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英語史の著者の堀田隆一です。 英語の語源が身につくラジオheldio。英語史をお茶の輪におもっとうに、英語の歴史の面白さを伝え、
裾野を広げるべく、毎朝6時に配信しています。 本日は2月11日土曜日です。いかがお過ごしでしょうか。
本日お届けする話題は、素朴な疑問です。 なぜ new something ではなくsomething new なの、です。 どうぞよろしくお願いいたします。
本題に入る前に、新著のお知らせです。 京都大学の家里陽子先生と、私堀田隆一による教著、文献学と英語史研究が開拓者より出版されています。
開拓者の最新英語学言語学シリーズの第21巻として出されたものなんですけれども、この1月12日より発売となっています。
英語史研究のガイドブックという趣旨の本で、この40年にわたる英語史研究の潮流、
そして今後の展望、こちらをおよそ分野別に、音韻論、綴り字、形態論、統合論という形で、分野別に紹介しています。
最新の研究の動向も、こちらの本でとてもよくわかるようになっていますので、 例えばですけれども、私が執筆した第三章音韻論綴り字というところでは、
このヘルディオでもたびたび取り上げています大母音綴をですね、3.6節で扱っています。
ページで言いますと84ページから86ページあたりにかけてなんですけれども、これ実はですね、この大母音綴っていうのは最近ではですね、
学術的にはカッコつきで、カギカッコつきで大母音綴、みたいに言うことが多くて、
なぜカギカッコがつくようになったのかというのは、かなり面白い話なんですね。最新の研究に照らすと、従来大母音綴と呼ばれていたものをですね、
一度解体しなければいけないんではないか。少なくとも解釈し直さなければいけないんじゃないかという雰囲気になってきたからなんですね。
研究が進んでいるということにもなります。例えばこのような話題も扱っております。
新聴、文献学と英語史研究、ご関心のある方はぜひ手に取っていただければと思います。
新聴の紹介でした。今日の本題は素朴な疑問です。
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なぜnew somethingではなくsomething newなの?という語順に関する問題です。
普通ですね、英語では形容詞、そして名詞というふうに、形容詞が名詞を修飾するものとして用いられている場合の通常の語順というのは、今言ったとおり、
形容詞プラス名詞ということなんですね。他の言語ではこれがひっくり返るのがデフォルトというような言語もあったりするわけですが、英語に関しては基本、デフォルトはですね、
形容詞プラス名詞ということになっています。例えば、
a new building とか a new face なんていう言い方になるわけですよね。
ところが不定代名詞と呼ばれる something, anything, nothing であるとか、人を表す
somebody, anybody, nobody あるいは someone
anyone, no one のような言い方も含めてなんですけれども、こういった不定代名詞を修飾する場合、形容詞はむしろ後ろに
something new という言い方になる、nothing wrong とかですね、everything Japanese とか、こんな言い方になるわけですよ。
これは私もですね、英文法で最初にこの形容詞のコーチ修飾というんですか、これを学んだとき、変だな、変な規則だなというふうに思ったんですね。
例えば関係詞であるとか、分詞形容詞、それから不定詞の形容詞的用法というものですね、これは後ろから名詞を修飾するっていうのは、さらに進んだ文法事項で習うわけなんですけれども、こういうのはあるっていうのは後からわかるんですが、今回の場合、new という本当に通常の普通の一語の形容詞なんですよ。
普通、修飾される名詞の前に置くということで、原則なはずなんですけれども、このような some,any, no がつく不定題名詞ですね。この場合には後ろに回るっていうのが英語の規則なんですね。
なぜそうなのかということです。
英語詞的に考えてみたいと思うんですけれども、これですね、私もですね、絶対的な答えがあるというわけではなくて、探っている最中なんですけれども、したがって仮説と言いますか、一つの考え方として、今日はお聞きいただきたいわけなんですけれども。
3つくらいの観点から考察したいと思います。
まず一つ目なんですけれども、事実としてですね、このような something new のタイプの語順が英語史上初めて現れたのはいつかというふうに調べてみますと、
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初出は14世紀後半のウィックリフの聖書と言われるものに出るんですね。
この中で次のような文が現れます。
They've been to seeking something certainer ということで、文字通り一語一語現代訳しますと、
They are to seeking something certainer ということですね。
最後の単語は certain の比較句ですね、er。
今であれば more certain というふうに二語で言うのが普通かと思いますが、当時は er をつけて certainer のように言ったっていうことなんですね。
つまり something certainer, something more certain というような後ろからの修飾です。
これがいわゆる something new のタイプの初めての例だということになります。
14世紀後半ですね。
ここでヒントになるのは、これ聖書の訳なんですね。
下敷きにあったのはラテン語の聖書です。
そのラテン語では aliquid, certius とあります。
aliquid っていうのが something に相当します。
そして certius というのがまさに certainer, more certain の意味なんです。
something, certainer という語順になっています。
従ってこのもともとのラテン語聖書での並び順、語順というものをそのまま英語に移し替えたという可能性はあり得ます。
そうしますとラテン語の語順の影響ということが一つ考えられるということになります。
ただ、ラテン語からの影響であるとか多言語からの影響っていうのは一般的にですね、証明するっていうのが簡単では決してないんですね。
この箇所に関して言えば確かに同じ順になっている。
なので影響があったという可能性があると言えても、一般論として本当にこれがですね、ラテン語の影響で英語の something new みたいな言い方、並び順っていうのが確立したんだというためにはですね、
もっといろいろと調べていかなければいけないということで、たまたまこの箇所だけ同じ並び順だったということを証拠にですね、一般論を論じることはなかなか難しいっていうことがあるんですね。
一つの可能性として、このラテン語影響説というのは一応置いておいても良いとは思いますけれども、直ちにですね、これこそがこの英語の something new の語順の源であるというふうに断言するっていうことは難しいんです。
ですので、ここはあくまで選択肢の一つとして挙げておきます。
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これ第一点目ですね。
二つ目の観点なんですけれども、それよりもずっと先にですね、もっと前の時代に somethingnew に連なる種みたいなものは実は英語内部にあったということです。
小英語です。
小英語最末期で、もうほぼですね、中英語に入り込んでいるというぐらいの時代なんですが、12世紀です。
この時期にですね、こんな形が現れるんですね。
これどういうことかと言いますと、something news というに new という形容詞に sがついている形です。
当時は es だったんですけれども、当時の発音で something news というような言い方です。
これ何かと言いますと、
something の後に new っていう new ですね。
新しいを意味する形容詞がそのまま名詞化して新しいものぐらいの意味で使われており、しかもそれが所有格のs、続格の s を伴って新しいもののぐらいに意味になっているんですね。
新しいものの何者かみたいな言い方で部分続格っぽい使い方なんですね。
something new ではなく something new s という所有格続格の語尾がついているっていうのがポイントで、
所有格続格っていうのは of で言い換えられますので、いわば something of new のような言い方をしているのに他ならないっていうことなんです。
これですね、フランス語などを知っている方は quelque chose de nouveau という言い方で de nouveau っていうのがまさに of new っていうことなんですよね。
これと比較することができると思います。
ただかなり早い段階なので、直接この quelque chose de nouveau みたいな言い方がフランス語にあったとしても、
それの影響で英語がこの同じような語法を受け入れたという、いうには少し時代が早すぎるので、そうではないと思います。
英語での独自の発達、部分続格の用法なんだと思いますね。
new がそのまま形容詞ですが、もともとは名詞化し、そしてその名詞がさらに所有格続格の形になって、後ろから something を修飾するというような言い方です。
something news って言い方です。
つまり、こうした言い方はすでに小英語、最末期ではありますけれどもあって、部分続格的な用法としてあったわけなんですが、後にこの部分続格の意味なり用法というのが、
よく認識されないようになって、s が落ちた、つまり単なる new という形容詞が後ろから修飾するという形になった。
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場所としては後ろに残るということですね。
この構文といいますか、パターンが現れる素字は、小英語、最末期からすでにあったというふうに考えられると思うんですね。
3つ目の観点は因律的な観点です。
何かと言いますと、もともと something っていうのは something あるものということだったんですね。
ところがこれが形式化して、いわば文法化して不定代名詞になってきます。
そうしますと、something という発音に一語になるんですね。
この something に対して new は、では前か後ろかという問題になるんですが、前にくるとnew something 強強弱になっちゃうんですね。
後ろにくると something new つまり強弱強になって、うまくリズムに乗るっていうことがあるんではないかということです。
エンディングです。
今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
今日は一つの素朴な疑問、なぜ new something ではなくて something new なのかという問題について、
英語式的な観点から3つのアプローチですね。
これで迫ってみました。
ある素朴な疑問を解こうとする際に、複数のアプローチで説明しようとトライしてみるっていうのは、
英語式の考え方の一つの典型なんですね。
唯一の理由とか考え方があるっていうわけではなくて、複数のものを組み合わせて考えてみるっていうのが、
この分野の割と典型的な考え方、発想法なんですね。
今回は、もしかしたらラテン語の語順をですね、そのままなぞったということかもしれないということから始まり、
ただしですね、それよりずっと前に、本来の古英語の中にある意味種があった、
something news みたいな言い方ですけどもね、これがあったという事実も指摘し、
そして最後には全く異なる韻律というリズムという観点からもですね、
この語順っていうのは理屈にかなっているというような議論を展開しました。
3つぐらい今回出したんですが、もっと本当はあるんだろうと思います。
もっと調べれば調べるほど色々な観点が出てきます。
私は英語史の研究が面白いのはこの点だと思うんですね。
一つの素朴な疑問というのが与えられた時に、
一つの答えだけで全てがきれいに説明されるっていうことは実は非常に少ないんですね。
複数の観点が合わさって、全体としてですね、きれいに説明できるっていうことがあり得る。
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今回はきれいっていうことではないんですけどもね、仮説なので。
もちろんこの全てが何らかの証拠、事実に基づいた上での仮説、
あり得る見方だということは必要だと思うんですね。
それを寄せ集めて、最終的にこれをうまく説明できるような方法を生み出す、考え出すということかと思うんですね。
考え方あるいは問題の解き方の参考にしていただければと思います。
私もこの問題まだ未解決という位置づけですので、色々と調べていきたいと思っています。
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今週も皆さんから本当にたくさんのコメントを寄せていただきまして、
必ずしも日々反応できているわけではないんですけれども、全て読んでおります。
私自身もこのようにして毎日いただいているコメントにインスピレーションを得ながらですね、
新しい話題、トピックを考えたりして、日々放送をお届けしています。
皆さんの活発なコメント談議、毎日期待しております。
それでは今日も皆さんにとって良い1日になりますように、ほったり口がお届けしました。また明日。