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2026-10-15 15:36

#107 『眺めのいい部屋』:ルーシーの家は、どのくらい『いい家』なのか?

🎙️ ようこそ、英国ドラマタイムへ! 英国の歴史ドラマをもっと楽しむためのポッドキャスト。

 

映画『眺めのいい部屋』を楽しむ4つの切り口シリーズ、第2回。

 

ルーシーの家と、セシルの家。二つの家を比べると、二人が育った世界の違いが見えてきます。

ルーシーの家は、どんな家だったのでしょうか。

そして、セシルの目には、どんなふうに映っていたのでしょう。

 

今回は、小説に描かれた暮らしや、撮影に使われた実際の邸宅、セシルの母親が暮らすロンドンの家をたどりながら、二人の婚約を取り巻く家族の思いにも目を向けます。

撮影の舞台裏や、私が実際に訪れた邸宅の話も交えてお届けします。

 

公開40周年の4K版が、ただいま全国で公開中です。 ご覧になった方も、これからの方も、ぜひお聞きください。

 

▼あらすじはこちらの回で
#103 映画『眺めのいい部屋』眺めのある部屋で、ルーシーに見えるようになったもの

https://listen.style/p/british-drama-time/room-with-a-view-lucy-sees

 

【お知らせ:「眺めのいい部屋」オンライン会 】 

・開催日時: 2026年11月7日(土)〜

・申込締切: 2026年10月31日

・詳細・お申込はこちら: https://forms.gle/zp5AgKMSvAf2LkxE6

 

 

▼今回参考にした資料 
・E.M.フォースター『眺めのいい部屋』(1908年) 
・John Pym 『Merchant Ivory’s English Lnadscape』(1995)
・The Royal Borough of Kensington and Chelsea『Linley Sambourne House』(2017)

 

 

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サマリー

映画『眺めのいい部屋』に描かれるルーシーの家を、原作の設定、撮影に使われた邸宅、セシルの母親のロンドンの家という三つの角度から見ていく。ルーシーの家は、地元では名家と間違えられるほどの良い家だが、弁護士として働いた父が一代で建てた新しい中流家庭の家でもある。撮影地フォックスウォールドでは、森の中に池を作り、古い家を物語の時代に合うよう塗り替える工夫が施された。対してセシル側のリンリー・サンボーン・ハウスは豪華なテラスド・ハウスで、二つの家の差は建物の格以上に、働いて暮らす家と働かず財産や趣味で暮らす家という生活様式に表れる。こうした違いが、セシルの見下す態度やルーシーの家族の反応、婚約の意味をどう変えて見せるのかが語られる。最後に、撮影後も残っていた池や森が1987年の嵐で失われ、映画だけに残る景色になったことにも触れる。

ルーシーの家と『眺めのいい部屋』の再鑑賞
英国ドラマタイムへようこそ。 この番組は、イギリスの歴史ドラマが大好きな私が、
ドラマや映画のうつすめ、ロケ地の秘密、当時の暮らしまで深掘りしてご紹介しています。
物語の背景を知ると、作品がもっと楽しくなります。
前回から始まった、映画眺めのいい部屋を楽しむ4つの切り口シリーズ。
前回は、ルーシーはなぜイタリアへ行ったのかという話でした。
聞いていただけたでしょうか?
今回は、イタリアから帰ってきたルーシーの暮らしに注目します。
ここからさらに楽しくなっていきます。
そして、私は見てきました。映画館で。
この放送も帰ってきてからすぐ撮っています。
これまでパソコンの画面で何度も見てきた作品ですが、
やっぱり大きなスクリーンと良い音で、何にも邪魔されずに、
作品の世界に浸れるのは本当に良いですよね。
今回は、特にびっくりしたのは、ルーシーの家の庭で聞こえる鳥のさえずり。
今まで家で見ているときは、そこまで音量を大きくしていないので、
気がつかなかったのか、こんなによく聞こえていたんだなと思いました。
それから映像が、色が鮮やかで、全体的に明るくなったので、
私は特にフィレンツェの風景にうっとりしましたね。
そして、字幕も以前のものとちょっと違っていたのか、そこもとても新鮮でした。
この物語のあらすじは、第103回の放送でもご紹介しているので、
ぜひそちらも聞いてみてください。
原作に描かれたウィンディーコーナー
さて、イタリアから戻ったルーシー。
緑の庭に囲まれた家での、いつもの暮らしが戻ってきます。
庭にはテニスコートがあって、それを見ながらお茶を飲んで、
美しいバラ園があって、家の中にはいくつも部屋が並んでいる。
見ていてずいぶん豊かな暮らしだけど、貴族ではないんだよね。
ルーシーの家って一体どのくらいいい家なの?と思った方もいるのではないでしょうか。
そこで今日のテーマは、ルーシーの家はどのくらいいい家なのか。
今回は、原作に描かれた暮らしぶりや、映画の撮影に使われた家を手がかりに、
ルーシーの家を見ていきます。
そして最後に、婚約者セシルの家も訪ねてみましょう。
二つの家を比べると、セシルがルーシーの家をどう見ていたのかも分かってくるんです。
一つ目は、原作のルーシーの家です。
映画の中では詳しい説明はあまりないんですが、
ルーシーのお父さんは地元で成功した弁護士でした。
映画には出てきません。もう亡くなっているからです。
原作によると、この家ウィンディーコーナーはお父さんが元々は売るつもりで建てたんですね。
ところが出来上がってみたら気に入ってしまって、自分たちで住むことにした。
それだけいい家だったんでしょうね。
で、面白いのはここからです。
この後、ルーシーの家の周りにはロンドンのお金持ちが次々と越してきて、ウィンディーコーナーよりも大きな家を建て始めました。
その人たちは、ルーシーたちハニーチャーチ家を昔からこの土地にいる名家だと勘違いしたんですね。
でもルーシーのお母さんは、それを得意があることも、ひけ目に感じることもなく、
どの家にも挨拶に行って誰からも好かれた。
さっぱりして気取らないお母さんのようです。
では家の中はどんな様子だったのか、原作にはこんな場面があります。
夏のある日、ウィンディーコーナーの今はカーテンがぴったりと閉められています。
絨毯が新しいので、8月の日差しで痛まないようにしているんです。
そこへ入ってきたのが、ルーシーの婚約者になるセシルでした。
セシルは家具を守るために暗い部屋で過ごすハニーチャーチ家の習慣がどうにも我慢できません。
思わずカーテンを開けてしまいます。
すると窓の外には見渡す限りの眺めが広がっていました。
ウィンディーコーナーは丘の上に立っていて、遠くまで景色が見渡せる家だったんです。
新しい絨毯を大切にする家族と、それを気にせずカーテンを開けてしまうセシル。
同じ部屋にいても気になることが全く違うんですね。
このセシルのことは3つ目でまたお話しします。
フォックスウォールドでの撮影の工夫
2つ目は映画の中のルーシーの家です。
この家はどこで撮影されたんでしょうか。
映画でウィンディーコーナーになったのは、ロンドンの南にあるフォックスウォールドという家です。
この家は個人のお宅なので、残念ながら見学することはできません。
この家がロケ地に決まった行き先がちょっと面白いんですよね。
撮影に家を貸したご家族の話によると、撮影チームが最初に探しに来たのは家ではなくて池だったようです。
あの映画の中でジョージやルーシーの弟、フォックスさんの3人が裸ではしゃぐあの池の場面です。覚えてますか。
3人が森の中を歩いて池の方へ向かっていく場面がありますよね。
私、あれは恒星だと思ってたんです。
美しい絵画の中に3人を歩かせているんじゃないかってね。
それくらい絵のような美しい景色でした。
ところがあの森は撮影に使われた家の敷地の森だったんですね。
その森の中に使われなくなった古い庭の跡がありました。
撮影チームはそれを見つけて、ここになれ池が作れると喜んだそうです。
あの池は撮影のために作ったものなんです。
シートを張って森から水を引いて周りに草を植えて、
撮影中、俳優たちが寒くないようにお湯くらいに温める仕掛けまであったようです。
これには本当にびっくりしました。
映画の中ではまるでその場所にずっとあったような池でしたよね。
誰にも見つからない森の奥の隠れ場所っていう感じで、
でもそこは光にあふれていて、
だからこそあの3人の男たちはあんなに無邪気にはしゃげたのかもしれません。
ところが池の場所が決まったところでプロデューサーが言ったのは、
でも家がなければやっぱり意味がないなということで、
こうしてこの敷地に建つ家がウェンディーコーナーになったようです。
さらに面白いのは、この家を建てたのも弁護士だったことです。
池を探しに来てたまたま見つけた家が、
ルーシーのお父さんと同じ弁護士が建てた家だった。
偶然にしてはちょっと出来すぎていますよね。
撮影の時にはこの家にも一手間加えられています。
撮影されたのが1985年、家が建ってからもう100年経ってました。
でも物語の中のウェンディーコーナーは、
お父さんが建ててまだそれほど建っていない家です。
そこで屋根の三角の部分の壁に薄い黄色を塗ったそうです。
古びた家を建たばかりの家に見せるために、
そういった工夫がされたんですね。
一代で家を建てた新しい中流の家を表現したんです。
セシルの母親の家と暮らしの格差
3つ目は婚約者セシルのお母さんの家です。
ルーシーの家では思わずカーテンを引いてしまう。
ルーシーの家がなかなか気に食わないセシル。
彼のお母さんはロンドンに住んでいます。
映画ではこのお母さんの家で、
ルーシーのお披露目を兼ねた音楽の夕べが開かれましたよね。
ルーシーはピアノでシューベルトを見事に弾いて、
セシルもお母さんも本当に満足そうでした。
この場面に使われたのが、
ロンドンのケンジントンに今も残るリンリー・サンボーンハウスです。
ここはパンチという雑誌で風刺画を描いていた画家が住んでいました。
その後も家族が1890年代の暮らしをそのまま大切に残してきたので、
今もビクトリア町の家の中をそっくり見ることができます。
この家はイギリスでテラスド・ハウスと呼ばれる形の家で、
隣の家と壁がつながって通りに沿ってずっと並んでいる家ですね。
一軒一軒は細長くて、その代わり地下から屋根裏まで縦に何回もあります。
ロンドンを歩いているとよく見かけるタイプの家です。
今年の夏のイギリス旅でこの家に行っていたんですね。
でもその時はロレッジだったなんて全く知らなかったんです。
帰国してたまたま映画を見て、
あれこのステンドグラス見覚えあるなということで気づいたんです。
窓のステンドグラスはそれぞれの場所でデザインが違っているし、
ウィリアン・モリスの壁紙やアジアの陶磁器が飾られて、
美しいものを全部出して飾っているような本当に圧倒されるようなインテリアでした。
部屋の豪華さで言えばセシル側の方が上に見えます。
でもルーシーの家とセシルの家の2つの家の本当の違いは、
家の豪華さよりも暮らし方の方にあります。
セシルは仕事を持っていません。
働かずに許容と趣味で暮らしている人です。
当時は働かなくても暮らしていけることが紳士の印でした。
一方のルーシーの家はお父さんが弁護士として働いて一代で建てた家です。
セシルたちの世界ではこうした違いが家の格や人の評価にもつながっていたんですね。
婚約をめぐる家族の見方
それがよくわかる映画にはこんな場面がありました。
音楽の夕べ、お客様が帰った後、セシルのお母さんは息子に早く結婚しなさいと急かします。
あの子、ハニーチャーチ家の臭みが抜けてきたわね。
召使いの話やプティングの作り方を聞いたりしなくなった。
って言ってましたよね。
ハニーチャーチ家は家のことを自分たちで切り盛りするような垢抜けない家だと思っている。
でもルーシーはもうそうではない。
今夜のお客様の前に出しても恥ずかしくない娘になった。
だから早く結婚しなさいというわけです。
さて、こうして三つの角度からルーシーの家を見てきました。
地元では名言で間違えられるくらいの良いお家。
でも働かずに暮らすロンドンのセシルたちから見ると、まだ少し田舎臭い家だったんですね。
世間から見れば、セシルとの婚約はルーシーが一段上の世界へ迎えてもらえるとても良いお話だったんです。
でもルーシーの家族はどうだったんでしょうか。
弟のフレディは最初からセシルが気に入りません。
お母さんもセシルの見下すような態度にだんだん腹を立てていきます。
ルーシーの家族はセシルとの結婚をただの出世話として喜んでいたわけではなさそうですよね。
こういうことを知ってから映画を見ると、婚約の場面のみんなの表情が少し違って見えてくると思います。
そしてルーシーが最後にどんな道を選ぶのか、それがどれほど思い切った選択だったのかということもきっと感じていただけるはずです。
嵐で失われた撮影地の景色
最後に映画で使われたルーシーの家の映画のその後のお話をちょっとだけしたいと思います。
ルーシーの家の露出地の所有者によると撮影が終わって撮影チームが去った後も、あの池はしばらく森の中に残っていたそうです。
でも撮影から2年後の1987年の10月の夜、大きな嵐がイングランドの南東部を吹き抜けました。
あのフォクスウォルドの森は80英か近く、東京ドームのおよそ7個分が投げ倒されたそうです。
あの池もテニスコートの向こうにある森も、ルーシーとジョージが2度目のキスをする庭の茂みも、今はもう映画の中にしか残っていないそうです。
私が豪勢かと思ったあの美しかった景色は、もう二度と同じ姿では見られない景色だったんですね。
4Kでよみがえた美しさを、ぜひ劇場の大きなスクリーンで味わってみてください。
家のことを知るだけで、セシルの言葉やルーシーの家族の表情まで少し違って見えてきますよね。
映画の中にある小さな手がかりから、当時のイギリスの暮らしや社会をたどっていく、そんな楽しみ方をこれからもご紹介していきます。
オンライン会と次回予告
そして最後にお知らせです。
来月11月7日の夜、長めのいい部屋をテーマにしたオンライン会を開きます。
オンライン会では、私がロンドンで訪ねたセシルのお母さんの家の中へもご案内します。
あの音楽の夕べの部屋に自分が立っていると思って見てみてください。
そしてそこから見たルーシーの家がどんなふうに映ったのか、映画のテストを並べながらゆっくり見ていきたいと思います。
このポッドキャスト4回のシリーズでお話ししたイタリアも絵も家も、目で見ながらたっぷりお届けしたいと思います。
映画をご覧になった方も、これからの方も気軽に覗きに来てください。
開催日は11月7日土曜日、夜8時から9時です。詳しくは概要欄のリンクからどうぞ。
次回は、映画に登場する絵のお話です。
フィレンツェでルーシーが見上げた礼拝堂の壁画、そしてロンドンのナショナルギャラリーでセシルがその前に立っていた大きな戦いの絵、何が描かれているのか、
映画の中で描かれる場面を手がかりに、私はこんな意味があるのではないかと考えました。
次に映画を見るとききっと絵から目が離せなくなりますよ。どうぞお楽しみに。
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