はじめに:AI利用者の二極化と研究の紹介
デジタル時代の国語教育を語ろうにようこそ、パーソナリティーのKasaharaです。 この番組では、Google for Education認定トレーナーと認定コーチの資格を持つ、私Kasaharaが教育にまつわる様々な話を配信していきます。
最近、自分の周りでも生成AIを日常的にゴリゴリと使っている人と、全く触ったことがありませんという人の差がずいぶん開いてきたなぁなんてことを感じるようになっています。
自分は仕事でもプライベートでもかなり使っている方だと思いますけど、じゃあ学校現場全体はどうかというと、自分の職場を見渡していてもやっぱりまだまだ使っている先生は少数派だという実感があります。
で、これって個人の好き嫌いの問題だけじゃなくて、もっと構造的な要因があるんじゃないかなぁと、そう感じていたところに非常に興味深い研究結果が発表されていました。
千葉大学予防医学センターの中小宮津市準教授らの研究チームが、2025年1月に大規模な調査を実施しているんです。
その結果が同年の12月に国際学術史テレマティクス&インフォマティクスに掲載されました。
で、2026年の1月に大学からプレスリリースとして発表されていました。
分析対象になったのは、日本全国のインターネット利用者で18歳以上の13,000人ですね。
この数字は変な回答を排除した後のものですが、かなり大規模な調査になっています。
そして結果として分かったのは、大雑把に言って、まず生成AIの利用者は全体の約2割程度しかいないということなんです。
この数字をどう感じますかね。
今回は、この千葉大学の研究で示されたAI格差、その要因に関して思ったことをお話ししながら、教育現場の向き合い方について考えてみたいと思います。
さて、ここからが本題です。
研究手法と分析の視点
まず、この研究の研究手法に関してざっくりと説明しておきます。
今回の調査は、大規模なオンラインパネル調査の一環として行われており、
楽天インサイトのモニター会員を通じて日本全国のインターネット利用者のデータを集めて、
変な不的確な回答を排除していって分析対象になる約13,000人のデータを集めたというものになっています。
分析には、修正ポアソン回帰というような統計手法が用いられています。
名前を厳密に覚える必要は、現場の先生であれば必要ないかなとは思います。
内容としても難しく聞こえますが、
要するに年齢、性別、学歴など複数の要因を同時に考慮しながら、
それぞれが生成AIの利用にどう影響しているかを分析するための方法なんですね。
例えば、若者が使っているという話を一つとっても、年齢だけではなくて、
デジタルリテラシーや職業だとか他の要因の影響も併せて考えた上で、
それでも年齢がどれぐらい影響しているかというのを計算しているという、そういう調査となっています。
だから、この後紹介する1.4倍とか1.8倍みたいな数字は、調整済み相対リスクと呼ばれるような指標になってきます。
他の要因の影響を統計的に取り除いた上で、
その要因が生成AI利用にどのぐらい関連しているのかを示す数字だと理解してもらえれば大丈夫です。
難しいことを言いましたが、要するに統計的にできるだけ正確な数字を出そうとしていますよというふうな、
そのぐらいの理解でいいかなと思いますね。
この千葉大学の研究で面白いのは、誰がAIを使っていて、誰が使っていないかを一つの要因だけで見るのではなくて、
多角的に分析しているところなんです。
AI利用格差に影響する要因分析
具体的に見ていくと、利用格差に関する影響する要因として、
年齢・性別・性格特性・学歴・職種・居住地域・人との繋がり・デジタルリーダーシー・デジタル頻度と、
こんな感じでかなり幅広く検討しているんですね。
今日の放送だと全部細かく話をすることはできないので、
それぞれの要因についてどれくらい利用率に差があるかを倍率として出してるんですけれども、
その中で特徴的なものを少し紹介しようと思います。
まず年齢で言うと、18歳から59歳は75歳以上と比較して利用率が約1.3倍から1.7倍高いという状況で、
55歳から59歳のグループも統計的に優位に高くて、60歳以上になると統計的には優位な差は見られなくなってくるというようなデータが出ています。
つまり、若い世代の方がテクノロジーに対する抵抗感が少ないということなんですが、
これは感覚的にもよくわかる話ですよね。
それから性別なんかもありますね。
男性は女性と比べて約1.8倍の利用率なんです。
これはかなり大きな差ですよね。
これはかつてデジタルデバイドの文脈でもこのジェンダー差って指摘されてきたことですが、
生成AIにおいてもこの傾向が確認されているのは注目すべき点でしょうね。
思えば、生成AIのイベントって男性ばっかり登壇してますよね。
これも社会的に結構問題だと思うんですが、どう思いますかね。
ちょっと話が変わって、ここで面白いのが何かというと性格特性なんですね。
研究では、開放性、つまり新しいものを受け入れやすい性格の人ほど、生成AIの利用率が高く、
協調性も性の関連が乱れている感じですね。
一方で、誠実性、つまり計画的、慎重に物事を進める傾向が強い人は、むしろ利用率がやや低い傾向ができるんです。
まあこれも直感的に理解できる話かなと思うんです。
面白そうやってみようという人や、人の意見を素直に受け入れやすい人は使いやすいわけです。
反対に、ちゃんと理解してから使いたい、リスクをちゃんとしっかり考えたいという慎重な性格の人は、
結果的に活用が後手に回るということがあるということでもありますね。
次に学歴と職種の要因だとかも見てみましょうか。
大学卒業者は約1.4倍、大学院修了者に至っては約1.7倍も利用率が高いんです。
これはかなり明確な差に見えますよね。
また、職種では学生の利用が約1.9倍、専門職が約1.6倍、
つまり学ぶ機会や知的な業務に日常的に接している人ほど、生成AIを使っている傾向があるんですね。
これってよく考えると、AIを使うことでさらに学びや仕事の効率が上がって、
使わない人との差が開く可能性があるということだと思うんですよ。
最近よく言われていることですが、こうやって数字で見ても出てくるんだなーって感じがしますね。
ただし、ここで一つ注意が必要なのは、この研究が示しているのは相関関係であって因果関係ではないということなんですね。
統計を見るときによく言われるやつなんですが、
つまり、例えば工学歴だから生成AIを使っているとは断言できなくて、
工学歴の人には他にも様々な特徴があって、それらが複合的に利用につながっているという可能性もあるわけなんです。
だから、じゃあ学歴を上げれば生成AIの利用率が上がるのかという、そういう単純な話ではありません。
ここはやっぱり潜み足にならないように注意しないと、教育現場ってついついやりがちなので注意が必要なところですね。
研究の限界と解釈上の注意点
この研究では、論文の本文を読むと、著者自身がいくつかの解釈上の限界をはっきりと認めています。
ここもきちんと押さえた方がいいと思うので紹介しておきますね。
ざっくりと簡単に紙くらいで説明してみます。
一つ目は、この研究が一時点だけ、つまり特定の瞬間について切り取った調査であるということです。
ある時点でAIを使っているかどうかを調べているので、要因と利用のどちらが先かというのがわからない形にはなっています。
例えばデジタルリケラシーで言えば、リケラシーが高いから使っているのか、使い続けることによってリケラシーが上がったのか、この調査だけでは判断できないわけです。
著者自身も双方向の影響があるということを認めてますね。
二つ目が、AI利用の測定が使っているか使ってないかの二択であるという点です。
どれくらい使っているか、どんな目的で使っているかまでは捉えられていないというような限界がありますね。
またそれに関連して三つ目として、AIを個人的な目的として使っているのか、仕事で使っているのかわからないので、解釈の文脈が制限されているということですね。
四つ目としては、この研究が使っているデジタルリケラシーの測定尺度が、もともと健康情報の検索に関連して開発されたという点ですね。
生成AIの利用に特化した尺度ではないため、測定の精度には限界があります。
AIに関するリケラシーの尺度に関しては、まだまだ研究の途上ですからね。
五つ目は、このデータが日本のインターネット利用者に限られているという点ですね。
文化的背景や社会制度の違いから他国の状況に当てはまることは難しいということです。
六つ目は、自己報告によるバイアスです。
生成AIを使っているかどうかを自分で申告する調査なので、記憶の曖昧さや、
使っていると答えた方がよく見られるかもという意識が回答に影響しやすい可能性があります。
最後にサンプルの偏りですね。
この調査はインターネット上で図出しているので、普段ネットをほとんど使わない人は最初から対象の外になっちゃうんです。
いわゆる選択バイアス、つまりこの研究が示すAI格差は、
実際の社会全体の格差よりも小さく出てしまっている可能性があるわけです。
著者自身も、実際の格差はこの研究が示す以上に多いかもしれないという話をしていますね。
だからデータはこうした前提を踏まえた上で、傾向として読み取るという姿勢が大事なんだろうとは思いますね。
AI不利用の理由と教育への示唆
さて、その上でこの研究がもう一つ面白いのは、生成AIを使わない理由に関してもきちんと調べているところなんですね。
ざっくりと説明していきますが、使わない理由のトップは必要性を感じないで、これが約4割ぐらいかなり多いですよね。
で、その次が使い方がわからないで大体2割ぐらいなんです。
で、これも年齢層によって理由の傾向に違いが見られるんですね。
若年層では魅力的なサービスがないと感じている人が多くて、つまりテクノロジーへの抵抗自体はないけれど、今の生成AIにはまだ魅力を感じていないというようなそういうことなんですよ。
一方で中高年層では使い方がわからない、セキュリティへの不安がある、利用環境が整っていないというような理由が目立っています。
これはいわゆるデジタルデバイトの典型的なパターンですよね。
知識やスキル、環境の方が問題となって障壁となってしまっているというそういうパターンなんです。
で、この使わない理由の分析は教育の文脈で考えると非常に参考になると思うんですね。
例えばこの研究での指摘を踏まえると、生徒や先生たちが生成AIを使わないのは、ただ嫌いだからとかサボっているからではなくて構造的な理由があるということがなんとなく見えてくるんです。
だとしたら単にAIを使いましょうと号令をかけるだけではなかなか多分変えられないというのが実情なんだろうなぁなんてことが想像されるわけです。
この研究から見えてくるのは、生成AIの利用格差は今後ますます広がるだろうということですね。
使う人はどんどん使いこなして生産性を上げていくだろうと思われる一方で、使わない人が取り残されていく、いわゆるまた行こうかっていうやつですね。
持てるものはますます持つようになるという構造です。
だから学校教育でどのように生成AIに触れさせるか、これはますます重要なテーマになるんだろうなぁとこの論文読んで思いますね。
ただここで繰り返しになりますが言っておくとやっぱりイサミ足は禁物だと思うんです。
AIを使えるようにしなきゃという焦りから、十分な準備も概念的な土台もないままに、ただ使わせるだけになってしまうのはむしろ逆効果になりかねないわけです。
この研究で分析された要因を見ても、AI格差は単にAIに触れたかどうかで決まるわけではなさそうなんですね。
例えば日常的にデジタルツールに親しんでいるかどうか、デジタルリテラシーが備わっているかどうか、そうしたいろいろな背景になる部分が影響しているということがこの研究からは見えてきます。
先ほども言いましたがこの研究は因果関係を示しているわけではないのですが、
こういう話を踏まえて現場の実践として考えるならば、AIを使いこなすためにはそもそもデジタル機器を使った情報の検索整理活用といった基本的な経験というものを改めて必要なんだろうなと、それが間違いがない方法なんだろうなというふうに思います。
教育現場でのAI格差への向き合い方
自分も生成AIの研修を頼まれることがありますが、そういう時にはICT教育の文脈でよく引用されるセーマーモデルの例を話しに出しながら、セーマーモデルの大体拡張の部分、つまり慣れるところからまずはしっかり生成AIを活用してみましょうねって話をしています。
つまり、AIの授業を特別に設けるだけではなく、パソコンやChromebookをよく使って日常的にテクノロジーに触れている状態を作ることが結果的にAI活用の近道になるんじゃないかななんてことは考えています。
ギガスクール構想が始まって、端末が全国に配られる状態にはなっていますが、じゃあ実際に毎日文房具のように使っているかというと、学校や地域によってまだまだ待ち待ちですよね。
この研究データを見ても、デジタル利用頻度がAI利用格差に関係してきているということはなんとなく見えるので、まずはそこ、日常的にデジタル技術に触れる経験というのを地道に積み重ねることは大切になるんじゃないかなと思いますね。
最後に、現場の実践者として考えられる点をもう一つだけ話しておきましょう。
それは何かというと、この研究が示しているのは、AI格差は構造的なものであるということなんです。
年齢、性別、学歴、環境、そういった本人ではどうしようもない部分が格差を生んでしまっているわけですね。
つまり、生成AIを使わない人たちに対して努力が足りないとか関心がないのが悪いと言って片付けるのは望ましくないなということが、この論文では言及されています。
生成AIを使わない多様なメカニズムを見落として、効果のない介入などは良くないわけです。
むしろ大人の側が子供たちにとってのテクノロジーとの接点をどうデザインするのか。
学校というのはその格差を埋めるために非常に重要な場になるはずなんですよ。
ただ、研究が繰り返しになりますが因果関係を示しているわけではないので、ここも慎重に考える必要はあります。
こういう要因があるから、こうすれば解決すると安易に言えるわけではないんです。
でも少なくとも格差が存在するという事実を認識した上で、日常的に丁寧に触れていくということを考えていくことは取り組みとして大切なんだろうなぁと考えています。
今回の配信はいかがだったでしょうか。今回は千葉大学の大規模調査を手がかりにAI格差について考えてみました。
元の論文について解説するつもりで台本を作り始めたんですが、めっちゃ難しいですね。
学術的に正確なことと、ポッドキャストとして聞いてわかりやすいことのバランスにかなり困りました。
結果的にざっくりと話すことになっているので、解釈間違えたり伝え方間違えがあったらごめんなさい。先に謝っておきます。
元論文は概要欄に貼っておくので、ぜひ検証してみてください。
さて、生成AIの利用者はデジタルに日常的に親しんでいる人の中でも2割程度に留まっているわけで、
デジタルに沿道いい環境にある人たちは、意思の有無に関わらず構造的に取り残されやすい状況にあるというわけですね。
自分自身、授業ではかなりのことをデジタルツールで行いますけれども、
それはAIを使わせたいからということよりも、テクノロジーは日常的に使うものだという感覚を自然に身につけてもらいたいからという気持ちはあります。
そうした感覚の延長線上に、AIというのも一つのテクノロジーだよと受け取ってもらえたらいいなと、そう思って日々授業をしています。
いろいろな格差を埋める場として、学校がどう機能できるか気を付けないと格差を埋める場にもなるわけですが、
とりあえずAIを使わせることを目的化しすぎないように、まずはデジタルテクノロジーに親しむ経験を日常的に自然に積み重ねていくということ、
そこを丁寧にやっていきたいなあなんてことを考えています。
まとめと今後の展望
本日のポッドキャストの裏話は私のボイシーで毎朝6時半に配信しています。
ボイシーでは毎日の教育実践の話やちょっとした雑談もしていますので、ぜひそちらもお聞きください。
ここまで聞いてくださりありがとうございました。
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この番組は毎週月曜日に1回配信されます。
次回の配信もお楽しみに。
ではまた。