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【令和8年度改定】抗HLA抗体検査、移植待機患者は感作歴なしでも算定可能に
2026-08-07 06:14

【令和8年度改定】抗HLA抗体検査、移植待機患者は感作歴なしでも算定可能に

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令和6年度診療報酬改定では、移植待機患者に対する抗HLA抗体スクリーニング検査が、輸血歴や妊娠歴等の感作歴(免疫が他人のHLAに反応する状態になる経験)がある患者に限って算定できることとされました。しかし、感作歴のない移植待機患者にも、抗HLA抗体陽性の患者が一定程度存在します。この限定要件のもとでは、陽性患者を移植前に把握できず、臓器生着率の向上という目的を十分に果たせません。本稿では、令和8年度診療報酬改定における「抗HLA抗体検査の算定要件の見直し」(Ⅲ-5-5-④)の内容と実務上の留意点を解説します。

今回の見直しは、日本臓器移植ネットワークに移植希望者として登録された患者について、感作歴の有無にかかわらず抗HLA抗体スクリーニング検査を算定可能とするものです。見直しの背景には、感作歴のない待機患者でも抗HLA抗体陽性率が高いという国内外の報告があります。見直しの内容は、算定要件から「輸血歴や妊娠歴等から医学的に既存抗体陽性が疑われるもの」という限定を削除することです。見直し後も、算定回数の上限と摘要欄への記載要件は従来どおり維持されます。

1. 見直しの背景:感作歴のない待機患者にも陽性者が存在する

見直しの背景は、令和6年度改定で設けた感作歴の限定が、実態と合わなくなった点にあります。この限定は、抗体陽性の可能性が高い患者を効率的に検査するための要件でした。しかし、その後の知見は、感作歴を陽性の指標とすることの限界を示しています。

令和6年度改定は、移植前の抗HLA抗体検査を新たに保険適用としました。移植前の抗HLA抗体は、ドナー選択や移植後の治療方針に重大な影響を及ぼす因子です。この因子を事前に把握できれば、術前に脱感作を行うなどの対応が可能となり、臓器生着率の向上につながります。そこで令和6年度改定では、輸血歴や妊娠歴等の感作歴がある症例に限り、移植前の検査を算定可能としました。

一方、感作歴のない症例でも抗HLA抗体が陽性となる報告が、中医協の議論では複数示されました。海外の報告では、感作歴がないと考えられる一般健常男性の63%が、MFI 1000以上の抗HLA抗体を有していました(Class ⅠとⅡを合わせた陽性率)。腎移植待機患者を対象とした海外の報告では、感作歴のない患者の77%が抗HLA抗体陽性でした(MFI 1000超)。本邦の報告でも、生体腎移植待機患者のうち感作歴のない78例中28例(35.9%)が抗体スクリーニング検査で陽性でした。

これらの報告を踏まえ、中医協は抗HLA抗体検査の対象患者要件を論点として取り上げました。論点の前提として、抗HLA抗体陽性患者は臓器生着率が低い点が示されました。あわせて、待機期間中の事前の治療が推奨される点も示されました。その結果、「これまでの議論の整理」では、感作歴にかかわらず検査を実施できるよう対象患者を見直す方向が示されました。

2. 見直しの内容:対象患者から感作歴の限定を削除

見直しの内容は、算定要件の対象患者から感作歴に関する限定を削除することです。削除の対象は、現行の要件に置かれた「であって、輸血歴や妊娠歴等から医学的に既存抗体陽性が疑われるもの」という文言です。この文言の削除により、日本臓器移植ネットワークに移植希望者として登録された患者は、感作歴の有無を問わず算定の対象となります。

新旧の算定要件は、次のとおり対応します(自己抗体検査「48」抗HLA抗体(スクリーニング検査)の算定要件(29))。

■ 対象患者:ここだけが変わります

* 現行:肺移植、心移植、肝移植、膵移植、小腸移植若しくは腎移植後の患者又は日本臓器移植ネットワークに移植希望者として登録された患者であって、輸血歴や妊娠歴等から医学的に既存抗体陽性が疑われるもの

* 改定案:肺移植、心移植、肝移植、膵移植、小腸移植若しくは腎移植後の患者又は日本臓器移植ネットワークに移植希望者として登録された患者

■ 算定回数・記載要件:変更はありません

* 算定回数:原則として1年に1回

* 追加算定:抗体関連拒絶反応を強く疑う場合等、医学的必要性がある場合は1年に1回に限り更に算定可能

* 記載要件:追加算定時は理由及び医学的な必要性を診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載

対象患者の範囲は、移植後の患者と移植希望登録者の2つに整理されます。移植後の患者とは、肺移植、心移植、肝移植、膵移植、小腸移植または腎移植を受けた患者です。移植希望登録者とは、日本臓器移植ネットワークに移植希望者として登録された患者です。今回の見直しは、このうち移植希望登録者について、感作歴による絞り込みをなくすものです。

移植後の患者については、今回の見直しによる実質的な変更はありません。移植後の患者は、令和6年度改定より前から算定の対象とされていました。感作歴の限定は、令和6年度改定で移植希望登録者を追加した際に付された条件です。したがって、今回削除される文言は、移植希望登録者に係る条件として整理して理解してください。

3. 実務上の留意点:算定回数と記載要件は従来どおり

実務では、要件のうち何が変わり、何が変わらないかを区別して運用してください。変わるのは対象患者の範囲だけです。算定回数の上限、追加算定の考え方、記載要件のいずれも従来どおり維持されます。

算定回数は、原則として1年に1回です。この原則を超える場合は、抗体関連拒絶反応を強く疑う場合等、医学的必要性が求められます。医学的必要性がある場合でも、追加算定は1年に1回が上限です。

追加算定を行う場合は、記載要件を満たす必要があります。記載する内容は、追加算定の理由と医学的な必要性です。記載する場所は、診療録および診療報酬明細書の摘要欄です。

算定にあたっては、患者が日本臓器移植ネットワークの移植希望登録者であるかの確認が前提となります。感作歴の限定がなくなった一方で、移植希望者としての登録という要件は残るためです。なお、登録状況を診療録で確認できる運用をあらかじめ整えることは、通知上の要件ではなく実務上の備えとしての提案です。

まとめ:感作歴の有無を問わない検査で、移植前の抗体把握を確実に

令和8年度改定では、抗HLA抗体スクリーニング検査の対象患者が見直されます。見直しの背景には、感作歴のない待機患者でも抗HLA抗体陽性率が高いという報告があります。見直しの内容は、日本臓器移植ネットワークの移植希望登録者について、感作歴による限定を削除することです。見直し後も、原則1年に1回という算定回数と、追加算定時の摘要欄への記載要件は変わりません。移植前の抗体把握を確実にすることが、臓器生着率の向上につながります。



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サマリー

令和8年度の診療報酬改定により、臓器移植の成功率を左右する抗HLA抗体検査の算定要件が劇的に見直されます。これまでの「感作歴がある患者のみ」という限定が、感作歴のない患者にも抗体陽性者が多数存在するという衝撃的なデータに基づき撤廃されることになりました。これにより、日本臓器移植ネットワークに登録された移植希望者であれば、感作歴の有無にかかわらず検査が可能となり、移植前の抗体把握が確実になることで臓器生着率の向上が期待されます。

導入:命に関わる医療現場の不合理なルール
みなさんちょっと想像してみてほしいんですけど、車に乗るときに、過去に大きな交通事故にあった経験がある人しか、シートベルトをしちゃいけませんって言われたらどう思います?
これ絶対変ですよね。 いやー、それはまあいくらなんでも理不尽すぎますね。 ですよね。でも実は臓器移植っていう、まさに命がけの医療現場で、これまでそれに近いルールが存在していたんですよ。
そうなんですよね。ちょっと信じられないかもしれませんが。
というわけで今回の深掘りのテーマは、臓器移植の成功率を大きく左右する抗HLA抗体検査についてです。
令和8年度の診療報酬改定で、この検査のルールが劇的に変わることになりました。
はい、大きな変化ですね。
今日のミッションはですね、最新のデータがいかにして医療の常識を売り方して、国の制度をアップデートさせたのか、これをあなたと一緒に読み解くことです。
抗HLA抗体検査とは?旧ルールの問題点
一見するとすごく専門的な話題に見えるかもしれないんですけど、私たちが当たり前だと思っている前提を疑うっていう、その面白さを教えてくれる事例なんですよ。
なるほど。じゃあ早速なんですが、そもそもその抗HLA抗体検査って何なんですか。何で今になってルールが変わるんでしょうか。
まずHLAっていうのは、細胞の表面にあるバーコードみたいなものだと思ってもらえればいいですね。
バーコードですか。はいはい。
体内の免疫システムは、自分と違うバーコードを見つけると、それを異物だとみなして攻撃しちゃうんです。
あーなるほど。自分じゃないって判断するわけですね。
そうなんです。その攻撃部隊である抗体が移植をする前に、すでに体内に存在しているかどうか、これを調べるのがこの検査なんですよ。
ってことは自分のバーコードじゃない臓器が入ってきた時に、あらかじめ攻撃部隊がスタンバイしちゃってるかを確認すると。
まさにその通りです。もし事前に抗体があるってわかれば、脱管削って言うんですけど、術前にその攻撃部隊を無力化する治療ができるんですよね。
へー無力化できるんですね。
はい。これによって、移植した臓器が体に定着する、成着率がもう劇的に上がるんですよ。
すごく大事な検査じゃないですか。全員やればいいのに。
そう思いますよね。でも令和6年度までの古いルールだと、過去に輸血とか妊娠とか他人の細胞に触れる機会があった患者さんしかこの検査を算定できなかったんです。
なんでですか。過去に他人のバーコードに触れた観察歴って言うんでしたっけ。その観察歴がある人だけが攻撃部隊を持ってるだろうって推測して対象を絞っていたってことですか。
そういうことです。
常識を覆す衝撃的なデータ
まあ効率的に聞こえなくもないですけど、それの何が問題だったんですか。
それがですね、その古いルールの前提を完全に打ち崩すような衝撃的なデータが出てきたんですよ。
衝撃的なデータですか。
実は、輸血も妊娠も経験していない、つまり観察歴がない一般の健康な男性のなんと63%が抗体陽性だったっていうデータが示されたんです。
ちょっと待ってください。輸血もしたことない健康な男性の半分以上が陽性ってことですか。
そうなんですよ。さらに日本国内の生体人移植の待機患者さんでも観察歴がないのに約36%、78人中28人が陽性だったんです。海外の待機患者に至ってはもう77%に上ります。
いやいや、それなら今までのその他人の細胞に触れた人だけが抗体を持つっていう前提、完全に間違っていたことになりません。
まさにそこなんです。古いヒルターが全く機能していなかったんですね。
うわー、それはちょっと怖すぎますね。
令和8年度改定:感作歴の限定撤廃と実務上の留意点
観察歴がないからって検査対象から外された人の中に、実は陽性で移植後に臓器が攻撃されてしまうリスクを抱えた患者さんが大量に取りこぼされていたわけです。
救えるはずの命を危険にさらしていたってことですよね。じゃあもう網の目を広げるしかないじゃないですか。
はい。そこでおっしゃる通り、令和8年度の改定では、算定要件から観察歴という縛りが完全に削除されることになりました。
おー、ついに。
日本臓器移植ネットワークの移植希望登録者であれば、過去の経験の有無は一切問わず全員が検査対象になります。
よかった。つまり、限られた人専用のVIPゲートから全員をスキャンできる最新のセキュリティゲートにアップグレーブしたようなものですね。
そうですね。すごくわかりやすい例えだと思います。ただ、実務上のルールが何でもかんでも無制限に緩くなったわけではないっていう点には少し注意が必要でして。
そうなんですか。どんな条件が残ってるんでしょう。
原則1年に1回という算定回数の上限はあります。ただ、抗体関連の拒絶反応を強く疑うような医学的な必要性がある場合にのみ追加で年1回算定できるっていうルールは維持されているんです。
そして、その理由をカルテの適用欄にしっかり記載するっていう要件もそのままですね。
まとめ:データが導く医療システムの進化
ということは、門戸は広く開けたけれど、医療費の適正化とか無駄な検査を防ぐための合理的なガードレールはしっかり残されているってことですね。
はい。まさにその通りです。必要な人に必要な検査を確実に届けつつ、システムの持続可能性も守るという非常に利にかなったアップデートだと言えます。
今回の話、皆さんはどう感じましたか?これ単なる医療ルールの変更っていうだけじゃなくて、新しいデータがいかに既存の常識を打破して社会システムをアップデートさせるかっていうあらゆる分野に通じるダイナミズムの恒例だったと思います。
ええ。事実に向き合って柔軟にシステムを変えていく姿勢っていうのは本当にどんな業界でも重要ですからね。
そうですよね。では最後にここであなたに一つ疑問を投げかけてお別れしたいと思います。
はい。
輸血も妊娠もしていない人たちの体内になぜ他人の細胞を攻撃する抗体が作られていたんでしょうか?
不思議ですよね。
もしかすると私たちがまだ気づいていない日常の中に棲む未知の免疫のトレーニング係みたいなものがいるのかもしれません。あなたはどう考えますか?ぜひ考えてみてください。
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