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テイル jp 遺談
カンテサンス
カンテサンス文章1
9 これが幽霊に見えますか?
見える方はこちらまで 対話の意国 カンテサンス
いわゆる怪談の舞台 あるいは導入として多いのは
やはり肝試しによるものだと思います 理由はいろいろとありますがそれを体験するであろう人が
怪異やそれに類するものに対し 能動的に接しようとしている点は大きいでしょう
忌むべき因縁のある廃墟に無断で潜入する 友人と連れ立って深夜のダムに車を走らせる
あちらからやってくるのではなく こちらが接触を試みた結果として何らかの恐ろしい現象に遭う
そんな場合であれば消費者側も安心して怪談を楽しむことができるのです
何も悪いことをしていないのに不条理な体験をしてしまうのであれば それは理不尽であり明確な意味もわからない話になってしまいます
その点自分から怪異を求めており 多くの場合は愚かな行為者として描かれる
肝試しに行く人々が体験した話であれば 特に良心が痛むこともなく
彼らが怪異に恐れをののく姿を楽しめます むしろ免許を取り立ての大学生が遊び半分で肝試しに向かった
といった導入だと心のどこかで何かが起こってほしい とすら願う方もいるかもしれません
このように一見合理性からは遠遠いように見える幽霊談においても 非合理への理由づけや明確な問題解決の構造は好まれます
害してその構造は話を締めくくるにあたっての説明 例えばその周辺には過去の事件の自爆霊がいたらしいとか
戦時中に傷病者の手当てをしていた施設が近くにあってとか そういった怪異そのものの出自に対する文脈で用いられることが多いのですが
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読み手は時にそれだけでなく 怪異の体験者の出自に対しても同様の文脈を用いて説明と理由づけを行うのです
もともとが忌み地や特殊な家系の生まれだから村の怪奇な隕集に巻き込まれてしまった これなら抗議の由来端になりますし
山の神の領域に足を踏み入れた結果家族の気が狂ってしまった これなら古典的な枠組みにおける説話や因果話に落とし込むことができます
同様に肝試しをしようとしていた人物だから怖い目にあった あるいは怪異を求めて行動した人物だから怖い目にあった
こういった構造にすれば原因と結果が簡潔に伝わるため より広く楽しまれ面白く受け止められる説はロアとなります
怪異と怪異の体験者 その両方に存在する因果
必ずしもそれが明示される必要はありませんがそれを少なからず怪異端に組み込むことは ある共同体の中で怪異を伝承し物語として広く伝えるための大事な条件となります
これを踏まえて以下のお話を考えてみましょう
9 これが幽霊に見えますか
見える方はこちらまで 対話の憩いカンテサンス
これは私が大学進学を機に引っ越した先の東広島市周辺で体験した話です 東広島は某国立大学などがある立地上
大学生が比較的多い場所なのですが 私が住んでいたところはいわゆる学生街的な感じではありませんでした
どちらかというと自然が中途半端に多く だからといって田舎的な原風景を観光資源として押し出しているわけでもなく
都会に追いつこうと背伸びをした昭和末期から平成初期の状態がそのまま今まで続いているような
そういう雰囲気の場所でした 夏になると近くにあるキャンプ場にボーイスカウトと子どもたちが集い
それ以外の旅行客といえばごくたまにリュックを背負った小塚が大行なカメラを持って 団地や道の駅を撮影しているくらい
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最近この辺りに住み始めたことを旧来の友人に伝えたはいいものの 友人から名物や観光名所は何かと聞かれたら若干答えに急する
そういった街としか言えない街の安アパートに学生街で割高な家賃を払うことを拒否した 私は卒業までの数年間住んでいました
良い言い方をするならば程よく人里離れたその地域は 占術したようにキャンプ場など手頃な集団生活をするのに適していました
小学生の頃マイクロバスで数時間かけて移動した先の 自然の家で共同生活をしたことのある人は多いかと思いますが
要はああいったことがしやすいところだったのです 小中学生なら自然の家
高校生なら寮や格安の合宿施設 そして大学生や社会人なら研修用ホテルやセミナーハウスなどになるでしょうか
この話のいわば舞台となる場所は かつて東広島周辺などにあったというとあるセミナーハウスかロッチのような施設だったと言います
ようなと表現しているのは今となっては伝聞の情報しかなく その建物がどこにありどういった用途で使われていたものなのか
そもそも東広島周辺にあった 還元すれば東広島周辺にしかなかったのかも未だによくわかっていないからです
ことの起こりは元号が平成に変わって何年か経ったくらいの頃だったと言います 当時は大学のセキュリティ意識が今とは別種と言ってもいいものであったため
学生証を持っているのかもわからない一般人が大学の授業を最前列で受けていたり 実体不詳のインカレサークルが方々でパンフレットを配布したりしていました
当然あまりに目に余る人物やサークルは当時においても監視 排除の対象とされていましたがそれでも大っぴらに取り締まられるような事案は
そのレベルで危険なものはそもそも禁証であるためそれほど発生していなかったようです 要は大学の入学式前後にパンフレットをもらった記憶はあるが
それ以降どんな活動をしているのかはよく知らない そういう団体
そういう団体の一つとしてとあるサークルが存在していました 団体名は対話の憩いカンテサンス
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当時にそれが姿勢でどのような故障されていたかはわかりませんが いわゆる自己啓発を目的としたサークルであったようです
その当時のパンフレットを見てもあるいは当時その成員と話したという元学生 らに聞いてみてもそのサークルが具体的にどういう活動をしていたのかは
いまいち半然としないのですが それは外部の人々の表現を借りるならばよくある類のサークルだったそうです
自分の中に眠った力を目覚めさせ 宇宙的力カンテサンスを得ることを目的としています
私たちと対話して新しい自分を一緒に探求しませんか 当時のパンフレットにもそういった空を掴むような文言が並んでいたそうなのですが
しかしその抽象的な言い回しそれ自体が外部の人々にとっては逆説的に彼らの実態を示すものとなっていました
ここで事前に強調しておかなければならないのは彼らはおそらく本当にありきたりな団体だったということです
カルトスリラーモノのホラー映画にあるような手間と時間をかけて交渉された宗教的な儀式体系も
カリスマ的支配による卓越した人心掌握論も 恐ろしくかつ高度に組織化された集団的統制も全くない
同好会レベルの自己啓発サークルでした 夕飯台を浮かすためにカンテサンスの神館へ行ったことのある当時の新入生は
彼らがペラペラのタロットを使って占いに教じたり 居酒屋で行われた3、4名の上級生による全40分に渡るディスカッションが
夢は必ず叶う自分らしく生きていこうという結論に達する様子を見ていたそうで つまりは良くも悪くも人畜無害な団体という印象を持たれていたようでした
そんな彼らが神館も落ち着いた梅雨の時期 サークルで初めての夏合宿を企画したのだそうです
彼らと雑談くらいはするサークル外の友人の情報や単なる噂を寄せ集めたため これ以降は特に信憑性が薄いのですが普段は長くても数時間
予定を合わせて集まるくらいしかしていないが 夏休み中にみんなで同じ場所に連泊して普段はできない話をしつつ
共同生活を通じてメンバー間の連帯を強めよう そういった目的から彼らはそれこそ一般的な学生サークルと同じように
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合宿計画を立てていたそうで そこで合宿場所として選んだのが学生街からは少し離れた場所にある
大学生や社会人用のセミナーハウスのような建物だったのです カンテサンスに限らず
何らかの団体の渋滞を強めようと合宿を行う場合 郊外のセミナーハウスは必ずと言っていいほど候補に上がるものです
外部から程よく隔絶され 内部にある生活にだけ目を向けられる施設での共同生活は非日常的な体験に違和感なく没入するには最適な環境と言えます
まして宇宙的な力を得るための自己啓発を行うのがカンテサンスという団体なのですから 彼らがそういった場所を使おうとすることにさほど違和感はないでしょう
戦術したように陣地区無害なサークル活動を続けていた彼らのことだから おそらくは夏休み明け合宿を通じて努力の大切さを改めて知ったといった話をすることになるだろうと
要は へぇいいね楽しんできたらと周りは概ねそういった反応を介していたそうです
しかしそんな予想は実際の結果とは少し違っていました
夏休みそしておそらくは彼らが滞りなく実行した夏合宿を境に 対話の意固いカンテサンスの声音は妙なことを口にするようになったのだと言います
曰く 幽霊が見えるようになれたと
宇宙的力といった言葉を使い戯れにタロットや先制術を行うなど 彼らはいわゆるスピリチュアル的な要素をサークル活動に取り込んではいたもののそういった直接的な表現をすることはあまりありませんでした
つまり彼らは今まで思想や心情は別として少なくとも幽霊の存在を前提とした雑談を唐突にサークル外の人物に持ちかけるようなことはしていなかったのです
そもそも彼らが行っていたのはあくまで自己啓発 努力の大切さ自分らしく生きることの意義
そういうものの探求だったはずで スピリチュアル関連の知識や言葉はあくまでツールとして用いていたものでした
しかし夏季休暇が終わってからの彼らはやっと幽霊に会えるようになれた あそこは自分が生まれた家みたいに落ち着いた
これからも力をつけていこう などまるで彼らの中の何かが変質したかのように
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当時の同級生の表現を借りるならば怪しげな発言を繰り返すようになっていったそうで おそらくはそれも相まって彼らと雑談などをしていたサークル外の人物も少しずつ
少しずつ彼らとの距離を離していき そしていつのまにか
少なくとも翌年の新学期が始まる頃にはもう カンテサンスのメンバーは大学からほぼ姿を消していたのだといいます
ほぼという言い方からもわかる通り彼ら全員が完全に消息を絶ったというわけではなく
なんとかすれば連絡を取れた人も一部にはいたようです ただ少なくとも学生間でわざわざ連絡を取ろうとする人はおらず
そして仮に連絡したとしても意味のある会話をできる状態になかったらしく どちらにせよ実質的には温真不通の状態だったのでしょう
ではサークル外の人々が完全に彼らのことを忘れてしまったかというと そうではなく
むしろ彼らに対する印象のようなものはそれ以後に彼らがとった行動によって 強く擦り込まれたという人が多いようでした
彼らは学校に来なくなってからもサークル活動は続けていたようで 先に言及したパンフレットやポスターのようなものを定期的に掲示し
そこに団体名や連絡先を併記していました しかし学内の掲示板は使えなかったのか
自身の活動を対外に示す場所は学外に移していたため 外出時そのサークル名を久々に目にしたという学生がそれなりにいたようです
大学で結成したサークルのメンバー募集に学外の掲示板を使うのかと思った方もいらっしゃる かもしれませんがこの当時だと全くない話ではなかったようです
もしかしたら今でも地方のアニメショップやクラブハウスなどでは店の隅でサークルや バンドのメンバーを募集する張り紙を掲示しているのを見ることがあるかもしれません
文通 ペンパル相手を募集するためにと全国流通の雑誌に自らの住所を載せていたような時代においては
その風潮がより色濃くあり 共通の趣味を持つ人との交流を目的とした張り紙があらゆる店に出されていました
昭和町でお茶会します漫画好きさん集まろう 東宝ボーカル希望バンドメンバー
かっこプロ志向募集 そんな手書きあるいは簡素なワープロの張り紙が並んでいる掲示板の隅にある時期から
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カンテサンスによるものであろう張り紙が掲示されるようになりました しかしそれは当時においても異質としか言えないものであり
少なくともそれを見た人から好意的に受け止められることはなかったそうです 張り紙には大きく2行
9 これが幽霊に見えますか
見える方はこちらまで そう書かれていたそうでおそらくは個人のものと思われる電話番号と
対話の意固意カンテサンスの名前が併記されていました もちろん場所によっては天主や窓口の許可が必要な掲示板もあったはずで
ただ高等での許可制など規制が曖昧なところも多かったためか それが長く掲示され続けるところも一定数あったようです
もっとも気味が悪いとすぐに剥がされるのがほとんどだったのですが この
9 これが幽霊に見えますかという文面は当然ながら当時それを見た人々の中で特に強い印象を持たれていたようで
カンテサンスというサークル名が噂に出ると真っ先にこの出来事を話す人がそれなりにいたようでした
また人々からさらに気味悪く受け止められたのは それが掲示され続けた数少ない場所で度々起こる
張り紙の内容の変化でした 具体的には張り紙は半月に1度くらいのスパンで定期的に張り替えられ
そして交換の度に内容が微妙に変化していたと しかもそれは
文面の変化ではありませんでした これが幽霊に見えますか
見える方はこちらまで そしてサークル名と電話番号
それはいつの張り紙でも変わっていなかったようなのですが 最初に書かれている9
という文字が少しずつしかし明らかに 違う何かに置き換えられていったのです
最初は確かにアルファベットの9だったはずで つまりは縦に長い楕円の下部に右向きの曲線がある
あの形が記載されていたのだといいます というよりも見えますかという疑問文のすぐ横にそんな図形があれば
それはクエスチョンの略語としての9であると誰しもが認識するでしょう まず
9の楕円が少しだけ太くなりました 若干太い線で書かれた楕円とその下に伸びるやや細い曲線
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線の幅が等しく太くなったというよりは例えばそれを印刷しているインクがそこ だけ滲んでいるような不規則な線幅になっており
そのため最初は経年劣化によるものと思われていたようです 次に9という文字を構成するすべての線が
歪に膨れたものになりました 例えばボタボタと垂れるほどに墨汁を含んだ筆で文字を書くように
サイズの小さい線画を無理やりに拡大コピーするように その文字はボコボコと粒立った輪郭の目立つものとなりました
次にまだ楕円や曲線を保っていた輪郭がより複雑な形を取り始めました 楕円の上部は髪の毛のようにボワボワと引き伸ばされ
円の下半分は頬から顎にかけての輪郭線のようにやや先細っていく形を取り それは明らかに人の顔の輪郭であるかのような変化を見せていきました
元の図がQという文字であった であろうことは過労死で判別できるかどうかという状態だったらしく
この時点で髪の勝手な貼り替えを禁ずる旨の指示を出した掲示板もあったそうですが それは結局のところ最後まで行われたようでした
それが最後どのような形に変化したのかは正直なところ 階段話的な尾ひれがついている部分も大きいため
楕円はできないのですが それは最終的に何かの顔写真になっていたようです
白黒印刷において灰色による階調的な色彩をつけることなく 完全に黒と白のどちらかに分ける
いわゆる日化の処理が行われていたため 写真の詳細なところまで判別することは難しかったようですが
そのことによる印刷の質の悪さを差し引いても 全く意味のわからない写真だったそうです
まずそれに顔のパーツと呼べるものはありませんでした もちろん色の濃淡をすべて白黒の2色に変換する日化加工の性質上
例えば空を写した写真が一面真っ白のよくわからない何かになるように パーツが省略された可能性もあるでしょう
福笑いをする前の顔の台紙みたいに輪郭の中が完全な空洞になっている状態であれば あの張り紙もそういうものと判断されたと思います
しかしその顔の中にはおよそ人ではありえない位置に 目や口だったであろう何かがブツブツとにじんでいたのだといいます
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前髪のすぐ下で輪郭の補助線のように引き伸ばされた目 顎のあたりに溶かし込まれた唇
どこにあるのかすらわからなくなった鼻 デタラメに作った福笑いや粘土細工のようにいびつに潰れた顔がそこにあって
そして顔がそこにあったならば球の楕円を形作っていたものが人の顔だったとするならば その下にあった曲線はその顔と胴体をつなぐ首か何かだということになるのですが
しかしそれはそれでおかしいでしょう 首があれほど長く伸びてぐにゅりと曲がるなんてことは起こり得ません
しかしあの写真を本当の人間のものだとするならばそうなってしまいます 首から上が一部写っている
いわば顔の見切れた状態だったため 胴体や首の輪郭線がはっきりと見えていたわけではないのですが
少なくともその写真に写っている首は写真の向かって右側に湾曲していました 例えば立っている人の全身が写った写真があったとして
その人の首から上だけは完全に固定し その状態で首から下を全部右に90度曲げていびつなL字型を作ったとします
その状態で顔にだけズームすればもしかしたらそういった首の曲がり方が可能になる かもしれません
もちろんそんな状態の人間がこの世にいるはずもありません 仮に画像を加工して作ったとしてそんな加工を施してポスターにして掲示する意味も
わかりません だからこそ掲示板を見た彼らもそれを全く意味のわからない写真としか
形容できなかったのでしょう それは仕方のないことだろうと思います
これまでの出来事をどんなに言葉を尽くして説明しようとしても結局は不可解で 気味の悪い情報にしか着地しないのです
9 これが幽霊に見えますか
見える方はこちらまで そんな文章の9という文字だけが段階を踏んで
少しずつ少しずつぐにゃぐにゃに歪んだ人間の顔のように変化していく そんな張り紙を出しているのはかつて広島のどこかにあったという自己啓発サークル
対話の憩いカンテサンスという団体であった 彼らは特に霊的な何かに心血を注ぎ
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系統していたというわけではなかったのだがある夏にどこかのセミナーハウスで行った 合宿を境に幽霊が見えるようになった
などの言葉を残しサークルのほぼ全員が実質的な失踪を遂げた この端末のどこをどう切り取ったとしても
腑に落ちる部分は一つもなく だからといって真相を調べてみようという気にもなれません
そのためカンテサンスのメンバーや彼らの張り紙を知っていた学生もあるいはその 学生経由で話を聞いた人々も都市伝説レベルでそのことを話の種にはするものの
それ以上のアクションは起こしていませんでした そしていつしかそのサークルを直接知っていた人たちが卒業し
それに伴ってかつて存在したというサークルと 失踪した彼らが残した奇妙な言葉という内容だけが語り草として定着した頃
へー怖っ どこにあるんですかねそのセミナーハウスってこの辺の大学の話なんですか
なんか友達の兄ちゃんの彼女がそのサークルの人と会ったことあるって じゃあ本当なのかな
いやーでもさすがにないか 友人間でそんな話をする人々がポツポツと現れるようになりました
当然ながらどこかで起きた話らしいと聞いた レベルの噂の出所を探すことなど良いではありません
仮にサークルの詳細などが詳しくわかったとしてもせいぜいそれ以降その話が話題に 上がった際にちょっと調べてみたけどそれ本当にあった話みたいだよ
という愛の手を入れられるくらいしかメリットはありません さまざまな土地の地下が下落した影響で放置される団地や民家が増加していた時代の話です
から使われた具体的な時期も場所もそもそも 今どうなっているのかもわからないセミナーハウスの特定はなおさら難しかったでしょう
しかしそこへ肝試しに行こうという計画を立てた学生が出てきました 普段の失踪が起きた時新入生だった人が会社で後輩を持つようになるくらいの年代の話です
彼らはどうやらそれこそ社会人となった近所の卒業生や自らが所属するサークルで 古株として活動している大学院生などを経由して色々と自己流の調査を進め
そしておそらくはここだろうという建物を突き止めたのだそうです そこは平屋の路地のような建物で緑に囲まれたところにある安い貸し屋でした
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合宿やちょっとしたキャンプができ相談によっては1週間単位の連泊も可能であるという方針で 主に学生向けに打ち出されていた簡易的な別荘です
あまりアクセスの良くないところにあったものの特に夏などはポツポツと宿泊客もいたようなのですが
ちょうど九段のサークルが失踪した前後の時期から 所有者が突然に宿泊用の貸し出しを渋るようになり
そして今はもはや放置同然の管理になっているとのことでした これは夏の怖い思い出として十分だろう
仮に何もそれらしいものが出てこなかったとして それでもほぼ放置されている郊外のロッジに忍び込むだけで
肝試しとしては成立するだろう 話はそんな風に進んだそうで
怖がったり不法侵入のリスクを気にしたりと 肝試しに参加しない友人も複数人発生したものの
結局男性2人女性1人の計3人という形で その建物に車を走らせることとなりました
肝試しを提案しその日の運転役となったAとその彼女のB 先輩のツテを借りてサークルの情報などを集めていた結果
話の流れで参加を決めたC ここでは便宜上肝試しの提案者であるAさんを主軸として話を進めていくことにします
当日にAさんが車を運転することになったはいいものの ただでさえ学生街から離れた地域の山合いにある建物へ行くのは困難です
Bさんは車の運転ができず付き添いとしての参加という意味合いが強かったため 当日は今回の話や建物の情報を集めていたCさんに案内をお願いすることになっていました
彼は今回の肝試しに限らず普段から大学や学外のインカレサークルにおける OB、OGとの繋がりを標榜する情報通としての役割を担っていたため
今回も建物の候補を見つける作業やロッジへの道順を含めた下見などを事前に任されていたのでした
例えば先日のロッジが放置同然の扱いになったことに関する情報などは 彼曰く古株のイベントサークルのツテで仕入れてきたものだったそうです
車のカセットデッキに持ち寄ったテープを入れて音楽をかけ 布製の保冷バッグに柑橘灰を入れ
まさに夏のキャンプや海水浴への道すがらといった雰囲気で車を進んでいきました
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正直なところ車のトラブルや万一の事態を鑑みて そこに到着するのはまだ明るい時間帯を選んだそうで
それもあって夏の郊外や山中を走るオウロは日帰り旅行気分で大いに盛り上がったようでした
実際明るい時間帯にある程度お酒も入った状態で 跡地とはいえロッジがあった場所に行くのですから
ほぼ日帰りのキャンプと変わらなかったでしょう 仮に行った先でもっと雰囲気を味わいたいとなったなら
付近で日が落ちるのを少し待てばよく 何かそこにある曰くに起因する危機感を覚えたならばすぐに帰れば良いだけなので
その選択は本来ならば間違っていなかったと思います
人通りの少ない街中を進みグネグネとした山道を原則気味に抜けて
彼らはようやくその場所にたどり着きました 草が茫々に生えてはいるものの車が入ることのできる道はある程度残っており
周辺も元が簡素な広場だったことはわかるくらいの規模で草原が広がっています
へー本当に草っ腹って感じだなぁ ボール遊びくらいなら今でもできたかもね
持ってくればよかったかもなぁなんかそういうやつ さすがにこの場で3人ボール遊びはきついだろう
3人は車から降り湿った雑草をかき分けてロッジへ向かいます 多少放置されたことによる汚れは目立つもののボロボロの廃墟と呼ぶほどではない
そんな建物でした 近くの窓からは会議室らしき場所が見えるのですがその窓の向こうの内装を含めた外観からして
荒廃した雰囲気はあまりなかったようです 例えば経年劣化によってガラスが割れているとか気をつけなければ床を踏み抜いて
しまう危険性があるとかそういう年季の入ったいわく付きの民家などとは違う つまりは小綺麗な雰囲気がありました
もちろんそこに来た段階ではまだ明るかったという要因もあるでしょうが どうやって入ろう玄関はさすがに鍵しまってるだろうし
裏口の窓がなんか鍵しまってんだけどバカになってて こう頑張ってガタガタすれば開く感じらしいんだよな
1階だし高さもそんなないっぽいからいけると思う そして建物の裏手を回り彼らは簡易的なキッチンか給湯室のような場所につながる
やや大きめの窓から家の中に入りました 窓を揺り動かしているときに気づいたそうなのですが
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窓の向こうから見える部屋や廊下は損害に整頓されていました もちろん綿ぼこりやカビなど長年放置した家特有の汚れはあるのですが
備品や家具などはそれなりに片付いている印象だったそうです シーさん曰く突然にロッジを貸ししぶるようになり
やがて放置されたとのことだったのでてっきり中は何らかの理由で荒らされたり 不自然な汚れが掃除もされず転栽していたりするものかと思っていたのですが
そんなことはなく それこそ貸しスペースとしていつでも使える状態
そのままで埃をかぶっている様子だったのです 3名は中に入り流し台や食器棚があるその部屋を見回します
綺麗だな意外と 本当ただ放っておいてるみたいな感じ
もうちょっと心霊っぽい感じかと思ってたけど 心霊っぽいってなんだよとりあえず廊下からいろいろ回ってみる
1階建てだからまあそんな時間かかんないと思うけど それとももうちょい暗くなるまで待つか
いやいいんじゃないの トイレとかもっと怖くなれそうなとこがあるだろう多分
どうする?そこに死体とかさ バーンってあったりしてさ
はいはい ひとまず彼らはキッチンから廊下に出てロッチの探索を始めました
人里離れた場所に放置された建物の中は言うまでもなく静かです 窓から日の光が差し込む空っぽの家は当初予想していた
驚々しい肝試しのイメージとは違うにせよ それなりに雰囲気があるものだったかもしれません
日に焼けて変色したトイレットペーパーが2つ3つ積まれたトイレや 奥にあるブラインドが折れた状態で上がりも下がりもしなくなっている
教養の寝室を見ては へえ?
うーん?と彼らは息を漏らしました
彼らがその類の廃墟を見に来たのであれば そこに広がる内装は納得のいくものだった可能性もありますが
彼らの目的は肝試しです なんかちょっと違うな 肝試しっていうか内見みたいな
次このドア開けてみるか 倉庫らしいし
倉庫か ならなんかこうあったりしないかな 変な巻物とか
巻物はないと思うけど まあ怪しいもんとか見つかるかもな どうだ?
あ、普通に開くわ扉 あーうん掃除道具が入ってるな
竹棒機とか使わないだろ今日日 うわっちょっと急にガタガタさせないでよ
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埃が えはっ
おい窓開けろ窓 次々に建物内を探検し何か怖がれそうなものを探しては見るのですが
なかなかそれらしいものは見つかりません
彼らが事前に得ていた情報はここは失踪したサークルが合宿に使っていた建物かも しれないということ
ほぼそれだけだったためそもそもかなり見切り発車的な部分が大きかったのは事実でした
例えばトンネルの中腹で車を止めてクラクションを鳴らすと何かが起こるとか
獣道の先に祠があるとか そういった誘惑があれば目的も設定しやすかったのでしょうが
今回はそういったものがありません とりあえず肝試しに行ってみよう
そのくらいの目標設定で始めたものだったため 彼らはただあてもなく建物内を散策することしかできなかったのです
オーロの車中や建物に入る過程では大いに盛り上がっていた彼らの気分も徐々に盛り下がった 白けたような雰囲気になっていきました
これでは拉致が開かないと彼らは誰ともなく話を進めながら廊下を歩きました
とりあえず今はある程度家の中の探検を終わらせて一旦車まで戻ろう それで内装は今みんなわかったはずだから
辺りが暗くなってきてから一人ずつもしくは一人と二人に分けて中を回ろう それまでは酒盛りでも階段大会でも適当に時間を潰せばいいだろうし
つまりは今の状態を肝試し本番ではなく下見として 暗くなってからもう一度回ろうと怖くなかった場合のために
当初考えていた案をここで採用しようとしたのでした そうと決まった彼らは先ほどまで見回った倉庫やトイレ浴場などを通り過ぎ
残りの部屋を回っていきました えーとあとはここか
多分結構広いよなここ リビング的な立ち位置だろう多分立地的に
うんなんか大広間って書かれてるし多分そうなんじゃないかな よしじゃあ開けるぞ
開けた先はやはりただの大きめの会議室のような場所でした 例えば公民館や街の民俗資料館などで畳張りの和室とは別のところにある
フローリングにテーブルとパイプ椅子が並んでいる大きな部屋を想像するとわかりやすいでしょうか 扉を開けた向こうには長机が長方形を描くように並んでいて
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それぞれの机の下には2つずつのパイプ椅子がしまわれています 部屋の隅には自立式のホワイトボードがあり
真っさらな白い面が窓からの陽光を反射していました広間 広間だな
多分ご飯とかもここで食べてたのかなぁ セミナーハウスってことで使うんならここに飯とかセミナーとかで集まる感じなんだろう
多分 えーでもこうないかな何かホワイトボードに書き置きとか
ほら絶対に許さないみたいな どんな映画だよそれ
裏も綺麗だな そりゃそうか
おい眩しいなお前急に裏返すなよホワイトボード 窓から結構光が入ってくるんだから
そこで文句を言って窓を見たシーさんか誰かが この会議室は一番最初にこの家の外観を見た時の窓から見えた部屋だということに気づいたようでした
車から降りて少しだけ歩き家の正面から遠めに窓の向こうを眺めた時の景色 そこで見た部屋に自分たちはいると
ぐるりと回って裏手から家に入って探索を始めたため この部屋が一番後回しになったのでしょう
あそういえばここって正面から見えた部屋か あっちに乗ってきた車が見えるから
そう言葉を紡いだシーさんの声がそこで不自然に途切れて 窓を見つめながら彼はただそれだけの音を漏らしました
明らかにおかしなシーさんの挙動を二人がいぶかしみ 会議室から窓の外を見ると
茫々の草の向こうに明るい日に照らされた自分たちの車があり そのすぐ横に大きな男性が立っていました
戦術の通り日の光は窓に向かって差し込んでいるため 車やそれは逆光によりシルエットしか判別できないのですが
しかしそれは男性だと思いました 男性で
それも人間ではないものだと直感的に気づきました 男は車の向かって左側運転席の方に直立で立っていて
おそらく正面を こちらを向いて立っているのですがそれにしては背があまりに大きく
そして首が明らかにありえない曲がり方をしていました 首があれほど直角もしくはそれ以上に曲がることなどまずありえません
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なのに頭の先から右に折れるようなそのシルエットは 人間が肩車をしてようやくその頭に手が届くくらいの大きさの男の影は
彼らの停車した車の真横に立って こちらを見ていました
あれはなんだと言おうとしてしかし自分からそれを言うことはどうしてもできなくて ただあれを見ていることしかできない沈黙が何秒も続きました
それが夜の出来事だったらあるいは誰か一人だけが体験したものだったら まだなんやかやと理由をつけることもできたでしょう
しかしそれはまだ太陽の眩しい夕方に全員が見てしまった何かでした 耳が痛いほどの沈黙が続く
もう誰でもいいから何か話してくれとそう思っていたAさんがついに耐えきれず 震えた声で唇を切ろうとしたその瞬間
遠くの扉がカチャリと開く音がしました それは先ほど3人で家の中を見回っていた時のキッチンのあたりから聞こえてきました
それに合わせて先ほどから回ってきた様々な場所から 不在を確認したはずのすべての場所から
断続的に扉が開く音がして 楽しげな雑談の声とともに
トストスペタペタと何人もの足音が廊下の向こうから聞こえてきて
はーい午後のお話し会するよ集まって あーちょっと待ってください先輩お茶って何本入れますか
冷蔵庫に2リットルのやつあったでしょお昼に使ったあれ 爽健美茶 あーあれもコップ2杯分ぐらいしか入ってなかった気がする
そうなのじゃあごめん2本持ってきて わかりました
それはまるで以前からその場所を使っているかのような おそらく同年代の学生の声でした
声質や会話の内容からしておそらく数名ずつの男女からなるグループがこの場所を 合宿か何かのスペースとして用いているのだろうと予想がつきます
そこがもう使われていない廃墟同然の場所であるということに目をつぶれば 何の変哲もない会話だったと思えたかもしれません
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どうもです外の掃き掃除終わらせてきました お疲れ様手洗ってきてお話し会終わったらそのまま晩御飯だから
はいはいーっと あー先輩トイレの洗面台使ってたんですね
じゃあ脱衣所の水道を使うか ガヤガヤとした話し声と足音はそのまま3人がいる広間
セミナーや食事の時に使われるのであろう部屋まで近づいてきて 広間から廊下につながる扉が開きました
廊下からは部屋着らしきTシャツやジャージなどを着た男女が入ってきて クリアファイルや飲み物
プラスチック製のコップなどを持ってめいめいに着席します 彼らは部屋の隅でただ固まっている男女に気づいていないのか
あるいはいないものとして扱っているのか 3人に話しかけたりすることはなく
しかし3人は逃げることも動くこともできませんでした 無人だったはずの空き家にそれだけの人数が隠れていたとはさすがに考えにくいです
そもそも肝試しとして全ての部屋を見回って人の不在を確認してきたのですから それでも突然に姿を現した彼らはこの世のものではない何かということになるのかもしれません
しかし彼らは人間と同じような姿で 例えば血糊がついていたり足がなかったりもせず
清潔感のある衣服に身を包んで室内用のスリッパを履いていました それが異様で
とにかくどうすることもできないほどに恐ろしかったのだと それじゃあ始めようか
午後のカンテサンスの擬態はっと
先輩と呼ばれていた薄茶色のカーディガンを羽織った黒髪の女性は着席を確認するようにあたりを見回すと声を出しました
彼女が立って話しながら見ているホワイトボードは先ほどまで確かに真っさらだったはずのホワイトボードはいつの間にかたくさんの書き込みにまみれていました
そっか午前で煮詰まったとこの続きだったね それじゃあ引き続きってことで
どうすれば幽霊が見えるようになるだろう そう彼女が言うと着席していた彼らはうーんと声を漏らしました
やっぱり霊力というか霊感を高めないといけないんじゃないでしょうか 前やってたタロットとかじゃなくてもっと本格的な占いの技術を磨いていけば
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技術を磨くっていうよりはもっとこう 素養みたいな感じのイメージがあるんですよね霊感って
それ用の心理テストとかあと霊感のある人特有の手相みたいな話も聞きますし なるほどなるほど
手相に占いか あと心理テスト
トントンとペン先で板を叩く音がしてホワイトボードに箇条書きのリストが書き 加えられていきました
いやーまあもちろんそういうのも大事ですけどこれまで僕らがしてきたカンテサンスを 得るための努力もきっと無駄にはならないと思いますけどね
ディスカッションとかヒーリングのためのセラピーとかそういうベース的な部分もしっかり 続けていかないと
おーあなたいいことを言ったその通りですよね きっとこれまでの活動もどこかで花開くんですから
はいせっかくこれだけ自分たちの生まれた家くらいに落ち着ける環境が用意されてるんです から落ち着いた場所でいつもやっていることをする
それが一番心に染み込むカンテサンスにつながるんです 男性の話に合わせ横に座っている下級生らしき人物がメモを取っている
なるほど継続の大切さを再認識することと そうですそうです
対話、言葉の持つ重要性をもっとリシンクしていくことが寛容なんです それこそがまさしく対話の憩いにつながると僕は思います
彼の言葉にどこからかパチパチと拍手が上がり 先輩も笑顔でその様子を見つめています
彼ら彼女らの話題はやはりどこかで聞いたことのあるような話や なんとなく霊的なイメージを持って想起される言葉を寄せ集めた粗末なものでした
いわばかもなく不可もない 少しだけスピリチュアル方向に傾いた自己啓発サークルの懐疑といった印象を受けるものです
それがどうすれば幽霊が見えるようになるかという議題で この世のものではない人々が誰もいないはずの空き家に突如として現れ
当然のように会話をしているという点を除けば なんで
その声は今着席している彼らではなく 部屋の隅で彼らを震えながら見ていた3名のうちの一人
Cさんによるものでした Cさんは薄紫色の唇をヘウヘウと動かし
隣にいるAさんやBさんの両目がなんとか聞き取れるレベルの声を無理やりに繋いでいきました
54:00
なんで こうなるんだよ
それは今目の前で起こっている不条理そのものに対する疑問のような言葉だと思っていました
なんでこうなるんだよ だって
しかし そこからCさんが震える声で繋いだ言葉は
およそ信じがたい というよりも信じたくない内容でした
こいつら 泊まってないだろう
この家
その言葉に抗応したのは肝試しを企画したAさんでした
しかしAさんの言葉を聞いているのかいないのか Cさんはその場で自分だけが知っていた不条理を
その場で自分だけが知っているということに耐えられなくなった不条理を 負おうとするように話し続けました
平時から友人間で随一の情報通を受証し 今回も恐ろしいサークルの違和区
因縁がある建物を突き止め 当日にその場所の下見と道案内を担当したCさんは
俺 どこのセミナーハウスか分かんなかったから
適当に最近廃墟になった合宿用の場所見つくろうってきたのに
だから下見行った時もおかしなこととかなかったのに
そもそもこいつら 泊まったことないだろここ
なんでこいつらが ちょっとちょっと待て
は? お前ここあのサークルの使ってた場所じゃないのか
Aさんはそこでようやく彼の話を遮りました
Cさんが見つけてきたというこの建物は その場ではCさん以外誰も知らなかった場所であったため
ようやく突き止めたと得意気に話す彼の言葉をわざわざ疑う人はいませんでした
それなのに
ただ ただ採算が取れなくて潰れたロッジだよここは
採算取れなくなって解体するにも金がかかるからっつって何年かほっとかれたままになってて
彼は反響なんでそう言って Aさんも確かにそれを信じそうになって
しかしそれを認めることはどうしてもできませんでした
確かにこの場所が何の違和感もないただの放置されたロッジであれば それでいろいろな理屈は通る
ある時期から客の宿泊予約をしぶって放置された違和感付きの建物がいつでも使用でき そうなくらいに整頓されたままの内装だったのは
そもそも宿泊をしぶった過去がなかったからだろう
地域ではそれなりに有名な階段話に関わる宿泊施設の廃墟なのに 特に後から荒らされた跡や目立った汚れがなかったのは
57:10
まずもってその有名な階段話に関わっていなかったからだろう 家の中を見て回った段階で何の変哲もない空き家としか感じられなかったのは
本当に何の変哲もない空き家だったからだろう
でも 仮にそうだとしてじゃあ今起きているこれはなんだ
Aさんはどこか懇願するようにCさんに向かって話しかけました せめてせめてCさんにはこれ以上怖い話をしてほしくなかったから
これ以上自分たちの身に起きている不条理を増やすのではなくて 噂は本当だったんだとかそういう無難なことを言って一緒に震えていて欲しかったから
いやその大丈夫だよお前お前さ違うんだろ ちょっとおかしくなってんだろきっとお前
ここはあのサークルが止まってた家でここで夏合宿してて そこでなんか起こったんだよきっと
な? 違うってだってお前時期もちょっとずれてんだぞ
ここってあいつらが変になる夏合宿の前からこの家しばらく休みますつって 鍵閉めて資金繰りしてて
そっから開けて休んで繰り返しているうちに潰れたんだからな あいつらが大学いた時期とかもうとっくに閉まってたんだよ
いや違うってきっとお前もあれがいつあったかとかはっきり知らないだろう だから年代とかが間違って伝わっただけで本当はここにいたんだって
だからもうこれ以上そういう お前だって家回ってた時言ってただろうがちょっと違うなって
肝試しっぽくないって ただ秋夜回って怖い怖い言ってただけなんだよ俺たちは最初から
だからもっと暗くなって雰囲気出てから回るかって言ったんだよ俺 何もないってわかってただろうお前だって
いや多分それはあの時から怖かったからそう言ってただけでさ 強がりでそう強がりで本当は俺ずっと怖かったんだけど何にもないなって平気な
フリして言ってたんだよ ごめんごめんだから本当は幽霊がいたんだよ
前からここにさ幽霊とか怖い話とかがこの家にちゃんとあって ねえよ幽霊も怖い話もあるわけねえだろここに
そこでAさんもいろいろなものが限界に達したのでしょう だだをこねるように叫ぶように言いました
うるせえよ じゃあお前
じゃあお前今いるのは何なんだよ 何が見えてんだよ俺たちに
1:00:06
幽霊ですよ その声はAさんでもCさんでもなく
彼らと一緒に部屋の隅で震えていたはずのBさんの声でした
Aさんに突き沿って肝試しに来た彼女は先ほどからずっと黙っていたままだった 彼女は
二人の方でも突如として会議室に入ってきた集団の方でもなく 会議室の窓の向こうをじっと見つめていました
突然にそれもやけに落ち着き払った敬語で言葉を発したBさんに驚いて そちらを見た二人は彼女の視線につられてゆっくりと窓の外を見ました
窓を一枚隔てたすぐ向こうに とても大きな男性が立っていました
つい何分か前まで彼らの止めた車のすぐ横に立っていたあの男性だと直感しました 男はやはりとても大きく会議室の窓からでは肩の下あたりまでしか確認することができません
やけに大きく折れ曲がった首も そこについている顔も隠れてしまっているのですが
でもあの男だろうと思いました あの時は逆光でシルエットしか見えなかった男の肩から下は
そのあまりに大きすぎる上背を度外視するならば どこにでもいるおじさんのような風景でした
チェック柄で襟元のヨレた半袖のTシャツと色落ちしたグレーの長ズボン こういう時って模服や白装束ではないんだな
と考えることを放棄した頭の一部がそんなことを考えていました 若干落ちかけている夕焼けに照らされたその男を無表情に見つめながら
Bさんは あなたにはこれが幽霊に見えないんですか
そう言いました その瞬間
会議室の中にドッと笑い声が響いて 部屋の中に目を向けると会議室に座った彼らが彼女らが全員こちらを見て声を出して笑っていました
それは例えるならサプライズが成功した時のような ゲラゲラと手を叩き涙を滲ませるような
爆笑と形容してもいい笑い声でした そうだよねあれが幽霊に見えませんはちょっとやばいって
信じたくなくてもとりあえずさあるものはあるって言っとかないと っていうかじゃあ何に見えてるのさ
1:03:09
ああおかしい久々にこんな笑ったかも 笑い声
手を叩く音 むせるような咳
そのすべてが部屋の隅にいる3名に向けられていて AさんとCさんはただそれを見回して呆然とすることしかできなかった
Bさんは未だに窓の外に立っている何かをただぼーっと見つめていた
とすとすと先ほど廊下から聞こえてきたような足音が部屋の中で近づいて それは薄茶色のカーディガンを羽織り黒髪を肩まで伸ばした先輩のスリッパが立てている足音で
彼女が歯を見せて笑みを浮かべながら3人の方に近づいてきて じゃあもう変えよっか質問
しょうがないなぁ特別だからね 含み笑いを浮かべながら
こっからどれくらいのことが起きれば幽霊だと思ってくれる そう言ったと同時に窓がすごい勢いでバンと叩かれました
もう何も見たくなかったのに大きな音によって反射的に動いた顔がそれを視界に 入れてしまいました
窓の外に気をつけの姿勢で立っていた男の両方の手のひらが ベタリと張り付くように窓に触れていて
依然として肩から上は隠れて見えない位置にあるはずなのに 直立の状態で首だけが上下逆にねじれて回転するみたい
その頭や額がゆっくりと窓の上部から見えてきて 寄れた t シャツの胸元に重なるあたりの位置に垂れてきた顔の上半分が
こちらを覗き込みました前髪のすぐ下で雨枝か何かのように不定形に引き伸ばされた 真っ黒な目が露出した時
ずっと無感情に窓の外を眺めていた b さんが突然にパッと目を開いて 嬉しそうに輝いた目で2人の方を見て
幽霊が見えるようになった と言ったので
2人はそこでようやく弾かれるように会議室を飛び出しました
会議室の扉を開ける時も b さんの腕を引っ張って廊下を駆ける時も 最初に開けた簡易キッチンの窓からロッジを出る時も
1:06:03
突然家の中に現れた何名もの男女はまだそこにいて 過呼吸の状態でバタバタと走る彼らを面白そうに眺めていたそうです
風呂場のシャワーで手と足を洗っていた男性も 廊下ですぐ横をすれ違った女性も
キッチンで食事の用意らしきことをしていた一組の男女も 追いかけてきたりすることはなくただニコニコとその様子を見ていて
彼らはそれほど遠くはないロッジの大広間から車までの道を 大きく息を切らしながら走り切り車に乗り込みました
つい先ほどまで家の外にいた男のような何かも 家の正面の窓から見える大広間の中にいた大勢の人たちも
車に乗って猛スピードで山道を迂回する時には その姿を見ることはできなかったようなのですが
だからといってあれがすべて恐怖心から見た幻覚であったと思い直すことは まず絶対にできなかったのだろうと思います
以上ここまでが前提となるお話です この話に関わる不可解な点不気味な点は主にこれから記述する部分になるのですが
一番最初に話した通り肝試しを主題とした怪談話の場合は そこで怪異を体験する人物が基本的に能動的であればあるほど
姿勢に広く伝わりやすくなります 怖いことが起こると知っていながらその場所を訪れた人物が結果として怖い目に
合うというある意味で説話的な因果話に落とし込んだ方がそれは楽しいお話として 広く受け入れられやすくなるからです
かつてとある県のとある地区で活動しいつの間にか名前を変えていなくなった 対話の憩いカンテサンスという団体はおそらくそこにつけ込んだのだろうと思います
私がこの話を聞いたのは先日した学生街から少し離れたところにある 中途半端に自然が豊かな田舎町でした
そこは繁華街にあるような華やかさに乏しく 代わりに合宿用セミナーハウスや少年自然の家といった
人里離れたことを生かしたタイプの建物が多い場所でした そして彼らもAさんBさんCさんの3名もそんな建物で占術した出来事を体験したのだそうです
かつては使われていたが資金繰りがうまくいかずに閉鎖した山奥のロッジ もともとは学生用に貸し出されていた
1:09:08
その建物の近くにある広場を目的地として彼らは日帰りでバーベキューをしに行きました ロッジへ肝試しに行ったのではなくその近くにある広場へバーベキューをしに行きました
そのグループは男性が2人と女性が1人 免許を取ったお祝いにと購入した中古車に乗って彼らは意気揚々と車を走らせました
日帰りなので当然午後の早い時間からお酒や食べ物 バーベキュー道具などを持って
もともとそのロッジは駐車場近くの広場で外遊びやキャンプのようなことができるように整備されていたため建物の方が閉鎖してしまっても広場はある程度使えるのではないかと彼らは予想していたのです
私を含めた数名の友人はすでに閉鎖され管理されなくなった場所で火を使うことに抵抗があったため その誘いを断りました
しかしもともと複数名集まったのであれば何人でも結婚する予定だったようで彼らはそのまま やや少人数での日帰り小旅行計画を結婚したようです
それから数日間彼らと温身不通になりました
私たちも心配していたのですが今ほど携帯電話も高性能でなければ sns なんて普及どころか存在しているかも怪しい時代です
あまり表だったアクションを起こすこともできずやきもきしていたのですが ほどなくして彼らは戻ってきました
特に怪我などはなかったため私たちも安心していました そして戻ってきた彼らは私を含めた友人たちに
先日した肝試しに行った先で起こった体験談を危機として話し出したのです
もちろんこの時点で目的はバーベキューではなかったかと少し疑問に思う気持ちはあり ました
しかしバーベキュー会場は普段のロッジ付近にある広場であるため そこで盛り上がった彼らが話の流れで廃墟と化したその建物へ
肝試しに行こうとなることにはさほど違和感もありません
カンテサンスなる怪しい団体がこの付近にいたらしいという噂は私たちも聞いたことがありましたので
そういうディテールの信憑性も相まって私はどちらかというと好奇心を持って彼らの話を怖い怖いと聞いていました
事実3名が話すその体験談は多少なりとも気持ちの悪いものであったため
その語り口と出来事のインパクトにつられ日帰り旅行の目的が違う程度の違和感はこの時点でそれほど考慮していなかったのです
1:12:07
明らかにおかしいと感じたのはそれからしばらく経った頃でした
彼らの体験した怪談話はその後も檻に触れて話されることになりました
例えば私たちがこの話を聞いた翌日にも
この子前すっごい怖い体験してさとサークル仲間に話しましたし
それこそみんなで正規のキャンプ場へ行った時の深夜に行われた怪談大会でも彼らの体験話が猛威を振るうこととなりました
すると当然その話を繰り返し聞くことになる友人も出てくることになり私もその一人でした
ただ仲間内で繰り返し話されるエピソードトークなどいくらでもありますので最初は気にしていなかったのです
ですがある時に誰かが気づきました
彼らの語る話があまりにも正確なのです
例えば先日の話で言うところのAさんBさんCさんという体験者の違いによって語られる内容それ自体の相違点はあります
しかし例えばAさんが自分の体験談として語る話はいつ聞いても全く同じなのです
話し慣れたエピソードトークであっても細かな表現の違いは当然発生します
あの店があのコンビニになったり土曜に行ったゲーセンが週末のラウンド1になったり
ディテールや女子のブレは話すたびに毎回起こることでしょう
しかしそれは本当に一言一句全く同じなのです
彼らが各々自分の体験談を暗唱しているかのように
いつ話しても女子や細かなセリフ回しに至るまで全てが完全に同じでした
この類の怪談話でよくなぜ体験者は細部までの情景を記憶していたり
一つ一つのセリフを文字に起こせるのかという話題が上がります
私も最初にこの話を聞いたときそういった疑念を抱かないではなかったのですが
それは私たちに話す際に都度補完しているのだろうと自分なりに納得していました
それが完全に一言一句彼らの頭の中に入っているからだとそんな風に考えるはずがありません
そしてもう一つ私たちにとって天気となる出来事が起こりました
きっかけは先日の話でいうところのシーさんの彼女でした
彼女曰くシーさんはあの肝試しに行ってからどことなく様子がおかしくなったのだそうです
1:15:03
珍しく本や新聞を読んでいるのかと思ったらどこか一箇所の文字だけをただじっと見つめて何十分もぼーっとしていたり
それまではあまり系統していなかった音楽鑑賞に凝り出したようで
昼夜問わず自室でラジカセを取り出し場合によっては何時間もイヤホンを耳につけて目を閉じていたり
彼女はそのラジカセを彼が入浴している隙に色々と操作してみたことがありました
彼がよく用いていたのはカセットテープの再生機能でありその時もテープが中に入ったままになっていたため
電源をつけてイヤホンを装着し直近で再生されていた部分から再生ボタンを押しました
そこでイヤホンから聞こえてきたのは知らない男性の声で話されるあの出来事の音声でした
彼女がこれまでCさんから聞いていたものと一言一句丸切り同じ語り口と言葉遣いの
Cさんが体験した出来事の音声がそこから流れ続けていて
これは何だと再生を止めカセットテープを取り出すとテープのタイトル欄には
カンテサンス音声3-5という手書きのタイトルが付されていたそうで
彼女からその話を聞いた友人たちはそこでようやく
これはうまく説明できないが何かとてもダメなのではないかとそう思ったのでした
結論から話すとあの日からしばらく温身不通になった3人は全員
出所不明のカセットテープを何枚も所持していました
Aさんはカンテサンス音声1-1から1-6
Bさんはカンテサンス音声2-2から2-6
Cさんはカンテサンス音声3-1から3-6
それについて詳細を聞こうとするとはぐらかされ
私たちがそれを再生あるいは複製しようとすると猛烈な勢いで拒否されたため
彼ら全員と会えなくなった今となっては
あのテープがどういった意図で作られ彼らの元に渡ったのか知る余地もありません
しかしある友人が隙を見てカンテサンス音声1-1の途中までを別のテープに複製したことがあり
それをみんなで聞いたことがありました
そこに収録されていたのは今でいうところのNLPやミルトンモデルに相当するのでしょうか
いわば人間の非暗示性に働きかけ視聴者を変性意識状態に誘導する言葉
その導入となる音声データでした
1:18:00
もちろん私たちも当時それを聞いた時点で
普段の音声がそういったものを機としているとすぐに判断がついたわけではありません
そのため今の時点で何を言っているのかわからないという方もいらっしゃるかと思いますが
おそらくは読んでいけばなんとなくわかります
今でもミルトンモデルなどはビジネス論や自己啓発の業界で心理学に裏打ちされた誘導テクニック
誰でもできる会話術といった題目によって宣伝利用されていますが
この音声もそれに類する何かが系譜にあったのかもしれません
実際どこかで聞いたことのある言い回しや心理テスト心霊霊感などのよくある
スピリチュアル的な要素をごちゃ混ぜにした言葉遣いは
そのテープの音声においても同様に用いられていました
人によればそこで聞いた音声の断片も一緒に付したかもしれません
しかし私たちはそれを聞いた時点で
これ以上彼らに踏み込むのはやめにしようと
誰が言い出したわけでもなくそう思っていました
これから示すのはその当時に友人が録音した音声の文章化データになります
あなたは今無意識にカンテサンスは怖い団体だという前提をすり込まれていることに気づいていますか
以下カンテサンス音声1-1
一部の文字起こし
十数秒間のホワイトノイズ
これを手に取っていただき誠にありがとうございます
まずはお礼を言わせてください
きっとあなたは今少なからず恐ろしい気持ちを
不安感を持ってこの言葉を聞いていることでしょう
当然です
あなたはあの家にまつわる恐ろしい噂を聞きつけて
そしてここまでたどり着いて
その上で今こうして私の言葉を聞いている
言葉を聞いてそれを脳が記憶して
頭の中で読み上げている
怖がるのも当然です
それでいい
それはとても自然なことです
例えば
もし私が今からいろいろと言葉を漏して
あなたに対して危害を加えない
怖いこと嫌なことは何もしないといったところで
あなたはもっともっと私たちに疑いの目を向け
距離を取ってしまうことでしょう
疑ってくれる方が自然ですし
むしろ私たちもそれが嬉しい
今私の言葉を疑い
怖がりながら聞いているということは
あなたがそれだけ私たちの言葉を
熱心に読み込んでいるということだからです
あなたが私を知ろうとしない限り
怖いという感情も
怪しいという感情も生まれてこない
ただ何も考えず私の言葉を受け入れるのではなくて
1:21:02
ちゃんと真摯に真剣に
私の言葉を怖がってくれている
私はそれが嬉しい
疑うことも怖がることも
一つの信頼関係になる
あなたは今それを証明してくれている
だから私からもあなたにお願いします
そのまま疑いながらでも
怖がりながらでもいいから
私の言葉を聞き続けてください
そうすることが私にとって一番の喜びになるから
あなたが今あなたの意思でしていることは
私を喜ばせているから
怖がりながらでもこの言葉を読み続けて欲しい
そんな願いを聞いてくれているあなたは
無意識に私の言葉を
私自身を信頼してくれている
あなたは今私に協力してくれている
安心するだけが信頼じゃない
安心できずに怖がることも
裏返せば一番の信頼になる
それにあなたは自分の意思で
この言葉を手に取ってくれたんだから
肝試しをするみたいに
怖い気持ちになりたくて
不安感を与えられたくて
だから今もこの言葉を聞いてくれている
あなたは最初から無意識のうちに
私に協力してくれていた
あなたの頭は気づこうとしていなかったかもしれないけれど
あなたの無意識は最初から
私を信頼してくれていた
あなたはあなたの意思で
肝試しに来てくれた
もう一度言います
あなたはあなたの意思で
肝試しに来た
それはどんな場所だっただろう
肝試しに行くということは当然
その場所が必要になるはず
あなたはどんな場所に行ったんだっけ
覚えていますか
大丈夫
はっきりと想像できなくてもいい
無意識は覚えているはずだから
あなたはそれを思い出すだけでいい
あなたは怖がりながらそれを思い出す
あなたの意思でそれを思い出してくれる
それはどんな場所だったっけ
私と一緒に想像してみましょう
ガタガタと音が聞こえる
車のエンジンのような音
実際に聞こえなくてもいい
聞こえるという想像をするだけでいい
それは徐々に徐々に大きくなって
想像の中のあなたは今
車でどこかに向かっていたことに気づく
思い出して
あなたは車でどこかに向かっていたはず
車の窓からは緑が
たくさんの木々や草が見えていて
そもそもの始まりが山の中だったことを
そこであなたは思い出す
山を抜けて
木々を抜けて
バーッと視界が開ける
そこには何があったっけ
そうそこには家があった
その家の見た目を知らないはずなのに
あなたはなぜかその家を知っている
その家が自分の家みたいに
落ち着く場所だと教えられたことも
1:24:02
その家でたくさんの人と出会ったことも
あなたは次々と思い出す
すごいですね
とても嬉しい
私は質問しかしていないのに
あなたの心は次々とその答えを返してくれる
自分の意思で私と対話しようとしてくれる
こちらが一方的に情報を与えるのではなくて
こちらが投げかけた質問に
あなたが自発的に答えている
今私はまだその家のことを
ほとんど何も話していないのに
あなたは自分から私と対話して
まだ私が話していない記憶を
辿り続けることができている
じゃあ今度はもう一つ
あなたにお願いしたいことがあります
この家の道案内をしてもらえないでしょうか
車を降りて家の前まで来たはいいものの
どうやら正面の玄関は
鍵がかかって開かないみたいなんです
ここにある正面の窓からも
中にある大広間の様子は見えるんですが
いくら両手で強く窓を叩いても
中の様子を覗き込んでも
その窓は開きそうにありません
でもあなたなら
どこから入ればいいのか
知っているかもしれないと思って
大丈夫声に出さなくても
あなたの心がちゃんと伝えてくれました
それは家の裏手にある窓
そこからなら中に入ることができる
窓を開けて
そこから家の中に入ることができる
それでは裏手に回りましょう
裏手に回る間
草を踏みしめてザクザクと歩いている間
もう一度この家を思い浮かべてください
山の中にあるロッジ
放置されてはいるけれど
外観は綺麗な空き家
自分の家と同じくらい落ち着く場所だと
誰かが話していた家
想像の中で
性格かどうかは関係ありません
あなたが私を信頼して
疑って
それを思い浮かびようとすることが大事だから
これからあなたはその窓を開けて
家の中に入って
想像でその家の中を歩くことになります
最初に言ったように
これは肝試しなんですから
何か怖いものと会うかもしれません
それでもいい
怖がりながら中に入ってみてください
何かが起こるかもしれないと疑いながら
あなたはそこでどんなものと出会うんでしょうか
それではまずその窓を揺らしてみて
鍵を開けて
家の中に入ってしまいましょう
文字起こしここまで
見つけました
対話の憩いカンテサンス
いわゆる霊感の有無を知るための
有名なテストがあります
自分の成果の中に入り
家中を回って窓を開け
そして閉める
1:27:00
そんな想像をする
その想像の中で
自分以外の誰かと会ったり
すれ違ったりした人は霊感があるとされる
インターネット上でも有名ですが
信憑性には乏しく
判断材料としては
子供向けの心理テストなどと同レベルだとは思います
そこで何かが起こったからといって
霊感があると確実に判断できるとは
到底思えません
ただそれは別として
今となってはそれを知る術もありませんが
あの3人は一体何をすり込まれたのだろうと
今でも時々考えることがあります
以上がカンテサンス文章1の内容です