これ、消費者心理とかビジネスの観点から考えると本当に異常な作品だと思っていて、おもちゃメーカーって普通主役の機体はピカピカで唯一無二の特別なデザインにするじゃないですか。
まあ、そうですよね。さあこれを買ってねと子供にアピールするのが普通です。
なのに、主人公のキリコが乗るアーマードトルーパーって、むせかえるような泥臭いアーミーカラーのただの量産機なんですよ。
ええ、ワンオフの特別な機体じゃないんですよね。
しかもすぐに壊れて、戦場に落ちている別の機体に躊躇なく乗り換えるっていう完全な消耗品扱いで、こんなものを一体どうやってマネタイズしたんですか。
そこが革命的だったんです。彼らはですね、子供におもちゃを売ることを半端あきらめまして。
え、あきらめちゃったんですか。
代わりに映画のブレードランナーみたいなハードボイルドな世界観を好むミリタリー好きの大人たちっていう全く新しい市場を開拓したんです。
ああ、なるほど。おもちゃじゃなくて。
そうです。結果として戦車とか戦闘機を作るようなスケールモデルの文脈でプラモデルが飛ぶように売れたんですよ。
ターゲットの年齢層を意図的に引き上げることで独自のニッチを完全に支配したわけですね。
はい。主人公のキリコも思春期の苗舐める少年ではなくて感情を這いしたプロの傭兵でしたしね。
しかも驚くべきことに、最新のニュース記事を追っていると、このボトムズの異常なまでの生命力にびっくりさせられますよ。
ああ、最近いろいろ話題になっていますよね。
そうなんです。海外のマクドナルドとコラボしてメカがハンバーガーに見えるってネットをざわつかせたり、
あとはなぜかあの可愛いアライグマラスカルと謎のコラボをしてファンを困惑させたりしてて。
ラスカルとボトムズって水と油みたいな組み合わせですけどね。
ですよね。さらに巨匠の押井森監督によるボトムズの新作プロジェクトまで動いているっていうニュースもあって。
リスナーの皆さん考えてみてください。40年前の使い捨てロボットのコンセプトがいまだにこれほどの熱量を生み出し続けているんですよ。
時代とか流行にこびずに、徹底して自分たちのロジックとリアリズムを貫き通した作品は消費され尽くすことなく残り続けるっていう見事な証明ですよね。
本当にそうですね。さて、ロボットアニメがそうやって泥臭いリアリズムを追求していた一方で、日常コメディーとかファンタジーの領域でも全く別のアプローチで常識の破壊が起きていたんですよね。
はい、起きていました。その代表画が1981年放送開始のウルセイヤツラです。
ウルセイヤツラ。ラブコメの禁じ党ですね。
ただ、ここで押井森監督らは原作のストーリーラインを素直になぞることを放棄したんです。パロディーとかメタフィクション的な演出を多用して、テレビアニメを壮大な実験場にしてしまいました。
原作通りにやらないって今なら大援助しそうですけど。
当時はそれが許された熱量があったんです。特に画期的だったのは、全体を統括する創作家監督を置かずに、エピソードごとに担当するアニメーターの個性をあえて名を奉仕にした点なんですよ。
3つ目はですね、先ほども触れましたが、装甲機兵ボトムズの前日談にあたるOVA作品群です。
特にレッドショルタードキュメントなどを強くおすすめします。
ロボットアニメなのにドキュメントってタイトルがついちゃうんですね。
はい。ボトムズのミリタリー性を極限まで煮詰めたような作品でして、オットッキゼロの非常に殺伐としたコンバットが描かれます。
これはもはやロボットアニメというよりも、プラトゥーンとか地獄の目次録のような戦争映画なんですよ。
なるほど。そういう戦争映画好きなら絶対に感想できそうですね。
ええ。泥臭くて殺伐とした80年代特有のハードボイルドな空気を最も純粋な形で味わえる至高の傑作といえます。
ありがとうございます。いやあ、こうして振り返ってみると、これらの作品って決して昔のノスタルジックな名作なんかじゃないですね。
そうですね。現在進行形で生きている作品たちです。
現在の私たちが日々楽しんでいるSFとかループモノ、アイドルコンテンツ、そのすべての源流がここにあります。
リスナーのみなさんもこの源流のメカニズムを知ることで、普段何気なく消費している最新のアニメや映画の解像度が信じられないほど劇的に上がるはずですよ。
間違いなく上がると思います。1980年代は制約の撤廃によって表現の探求が進んで、メディアミックスというビジネスモデルが完成したまさにアニメが文化に変貌した時代でした。
ただ、この黄金時代を語る上で最後にもう一つだけ、絶対に外せない重要な転換点があるんです。
お、転換点ですか?何でしょう?
ええ、それは消費者側になった熱狂的なファン、つまりオタクたちが、自らカメラを回してプロを凌駕するクリエイター側へと激上場を果たしたことなんです。
ああ、なるほど。その象徴って言うと、やっぱり…
はい、大阪の大学生たちが集まったアマチュア制作集団、ダイコンフィルムです。
後のガイナックスへと進化していく集団ですね。
そうです。彼らは日本SF大会のために8ミリカメラで自主制作アニメを作ったんですが、
そのクオリティと、何よりオタクが何を見たいかを誰よりも理解しているという熱量が、当時のプロたちに強烈な衝撃を与えました。
アマチュアがプロを脅かしたと?
ええ、既存の都定制度とかスタジオの枠組みに縛られず、純粋な好きという執念だけで業界の最先線に送り出たんです。
庵野秀明氏などを要したこの集団が、後にエヴァンゲリオンなどの世界的ヒットを生み出していくことになります。
知識と愛を持つファンが、古い体制のプロフェッショナルたちをごぼう抜きにしていく、まさに得意点と呼ぶべき時代ですね。
はい、本当にエクサイティングな時代でした。
さて、ここまで現代のエンタメの設計図がどのように描かれたかを見てきましたが、この話を現代に置き換えると、リスナーの皆さんもすごくゾクゾクしませんか?
現代に置き換えるというと、
80年代は熱狂的なファンたちが自らの手で映像を作り始め、既存のメディアをハックしてきた時代でした。