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令和8年度改定 感染症検査の見直し3つの要点
2026-08-08 06:32

令和8年度改定 感染症検査の見直し3つの要点

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令和8年度診療報酬改定は、感染症に係る検査の算定要件を見直します。現行の要件には、3つの課題があります。第1に、多剤耐性菌に有効な新規抗菌薬の投与に必要な追加の薬剤感受性検査について、算定の可否が明確ではありません。第2に、新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」)とその他の感染症を同時に対象とする検査が、COVID-19のみを疑う場合でも算定できます。第3に、多項目の病原体を同時に検出する検査のうち、SARS-CoV-2核酸検出を含むものには、施設基準の届出と対象患者の限定が課されていません。本記事は、これら3つの課題に対応する改定内容を、算定要件の変更点に沿って解説します。

今回の見直しは、抗菌薬の適正使用と検査の適正実施を柱に、3つの検査の要件を変更します。第1に、細菌薬剤感受性検査は、多剤耐性菌に有効な抗菌薬の適応判定のために再度実施した場合、改めて所定点数を算定できます。第2に、同時抗原検査は、同時に検出する感染症のすべてが疑われる患者に、算定対象を限定します。第3に、ウイルス・細菌核酸多項目同時検出(以下「マルチプレックスPCR」)は、SARS-CoV-2核酸検出を含むものも施設基準と対象患者の要件の対象とします。

1. 細菌薬剤感受性検査:多剤耐性菌への追加検査を評価

細菌薬剤感受性検査は、多剤耐性菌に有効な抗菌薬の適応判定を行う場合に、再度の算定が認められます。この取扱いは、算定要件に新たな項目として明記されます。

細菌薬剤感受性検査の追加実施が必要になる背景には、新規抗菌薬の登場があります。近年、多剤耐性グラム陰性桿菌の治療薬として、セフィデロコル(CFDC)、セフタジジム・アビバクタム(AVI/CAZ)、レレバクタム・イミペネム・シラスタチン(REL/IPM)の3剤が承認されました。これらの新規抗菌薬は、国内の薬剤感受性装置の感受性プレートに搭載されておらず、従来の抗菌薬と同時に測定できません。そのため医療機関は、別途の感受性プレートを用いて、追加で薬剤感受性検査を実施する必要があります。

追加の薬剤感受性検査については、これまで算定の可否が明確ではありませんでした。細菌薬剤感受性検査は、細菌感染症に対する一連の治療につき1回に限り算定するのが原則です。この原則のもとで、一連の治療中に同一検体から培養された同一の菌に対して複数回の検査を実施した場合の取扱いが、示されていませんでした。改定案は、この原則を算定要件に明記したうえで、例外となる場合をあわせて新設します。

取扱いが明確ではなかった追加検査は、改定後、一定の条件を満たせば算定できます。条件は2つあります。第1に、細菌薬剤感受性検査の結果、カルバペネム系抗菌薬を含む通常の治療で用いられる抗菌薬に対する非感受性又は耐性が確認されることです。第2に、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)等、多剤耐性を有する細菌に対して有効な抗菌薬の適応判定を行う必要があることです。この2つを満たして本検査を再度実施した場合、改めて所定点数を算定できます。

2. 同時抗原検査:すべての対象疾患を疑う患者に限定

同時抗原検査は、同時に検出する感染症のすべてが疑われる患者に、算定対象が限定されます。この見直しは、SARS-CoV-2とその他のウイルスを同時に測定する3つの検査に及びます。

対象となる3つの検査は、いずれも感染症免疫学的検査に位置付けられています。第1が、SARS-CoV-2・インフルエンザウイルス抗原同時検出定性です。第2が、SARS-CoV-2・RSウイルス抗原同時検出定性です。第3が、SARS-CoV-2・インフルエンザウイルス・RSウイルス抗原同時検出定性です。

これら3つの検査は、現行では、COVID-19のみを疑う場合でも算定できます。現行の算定要件は、対象患者を「COVID-19が疑われる患者」、実施目的を「COVID-19の診断」と定めているためです。この要件のもとでは、インフルエンザウイルス感染症やRSウイルス感染症を疑わない発熱患者のスクリーニングにも、同時抗原検査を使えます。

スクリーニング目的での使用には、関係学会が慎重な姿勢を示しています。日本感染症学会と日本臨床微生物学会は、令和7年8月25日の提言で、同時検査キットの使い方に言及しました。提言は、COVID-19とインフルエンザのいずれか一方しか流行していない時期について、「特別な必要性がない場合は単独の検査キットを優先的に使用することが望ましい」としています。

関係学会の提言を踏まえ、改定後の算定要件は、対象患者と実施目的の両方を書き換えます。対象患者は、当該検査が対象とするすべての感染症が疑われる患者となります。実施目的も、すべての感染症の診断となります。たとえばSARS-CoV-2・インフルエンザウイルス抗原同時検出定性は、COVID-19及びインフルエンザウイルス感染症が疑われる患者に対して、両者の診断を目的として実施した場合に、1回に限り算定します。

検査結果が陰性であった場合の追加算定は、改定後も維持されます。ただし、追加算定の条件となる「診断がつかない」疾患の範囲は、検査によって扱いが異なります。SARS-CoV-2・インフルエンザウイルス抗原同時検出定性は、「COVID-19以外」から「COVID-19又はインフルエンザウイルス感染症以外」に広がります。SARS-CoV-2・インフルエンザウイルス・RSウイルス抗原同時検出定性も、対象の3疾患以外に広がります。一方、SARS-CoV-2・RSウイルス抗原同時検出定性は、現行から「COVID-19又はRSウイルス感染以外」とされており、この部分に変更はありません。

3. マルチプレックスPCR:評価体系の再編と要件の適用拡大

マルチプレックスPCRは、評価体系の再編とあわせて、施設基準と対象患者の要件の適用範囲が広がります。見直しは、微生物核酸同定・定量検査の区分立てから対象患者の定義まで、3段階で行われます。

第1段階が、区分立ての整理です。現行は、「ウイルス・細菌核酸多項目同時検出(SARS-CoV-2核酸検出を含まないもの)」と「結核菌群リファンピシン耐性遺伝子及びイソニアジド耐性遺伝子同時検出」を同一区分の963点にまとめ、SARS-CoV-2核酸検出を含むものを別区分の1,350点としています。改定後は、結核菌群の耐性遺伝子同時検出を独立した区分(963点)とします。マルチプレックスPCRは1つの区分にまとめ、「イ SARS-CoV-2核酸検出を含むもの」を1,350点、「ロ SARS-CoV-2核酸検出を含まないもの」を963点に整理します。点数そのものは、いずれも据え置かれます。

第2段階が、施設基準と対象患者の要件の適用拡大です。現行では、施設基準の届出と対象患者の限定は、SARS-CoV-2核酸検出を含まないものにのみ課されています。改定後は、これらの要件がマルチプレックスPCRの区分全体にかかります。SARS-CoV-2核酸検出を含むものも、届出を行った保険医療機関において、厚生労働大臣が定める患者に実施した場合に限り算定できます。この変更は、実務への影響が大きいと考えられます。令和5年度のマルチプレックスPCRの算定回数は、99%以上をSARS-CoV-2核酸検出を含むものが占めているためです。

第3段階が、対象患者の定義の見直しです。現行の対象患者は、「重症の呼吸器感染症と診断された、又は疑われる患者」と「集中治療を要する患者」のいずれにも該当する患者です。改定後は、次の2つのいずれかに該当する患者となります。イが、重症の呼吸器感染症と診断された、又は疑われる患者であって、集中治療を要する患者です。ロが、COVID-19又はインフルエンザウイルス感染症等が疑われ、重症化のおそれが高い患者です。ロの追加は、日本感染症学会の実施指針が対象患者に重症化リスク因子を有する患者を含めていることを踏まえたものです。

対象患者の見直しにあわせて、施設基準も一部が簡素化されます。現行の施設基準は、必要な医師の配置と、対象患者の治療を行うにつき十分な体制の整備の2つを求めています。改定後は、必要な医師の配置のみが残ります。

まとめ:3つの見直しに共通する視点は「適正使用」

令和8年度診療報酬改定は、感染症に係る検査の要件を3点にわたって見直します。第1に、細菌薬剤感受性検査は、カルバペネム系抗菌薬等への非感受性又は耐性が確認され、多剤耐性菌に有効な抗菌薬の適応判定が必要な場合に、再度の算定が可能となります。第2に、同時抗原検査は、同時に検出するすべての感染症が疑われる患者に、算定対象が限定されます。第3に、マルチプレックスPCRは、SARS-CoV-2核酸検出を含むものにも施設基準と対象患者の要件が課され、対象患者には重症化のおそれが高い患者が加わります。3つの見直しに共通する視点は、抗菌薬と検査の適正使用です。必要な検査には評価を広げ、必要性の低い検査は絞り込む。この方向性を踏まえ、自院の検査運用と届出状況を早めに確認しておくことをおすすめします。



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サマリー

令和8年度診療報酬改定では、感染症検査の「念のため」という慣習を見直し、医療資源の適正配分を目指します。多剤耐性菌に有効な新規抗菌薬の追加検査が算定可能となる一方で、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの同時抗原検査は、対象疾患すべてが疑われる患者に限定され、スクリーニング目的での利用は制限されます。また、マルチプレックスPCR検査も施設基準と対象患者の要件が厳格化され、重症化リスクの高い患者への安全網を強化しつつ、検査の無駄をなくすことで、持続可能な医療システムの維持を図ります。

令和8年度改定の概要と適正使用の重要性
もし皆さんが、あの、ただの風邪で病院に行って、念のため、今流行ってるウイルス全部検査しておきましょうか?って言われたら、なんかラッキーって思いませんか?
あー、そうですよね。一度に全部調べてくれるなら安心だなーって普通は感じると思います。 でも実はそれ、あの、日本の医療制度を崩壊させかねない、ちょっと危険なサインだったりするんですよ。
へー、そうなんですか。全部調べた方がいいんじゃないの?って思っちゃいますが。ということで、今回の深掘りでは、令和8年度の感染症検査の見直しについて紐解いていきます。
はい、よろしくお願いします。
このちょっと難解な制度変更が、皆さんの受ける医療にどう影響するのか、今回は、適正しようというキーワードを軸に解き明かすのがミッションです。早速いきましょう。
今回の見直しは、まさに現場のその念のためという日常的な感覚に大きくメスを入れているんですよね。限られた医療資源を本当に必要なところへどう割り当てるかっていうのが、全体の大きなテーマになっています。
なるほど。なんか予算を削るだけの話なのかなって最初は思ったんですけど、実は今回の改定で手厚くサポートされるような分野もあるんですよね。
細菌薬剤感受性検査の見直し:多剤耐性菌への対応
そうなんですよ。代表的なのが、新しい抗菌薬を使うための細菌薬剤性感受性検査ですね。
新しい抗菌薬っていうと具体的にはどういったものでしょうか。
はい、ここ数年でセフィデロコルのような新しい抗菌薬が登場していまして、これってカルバペネム系といった従来の強力な薬すら跳ね返す、いわゆるスーパーバグを倒すための最新の切り札なんです。
へー、スーパーバグ。なんだか手強い細菌ですね。それに対する検査が変わったと。
そうなんです。ただ、これまでの制度だと、この新薬が効くかどうかを調べるための追加検査が保険のルール上で適切に評価されていなかったんですよ。従来の検査プレートには載っていなくてですね。
ちょっと待ってください。ということは改定前は病院側が多剤耐性菌をやっつける新薬のための追加検査を、なんと自腹でやらざるを得なかったってことですか?
まあそういう厳しい状況もあったわけです。あるいは患者さんへの最適な薬の投与が遅れるリスクもありましたね。
それは絶対にルールを変える必要がありますね。
ええ。なので今回、多剤耐性菌の疑いがあるという条件付きで、その追加検査にしっかりとお金が出る算定が認められることになりました。
真に必要な検査にはちゃんと材源を削くということですね。でも、その材源を生み出すためには、どこかの無駄を削らなければいけないと。
同時抗原検査の適正化:スクリーニング利用の制限
まさにそこです。そこでターゲットになったのが、私たちがよく知るコロナ、インフルエンザ、RSウイルスの同時抗原検査なんですよ。
ああ、よく聞くやつですね。
はい。今回の改定で、この同時検査は対象となるすべての疾患が疑われる患者に限定されることになりました。令和7年8月の関連学会の提言を踏まえてですね。
ということは、発熱のスクリーニング目的、とりあえず検査しておこうみたいな使い方はできなくなったってことですか?
その通りです。コロナだけを疑うような場合には算定できなくなりました。
これって、素人感覚からすると、あのハンバーガーしか食べたくないのに、特大のセットメニューを頼むようなものですよね。
政府はポテトもドリンクも必要ないならセットは頼むなよって言っているわけですよね。
ははは、すごく分かりやすい例えですね。まさにその通りで、医療的な観点からもリスクが大きいんです。
一方のウイルスしか流行していない時期に、ただ熱が出たからって手当たり次第に検査すると、あの偽陽性のリスクが高まってしまうんですよ。
あっ、本来陰性なのに陽性で出ちゃうんですね。間違った薬を出されたら元も子もないですね。
ええ、さらに本当にその検査キットが必要な流行のピーク時に、在庫が枯渇してしまうという深刻な問題も起きます。
なるほど。ゆべさきの小さなトゲを探すために、部屋中の家具を全部ひっくり返して大掃除を始めるような無駄遣いだったわけですね。労力もキットも無駄になると。
マルチプレックスPCR検査の評価体系再編と要件拡大
はい、患者さん自身の不利益にもつながりますからね。としてて、この適正化の波は、より高度で高額なマルチプレックスPCR検査にも及んでいるんです。
ほう。マルチプレックスPCRっていうと、複数のウイルスを一度に調べるやつですよね。
そうです。令和5年度の実績を見ると、実はこの検査の99%以上がコロナの拡散検出を含むものだったんですよ。
へえ、99%ってほぼ全部じゃないですか。じゃあ私がただの風邪で病院に行って、念のためPCRもお願いしますって言っても、これからは簡単には受けられなくなるんですか?
そうですね。単なる軽症であれば対象外になります。施設基準もすごく厳格化されました。
なんか、すごく厳しくなっちゃったように聞こえるんですけど。
あの、一見すると切り捨てのように感じるかもしれませんが、実は安全網の強化と捉えるべきなんです。
安全網の強化ですか?どういうことでしょう?
今回、対象患者の定義が見直されまして、従来の集中治療を要する重症患者に加えて、新たにコロナ等の疑いで重症化の恐れが高い患者というのが対象として追加されたんです。
なるほど。つまり、あなたが単なる軽い風邪なら高度な検査は受けられないけれど、もしあなたがハイリスクな状態であれば、精度の網の目が以前よりもしっかりとあなたを拾い上げてくれるようになったということですね?
その通りです。何でもかんでも検査をするのが良い医療ではなくて、必要な人に必要なタイミングで最適な検査を行う。これが持続可能な医療システムを守るために絶対に必要なんです。
医療の持続可能性と個人の意識
検査ツールボックスの徹底的な大掃除ですね。必要な専用ツールは使いやすくして、万能ツールの無駄使いはやめると。
はい、まさにそういうことです。
さて、皆さんが次に風邪でクリニックを受診したとき、少しだけ考えてみてください。今日の私たちが念のため全部検査して、という手軽な安心感を手放すことが、実は将来あなたが本当に危機に陥ったときに確実に命を救ってくれる医療リソースを守る最大の防御策になっているとしたら。
そうですね。一人一人の意識が未来の医療を支えるんだと思います。
はい、本日はここまでとさせていただきます。皆さん、また次回の深掘りでお会いしましょう。
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