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「できて普通だよね」のバトンをつながない勇気。
2026-04-22 18:23

「できて普通だよね」のバトンをつながない勇気。

EP.245▶︎今夜のお話: 男性中心の職場で女性の活躍を期待される重圧/ 助けを求めたくないプライドと肉体的限界の狭間で /チョ・ナムジュ短編集『彼女の名前は』を読む / 「私のときはもっとひどかった」と言いたくなる/不幸のマウンティング問題 / アイドルの愛嬌ポーズへのいたたまれなさ/バス運転士の矜持 /今日自分が飲み込んだ言葉について考える/NOは弱音じゃなく、次へのバトン

▶︎今夜の勝手に貸出カード

・チョ・ナムジュ著、小山内園子・すんみ訳『彼女の名前は』(ちくま文庫)

▶︎あわせて読みたい「連帯」と「働くこと」の本

・チョ・ナムジュ著、斎藤真理子訳『82年生まれ、キム・ジヨン』(ちくま文庫)

・高瀬隼子『いい子のあくび』(集英社)

・柚木麻子『あいにくあんたのためじゃない』(新潮社)

・伊藤亜紗『体の居場所をつくる』(朝日出版社) 

▶︎番組概要

夜眠りにつく前の“聴くだけ読書会”。講談社のバタやんこと川端里恵がおすすめの本や心に響くフレーズをご紹介します。毎週水曜日の夜に、リスナーの方のお悩みや気分のリクエストにおこたえして、本を1冊、勝手に貸し出しいたします。読んでも、読まなくても、”あしたが楽しみになる”読書の時間を共有する図書室です。 ぜひフォローをお願いします。

▶︎本のリクエスト、番組へのメッセージはインスタのDMよりお送りください

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▶︎番組ハッシュタグ: #真夜中の読書会

▶︎MC: バタやん(川端里恵・KODANSHA)

1979年生まれ。2002年に講談社に入社。広告営業、女性誌「with」「VOCE」「FRAU」「mi-mollet」編集部などを経て、今は人事・総務を担当しています。文芸編集者も漫画編集者も経験していないけど、本と漫画と雑誌を読むのが好きです。メンタルケア心理士。 ※講談社の出版物に限らず紹介します。発言や感想は、完全に個人の見解で会社を代表するものではありません。

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▶︎noteで紹介した本をまとめています| https://note.com/batayan_mi

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サマリー

男性中心の職場で働く女性が、プライドと肉体的限界の間で葛藤する悩みに、チョ・ナムジュの短編集『彼女の名前は』を紹介。同調圧力や「私の時はもっと酷かった」といった不幸のマウンティングに抗い、言いたいことを言う勇気を持つことの大切さを説く。バス運転士の矜持を描いた「運転の達人」を引用し、NOと言うことは弱音ではなく次へのバトンであると語りかける。

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真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室へ、ようこそ。
リスナーからの悩み:男性中心の職場で感じる葛藤
今晩は第245夜を迎えました。今夜のお便りをご紹介します。ペンネーム、瀬鷹さんから頂きました。
こんにちは、こんにちは。仕事終わりに、バタやんさんの声にいつも癒されながら、素敵な本との出会いを楽しみに聞いています。
早速ですが、女性のキャリアについて考えさせられることがあったので、ぜひバタやんさんの意見をお聞きしたいです。
私の職場は、私以外全員男性で、力仕事もあります。
会社全体で男女関係なく働くことができる職場環境を整えようとする流れにあります。
私自身も今まで女性が配属されていなかった部署に配属されたので、ここでは女性でも活躍できることを証明したいと思っていました。
しかし、力仕事はかなり大変で、助けてもらいたいと思いつつも、自分のプライドで頼ることもできずに、泣きそうになりながら仕事をしています。
その涙の正体は、決してその仕事が嫌なのではありません。
女性だからできないと決めつけられたくないと思いつつも、女性だから力仕事はできないという現実があると感じたからです。
職場の同僚や上司からも、あえてなのか、手伝おうかと言われないので、女性でも活躍できるだろうという周りからの期待と、私のプライドで押しつぶされそうです。
女性がバリバリ働けることを目指したいですが、これは何か違う気がします。
男女問わず働くことができる環境を目指すことについて、自分の複雑な気持ちが整理できる方法を教えていただきたいです。
推薦図書:チョ・ナムジュ『彼女の名前は』
【佐藤】ありがとうございます。
そうですか、世田谷さんのお仕事、どういうお仕事なんだろうって思いを巡らせながら、本を選ばせていただきました。
今夜の勝手に貸し出しカードは、ちょなむじゅさん、ちょ幼い園子さん、すんみさん役の彼女の名前は、という本にしました。
ちょなむじゅさんのお名前でピンときた方は、韓国文学好きかもしれないですね。
82年生まれ、キム・ジオンで社会現象にまでなった、韓国を代表する作家さんの一人と言えるんじゃないでしょうか。
この彼女の名前は、キム・ジオンの後、2018年に刊行された短編小説集になっています。
もともとは新聞の連載だったそうで、9歳から70代まで、長者の町さんが出会った60人以上の女性たちのインタビューをもとに、28編の小説として構成されています。
前回ご紹介した伊藤旭さんの体の居場所を作るもインタビューをもとにしていましたが、あれはいわゆるボルタージュ形式と言いますか、ドキュメンタリー形式で、それはそれで生の声の生々しさ、リアリティーが胸に迫るものがありましたが、
こちらは小説、フィクションに昇華されている、しかもものすごく短いショートショートになっているというところが、また良きですね、グッと入り込みやすい作りになっています。
28編に登場するのは、職場の先輩社員からのセクハラを告発した女性とか、お仕方の中でちょっとイシラ違和感を感じている女性とか、地下2階に住んでいる女子学生のある悩みなどなど、性差、特に女性の男女差による不合理、セクハラ、パワハラ、あるいはハラスメントとまではいかないけど、
そういったちょっとした嫌な思いなどを、まず女の人が生きていく上で、当たり前のように、多分誰でも直面する不公平な現実を国名に描いています。
ただ単に男性対女性みたいな対立軸では語られていなくて、そういう構造を作ってしまった社会とか、内面化されてきた、蓄積された価値観みたいなものに抗っている感じが、フェアでフラットだなぁと思って共感できました。
女の人って可哀想だよね、とかっていう一方的な言い分ではないんですよね。
作品紹介:「なりと私」と「不幸のマウンティング」
読み始めて、私が一番最初に心をつかまれたのは2編目なんですけど、「なりと私」という小説が出てきます。
この主人公の私はテレビ局で仕事をしている放送作家で、おそらく40代とかなのかな、今はそこそこ安定した地位にあって、評価も認められてもいるという感じで、
なりっていう後輩の女性は、2年目の放送作家で26歳なんですね。彼女は劇務、ハードワークに時間に追われているのに加えて、現場でいろんな理不尽に揉まれているわけです。
私は、主人公の私は、なりのことをとても可愛がっていて、さっと助け舟を出したり、困った局面ではちょっと立ち振る舞ったりして、解決したり、これでタクシーで帰りなよって言って、お金を握らしてあげたりするんですよ。
これが終わったら2人で打ち上げしようね。高いタイ料理でも食べに行こうよって言って、握らんだけど、自分も忙しくて結局打ち上げは実現しないとか、とてもリアルな感じがしましたね。
だけどどこかで、いやもうちょっとしっかり踏ん張ってようと、私はもっとひどい目に遭ったものだよっていう気持ちも正直あるんですよね。
はっきりと、私がここまで来た背景は描かれないんですけど、きっとそういう葛藤がある、そんな心情が描かれた、この作品の最後の部分にすごくグッと来たので、ちょっと読みますね。
私だってそうだったんだよ。私たちの頃はもっとひどかったんだから、そんなことを言う先輩にはなるまいと心に誓った。
でもそれだけでは足りない。言ってはいけないことを言わない人で終わらず、言うべきことを言える人にならなければ、自分が今日飲み込んだ言葉、自分しか言ってあげられない言葉について考えている。
そうなんですよね。
この本に関する対談で、小説家の恩悠樹さんが、不幸のマウンティングをとっちゃいけないよねっていう言い方をされていて、すごい心に残ったんですけど、
そのぐらい我慢しなよって言う言葉が、また次の人に不の葛藤を渡しちゃうっていう感じですかね。
その、キム・ジオンという作品が、女性たちの不合理の、絶望みたいなことを浮き彫りにしたとするならば、今回のこの彼女の名前はっていう作品は、次の人のために言うべきことは言おうっていうたくましさを感じさせる作品になってます。
作品紹介:「彼女へ」とアイドルの愛嬌ポーズ
あともう一つ私がすごく好きだったのは、28編もあるんで、全部は紹介できないですけれども、どなたも、どれかにはこういう感情あるなっていう、これは私のことだって思わされるものがあるんじゃないかなと思ってます。
で、そのさっき言った、なりと私と次に紹介する彼女へという一編は、この28編の中で、これは私のことだってすごく思って印象に残った作品です。
で、その、彼女へという小説はですね、主人公は女性アイドル、ガールズグループの中の最年少の子をしていて、CDを何枚も買ったりとか、ファンミ的な特典イベントに行ったりするぐらい夢中になって追いかけているんだけれども、
彼女たちがバラエティ番組とか音楽番組とか、いろんな番組に出まくりになるわけですね、一時。そこで愛嬌ポーズっていうのを求められるんですよ。
愛嬌って言うとちょっと可愛い感じですけれども、結構セクシーだったり恥ずかしいようなポーズとかダンスをさせられるっていうのはよくあって、男性アイドルでもあると思うんですけれども、指ハートとか猫耳ぐらいだったらありかもしれないですけど、ちょっと見てていたたまれないぐらいの人権侵害なんじゃないかっていうようなのもあって、
これはかなり韓国の国内でも不快に感じる方もいて、だいぶ減ってきたというふうにこの本の中に書かれていましたけれども、でもまだまだありますよね、そういうスクショタイム的にポーズを撮らされたりするっていうのは、もちろんキャーキャーいうこっちも悪いのか、需要があるか供給があるみたいなところはありますけれども、
この彼女絵に出てくる主人公は推している最年少の子に対して、愛嬌ポーズやらなくていいよっていうのを何とかして本人に伝えようとするっていう、本当それだけの物語なんですけど、すごくグッときてしまいました。
「普通」という名のプレッシャーとバス運転士の矜持
さて、お便りをくださった瀬高さんに、今日この本をご紹介したいなって思ったのは、28編すべてではないんですけれども、多くの作品の根底にあるのは、男性優位、男性が中心の社会、会社だったり労働だったりが作ってきた普通っていうものがあって、
普通こうするよねとか、普通こうやるよねとか、普通ここまでできるよねとかっていう、名文化されていない暗黙地みたいなものがあって、そこに苦しんでいる女性たちを描いている作品が多く収録されています。
普通ができないっていうことですよね。普通というふうに、はっきり言われたわけじゃないけど、みんなができていることができないとか、そこから妻弾きにされてしまうとかですね。
でも、その普通を普通にこなせるようになることがベストなんだろうか。そうやって自分が必死になって、その普通をクリアしてしまうと、普通という場はそのまま次の世代や次の後輩女子、後輩男子たちにも引き継がれてしまうっていう葛藤があるわけですよ。
これが世田谷さんがバリバリ働けた方がいいんだろうけど、女性もバリバリ働けるっていうこと自体がどうなんだろうっていう葛藤とつながるのかなと思ったんですね。
この中でも世田谷さんにぜひ読んでみて、感想を伺いたいなと思った一編をご紹介します。運転の達人というタイトルでして、いいタイトルでしょう。路線バスのバスの女性運転士さんが主人公です。
彼女はもうかなりのベテラン運転士になってまして、もはや女性だからといって同僚とか乗客とかからバカにされたりってことはなくなりつつあるんだけど、あるちょっと足元のおぼつかないようなおじさんが乗ってきて、乗客として乗ってきて、お金が足りてない。運賃をね、チャリンチャリンって入れたんだけど足りてなかったので、お金が足りなかった。
お金が足りてないって指摘をして、ちょっとバスの中で一悶着になるという話なんです。この後ちょっと意外な展開になるんですけど、そこはぜひ読んでいただきたいので、詳しくここではご紹介しませんが、最後のところがすごく良かったんで、今日はそこを紙フレーズとして読みたいと思います。
私が笑うと、勤務運転手も笑顔で去っていった。毎日9時間無事故で運転する人。それが達人じゃなくて誰が達人よ。とにかく今日は人生の目標が一つできた。いつか運転の達人として達人を探せに出演するということだ。
冒頭に、まだ暗い早朝の車庫で、バスの出発の準備をするシーンがあるんですよ。他の運転手たちはタバコを吸って何か喋っていると。自分もタバコを吸い始めようかと思ったこともあると。仲間に入るためにね、タバコでも始めようかと思ったこともあるっていうような描写があって。
今はそういうとこは通り過ぎたんでしょうけれども、タバコ部屋トークがなくても仲間として認められているっていうような描写がありますけれども。そうかと思って、私もあんまり自分の話をここでしたいわけじゃないんですけど、ここはすごい胸がキュッとなってしまいましたね、私的には。
私自身もタバコを吸わないですし、ゴルフもやらないし、会社の人たちと飲みに行ったりもあんまり今はしてなくて。
カラパタもゴルフやった方がいいよとか、特に今の局長職のポジションになってからは、なんでやらないのぐらいの言い方をされたりしたんですけど。
いやゴルフできなくはないんですが、実はやらないわけじゃないんですけど、しないことにしていて、仕事関係ではっていうのは、結局タバコトークとかゴルフとか飲み会でのつながりをもって仕事の人間関係を円滑にするっていうのをやってしまうと、それを自分がもしうまくそうやってやれちゃったとすると、
またその暗黙の普通を次の誰かに引き継いじゃうなっていうのを思うんですよね。
次っていうのは男女関係なく、年上も年下も関係なくなんですけど、仕事の時間、オフィシャリーな時間はきっちりありますんで、そこで見てくださいって思ってます。
ただ運転手の彼女が感じていたように、それによる遠回りとかビハインドはきっと多分あるんだろうなとは思いますけれども、なんかそんな意地の張り方みたいなのは、世田谷さんが書いてらっしゃった周りからの期待とプライドで押しつぶされそう、助けてって言えないみたいな気持ちにすごく重なりますね。
「NO」と言う勇気と次世代へのバトン
体力、筋力かな、男女差は確実にありますからね。私はやっぱり土日は2日間しっかり休んで、平日も仕事が終わったら終わらなくてもなるべく、さっさと帰って家でご飯作って寝る、本ちょっと読んで寝るってしないと、
本当に心と体の体力が年を重ねるほどに持たなくなっているなと思ってますね。
何と私の放送作家の先輩じゃないけれども、しんどくてもしんどいって言わない、こう無理やりでも頑張って乗り越える、ある時期っていうのはあるのかもしれないけど、そういう強さも必要な時もあるかもしれないんですけど、無理なら無理ですっていう強さも時に必要で、
そうじゃないと後輩たちがまた同じしんどさを乗り越え続けなきゃいけないっていうのはありますよね。
ちょっと答えが出るあれじゃないんですけれども、ちょっと元気をもらえるような本でした。
番組エンディング
超ナムジュさんの彼女の名前はぜひ読んでみてください。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、皆さんからのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
お便りはインスタグラムのバタヨルムからお寄せください。
お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
18:23

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