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ラジオドラマ、スウェッティ
新幹線の座席、肘置き、窓、テーブル、全部除菌シートで拭かないと気が済まない。
もう早く出発して実家についてくれ。
危なかった。
なんだあの人、めちゃめちゃ汗かいてる。
いや、汗かいてるレベルじゃない。もはや汗浴びてるんだけど。
私の隣じゃありませんように。私の隣じゃありませんように。
今年の運全部使い果たしても構わないので。
隣、すみません。
また控えめに言って絶望。
すみません、荷物置いちゃってて。
いえいえ、ここ10列で合ってますよね?
違いますよ。
やっぱ10列でした。もしかしてお待ち…
注意です。間違えてません。
じゃあ、失礼して。
窓にめっちゃやっても無理。やばいやばいやばい。
汗、汗、汗。絵文字の汗マークのやばい版、あれのやばい版だって。
いやー、クーラー着いてていいですね。
いいわけねえだろ!
なんやがらの滝くらい流れ落ちてる!
あの、タオルありますよ。
え?
使い捨てのタオルで良ければ差し上げます。
ああ、大丈夫です。
え、差し上げます?
いえいえ、わざわざどうも。
必要じゃありませんか?
全然、必要になったら言いますね。
今いらないならいつ使うんだよ、なんやがら!
いつでも言ってくださいね。
はい。
ちょっとお願いあるんですけど。
なんですか?
私、今使い切りたい静寒剤があって、シュッてするタイプなんですけど、
一人だと全然減らなくて、良かったら一緒に使ってくれません?
ああ、すいません。僕そういう人工的なものをつけないようにしてて。
あ、人工的だけど、ほんと人工的じゃなくて。
え?
人の手によって作られてるって意味では人工的なんですけど、
自然最高みたいな。
なおさらそんな高級ソーナーも使えないですよ。
助けになれなくてすいませんけど。
どこまで行かれますか?
山形です。
ああ、一緒だ。
実家があって。
ああ、一緒だ。
二度目の絶望。
てか、いつまで汗かいてんで、クーラーガンガンで体内の水分量どうなってんの?
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うわあ、待って、咳に染みてきてる。
これ徐々に近づいてこっちまで来るんじゃないの?
ちょっとどうすんだよ、しみ。
あ、景色綺麗だなあ。
え?
すいません。ちょっと窓を覗きますね。
え、疲れるなあ。
え、すいません。
そんな拭かなくても。
え、あ、あ、いや、いや、そんな、違います。
汗とかじゃなくて、なんか粒子見えるんです、私。
それで悪い粒子がたまたま今のタイミングで私について。
いいです。
いやいやいや、ほんと、あの。
僕、汗すごいですよね。
昔から代謝が異常で、病院にも行ったんですけど原因不明で、悪化させないように何もするなって言われて。
でも、こうやって汗だくになっては周りからケゴンの滝って呼ばれたりして。
ナイヤガラじゃないんですか?
え、あ、いや。
すいません、僕が隣で。
山形まで我慢できなさそうなら、デッキの方に行きます。
いや、それは。
こっちも叫ばれたりすると、他の人の目がありますし。
すいません、失礼なことして。
私、潔癖で。
昔、潔癖症の同級生にいじめられました。
僕、デッキ行きますね。
あ、あの。
はい。
傷つきましたよね。
傷つけた代わりになるかわかんないですけど。
ていうか、代わりになるわけないんですけど。
なんですか?
私にブルブルってしてください。
え?
だから、ブルブルって体震わせてください。
何言ってるんですか?
ブルブルですって。
それはわかってます。
じゃなくて、そんなことしたら。
はい、私が汗まみれになります。
あなた、潔癖症なんですよね。
一瞬そのこと忘れます。
無理ですよ。
僕の同級生だって、最初は優しかったですけど。
結局は生理的に無理だって。
生理的も無視します。超えます。
無理だって。
ブルブルしてください。
というか、こっちだって誰かにブルブルなんてしたくないんですよ。
そんな願望ないんですよ。
そっちも超えてください。
なんで超えなきゃいけないんですか?
いいからやれよ。泣いやがら。
え?
あ、すいません。
高ぶっちゃって。
もうわかりましたよ。やりますって。
あ、でも、やるとなると。
いきますよ。
早くやって。
大丈夫ですか?ちょっと。
ねえ。ねえって。
ちょっと。大丈夫ですか?
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今、泣いやがらの滝に飛び込んで、それから、私、生きてる?
生きてます。僕の心は傷つきましたけど。
ツアーガイドの方ですか?
新幹線で隣になった人です。
新幹線。
私たちはどこに向かってるんですか?
山形です。
泣いやがらから山形ってどのくらいかかるんでしょうか?
2時間半ちょっとです。
すごい時代になりましたね。
