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こんにちは、常蔵です。
デザインレビューFM第34回目始めていきます。
このデザインレビューFMは、
世の中の様々なもの、主に工業製品や、それに関わる出来事について、
私の主観で勝手にデザインレビューをしていこうという番組です。
前回はですね、空圧機器設計の勘どころということで、
工場から圧縮エアを機械へ取り込む機器、
その辺りを設計する時に、
まず私が考えること、気をつけることを話してみました。
今回はですね、壊れて喜ぶ強度試験って何⁉︎ということで、
最近私が見た記事を元に話をしてみます。
では本編をどうぞ。
はい、本編です。
何か製品を設計して、それを製作して、
使ってもらう時に大事なこと、
まずはその目的の機能を持っていることだと思いますが、
もう一つ大事なのは壊れないこと、
求められる寿命を満たしていることだと思います。
いろんな製品を作るメーカーでは、その製品を発売する前に、
社内で壊れないことをテストで確認します。
例えばヒルナンデスでオードリーのカスガさんが壊したことが話題になった、
IKEAの椅子。
これもですね、630万回の耐久テストを行っているそうです。
ただ番組の中で壊れちゃったのは、
カスガさんがすごい許容範囲を超えた力をかけてしまって、
そういう使い方をしてしまったためと、
IKEA JAPANのPR担当者が答えたそうです。
私が設計している工作機械でも、もちろん耐久性のテストをしています。
動作するところ、送り軸、回転軸のいろんな構造だったり、
同じく動くカバー、可動カバー、ジャバナカバー、テレスコカバーとかですね、
シールとかワイパーとか、消耗品と言っていいのがあれですけれども、
摩耗したり壊れる可能性があるところ、
そういう部品の耐久テストというのはしています。
ただ、工作機械であれば、メインの構造物、
ベッドとかコラムとかサドルと呼ばれるような、
主に衣物で作られる部品というのは基本的には壊れません。
これは工作機械という製品は主軸の先端で、
これくらい以内の変形になるようにという設計の仕方をしているので、
基本的には壊れるほどの力というのはかからないことを想定しています。
基本的にはですね。
基本的には強調するということは例外もありまして、
例えば機械の出荷・据え付けをするときに、
フォークリフトで乗せて運ぶことがあります。
特にアメリカでは多いですね。
フォークリフト大国はアメリカです。
そのときに機械の下側、主にベッドだと思うんですけど、
ベッドの好きなところにフォークリフトの詰めを入れてしまうと、
弱い部分だと壊してしまうことがあります。
なのでフォークリフトで運ぶなら、
ここに詰めを入れてくださいねと示してあげる必要がありますね。
それは本題とは関係ないですね。
本題に戻りましょう。
本題の壊れて喜ぶ共同試験って何ですが、
航空機の重要性
それはズバリ航空機の共同試験です。
航空機が自動車など他の機械と何が違うかというと、
軽く作らなければいけないということですね。
最近は自動車も燃費というものが非常に重要になっていますので、
自動車の車体というものを軽く作ることが求められていますが、
航空機は空中に浮かばないといけないので、
その重量に対する制限というのがけた違いに厳しい製品だそうです。
それと同時にたくさんの人を運んでいますので、
当然壊れてはいけません。
軽くてなおかつ壊れない機体を作る。
そのために飛行中にかかるであろう最大の荷重、最大の力を計算して、
その1.5倍までの荷重に耐えられるように機体が設計されています。
この1.5倍というのを安全率と呼びます。
この安全率を大きく、例えば2倍、3倍とすればより安全になるかもと思うのですが、
そうしてしまうと飛行機の機体が重たくなってしまいます。
強くするためには板厚、板の厚さを上げたり、
リブを増やしたり、どうしても重たくなる方向になってしまいます。
機体が重たくなってしまうとエンジンの推力は基本的に変わらないとすると、
飛行機に乗せられる乗客の数が制限されてしまったり、
飛行できる距離が短くなってしまいます。
そういった航空機としての使用を満たさなくなってしまってダメですので、
ギリギリの1.5倍という安全率にしているそうです。
静強度150%3秒ルール適合試験
そしてこの安全率通りの設計ができたか確認するのが、
主翼の強度を保証するために行われる
静強度150%3秒ルール適合試験というものです。
静強度というのは静かな強度と書けますね。静かな強度、静強度。
航空機として認定されるためには不可欠の証明試験だそうです。
この試験はですね、
運転するパイロットが飛行中に機体にかけてよい最大荷重の1.5倍、
150%の荷重に3秒間耐えられる翼であること、
それを証明しなければいけないというルールです。
この150%の荷重を終極荷重と言うそうですね。
試験では翼を上に曲げていきます。
ボーイング777では100%の段階で上側に何も力をかけていない状態から
6メートルも曲げられるそうですね。
そしてそしてさらに荷重をかけて150%まで足して
1、2、3と3秒耐えて、
まあそこでもですね、まだ関係者は大喜びしないそうです。
そこまで耐えるのは当たり前ということですね。
試験は続いていて151%、152%、153%となったところで
翼がバーンと大音響とともに破壊すると。
そこで初めて大歓声、大拍手となったそうです。
この153%、3%を超えてますけどね、
3%を超えたところで機体が破壊したことで
設計通りの強度を持っていたと証明できたということですね。
この1.5倍の安全率というのは非常に驚異的ですね。
ものすごい精度での強度計算というものが
あらかじめできていないと難しいと思います。
ということで、これが壊れて喜ぶ強度試験のお話でした。
このお話はJAXAのページを参考にしているんですけど
このJAXAのリンクと一緒に
他に設計地通りに壊れることを確認している製品はあるかなと
ツイートしたんですけれども
そうするといくつか面白いなと思う例を教えてもらえたので
それもここで紹介したいと思います。
一つ目、いただいたコメントをそのまま読んでみますと
エアコンの室外機の防風試験
外装が壊れる前に設計通りにファンが壊れ
外に飛散しないかを確認しています。
ファンが壊れずに飛んでいったら危険ですからね。
ということで、ちょっと解説すると
エアコンというのは冷媒を圧縮減圧して熱を運んでいますが
この圧縮したときに高温になった冷媒の熱をですね
外に放出するのがファンの役割です。
室外機というのはもちろん外にありますので
台風など強風が吹いたときに
その風でファンが回されてしまうことがあります。
そのファンの強度にも安全率というものがあるはずですけれども
その安全率を超えたときにファンが破壊する
羽の部分が割れたり壊れると思います。
そのときに外装部分も同じく強風で壊れていると
そのファンの破片というのがピューッと飛んでいってしまって
人だったり建物に被害を与える可能性があります。
なので強風、実際に何メートル以上を強風と定義しているかわからないですけれども
ある強さの風が吹いたときに
外装は壊れないけどファンは中で壊れると
そういう強度のバランスにしているということですね。
これは非常に面白かったです。
もう一つご紹介しましょう。
これもコメントをそのまま読むと
今時は使う人あまりいないと思うけど…
カメラのホットシューに取り付ける外付けフラッシュは
ぶつけたときにカメラ本体よりも先に壊れるようにしています。
カメラメーカー純正の外付けカメラフラッシュの話だけどね。
ということで、出てくるホットシューというのは
一眼レフカメラなどのカメラの上側に付いている銀色の金具の部分
アクセサリーシューとも呼ばれる部分ですね。
ここにフラッシュだったりマイクとかそういうアクセサリーを付けられるんですけれども
教えてもらったのはここにフラッシュを付けた状態で
どこかにぶつけたり地面に落としたりしたときに
その外付けのフラッシュの方が先に壊れるように
そういう設計をしているということです。
もしこのフラッシュが非常に頑丈に作られていたら
高価な値段の高いカメラ本体側が壊れてしまうかもしれないからですね。
このように直しやすい部分
安価な部分の方が先に壊れるような設計というのはよくあると思います。
DFF、デザイン・フォー・フェイラーとも呼ばれることがあるそうですね。
例えば過電のヒューズというものもそれだと思います。
想定よりも大きな過電流が流れたときに
過電の電子回路を守るためにヒューズが先に切れて
それ以上の電流が流れないようにすると。
そういうものですね。
クロージングです。
今週の製造業ニュースは旬報ですかね。
大手では満額回答だったり高水準な回答が相次いでいるとニュースでやっています。
我らが工作機械業界はですね。
大駒さんで昇給が15,960円となかなかの水準の回答でした。
弊社もね、会社からの回答がありまして。
まあそれなりのという感じですかね。
もうちょっと欲しいなというところもありますけれども。
色々ありますからね。
ということで今週はここまでです。
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