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2024-02-01 14:27

#239 Tale-CN - ベルはもう鳴らない

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紹介SCP/Tale

タイトル: ベルはもう鳴らない
原語版タイトル: 再无铃响
訳者: snoj
原語版作者: bitchangelover
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/no-jingle-bell
原語版ソース: http://scp-wiki-cn.wikidot.com/no-jingle-bell
作成年: 2017
原語版作成年: 2017
ライセンス: CC BY-SA 3.0

SCP財団とは: https://ja.wikipedia.org/wiki/SCP%E8%B2%A1%E5%9B%A3

©︎SCP財団 http://ja.scp-wiki.net/

#SCP #オカルト #SF
00:06
Tale-CN
ベルはもう鳴らない。
患者の心拍数、毎分43回に減少。
共振剤を投与します。
投与確認。患者の心拍数、毎分54回に上昇。
血圧回復、現在86の50。
モルフィネを利尿剤とともに投与。
酸素供給を20%引き上げろ。
患者の意識回復、抗災反応あり。
寝室に消し玉を注入する準備を、心拍補助を行う。
患者は体を動かそうとしています。
現在、クラス2の固定措置を実施中です。
固定を解除して、酸素マスク内のマイクを起動。
おじいさん、あなたの声が聞こえるようになりましたよ。
何か話したいことはありますか?
先生、わし、わしは電話をかけたい。
おじいさん、今あなたはとても危険な状態にあります。
もうしばらくお待ちください。
私たちはあなたをきっと治します。
治療が終わった後なら、あなたのご家族に連絡できますから。
今、わしは今、かけなくてはならんのだ。
患者の心拍数、毎分73回に上昇。
血圧も上昇中。
李先生、私は同意します。
強静な声が手術室内に響く。
声の後ろには、けたたましいベルが鳴っている。
あなたは患者を死なせようとしているのか?
今の状態でしゃべるのは自殺行為だ。
ならば、死なせてやりましょう。
ストッキング博士、今回の件は忘れませんよ。
彼にアドレナリン注射を。
病床に横たわる老人のまぶたが震え始める。
彼は目をゆっくりと開け、ぼんやりと辺りを眺める。
口音がおぼろげに露天していく。
彼は1992年のあの散室の外に帰っていた。
大切な孫娘が産声を上げ、
自分が一人の孫煩悩な爺になる時を
息子と手ぐすめを引いて待ち構える。
03:01
やったぞ!
泣き声が呆然と響き渡る。
乳子は周りを物ともせず抱き合い、
踊らんばかりに喜んだ。
彼はドアを開けて飛び込み、
ありとあらゆる歓喜の気持ちを
泣きじゃくる赤子に伝えられないことを恨めしく思った。
彼は力を込めて再び目を見開く。
毛巾服を着た医療スタッフが自分の病床を押し、
せかせかと移動させているのが見える。
天井の照明灯が下から上へと高速で通り過ぎていく。
耳元の泣き声も次第に電話のベル音へと変化していった。
老人はいつの間にか口元に笑みを浮かべていた。
振り返ろうと試みるが体が反応しない。
音、感触、香り、そして眼前の光景はすべて見慣れたものに戻っていた。
声に応答して大きな扉が開く。
老人は病床がゆっくりと止まっていくのを感じた。
全員の呼吸音がこの広々とした空間内に反響する。
耳元の枕がのけられると少女の震える声が耳に入ってきた。
おじいちゃん、私…
ゆえか。
いや、決めつけてはいかんな。
わしはお前が誰なのかわからん。
だが、わしはなぜか孫娘の名前でお前を呼びたくなったのだ。
アドレナリンの効果に伴い老人の心臓は力強く鼓動し、
血液は肺の酸素をしなびた体に行き巡らせるため、最後の循環を始めた。
さながら初春の陽光によって溶かされた雪まじりの渓流のようである。
彼の言葉は淀みないものとなり、またその声も明瞭なものとなっていた。
老人は数十年にわたって避け続けていた思いにもう一度向き合うことにした。
受話器はしばし沈黙する。
06:03
そして長いため息を吐いてから言葉を紡ぎ始める。
声にはいかなる感情も見られない。
実はなぁ、最初からわしは気づいておった。
ゆえは本当に、本当に言ってしまったことを、
本当に言ってしまったことを、
本当に言ってしまったことを、
本当に言ってしまったことを、
本当に言ってしまったことを、
だがの、わしはゆえの声をもう一度聞きたかったのだ。
一秒でもいい。さすればゆえがまだこの世界にいるような気分に浸れた。
わしはお前にゆえについてのあらゆることを教えた。
お前はゆえの性格と寸分たがわぬようになった。
あるとき、あるときわたしは、
ゆえが本当によみがえったのではないかとの疑念にとらわれた。
老人の語気は徐々に精凶になっていった。
しかし激しい咳込みが、彼を87歳の高齢者であるという現実に引き戻した。
彼はスタッフに体の位置を調整してもらえるよう、わずかに首をかしげる。
何度か深呼吸をしてから、老人は口を開いた。
だが、だがわしは優柔不断であった。
お前に真っ向から、本物のゆえなのかと問うことはできなかった。
わしは自分が夢を見ているのではないかと思うようになっていた。
夢ならば、永遠に覚めとうない。
質問をしたが最後、お前が恩返しの鶴のように、わしのもとから飛び去っていくかもしれないと恐れたのだ。
わしの、わしの気もったまは小さすぎた。
わしのような死に損ないの老人は、道理の通らないことを好むものだ。
お前にわしのくだらん話を聞かせ続けて、もうすぐ十二年になる。
本当に申し訳ないと思っているよ。
沈黙は突然の笑い声でぶち破られた。
十数秒にわたって、受話器は笑い続ける。
09:03
その声には、笑いすぎてむせているかのような音まで混じっていた。
十二年だって?この老いぼろめ。僕は人間じゃないって言ったじゃないか。
人間のちんけな寿命を一粒のピーナッツだとしたら、僕の寿命は空に瞬くアークトゥルスさ。
じいさんは空から降ってくる雨粒に疲れを感じ取ったことはないかい?
実はそれ、僕が流したやつなんだ。
じいさんは僕にあれこれ言うけどさ、ぜーんぶ見当外れなんだよ。
僕なんて無駄に他芸なただのピエロさ。
だからもういい加減なことは言わないでよね。
僕がゲロのできない電話機だからってムカムカすることもないなんて思わないでほしいね。
声は一転して、軽快で気楽な調子に変化した。
さながら渾身のジョークをひけらかすように、受話器は得意気であった。
はははは、ついにお前の本心を聞けたぞ。
わしはようやく刀にが下りたわい。
老人のシワが押し出され、その笑みはツタのように彼の顔を覆い尽くす。
幸せそうなその顔は、孫娘が包装を剥がしてくれた雨玉を口の中に入れて、
頬張る瞬間を思い出したかのようであった。
筋肉はゆるみ、心臓もウィーニングラウンをする陸上選手のようにゆったりと歩みを止めていく。
傍らで立ち尽くすストッキング博士。
その手にはSCP-500のコピーが握りしめられ、フルフルと揺れている。
彼女の腕は筋肉の収縮を幾度か繰り返した後、だらりと下がり、錠剤が指から滑り落ちる。
SCP-CN-066-1の心電図のアラームが、錠剤が代理席の床に当たる音を掻き消した。
その場にいた人員は皆、沈黙を貫いている。
次の声を待つために、ストッキング博士の腕時計の秒針が5秒を刻む。
ありがとうございました。
誰もその口を開くことはなかった。
12:00
ストッキング博士、新着メッセージがあります。
ストッキングはだらしなく、15個の角砂糖を紅茶の中に放り入れると、皿に残った角砂糖をすべて口の中にぶち込んだ。
カランカランと紅茶を撹拌させながら、ストッキングは余った手でパソコンのディスプレイ上に表示されたメッセージを開く。
SCP-CN-066は6392時間にわたり、その異常性を発現していません。
基地の異常リンクをクリックしても、SCP-CN-066のベルを鳴らすことはできませんでした。
以上のことから、SCP-CN-066のオブジェクトクラスをニュートラライズドに格下げすることを提案します。
ストッキングは口の中にある角砂糖を一つずつ噛み砕きながら、頭を上げ、糖分を少しずつ胃袋に流し込む。
角砂糖の残骸を消費するまでに、ストッキングは多くの時間を費やした。
頭を下げると、手にした金属スプーンで293回目の攪拌運動を完了させる。
マウスカーソルを承認のボタンに置き、少しの間、のろのろと動かす。
そして勢いよく、秘訣のボタンをクリックする。
ストッキングは紅茶を一口飲むと、満足げな笑みを浮かべた。
SCP-CN-066の無力化を確認したら、アークトゥルスも消えちゃうじゃない。
彼女は椅子の下から巨大な紙箱を取り出し、新たな角砂糖を用意するかしばし考え込んだ。
けれど、彼女は箱から練乳缶を取り出すと、直接手ですくい上げ、口に放り込む。
さながら、蜂蜜を盗み食いするプーさんのように。
彼は多分、二度とベルを鳴らさないでしょうね。
ご視聴ありがとうございました。
14:27

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