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「女の連帯」は救済か拘束か。承認という名の”圧”について考える。
2026-09-30 21:13

「女の連帯」は救済か拘束か。承認という名の”圧”について考える。

▶︎女性の心情を描いたサスペンス作品をお探しのリスナーさんのリクエストにお答えして、今夜の<勝手に貸出カード>は、佐野広実さん著のサスペンス小説『シャドウワーク』を取り上げます。

夫のDVから逃れ、傷ついた女性たちが身を寄せるシェルターでの共同生活。トランプのババ抜きや、持ち回りのごはん作りといった日常の些細な営みを通して、「ここに居ていい」と静かに許され、自分の輪郭を取り戻していく姿を描きます。

一方で物語は、「仲間を裏切らない」という美しい連帯が、時に新たな縛りや負の連鎖を生んでしまうのではないか……という問いを投げかけているようにも感じます。

同作の映画もぜひご鑑賞ください!

▶︎今夜の勝手に貸出カード

・佐野広実さん著『シャドウワーク』(講談社文庫) 

▶︎配信内で触れた作品・書籍・記事

・佐野広実さん著『誰かがこの街で』(講談社文庫)

・佐野広実さん著『反乱の家』(講談社文庫)

・映画『シャドウワーク』公式サイト(吉岡里帆さん・奈緒さん主演)

・連続ドラマW『シャドウワーク』公式情報(多部未華子さん・桜井ユキさん主演 / WOWOW)

▶︎番組について

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サマリー

第261話では、佐野広実『シャドーワーク』を、DV被害女性たちが暮らすシェルターを舞台にしたサスペンスとして紹介する。主人公のノリコは共同生活の中で傷を癒やし、仲間の役に立つ小さな特技や家事を通して「ここにいていい」という感覚を取り戻していく。一方、海で見つかった女性の死を自殺とする警察の見立てに、同じく夫からDVを受ける女性刑事カオルが疑問を抱き、真相を追う。作品の中心には、存在を認められることの温かさと、それが仲間への同調や排除を伴う拘束にもなり得るという問いがある。

佐野広実『シャドーワーク』との出会い
真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは。第261話を迎えました。今夜のお便りを紹介します。 ペンネームグミさんからいただきました。
バタヤンさんいつも出勤前の家で準備中に聞かせていただいております。 私は近藤文江さん、坂木司さん、
柚木浅子さん、原田マハさんなどをよく読みます。 リアリティもありながら、ほっこりするような小説、または女性特有、独特の心情を描いたサスペンスが好きなのですが、なかなか冒険できずにいます。
お勧めがあれば教えていただけると幸いです。よろしくお願いします。 といただきました。ありがとうございます。
なるほど。ほっこりするお話も、女性の心情を描くサスペンスもお好きということで、作家さんベースで作品を選ばれることが多いんですかね。
新しくはまれる作家さんがいたら、それだけ選択肢も広がりますしね。
そんな久美さんに私は佐野博美さんはどうかなと思って、お勧めしたいなと思っていまして、タイミングを見計らっておりました。
さて今日の勝手に貸し出しカードは、佐野博美さんのシャドーワークという小説にしました。
佐野博美さんの作品は、誰かがこの街でを以前この真夜中の読書会でも紹介したことがあったかもしれないなと思ったんですけれども、つい最近反乱の家っていうのも読んで、
このシャドーワーク、誰かがこの街で反乱の家と3つともすごく面白かったんで、どこかでご紹介したいなと思ってました。
誰かがこの街では、少し郊外の住宅地の小さなコミュニティーの中での超圧力というんでしょうか、を描いてまして、反乱の家は過不調性の強い家庭内のオラハラですかね。
DV被害者が暮らすシェルターと事件
今日ご紹介するシャドーワークは、ドメスティックバイオレンスをテーマに描いていまして、いずれも強いたげられた女性たちの、女性だけではないんですけれども、レジスタンスを描いたような作品になっています。
なので、久美さんのリクエストにあったほっこりとはちょっと言えないかもしれないんですけれども、しかし女性の心情を描いたサスペンス、重厚なサスペンスになっていて、どこか温かみもある作品が多いかなと思っているので、今日ご紹介しました。
これを待っていたというのはですね、ちょうどシャドーワークの映画が9月25日に公開になったばかりということで、今日取り上げることにしました。
簡単にどんなお話かご紹介したいと思うんですけれども、先にちょっと言っておきますと、この物語サスペンスですので、ある種の事件の真相解明という要素を大事な要素として含んでいるので、
本当に真っさらな状態で読んだり、映画を見たいなという人はちょっとここで止めて、見てからぜひまたこれを聞きに来ていただけたらと思います。
なるべくネタバレしないようにはしゃべるんですけれども、この登場人物たちの関係性を説明せずに紹介するのはとても難しい小説です。
その関係性そのものがミステリー要素になっているといいますか、もう何を言っても言っちゃいすぎになっちゃいそうかな。
とりあえず文庫の後ろに書いてある説明、紹介文と映画の概要として書かれている範囲で、小説の舞台、設定を解説したいと思います。
物語の舞台は江の島を望む少し高台の場所にある一風変わったシェルター、シェアハウスとも呼べる共同住宅の古民家を舞台にしています。
夫から深刻なDVに傷ついて、命からがら逃げてきた主人公ののりこさんという女性が、そのシェアハウスにたどり着いて、他の住人たち、つまり他の方たちも皆さんDVの被害者の女性たちなんですね。
そんな彼女らと交流、共同生活を経て少しずつ傷を癒し、そして自立する強さを身につけて、生命力を取り戻していくんですね。
一方、ある女性が海で死体となって、見つかってしまう、発見されるという事件がありまして、警察は自殺として片付けようとするんですけれども、
カオルという女性刑事が、ちょっと気にかかるところがあって、この彼女の死の原因を探ろうとするわけです。
実はこのカオルという刑事もまた、警察のエリートである同業の夫から家でDVを受けているんですね。
ほどなくして、水死体として見つかった女性の旦那さん、同居人の男性がまた自己死をするんですよ。
さて、この2つは事件なのか事故なのか、その真相を覆うと、彼女とカオルという刑事と、ちょっと後輩の男の子というか若い刑事がいるんですけれども、
2人でその真相を覆っていこうとします。
さっき言った主人公のノリコとカオルが、どこでどう出会って繋がるのかというところもキーポイントになっていますし、
2人の女性の主人公の交流というのも、結構大きなテーマになっているかなと思いますと、このくらいにしておこうかなというようなサスペンスになっております。
映画化とエンタメの賞味期限
映画がちょうど公開になったと言ったんですけれども、実は私正直に言うとまだ映画を見てなくて、本当はこの映画を見てから紹介を収録しようと思ってたんですけど、
ちょっとぼやぼやしてたら、結構公開直後の週末、いっぱいで行ける時間帯の映画館が満席ある、一番前の席しか入ってないみたいな感じで撮れなかったんですよ。
次の週末、見てから収録して放送してって言うと、3週間ぐらい後になってしまうから、もう今週出してしまおうと思って今日撮りました。
話がそれてしまうんですけど、最近このエンタメの賞味期限がとても短いですよね。今まさに、ルックバックの実写とか、なぎダイアリーとか、里子はいつもとかですね、私も見たいなと思っている映画、放画がたくさんあって、
ドラマはネットフリックスのダウンタイムに夢中になってたんですけど、公開されるやいないや、もうすぐにSNSのタイムライン上が、私のタイムライン上は感想でいっぱいになってしまって、
私が特にエンタメ系のアカウントをフォローしているからっていうのもあるんだと思うんですけど、それをいいねしたりするとまたその感想がたくさん流れてきて、すごくこう、
深い考察とか、演者の方たちの評価とか、このシーンがすごい良かったとか、このシーンはちょっとどうかと思ったみたいなのがすぐ読めちゃって、私はどっちかっていうと本もドラマもあんまり一気見とか一気読みをするタイプじゃなくて、
ドラマも一話ずつ見ようって思う感じだから、ちょっとずつ見ようって思っていると、もうすぐに先にそういう優れた感想が目に入ってきちゃって、なんかもう見た気持ちになってしまうといいますか、
映画も公開数日でその感想合戦みたいなフィーバーはすんって終わってしまうから、なんかそのうち見ようとか思っていると、映画劇場の関数が減っていって、そうすると毎回すぐ配信もされるだろうから配信で見ようみたいな気持ちになってしまうんですよね。
どうだかなと思ってしまいますね。やっぱり公開直後に感想が盛り上がった方がいいから、映画をプロモートしている側としてはプッシュするんでしょうけど、すごいバーって盛り上がってなんか興味をすんと失ってしまうみたいなのちょっと残念だなと思ったりします。
ちょっとその話はいいとして話を戻しますと、この収録を聞いていただいて、もしシャドーファーク面白そうだなと思ってくださった方は次の週末でも一緒に見ましょうというか、また見てから感想を言えられるといいなと思っています。
さくらいゆきさんがやってらっしゃいました。さくらいゆきさんってすごい良いですよね。好きなんですけど、たべみかこさんとても好きなので、すごく面白かったです。私が持っている文庫を買った時はこのたべみかこさんバージョンのフル帯になってまして、ドラマ記念のフル帯になってましたが、今はきっと映画バージョンになっているかもしれないですね。
今週もこれ高段車文庫です。
自社本が続いてしまいましたけれども、広見さんのさっき言った誰かがこの街でと反乱の家も高段車から出ておりますので、またステルスマーケティングじゃなくてはっきりとした自社本の宣伝になってしまいますが、よろしければ3つともぜひチェックしていただけたらと思います。
存在を認められることとシャドーワーク
さて、シャドーワークの話に戻るんですけれども、このシャドーワークというタイトルの意味自体もミステリーの要素の一つではありますね。
知識圏の真相、謎解きの要素はですね、ちょっと言ってしまうと割と早々にわかってしまうんじゃないかと思うんですね。だからといって興味がそがれてしまうかというと、まあそんなことはなくて、大事なのはそこだけではないと言いますか。
私はこの本のテーマは何かというと、存在を認めてもらうっていうことにあるのかなと読みました。その存在を認めてもらうっていうことの難しさも、その温かさと優しさと、それゆえのこう諸刃の刃でもある功罪というのを描いている小説かなと思ったりしました。
小説の割と初めの方にすごく好きなシーンがあって、それはこのシェルター、シェアハウスに入ってすぐに、ノリコさんがね、このシェルターに迎え入れられてすぐご飯の後にみんなでトランプをやるんですよ。
トランプのババ抜きをやろうといって、このゲームをやるっていうのもとても意味があるんですけれども、後で聞いてくるんですが、主人公のノリコは結構上手なんですね。ババ抜き。トランプのゲーム、特にババ抜きっていうのは、相手の表情とか目線の動きを観察するっていうトレーニングに実はなっていて、
ノリコさんは結構3日目ぐらいにして、割とそれをマスターしてみんなから褒められたりするんですよ。この思いがけない特技を誰かに褒められるっていうのは、すごくキュア、回復するっていう感じがしたんですよね。
ドラマのほうでは、たぶん小説版にはなかった気がするんですけど、シェルターに入ったタイミングはちょうど秋で、シェルターの決まりはご飯を作るのは持ち回りってことになっていて、共同で住んでいる女性たち順番に作るから、あんまり事前に作ることはないんですよね。
作ったものを作らない方がいいよってことになっているんだけれども、ノリコさんが入居したタイミングがちょうど秋だったから、栗ご飯を作りましょうってなって、栗ご飯は手がかかるからみんなでやろうってなるんですね。
茹でた栗に切れ目をまず入れる人、皮を剥く人、渋皮を取る人って感じで分担してやっていこうぜってなって、ノリコさんがじゃあ私渋皮剥きますって言ったら、え、やってくれるの?みたいになって、一番めんどくさいじゃないですか。地味に神経を使う仕事でね。
真っ直ぐで結構巻いて、渋皮マスターじゃんって盛り上がったりする、またちょっと胸が熱くなるシーンでした。
そうですね。
渋皮を剥くとかもシャドーワークですよね。誰からも褒められないけど、やっておかないと栗ご飯、おいしい栗ご飯はできない、作れない。名もなき家事とか、お世話とか買い出しみたいなこともそうでしょうし、なんか電池が切れてたのを買いに行って入れ替えるとか、そういった小さな小さなものはみんなシャドーワークと言えるかもしれないです。
ノリコさんは、ノリコさんもそれ以外の女性たちも夫の機嫌を損ねないようにっていうのが全てだった生活から、仲間の役に立っているっていう小さな特技みたいなものを身に出したりしながら、自分はただただここにいていいっていう感覚を取り戻していくわけなんですね。
連帯が生む救済と排除
さて、そろそろ今日のシャドーワークから紙フレーズをご紹介したいと思います。この物語は多分この問いを投げかけるっていうのが大きいテーマになっていたのかなと思います。きっと映画でも大事な問い、大事な場面になっているんじゃないかなと想像しますけれども、この物語がただほっこりした被害者女性たちの再生の物語だけではないっていう、
ご一面を示したところです。
この時、あなたなら村人たちを助けますか、それとも犯人を助けますかという問題、問いです。
さっき言ったトランプゲームをやる時間帯の他にも、こういうちょっとしたクイズみたいなのを出して答えたりみたいなのをこの住人たちが、シェアハウスの住人たちがやっているんですね。
この問題はいわゆるトロッコ問題の変形版だと思うんですけれども、トロンコ問題っていうのは、こっちのレールには子どもが1人、こっちのレールには老人が大人が10人、こっちに行けば子どもを救えるけど、住人は死ぬ。
こっちに行けば10人の老人は救えるけど、子どもが死ぬみたいな、そういう究極の選択みたいなやつですね。
さっきの問いは、皆さんはどうしますか。
私はっていうのと、のりこはどっちを選んだかっていうのは言わないでおきますね。
その後、住人たちも意見を言うわけなんですけれども、そこはちょっと取っておきたいと思います。
犯人を告発、自分が囲まっている犯人を差し出せば、他の人たちが犠牲になる、何人も死んでいくというか、拷問にかけられたりするのは助けられるけど、
王様の悪事の方に味方することになってしまうっていうとこもジレンマですよね。
この問題のこの問いの本当に怖いところは、
案に仲間を裏切るなよっていうメッセージも含まれているということだと思うんです。
このシェルターは、そもそもこの作品に書かれているのは、条件があって子供がいる人とかご両親が健在な人はダメですよとか、
外国人はダメですとか、善家がある人はダメですとかっていう風な入る時点でちょっと選抜があるんですよ。
誰でもどうぞっていうことじゃないんですね。
連帯とかシスターフッドとかって感動的で美しい地面がある一方で、連帯は新たな排除を呼ぶといいますか、
この間もそんな話をしましたけれども、排除があるから連帯が強まるみたいな、
闇をはらんでいるわけですよね。
佐野さんは仲間とか連帯っていうある美しい言葉に縛られて、また判断力を失ってしまうということへの継承を含んでいるのかなと思いましたね。
この人たちから嫌われたくないとか、この人にダメな奴だと思われたくないじゃないとここにいられないって思っちゃうと、
またその前の元の夫の機嫌を損ねないようにしなくっちゃっていう風に、
自分を殺して生きていた時と同じことにまた戻ってしまうというような継承をならしている面もあるのかなと思ったりしました。
映画と小説どちらが先でも良いと思いますので、
ぜひ海さんにも楽しんでいただけたら嬉しいです。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりの図書室ではリスナーの皆さんからのお便りをもとにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストのお便りはインスタグラムのバタヨムからお寄せください。
お届けしたのは講談社のバタヤムこと川端理恵でした。
それではまた水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
21:13

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