2021-09-05 17:22

#33 美術鑑賞

今回はオンラインで買い取ったお話をお送りします。お話しくださったのは、美術やアートに関する記事を執筆されている虹さんです。美術館の特別鑑賞中に1人の男性が気になった虹さん。その男性にはピッタリと女性が付いていたそうです。その女性の正体とは?
今回、虹さんには、怪談売買所や、この番組について取材していただきました。その記事が「いまトピ」というwebメディアに掲載されています。こちらのリンクから読むことが出来ます。番組ディレクターや宇津呂鹿太郎が選ぶお勧め回も、ご紹介しています。
https://bit.ly/2YpH2L9 オンラインであなたからの怪談を買取ります。 詳細のリンクからご応募ください。
応募はこちらから

番組のスポンサー See Privacy Policy at https://art19.com/privacy and California Privacy Notice at https://art19.com/privacy#do-not-sell-my-info.
00:01
ポッドキャストプロダクション、PitPaからのお知らせです。
現在、PitPaでは、ポッドキャストに関するアンケートを期間限定で実施中。
回答していただいた方の中から抽選で、30名にAmazonギフト券1000円分をプレゼント。
応募には、メールアドレスが必要になります。
詳細は、番組概要欄のアンケートはこちらをご覧ください。
第2位、怪談作家の宇都郎しかたろうです。
この番組では、私が行っている怪談売買所で買い取った、世にも奇妙な体験をされた方のお話をお届けします。
今回は、オンラインで買い取ったお話をお送りします。
お話しくださったのは、美術やアートに関する記事を執筆されている二次さんです。
鑑賞という言葉があります。
芸術作品を理解し、深く味わうことです。
鑑賞するものといえば、映画、音楽、絵画などが真っ先に思い浮かびますが、
これら芸術作品を深く味わうには、ある程度の経験が必要です。
映画にしても、音楽にしても、見方、聞き方というのがあります。
それらは鑑賞眼というものなのかもしれません。
それが身につかないと、それぞれの作品の本当の良さを理解することはできませんし、
理解できなければ、味わうこともできません。
芸術作品は何であれ、ある程度、見る、聞くという経験を積まないと鑑賞はできないのかもしれません。
この鑑賞眼というものが身につくと、同じ作品であっても、それに触れたときの感じ方が全く異なってきます。
その作品が素晴らしければ素晴らしいほど、それを見たときの感動もまた素晴らしいものになるのです。
これは言い換えれば、感性が磨かれるということでしょうか。
見えなかったものが見えるようになるのです。
ところが、感性が磨かれると、素晴らしくないものまでが見える場合があります。
本来は見えてはいけないもの、そんなものまでが見えるようになることもあるのです。
私は以前から美術鑑賞が好きで、今もよく美術館や博物館に行っているのですが、今から大体10年ぐらい前になるのです。
都内にある美術館、今もあります大きな美術館で、閉館後に学芸員の方が解説をしてくれる、いわゆる特別鑑賞会のようなイベントがありまして、そちらに参加したときのことです。
03:09
大体20人ぐらいの参加者の中に、すごい仲の良いカップルがいたのです。
男性の方は、眼鏡をかけた小綺麗な感じの方で、女性の方はベリーショートの切れ長の瞳の、結構背の高めな、男性と同じぐらいの身長の、すごい綺麗な方だったのです。
こういうイベントに参加する人というのは、大体が日清のアートファンなので、その男性もご多分に漏れずという感じで、日清に鑑賞されていまして、その一方で女性の方はどちらかというと、彼と一緒にいられるのが嬉しいという感じでした。
解説を聞いている鑑賞会なので、参加者の人はほぼ無言で、みんな解説を真剣に聞いているという感じで、メモを取ったりなどしている様子で、その2人も同じように会話はせずに静かだったのですけれども、
ただちょっと目のやり場に困ってしまうぐらい、距離が近いというか、2人の間に会話がいらないという感じのイチャつき方をしていたので、こっちをあまりジロジロ見たら悪いなと思いつつも、後期の目でチラチラ見てしまったんですけど。
それからしばらく経って半年ぐらいですかね、今度は別の美術館で似たような趣旨の鑑賞会がありまして、それにも参加したんですけれども、またその時のカップルが来てたんですね。
2人がいるなと思って、今回は男性の他にもう一人、友人のような方がいらして、絵について時折その男性と話していたんですけれども、女性の方は全然その会話に加わらない様子で、
彼の背中側から胴に腕を回すというか、背中から抱きつくような感じで、彼の肩越しを見ていたり、途中からはもう絵画鑑賞そっちのけっていう感じで、ただうっとりと抱きついているっていう感じだったんです。
彼の方は絵を見るのは好きなんだろうけど、もしかしたら彼女の方はあんまり絵画鑑賞は趣味じゃないのかもしれないなっていう様子でした。
それからまた半年とかもう少しあったかなんですけれども、それぐらいにとある飲み会がありまして、そこに偶然その男性がいらしたんですね。
話しの流れ上、仮に彼をNさんとします。お酒みんな飲んでるんで、ある程度打ち解けてきたところで、私はこんな場だからと思って思い切ってNさんに、
そういえば以前、美術館の鑑賞会で彼女さんと来てませんでしたというふうに、ちょっと思い切って聞いてみたんです。
するとNさんは、彼女いないけどいつもだろうというふうに驚いた感じで答えていて、聞けばNさんは相当な美術ファンのようで、いろいろな鑑賞会に参加されているということだったんですけれども、
06:10
それいつの話というふうに聞かれたんですが、そんなふうにNさんたくさんいろんな鑑賞会に参加されているんで、1年前とか半年前とかだいぶ前のことだったから、もしかしたらその後で彼女と別れてしまったのかなと思って、
Nさんにそのふうに聞いたら、Nさんはここ数年恋人いないんだよねっていう返事だったんです。付き合ってないのにあんなイチャつくもんなのかなと思って、ちょっと驚いて、
驚きつつもこんな人でしたよとか、もしかしたらすごい仲良い友達なのかなと思って、彼女の様子とか服の特徴を伝えたところ、そういう人は知り合いに誰もいないんだよねっていうふうにおっしゃってたんですね。
その場にちょうど2回目の鑑賞会でNさんと一緒に話してた男性もいらしたんで、その人も入ってもらって、あの時こういうふうにNさんイチャついてましたよねっていうふうに言ったら、その鑑賞会にNさんが来てたのも知ってるし、自分がNさんと話したのも覚えてるけど、
あの時Nさん一人だったよねっていうふうにおっしゃるんですよ。ここまで来るとさすがにおかしいし、ちょっと気持ち悪いなと思って、Nさんを以前からよく知ってるもう十数年来の友人の方がその場に何人かいらしたんで、その人たちにも入ってもらって、その時の彼女の特徴から、この人知ってませんとか、Nさんの友達でこういう人いませんっていうふうに言ったんですけれども、
誰一人そんな人いないよっていうふうに、誰々さんかなって言うんだけど、あの子背が小さいしとか、今でも私は彼女の様子をはっきりと思い出せるほど覚えているんですけれども、誰もそんな人は知り合いに誰にもいないよっていうことだったんです。
その場にいた人はちょっとみんな、気味が悪いなっていう空気になったんですけれども、前夜明るい人たちだったんで、きっとNさん、彼女が欲しい欲しいって言い続けてたから願望が形になってたんじゃないのみんなっていうふうにみんなで笑ってたんですけれども、そのうちの一人の人が、
それって二次さんにしか見えてなかった人なんじゃないのっていうふうに、みんな薄々そう思ってたよねって、私もそう思ってたんだけどっていう様子だったんですけれども、そうだよねっていう感じの空気になってしまったんです。
確かに今考えてみれば変だったんですよね。彼女はずっとNさんにべったりだったんですけど、鑑賞会中二人は全く喋ってなかったし、さっきも言ったように解説付きの鑑賞会なんでみんな静かにしているんですが、Nさんの知り合いが声をかけても返事をしているのはNさんだけで、彼女は全く誰にも反応しないし、逆に彼女もそういった方に声をかけても、
09:00
彼女がNさんの背中にくっついている人の方を見ていなかったのも、今考えるとおかしいなって、あんまりイチャついているけれども、誰もそっちを見ていなかったっていうのも変だなというふうに思います。
その後、Nさんは当時住んでいた部屋を引っ越して、別の部屋に住み始めたところ、トントン拍子で素敵な彼女ができて結婚されたんで、良かったなというふうに思うんですけれども、
あれは何だったのかなというと、今もたまに飲み会をするとその話が出ることもあるんですが、誰も分からない状態が続いています。
美術館や博物館などで会議が起きたという話は、世界各国どこでも多く聞かれます。しかし、今回の体験はどうもそういうものではないように思えます。
確かに二次さんがそれを見たのは二度とも美術館でした。しかしそれはたまたまでしょう。そこで彼女が見た女は美術館にいたのではなく、その男性Nさんについていたと考えるのが妥当です。
背中からべったりとNさんにまとわりつくその女。本当の恋人同士ならともかくNさんはそのことに一切気がついていないと思うと、薄気味悪いものを感じます。
亡くなった人が生きている人に恋をして取り付く話として有名なものにボタン道路があります。
階段の名詞と歌われた山友亭園長が明治期に書き上げた落語の階段話です。
大変長い話なのですが、その中で最も有名なのが、亡くなった若い娘・おつゆが亡霊となって愛する男のもとへ舞いをからんころんと下駄の音をさせて訪ねていくというくだりです。
おつゆに見入られた男、萩原信三郎はおつゆが死んでいることを知らず、舞いを仰せを重ねます。
そのうちに徐々に痩せをとろえていくのですが、自身は何の疑問も持ちません。
信三郎の異変に気づいたお坊さんからおつゆが死んでいることを聞かされ、そこで彼は初めてことの重大さに気がつきます。
お坊さんからもらったお札でおつゆから逃れようとするものの、最後に信三郎はおつゆに取り殺されてしまいます。
これは江戸舞台とした創作物語ではあるのですが、元になった話がいくつかあり、その中には当時実際に起きた怪異端も含まれているようです。
12:02
つまり、実話がベースになっているとも言えるのです。
そのためでしょうか、現代でも似たような話は少なくありません。
死者に好かれ、取り憑かれる。すると、信三郎と同じように生気が失せ、痩せをとろえていく。
そんな体験談は現代でもあるのです。
ただし、牡丹道路と違う点も当然あります。
現代の怪異体験として、私がこれまで聞いたこの手の話としては、生前に好きだったからその人に取り憑いたという事例はそう多くはありません。
逆に全く無関係の人だったが、相手が自分のテリトリーの中にたまたま入ってきたからついたという場合が圧倒的に多いのです。
テリトリーとは、そのほとんどが家です。
マンションだったり、アパートだったり、一個建ての場合もあります。
そこに住むことになったのが異性であれば、誰かで構わずつくというのが定番のようです。
そうして疲れた人は、やはり体調を崩しがちになります。
また、実際の生活の中で恋人ができなくなります。
恋人がいてもすぐに別れることになったり、両縁が来ても自分の意思とは裏腹に、
そういう相手を遠ざけてしまったり、さまざまな横やりが入ったりして、決して結ばれることはありません。
今回のお話のNさんも、ずっと彼女が欲しい欲しいと言っていたにも関わらず、なかなかできなかったと言います。
それもやはり、背中にくっついている女が邪魔をしていたのでしょう。
現に彼は、引っ越してからすぐに良い人と巡り合い、結婚に至ったと言います。
引っ越すことで、その女の自爆から逃れることができたのです。
これは大変に幸運だったと言えるでしょう。
なぜなら、私がこれまでに聞いた体験談の中には、その家に住む見えない存在に完全に見入られ、
その家から一歩も外に出たくなくなってしまったというものもあるからです。
いくつかそういった話を聞きましたが、一番強烈な話では、異常に気づいた周囲の人たちが、
抵抗するその人をはがいじめにして担ぎ上げるように、家から無理やり出したというものもありました。
外に出ると、その人は正気を取り戻しましたが、なぜそこまでしてその家に執着していたのかが、自分でもわからないと言っていたそうです。
死者に見入られ、その思いに取り込まれるというのは、本当に恐ろしいことだと思います。
さて、その女の姿を見たのは、どうやらこの体験をされた二次さんだけだったようです。
15:03
彼女がその女の姿を目撃したのは、二度とも特別鑑賞会の場でした。
20人ほどいた来場者の中で、なぜ彼女にしかその女の姿が見えなかったのでしょうか。
それは感性の違いということが考えられます。
同じ絵を見ても、人によって感じ方が違うように、そもそもが見えない存在であるその女の姿も、人によって見えたり見えなかったりするのでしょう。
ひょっとすると、人によっては目で見るのではなく、匂いで感じる人もいたかもしれません。
Nさんの旗を通ると、女の香水の匂いがしたとか、そういうこともあるのです。
また、これは見る側の問題ではなく、見られる側の意思ということもあるかもしれません。
つまり、Nさんに抱きついていた女の方が、自分の姿を二次さんだけに見せたのだと。
理由はわかりません。
同じ女としての対抗意識なのか、それとも、二次さんの中に自分を理解してくれそうな何かを見出したからなのか。
人を愛することは美しく、また素晴らしいものです。
しかし、愛は執着することでもあります。
執着は利己主義にもつながり、やがては争いを生むこともあります。
歯止めの効かなくなった愛情ほど恐ろしいものはありません。
今回、二次さんには、階段売買所やこの番組について取材していただきました。
その記事が、イマトピというウェブメディアに掲載されています。
詳細欄のリンクからアクセスして、ぜひ一度ご覧ください。
この番組では、二次さんのようにあなたが体験した階段をオンラインで買い取っています。
詳細は概要欄のリンクよりお待ちしています。
1ヶ月にわたり、お送りしてきた週2回の配信も、今週で一旦最終回です。
来週からは、毎週水曜日の更新になります。
番組をフォローしていただけると幸いです。
それでは、また次回お会いしましょう。
17:22

コメント

スクロール