蝶の変態の謎
レバノンの原生林に棲む蝶々の一種に、三度の変態をするものがある、と判明したのは、およそ100年前のことです。
この蝶は幼虫からさなぎ、さなぎから蝶へ、というごく一般的なプロセスを経て、とある条件を満たすと、再び幼虫の姿に戻ることが確認されました。
しかし、いよいよ不死の生物の発見かと色めき立つ学会を尻目に、幼虫からもう一度さなぎになることはなく、蝶として空を飛び回った記憶さえも忘れてしまったかのように、
彼らは皆、ほどなく眠りにつき、そのまま生涯を閉じた、と言います。
一度は羽化した彼らを、再び地に戻してしまう条件とは何なのか。
多くの学者が、この謎の研究に人生を捧げてきましたが、先日、突如としてイギリスのとある研究チームが、この現象はいずれあらゆる生物に起こり得る、という仮説を発表しました。
私たちは、私たちがどのように滅びるのかを知った。
そしてそれは、私たちが想像するよりもずっと穏やかに訪れる、論文の末尾は手書きでそう結ばれていたということです。
