今夜の勝手に貸し出しカードはゆずきゆう子さんの最新刊、誓いの証言という本にしました。
はい、こちらあのまさに今年の3月かな、発売になったばかりの新刊なので、
まだ話題の新刊とかのコーナーにあるのかなと思ってこちらにしました。
月下の桜に続けてってことだと警察小説のなんかがいいかなと思ったりして迷ったんですけれども、
こちらは人気シリーズ、さかたさだとのシリーズの5作目に当たります。
もしお気に召したら遡ってあと4作品読んでいただけるので、
まだまだ楽しみが広がるという意味でこちらを選びました。
そしてこちらはさかたさんは弁護士なので弁護士シリーズなんですけど、
1作目から順に全部読まなきゃいけないってことは長くて、
全然この最新刊から読んでいただいて大丈夫だと思います。
さかたさだとという人は、いわゆるやめ犬って呼ばれる、
犬女を辞めて弁護士になりましたっていうタイプの方で、
今は東京に弁護士事務所を構えていて、
アシスタントさんっていうんですかね、弁護士を目指してロースクールに通いながら、
事務員をやっている小坂千鶴さんだったかな、
小坂さんとさかたさんの2人で弁護の相談を受けているという設定になっています。
しかし、1作目から順に読まなくて大丈夫ですよといったのは、
1作目が最後の証人っていうのなんですけど、
それはさかた弁護士シリーズの1作目でありながら、
弁護士として登場したのはこれが最後で、
続けて2作目、3作目、4作目と、
賢治の本会、賢治の氏名、賢治の親事っていう3作品あるんですけど、
続けてそのさかたのやめ犬の前の状態、賢治の時代を描いたものになっています。
今回のこの誓いの証言が、
久しぶりのシリーズ1作目以来の弁護士編になってきたんですね。
帰ってきたさかた弁護士って感じでしょうか。
かつ賢治時代を描いたものは短編集でしたので、
今回は久しぶりの、帯によれば16年ぶりの長編になっているというそうなんです。
私も確か賢治の本会を最初に読んで、
これは短編集で、連作短編集だったかなになっていて、
さらにもう多分文庫にもなっていると思うので、
取っ付けやすいという意味では、そちらから先に手に取ってもらってもいいかなと思いました。
ただ、はつきさんが久しぶりに小説を読み切る達成感みたいなのを味わわれたようでしたので、
あえてちょっと長編をお勧めしてみます。
誓いの証言がどんなお話か、簡単にあらすしをご紹介します。
さかたのところに、大学時代の同期である弁護士の久保という男から、
不同意性高等罪で酷訴されたという事件の弁護をやってほしいというふうに依頼に来ます。
さかたは無実を主張する同期の久保の言い分を信じて、
引き受けることにして調査を始めるんですけれども、
久保という男性が自分の、さかたの言い吐いていた彼の真面目なイメージとは違って、
どうも最近の周囲からの特に女性関係の評判はよろしくないようでして、
罪状は行きつけのクラブのホステスの優香という女性から、
睡眠導入剤を飲まされて性的暴行されたというふうに訴えられているんですね。
どちらかというと優香に同情的というか有利な証言ばかりで、あれあれという感じです。
不同意性高等罪の男性側を弁護するって、そもそも今だとさらにかもしれないですけど、
ちょっと抵抗感があるじゃないですか。
この小説の中では行為があったこと自体は事実として認めている、認めざるを得ない状況なので、
その先は何を争うかというと、同意の上だったのかそうじゃなかったのかという争いになり、
無理やりだったのかそうじゃなかったのかという争いになるわけですよね。
さかたの事務所には、さっき言った小坂さんというアシスタントがいるんですけど、
彼女は最初からもうそんなの引き受けるのって感じで、ちょっと否定的なんですよ。
そもそもさかた弁護士があんまりちょっとお金をもらえそうじゃない事件ばっかり引き受けるんで、
運営的にはこの事件じゃなくてこっちやって欲しいなみたいなのは小坂さんとしてはあるのかもしれないですが、
特にこの事件は最初からえぇって感じだったんですけど、
さかたは彼を信じているとか言っちゃって、よくあるパターンじゃないのって思いますよね。
いわゆるエリート男子たちのかばいやいと言いますか、
そういうのなんて言うんでしたっけ、
ヒムパシーっていう言葉がありますよね。
ヒムっていうのは彼、男性を意味するヒムと共感を意味するエンパシーの組み合わせた造語だと思うんですけど、
主に社会的に地位のある男性が性暴力とか加害者になった場合に、
男性側に対して同情とか擁護の声を示して、
被害者よりも加害者の立場を優先する傾向とか心理とかを表した、
社会学者的な擁護かなと思うんですけれども、
例えば最近話題になったことで言うとスポーツ選手とかですかね、
あとは著名人、
エリート学生なんかにも性加害を起こした場合に、
一度の過ちで輝かしいキャリアや未来が台無しになるのは不憫だとか、
彼はすごく優秀な人なのにかわいそうにって言った論調になることなんですけど、
その論調自体にもプロミシングヤングマンっていう名前がついてたりします。
将来性のある男性っていう意味ですね、プロミシングヤングマンっていうのは、
プロミシングヤングマンなのに、
そのちょっとした一度の過ちでスポーツ選手とか輝かしい未来を立たれる台無しになるのは不憫なんじゃないかっていう風に、
同情的な論調になっちゃうっていう意味だと思うんですけど、
それをもじったプロミシングヤングウーマンっていう映画を最近見たんですよ。
それでこの本の話とつながったんですけれども、
プロミシングヤングウーマンはキャリー・マリガンが主演のすごくぶっ飛んだ映画ですごく面白かったので、
これもよかったら見てみてください。
話が飛んでしまったんだけど何の話だ。
ヒムパシーの話をしてたんでした。
だから坂田弁護士が同じ学びを共にした弁護士仲間の男性に、
ヒムパシーを感じてもおかしくないですし、
そういったちょっとバイアスがかかってるんじゃないかなって思った。
私が思ったわけです。
プロミシングヤングウーマン論調にはセットで女性の方がアバズレだったんじゃないかとか、
ハニートラップだったんじゃないかとか、
有名人とそういうのを付き合いたくて、
自分から近づいたんじゃないのとかっていうふうに、
金持ちに近づいたんじゃないのとかっていうふうに、
女性側の誹謗をして女性を下げるというのとセットになることが多いですよね。
そのごく最近のスポーツ、サッカーのニュースとか芸能界のニュースも、
今日は詳しくはしゃべらないですけど、まさにそんな感じの攻防がありましたよね。
だからこの本を読み始めて、私が最初に思ったのは、
ゆずきゆう子さんは何でこんなに同情しづらい、
共感して没入しづらい事件の設定にしたんだろうっていうことを、
すごく疑問に思ったんですよね。
だって主人公は、この物語の主人公は酒田弁護士だから、
読者としては酒田弁護士が勝ってほしいわけですよ、裁判にね。
この事件で言うと、弁護している男性側が無罪になるということが勝つってことだと思うんですけど、
どう読んでも、私が女性だからかもしれないし、
それはある種、私のバイアスとかフィルターがかかっている可能性は否定できないけど、
多くの人がこれを読んで、
被害者側の女性に同情したいなっていう、
応援したいなっていう気持ちになるような作りになってると思うんです。
だからこれ、つまりその裁判に勝っても負けてもスッキリしない、
もちろん主人公が勝ってほしい気持ちと、主人公が勝つってことは、この女性が負けるってことだから、
それってどうなのっていう、その読者の気持ちの落とし所をどう持ってくるんだろうって、
どう落とし前をつけるんだろうと言いますか。
ユズキさんはこの物語のジャッジの落とし所をどうやって持っていくんだっていうのを見守る380ページだったなというふうに読み終わって思いました。
これ最後まで読んでみて、ああなるほど、圧巻の結末だって思うのか、
えーそうなのって思うのかはちょっと、もしかしたら意見が分かれるかもしれないなと思いました。
なんで、最初に言ったマヨ独語、お茶会みたいなやつがあったとしたら、語りたいタイプのやつです。
で、リーガルミステリー、いわゆる法廷ミステリー、リーガルミステリーって言われるジャンルが私すごく好きなんですね。
リーガルドラマも好きです。海外ドラマとか韓国ドラマとかでも、弁護士事務所を舞台にした群蔵劇みたいなタイプがすごく好きなんですね。
でもまあそういったリーガルドラマの最大の見せ場は法廷劇だと思うんですよ。
法廷審、異議あり異議を認めますとか、弁護人は質問を書いてくださいとかっていうやつですね。
そこをすごく楽しみに見ているわけなんですけれども、この本は実はその法廷審がなかなか出てこなくって、あれ弁護士ものだよねって思うくらい前手の調べ物というか調査とか、
あと一つ過去の別の香川県のある村の石を削る職人さんたちのいざこざみたいなものが合間に描かれていて、これがどう繋がるの?
繋がるに違いないんですけど、どう繋がるんだろうっていうちょっとじれったさがありつつ進んでいきます。
で、その終盤に法廷審やってくるんですけれども、そこは詳細言わずにおきますが、じらされた甲斐があったみたいな、その待った甲斐があった。
溜めて溜めて溜めてドーンっていう法廷の見どころたっぷりの王宗が見られますので、ぜひお楽しみに。
はい、やっぱりそこまで描き切るには短編集じゃなくて長編が良かったのかなというふうに読んでみて思いました。
ぜひ楽しんでいただければと思います。