冒頭でアメリカが正義の国であったということは一回もないと中野さんはおっしゃっていましたが、どういうことですか?
正確に言うと、アメリカをはじめとする大国が絶対に人権とか国民とか、ましてやマイノリティのために何かするっていうことはないっていうことなんですね。
絶対にない?
絶対にない。
でも冒頭でアメリカって、私たち子供の頃から正義の国っていう印象が強いっていう話をしましたよね。
アメリカは人権外交という1970年代ぐらいにカーター政権が開始したんですよ。
でもそれも冷戦に勝つための一つの手段というか、武器としてイメージ戦略をしたっていうのが正しい。
なるほど。
この本のテーマはですね、道徳って西洋発祥、西洋の思想で大国が無学な世界の国々に広めたみたいな印象があるけれども、
でも実はそれとは全然違う文脈で、脱植民地化っていうのが起こったから道徳っていうのはむしろ広がったんじゃないかっていうことが書かれてるんですね。
発展した先進国から後進国へ広がっていくみたいな文脈じゃなくて、脱植民地化が起こったから。
脱植民地化っていうと、かつての植民地がそこから独立して抜け出すみたいなことですよね。
そうです。そもそも植民地っていうのはヨーロッパをはじめとする国が他の国を支配したっていうことですよね。
世界大戦とかでは日本もそれに加わっていて、例えば日本が植民地化したのはわかりやすいところで言うと、韓国、台湾ですね。
首都さんって、魚の上の雲って読みました?
柴田代太郎の?読んでますよ。愛媛出身の松山出身の軍人秋山兄弟徳子、正岡敷が中心的な人物ですけど、中野さんの地元が舞台ですもんね。
私の出身高校は秋山義夫が4代目だか5代目だかの校長先生なんですよ。
あ、そうなんだ。
校庭に銅像とかが出てる。
やっぱりそういう感じなんですね。地元だから。
そう、地元だから。
魚の上の雲のテーマの一つって、日本は日露戦争に勝って、白人支配を苦しむアジアの国を勇気づけたみたいなのも一つでしたよね。
正岡でこの作品好きな人は割と多いんですけど、たぶんそういうとこが来てるんじゃないかなと思いますよね。
そうですね。
実はこちらの本を読み解くキーワードの一つ。
他国を支配するには、みんなが納得する道徳を大国は示さなければならないというものがあるんですね。
つまり、自分たちとは違う人種とか民族を支配するためには、軍事力とか経済力とかじゃなくて、みんなが納得するような道徳性、支配するための道徳性みたいなことを示さなければならないということが書かれています。
要は首根っこを捕まえて無理やり従わせてるんじゃなくて、私たちは正しいことをやってるから従いなさいみたいな、そういう文脈を作るっていうことですかね。
しゃらくさいみたいな感じなんですけど。
日本も、かつてアジア主義とか言われてましたけど、アジア地域を西洋の列強から守るために連帯しようっていうね、そういう理屈で戦争に突き進みましたよね。
大東亜協議権の中はまさにそうですもんね。
まさにその思想ですね。
戦争と思想ってセットなんですよ。
この方の面白いところがですね、この思想は帝国側ではなく、後々見るとマイノリティ側の権利の方を前進させたんじゃないかって言ってるところなんですね。
帝国側じゃなくて、マイノリティ側。
そう、強いてあげられる側の方の権利を実は回り回って前進させたんじゃないかっていうことですね。
面白いですね。
ちょっと時間を巻き戻してですね。
日本も戦争中、韓国や台湾や満州などを植民地支配しましたよね。
実は植民地は逆に帝国支配する側の方も揺るがせる力があったのでは?っていうことをこの本は指摘しています。
面白い視点ですね。
まあでも、いまだに日本がこの問題を引きずってるということを考えると、そういうこともあるのかなって思いますね。
まさにそうなんですよ。
まず、帝国時代、日本の戦争中に、朝鮮の三一独立運動がありましたね。
日本に対する大規模な独立運動が、1919年にやりました。
もう第一次大戦終わってるんですかね。
終わってすぐぐらいですね。
そもそも中国も韓国も長い歴史がある立派な国ですよね。
それをそもそも植民地にするのは無理があるんですよ。
そうですね。
この本にも、このような地域の植民地化は、イギリスとかフランスに比べて脱植民地化運動に直面しやすかったと書かれています。
この独立運動というのは、朝鮮の全人口の1割以上が参加した反政府運動だったんです。
首都さん、こういう反政府運動が成功するのって、人口の何パーセントが参加すると成功するって知ってます?
これはね、僕ね、斉藤公平さんの人申請の資本論に出てきてたから、後半の一番最後に出てくるんですけど。
多分皆さんが思っているよりも、いくつどうぞ少ないですよね。
そうなんですよ。実はですね、3.5パーセントなんですけど。
これはですね、私が読んだ本は、エリカチ・スノウさんという人が書いた、「市民的抵抗」という本があって、
これ、女子大学で国際紛争を研究している小林先生という先生が訳している本なんですけど、めっちゃ面白い本なんですけど、これに3.5パーセント。
それからさっきのね、朝鮮の人口の1割以上が参加したって、ものすごい数ってことですよね。
すごいですよね。
絶対変わらざるを得ないっていうね。
やっぱりこれをきっかけに、当時の日本の内閣は、植民地を内地と同等に扱う内地延長主義っていうのが唱えて出てきて、
あと言論とか出版の自由も緩和したりしたそうなんですね。
独立は結果できなかったけども、影響は確実に与えたってことですよね。
そうなんですよ。
しかも、私たちの住んでいる極東ですね。
極東って、西洋が研究している脱植民地化の歴史からちょっと取り込まされてるっていうか、
あんまりヨーロッパとかの研究者からは見られてないらしいんですけど。
連中から見ると世界の端っこみたいな格好だと思いますよ、本当。
遠いですよね。
でも、とりわけ朝鮮半島こそ、世界に見ても植民地ナショナリズムが最も強力に噴出した土地だった。
それわかるな。
わかりますよね。
だって、今回のサッカーのワールドカップで負けた後の韓国国内世論とか見せても、もうすごいですもんね。
すごい。
ナショナリズムがね。
そうなんですよ。
やっぱり韓国のナショナリズムっていうか、独立心の強さもそうですけど、
本当に世界が研究すべきなんじゃないかなみたいなのはちょっと思います。
それこそあれじゃないですか、中野さんが編集した地政学の本。
あれで、韓国と日本の違いのところで、日本は自然災害が多いからいろんなこと忘れっぽいんだけど、
韓国の人たちは基本的に人災だから、やっぱり忘れないっていう、ちょっとそういう話も出てきたし。
そうなんですよ。
世界を解き明かす地政学っていう本にね。
面白いもんですよね。
そうなんですよ。国民性の違いも書かれています。
実はですね、私高校生ぐらいの時から歴史の授業でずっと不思議に思ってることがあったんですよ。
何ですか?
せっかく第二次世界大戦やったのに、勝ったはずのイギリス、すごい衰退しちゃったなみたいな。
なんか思いませんでした?
あれだけの犠牲をね、払って戦争しちゃってっていうね。
でも確かにその後何のためだったのかっていうのはもちろんね、ありますよね。
そうなんですよ。なんかね、戦争をやり始めたっておかしいですけど、ヨーロッパ中心だったはずじゃないですか、始まったのは。
なんですけどヨーロッパがやっぱ戦後すごい衰退しちゃってるのって何でなんだろうみたいな思ってて。
確かに。
で、他の戦争、しかも勝った国が植民地を手放していくじゃないですか。
でもみんな帝国を拡大しようとしてやってたんじゃないっけなみたいな。何でなんだろうって思ってたんですよ。
確かに不思議ですよね。
みんな急に植民地の自治権を認め出したりして、いい人になっちゃったみたいな。
でもこの本を読んでて、ちょっと疑問が解けたというか、
第一次世界大戦後はやっぱり戦争国は脱植民地化を予定してなかったみたいなんですよ。
で、負けた日本は東南アジアの植民地を手放すんですけど、
それは戦前の総主国に戻すことが予定されてたらしいんですよね。
それは何で独立することになっちゃったんですか?
それがですね、やっぱり既に日本とか他の帝国たちが戦争中に色んな植民地に酷いことをしていたわけですよね。
だからそれぞれの国のナショナリストは独立に向けて動いている機運が既にあって、
だからビルマはアムサが独立を要求。
あとインドにももちろんガンジーがいますよね。
インドシナでも独立に向けてインドシナ戦争が始まった。
連帯のネットワークだったわけじゃないけど、
結局それぞれの国で同時期に独立するんだって頑張ってたってことですよね。
ちなみに連帯のネットワークもちょっとあったらしいんですよね。
色んな方が絡み合ってるから、ちょっと複雑なんですけど。
帝国が何かしたわけじゃなくて、植民地の人たちが頑張ったっていうことはすごく大きくあるんですよね。
大国の視点で見ると放棄したとか、大国の視点側から見られがちなんですけど、
視点を変えると支配をやめたわけじゃなくて、支配が簡単に言うとできなくなったっていうのが正しいみたいですね。
なので、やっぱり周り回ってマイノリティが世界を変える機運がここにあったんですよね。