを起こします。
そして勝った方が残る。 現実を塗り替えるか、あるいは現状を保つのか。
12:07
今ここにあるカップが白いという現実に赤い色であってほしいという願いが打ち勝てば、 白の現実は排斥される。
だからこのように赤いカップに変わるわけです。
今、どうやって?
魔法なんてものは存外ありふれているということですよ、アシュアズさん。
この願い石はあくまでもその補助部といいますか、 人間にその力を教えるためのものです。
だから本来は危険から身を守るために作られている。 排斥すべき現実として生命を奪われること以上のものはないですからね。
あなた一体何者なの? 薬屋です。
そんな…さて、ご要望通りこの石は引き取りますよ。
あなたはもうこんなもののことは忘れて生きておいでなさい。 可能ならご両親と妹さんとも距離を取ることをお勧めします。
あなた自身のためにね。 私のせいよ。喜んでくれると思って。
でも間違っていたわ。 こんな石があることを彼らに教えるべきじゃなかった。
あまり追い詰めなさいませんように。 こんなものを手に入れて正気でいられる人間の方が少ないのですから。
買い値はこちらでいかがです。 いくらでも構わないわ。
なんならただでもいいの。引き取ってさえいただけるなら。 結構。
では、あなたにはもう叶えたい願い事はないということですね。
そうですね。 アシュアーズ夫人、あなたは私が本当は何を恐れているかご存知のような物言いをなさるのね。
この石は所有者の願いを叶えるものです。 知ってるわ。
心の奥底にある本当の願いをね。 叶えるというよりも暴くんです。
あなたの猫の話もそうでしょう。 あなたは猫を生き返らせるつもりなんかなかった。
けれど結果的にそれを望んでいた。 石は高を下に過ぎません。
だからもう願い事なんてないわ。 それを手放しに来たのよ。もういらないの。
15:00
手元に置いておきたくないのよ。 結構。
あなたが本心からこれを手放したいと願っておられるのなら、 ついでにこれも処分していただけるかしら?
魔法使いさん。 手紙ですか?
ええ。 あなたは意地悪だからきっともう何もかもお分かりだもの。
はあ。 お読みになっても構わないわ。ご自由に。
どの道どちらか一つしか選べないんだものね、現実は。 ご主人の遺言ですか、これは。
主人の部屋のクローゼットの奥にしまい込まれていたものよ。
まるで隠すみたいにね。 新しいメイドが見つけて報告してきたの。
前の子はサボり癖があったから。 願い石を持った人間はほぼ全員が同じ内容の遺言を残します。
その後残された遺族がどんな思いをするかも知らずにね。 だから私はこれを手放すの。
わかってくださる。 余計なことを言いますが、
この石はレプリカにしては相当に出来の良いものです。 おそらく可能ですよ、ここに書かれていることは。
それをしなかったら私のあの人への愛は本物でなかったということになる。
さあ、私は独身ですから、 夫婦のことは分かりかねます。
愛していたわ。 だからきっと私はそう遠くないうちにこの遺言に負けてしまう。
アリスのようにね。 それが怖いのよ。
私、それほど強くないの。 夫がその手紙を書いた気持ちも、それを私の目に届くところに置かなかった気持ちも、
どちらも夫の本心だと信じているわ。 これは本当に手放されるのですね。
ええ、あなたと話してよく理解したわ。 それが魔法のアイテムなら私には扱えない。
私、普通の女だもの。 賢りました。
道中お気をつけて、ミセス・アシュアーズ。 あなたに幸運を。
ありがとう。 ビオレッタの願い石を持つ者は、死ぬことでしかこれを手放せないと言われている。
18:04
理由は簡単だ。 本心から願うことをしなければ、この石はその願いを叶えないから。
どんなに手放そうとしても、所有者が心からそれを願っていない限り、 石は必ず持ち主へ帰る。
手放すことを惜しまないと口で言うものは数多いが、 本当に手放せるものは多くない。
だからこそ、この石は持ち主の死と共に継承されてきた。 遺言は呪いだ。
こんにちは先生。 姉さんがパイを焼いたんで持ってけって。
あれ、誰か来てたの? お茶の香りがする。
お客様ですよ。 たった今、お帰りになりましたが。
そこですれ違った女の人かな? なんか暗い顔してたけど。先生、なんか酷いこと言ったの?
なんで僕が逆に酷いことを言わなきゃいけないんです。
へえ。 まあいいや。先生、奥のテーブル借りるよ。
焼きたてなんだ。僕もお正番に預かるつもりで急いで持ってきたんだから。
構いませんけど、まだお茶がそのままですから気をつけてくださいよ。 特にそこの黒い石には触らないように。
黒い石?何それ? テーブルに置いてあるでしょう。
今のお客様が置いていったものですよ。 パッと見には石ころですけど、ちょっと曰くつきの代物ですから。
石? そんなものないよ先生。どこにも。
ほら、なんか布みたいなのは置いてあるけど。 先生、どうしたの?
いいえ、お茶を入れ直してきます。 君はパイを切り分けてください。
はーい。 愛するキャサリン。
僕の最後の願いを聞いてほしい。 君の願い事でもあるはずだ。
いつか君に見せたあの石があればそれができる。 本当だ。
愛するキャサリン。 君がそうしてくれると信じているから
僕は今この瞬間、病床にあっても怯えずに死に向き合うことができる。
キャサリン。 愛する僕の妻へ。
21:00
僕を呼び戻してくれ。 遺言は呪いだ。
21:22

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