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2026-09-26 17:47

【蓮月堂奇譚 -1-『憂いの窓』】

【蓮月堂奇譚 -1-『憂いの窓』】


作:Ene @ene_oeuf 様

BGM:魔王魂


https://giraffe.noor.jp/eng1.html


お借りしました!

#フリー台本


2・4・6・12・14

16・18・22・26・28日更新予定


ピアノ41

https://maou.audio/bgm_piano41/


【活動まとめ】 https://lit.link/azekura

感想

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00:06
先生? なんだ、ここにいたの?郵便屋が表で困ってたよ。 何度もドアベルを鳴らしたのにって。 だから僕が代わりに受け取ってきちゃった。
それと… ああ、
すみませんね。 何か急ぎのものはありました?
さあ、どうでもよさそうなのはダンドに放り込んどいたけど。
でも、一通だけちょっと変なのが… 変なの?
ほら、封筒が真っ黒。 差し出し人もなしだよ。
先生、誰かによっぽど恨みでも買ってるの? はぁはぁ。
これは… 憂いの窓か。
憂いの窓? そう。
また厄介なものが世に出ましたね。 って、何?
窓ですよ。文字通りの。 というより、実物は窓の絵なんですけどね。
なんで窓だの絵だのが厄介なのさ。 これはもともと手当の小塚が管理していたものなんですが、
売りに出されたということは、 公認が決まらないうちに無くなったんでしょうね、モールトン氏は。
僕が最後に会ったときは、 まだまだ元気なご様子だったんですが。
ああ、手当。 紙の裏側だ。
もちろん覚えてるよ。 前に先生がエールに酔っ払って話してた。
この世界とは別の世界があるってことだろう?
よく覚えておいでで。 そうですよ。
例えば、この紙の上にこうして一本のペンを立てると、 その下に影ができるでしょう。
これが実体を持っているようなものです。
僕らが今ここにこうして立っている地面を一枚の紙とすると、 その反対側にもそれと対になる世界が広がっている。
似て非なる世界がね。
向こうには君の裏側もいるし、僕の裏側もいる。
まあ、裏からすればこちら側裏ということにもなるのだが。
よくわかんないんだけど。
つまり、今朝のプディングを失敗したなら、 明日はベイクドビーンズにしろって話?
03:03
そんなところです。
あれは性質上、その紙をすり抜けることがありましてね。
僕はモールトン氏と少しばかり縁がありましたので、 万が一の用心として連絡が来た、というところでしょう。
僕の知る限り、テアデアとこちらを行き来できる人間は、 僕の他にも世界中にいますから、
彼らの元にも手紙が届いているかもしれませんが。
それじゃあ、その人たちと連絡を?
しませんよ。
ここに書いてあるでしょう。
猫が目撃されていないと。
これはどういう意味だと思います?
そんなの、僕に聞かれたってわかりやしないよ。
猫が描かれているからですよ。
窓の縁に猫が一匹座っている。
僕も実物を見たことはないですが、 確か黒猫でしたかね。
そういう絵なんです。
その猫がぼんやりと遠くを見つめている表情が、 いかにも物憂げだと評判になって、
憂いの窓と呼ばれるんですよ。
何にも厄介そうな部分が見当たらないんだけど、聞く限り。
でも僕、猫は好きだよ。
この猫が厄介なんです。
言ったでしょ?
この絵は、このあたとあなたの境界をすり抜けてしまうのだと。
憂いの窓はね。
この猫をあちこちへ飛ばしてやるための装置みたいなものなんですよ。
装置?
要は、この猫は窓の外の世界を恋しがっているわけです。
猫というのは元来好奇心の強い生き物ですし、自由が好きです。
しかし、閉じ込められているからそれができない。
なら、窓を開ければいいのだと窓自身がそう思っているから始末に追えない。
うちの姉さんのところのエリザベスもフラッと出て行って3日も4日も戻らないことがよくあるよ。
それでお腹が大きくなって帰ってくるんだ。
来週また子猫が生まれるってさ。
野良猫なんてのはそんなもんです。
ここを読んでご覧なさい。
窓は開け放たれている可能性が高いとあります。
あの絵はね、お察しの通り窓が開くんですよ。
06:05
そして窓が開くと猫はどこかへ消えてしまうんです。
気が済んで戻ってくるまでね。
開く?
ええ。
絵に描かれた窓がってこと?
僕まだ14年しか生きてないけど絵って動かないものだと思ってた。
多分絵の方もそう思ってるんじゃないかな。
猫は一度自由になるとどこへ行くかわかりません。
そして猫が戻ってくるまで窓が閉まることはありません。
律儀に後ろ足で閉めていく猫なんかいませんからね。
つまり開けっぱなしのままなんです。
どういうことになるかわかるでしょ?
つまり…
あーわかった。
猫以外のものも通れちゃうんだ。
面白半分に猫を追いかけるうち窓を通ってしまった人が次々と失踪した事件が実際にありましてね。
あるいはただ単にそばを通りがかっただけで吸い込まれてしまったなんて話もある。
あの絵の周りではそういうことが何度も起きてるんです。
何しろ猫を捕まえて戻さないとあの窓も閉まりませんから。
さっき売りに出されたって言ってたけどさ、そんな危なっかしいものを買う人いるの?
いるから困るんです。
あれは絵としてはなかなかのものですし、面白おかしい逸話もくっついていますから、
競りになんか出るとね、素人がうっかり買っちゃうんですよ。
それでまた失踪人が出る。
失踪した人はどうなるの?
今のところ見つかったって話もあれば、見つからないって話もあります。
さっきまで遊んでいた子供が突然消えたり、逆に何十年も消えてた人間がある日突然戻ってきたり、
って話は時々あるでしょう?
日本ではあれは神隠しと言うんですがね。
神隠し?
神は日本語でゴッドのことです。
ああ、出たよ、ジャパニーズ神様。
09:03
どうして神様が人を行方不明にするのさ、というより、説明のつかない失踪事件をそう呼ぶようになったんです。
この窓みたいなものの存在は知られていませんから。
ましてや日本では。
僕らの国じゃそういうのは妖精の仕業だってことになってるけど。
我らが主は先生のとこみたいに意地悪をしないからさ。
妖精ね。実際彼らは扱いにくいですよ。
失踪させられた人間はどこに飛ばされるかわかりませんから。
うまいことをその辺に浮遊しているとびとなんかを捕まえられれば、まだ帰れる見込みもありますが、
君らのいう人形の、いわゆるフェアリーは意地が悪い個体が多い。
この人を連れ帰ってくれと頼んでも変なところに連れて行くし、
なんなら新たに失踪させるしで。
まあ、そりゃ彼らがいたずら好きなのは認めるさ。
でも僕らイギリス人はうまく共存してきたんだよ。
彼らだって彼らなりのやり方で人間と調和したいって思っているんだ。
ちなみに僕は子供の頃チェンジリングに会ったって母さんが、
それは可愛らしかった息子が突然生意気な口を聞くようになったので、
妖精に取り替えられたとでも思わなきゃやってられなかったんでしょう。
はいはい。
ていうかさ、絵ってことは作者がいるんだよね。
誰なの?有名な人とか?
それともあっちでは絵が動くなんてことは日常茶飯事だったりするの?
作者ですか?
無名の男だと言われています。
画家かどうかも定かでは。
えぇ?
200年も前に、
手やであの枯れた水路の壁に描かれているのが発見されたのが最初です。
これは何だと話題になり、
調べていくうち、
もともとその水路はとある旗子にくっついていたものだということがわかった。
さらに調べが進むと、
その旗子の前で生き倒れていたとある旅人が、
解放のお礼に一晩で書き上げて残していった、
12:01
という奇跡のような話がくっついていることもわかった。
こちらにもそういう話はありますがね。
聖ヨゼフの螺旋階段だとか。
まあ、どこもこの手の気端はある程度に通ってくるものなんでしょう。
ああ、あの、なんで崩れないのかわからないっていう階段だよね。
シスターたちが二階に上がれなくて困ってたら、
どこからともなくやってきたおじさんが一晩で作ったとか言う。
そう。
で、その話に興味をそそられた人々は、
絵を描いた男を探し始めたが、一向に見つからなかった。
旗子の人間たちも、旅人の人相風邸、
なんなら性別も種族も思い出せなかった。
ですが、まあ、少なくともその絵は現実に存在しています。
そして、ほどなく猫の最初の脱走が起きたと記録にはありますがね。
そりゃ、よっぽど大騒ぎになっただろうね。
その時も人が消えちゃったの?
ええ、数名は未だに見つかっていないそうですよ。
で、これはどうやら大変な代物だというので、
壁ごと切り取って、手当の小塚組合に買い取ってもらったわけです。
彼らはこうした品の扱いに慣れていますから。
実際、安全なところで適切に管理されてたうちは問題なかったんですが、
やっぱり今回のように、管理者が不良の死を遂げたりしますと、
この絵はね、自分で所有者を探しに出ちゃうんですよ。
何しろ壁画ですから、保管が悪いと風化してしまいますからね。
まあ、長年不吉さらしの廃墟にほったらかされてた反動でしょう。
はあ、まあ話はだいたいわかったけど、
じゃあやっぱりどうするのさ、これ。
関係各位ご注意くださいって、つまり先生も関係者ってことでしょ?
なんとかしろって言われてるんじゃないの?
どうもしませんよ。
猫がこっちに来てなければできることはありませんし、
無効の話です。
わざわざ向こうに渡って探しに行くほどの義理もありませんからね。
たまに思うけど、先生ってちょっと白情だよね。
どうにかできるならどうにかしてあげればいいのに。
15:01
猫がこちらに来ているとして、それがここイギリスとは限らないでしょう?
あの窓はそれこそバカみたいにあちらこちらに穴を開けてくれるんですから。
バカって。
その穴をふさぐのだってひと苦労なんですよ。
僕はああいう骨折存のくたびれ儲けみたいなことは嫌いなんです。
差し当たっては向こうでなんとかしてくれることを期待しましょう。
なんかその絵、こっちとあっちで押し付け合ってるみたいだね。
ああ、そっか、だから厄介なんだ。
そういうことです。
さて、僕はもう少し仕事をしたいんですが、
今日中に調合を頼まれてる薬がいくつかありまして、
いいよ、僕も買える。
あ、母さんが後でプディングを持ってくるって言ってたけど、
今日のは干しぶどうが入ってないからがっかりしないように今のうちに言っておくね。
でもどうせ独り身の男なんてろくなもの食べてないに決まってるから届ける価値はあるってさ。
君が今朝失敗したってやつですか?
それはノアにあげちゃった。
ノア?
猫だよ。さっき言おうと思ったんだけど、姉さんとこに新入りが来たんだ。
一昨日ぐらいに家の前をうろついてたからさ、
姉さんが5匹も6匹も変わらないからって家に入れちゃってさ。
どこから来たの?って聞いても何にも答えないし。
本当は先生に見てもらおうと思って来たんだけど、忙しいなら今度にするよ。
そう…ですか。
夜みたいに真っ黒だからノクターンって名前にしたけど長いからみんな好き勝手に呼んでる。
姉さんはターニーって。
猫にプディングはあんまり良くないですよ。
魚の残りとかそういうものを与えるようになさい。
行っとく。
じゃあね先生、また明日。
はい、さようなら。
え、黒猫って言いました?
ちょ、ちょっと、ちょっと待ちなさい。
助手。
17:47

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