抗がん剤は、調製する薬剤師や投与する看護師などの医療従事者に、ばく露のリスクをもたらします。このばく露リスクを下げる閉鎖式接続器具は、これまで無菌製剤処理(調製)の段階でのみ評価されてきました。一方、患者への投与の段階では、閉鎖式接続器具を用いても診療報酬上の評価がありませんでした。そこで本稿では、令和8年度診療報酬改定で新設される「投与時閉鎖式接続器具使用加算」を解説します。
令和8年度改定は、抗がん剤の投与時に閉鎖式接続器具を用いた場合の加算150点を新設します。この加算の対象は、無菌製剤処理料1の「イ」に該当する患者です。加算の算定要件は、製剤処理時と投与時の両方で閉鎖式接続器具を用いることです。加算の施設基準は、外来腫瘍化学療法診療料1の届出を行っていることです。
改定の背景:抗がん剤のばく露リスクと環境汚染
改定の背景には、抗がん剤のばく露リスクがあります。抗がん剤は、細胞の増殖を抑える強い作用を持つ薬剤です。この強い作用は、患者だけでなく、薬剤を扱う医療従事者の健康にも影響を及ぼします。医療従事者は、薬剤の調製時や投与時に、飛散した薬剤へ意図せずばく露するおそれがあります。
このばく露リスクは、国内の疫学調査でも裏づけられています。厚生労働省は、抗がん剤のばく露リスクに関する国内の疫学調査を踏まえ、今回の評価を検討しました。あわせて、閉鎖式接続器具を用いた場合に抗がん剤による環境汚染が低減するという報告も踏まえています。これらの調査と報告が、投与時の評価を新設する根拠となりました。
環境汚染の低減に役立つのが、閉鎖式接続器具です。閉鎖式接続器具は、バイアル内外の差圧を調節する機構を持つ器具です。この機構により、薬剤の飛散などを防止します。飛散を防止することで、医療従事者へのばく露と作業環境の汚染をあわせて抑えます。
加算の内容と対象患者:投与時閉鎖式接続器具使用加算150点
今回新設されるのは、投与時閉鎖式接続器具使用加算です。この加算は、無菌製剤処理料1に上乗せする加算です。加算の点数は150点です。加算の趣旨は、調製時に続いて投与時のばく露対策も評価することにあります。
加算の対象は、無菌製剤処理料1の「イ」の対象患者です。今回の加算は、この「イ」の対象患者に投与する場合に限って算定できます。
算定要件と施設基準:調製時と投与時の両方が条件
加算の算定要件は、閉鎖式接続器具を2つの場面で用いることです。1つ目の場面は、無菌製剤処理料1のイを実施する調製時です。2つ目の場面は、患者への投与時です。この2つの場面の両方で閉鎖式接続器具を用いた場合に、加算を算定できます。調製時だけ、あるいは投与時だけの使用では算定できない点に注意が必要です。
加算の施設基準は、外来腫瘍化学療法診療料1の届出です。加算を算定するには、外来腫瘍化学療法診療料1に係る届出を行っている保険医療機関である必要があります。
まとめ
令和8年度改定は、抗がん剤の投与時に閉鎖式接続器具を用いた場合の加算150点を新設します。この加算は、医療従事者のばく露リスクと環境汚染を抑える対策を、調製時に続いて投与時にも評価するものです。加算の対象は無菌製剤処理料1の「イ」の患者、算定要件は調製時と投与時の両方での閉鎖式接続器具の使用、施設基準は外来腫瘍化学療法診療料1の届出です。抗がん剤を扱う医療機関は、この3つの条件を確認し、投与時のばく露対策と加算の算定を進めていきましょう。
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Summary
令和8年度診療報酬改定で新設された「投与時閉鎖式接続器具使用加算」について解説しています。この加算は、抗がん剤の調製時と投与時の両方で閉鎖式接続器具を使用することで、医療従事者の抗がん剤曝露リスクと環境汚染を低減することを目的としています。高度な安全管理体制を持つ病院が対象となり、薬剤の準備から患者への投与までの全工程における一貫した安全管理が求められます。
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