子供の頃の遊び
子供の頃にね、お気に入りの遊びがあったんです。
死体ごっこ。
そんな大げさなことじゃないんですよ。ただ目を閉じて、呼吸も止めて、考えるのをやめて、じっとしてるの。
そうしてるとね、体がスーッと静かになるの。 まるで本当に何もかも終わってしまったみたいに。
生きていることを忘れるのとは少し違うの。 死んでいないことを忘れてしまうのよ。
一度死んだら誰かに生き返らせてもらうまで動けないの。 そういう決まり。
だからじっといい子で待つのよ。 呼び戻してくれる誰かの声を、手を。
そうしたら全部元通り。そういう遊びよ。 私、何度も生き返らせてもらったわ。
死んでは生き返って、また死んで。 その度にいらないものが少しずつそげ落ちていくの。
命とか魂とか、そういうものが少しずつ研ぎ澄まされていくの。 それで今ここまで来たの。
そうよ、友達にも教えてあげたわ。 だけどその子はダメだった。
戻ってこなかった。 うまくやるのよって私あれほど言ったのに。
