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2025-12-14 15:43

#55 【野暮な化学】FFのエーテル、戦闘中に使うと危険すぎる説

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今回のテーマは「野暮な化学」。化学や化学工業が専門だからこそ気がつく、FFのエーテルに対する違和感について話してみました。

ポッドキャスト Advent Calendar 2025に投稿したエピソードです!12/1から1番組ずつ、12/25に向けてPodcastを配信していくリレーのような企画です。

 https://adventar.org/calendars/11914

前日12/13の発信者さん:さとのさん:声でたどる物語/#12 12月から連想する「ニルスのふしぎな旅」 

https://open.spotify.com/episode/3VxDXLJOrQ9IzEivjrMsMh?si=8s2QP2sbTG23wnvp0Aof6w&nd=1&dlsi=b2a933fc3eb04cc8

翌日12/15の発信者さん:PODCAST沈まぬまくらさん:未定

📚参考資料

プラントライフは、化学プラントの技術者「かねまる」が、化学と工場に関するトピックを、分かりやすく紹介する番組です。

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🔗 関連リンク

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サマリー

このエピソードでは、ファイナルファンタジーに登場するエーテルというアイテムの科学的な側面について話しています。ジエチルエーテルの危険性や扱いについて説明し、ゲーム内での使用が引き起こす可能性のある問題を探っています。

エーテルとファイナルファンタジー
どうも、かねまるです。
プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学や工場に関するトピックを分かりやすく紹介する番組です。
今回のテーマは、野暮な化学。 これ私が勝手にシリーズっぽく名前つけちゃったんですけど、
大学院まで化学学んできて、 仕事で化学品の製造に関わっているんで、自然と専門知識が身についてきてますね。
そうすると、次第に身近なことに対して気づく点があったりするんですよね。 そういうことに関連して、今回はファイナルファンタジーの世界に現実を持ち込んでみようかなと思います。
たぶん普段だったら一番嫌われるようなことを、あえてしっかりやってみようかなと思います。
さすがに楽しんでもらえるように話すので、安心してください。 今回取り上げるのが国民的RPGのファイナルファンタジー。
通称FFですね。 そこに出てくるエーテルというアイテムを取り上げます。
ざっくりFFの世界観を紹介しておくと、 シリーズによっていろいろ変わったりはするんですけど、大体は一般的なRPGの世界観になっています。
武器を持って戦ったり、魔法を使って戦ったり、 炎を出したり、氷を飛ばしたり、怪我を治したり。
この魔法を使うためにマジックポイントMPが使われています。 車で言うガソリンみたいな感じですかね。
強い魔法を使うほどこのMPが減ってきて、 0になると魔法が使えなくなるような感じで。
そんな時に使うのが回復アイテムのエーテルです。 エーテルを使うとMPが回復して、また強力な魔法が打てるようになるっていう感じで。
魔法使いの命綱みたいな感じですね。 ただこれ、科学を学んだ人間からすると怖って思う様子なんですよね。
今回はその理由を科学的な知見から解説していこうかなと思います。 まず現実世界の話をしましょう。
ゲームの中だけじゃなくて、私たちが住む現実世界にもエーテルっていう化学物質があるんです。
エーテルっていうのは化学物質の種類を表したり、 もしくは化学構造の一部分を表したりしています。
化学構造としては酸素原子が真ん中に一つあって、 その両手を炭素の鎖でつないでいるような感じですね。
これエーテル結合って言ったりするんですけど、 そういうエーテル結合を持つ化合物を総称してエーテルと呼んだりします。
よく使っているのがジエチルエーテルっていうものですね。 エーテルってついているので、化学構造に酸素があって、その両手に何か炭素の鎖を繋いでいるようなものです。
名前がジエチルなのでエチル器が2つ、 つまりはジエチルエーテルっていうのは酸素があって、その両手に炭素を2つずつ鎖を持っているっていうような構造になっています。
独特の匂いがするんですよね。刺激臭が。 独特な匂いがするんですよね。
刺激臭があります。 それで無色透明の液体なんです。
このジエチルエーテルっていうのは、昔医療用の麻酔薬として使われてたみたいですね。 私は見れてなかったんですけど、ジンっていうドラマで使われてたみたいですね。
エーテル麻酔っていう言い方をしてたみたいです。 今は麻酔としての出番は多分減っていると思うんですけど、
化学工場とか実験室だと物を溶かす液体、 溶媒として今でも原液でバリバリに使っています。
私が学生の頃もたくさん使ってましたね。 このジエチルエーテルの性質をFFの戦闘シーンに持ち込むとどうなるのかっていう話です。
ここからが本来、野暮な化学を始めていきます。
さて、ジエチルエーテルをFFに持ち込む話をするときにどうやって話をするかっていうことなんですけど、
化学物質を扱うときは必ずSDSというものを見ます。 その物質がどういうものなのかとか、
法令上どういう規制があるかとか、 あとは例えば皮膚についたり誤って飲み込んでしまったときにどうやって対策をするかとか、
いろんなことが書かれている基本的な化学物質の説明書みたいなものですね。 今回はこのSDSを見ながら話をしてみます。
ゲームの画面を見ているとMPがなくなったキャラクターにエーテルを使いますけど、 描写としては比較的飲んでいる姿が多いのかなと思います。
たまに投げて体に振りかけているようなシーンもありますよね。 じゃあこのジエチルエーテルを飲んだらどうなるのか。
ジエチルエーテルの性質とリスク
SDSにしっかり書かれています。 このジエチルエーテルは麻薬および抗生神薬取締役法で麻薬原料として対象になっている物質です。
先ほどドラマのジンでもエーテル麻酔で使われてたって話しましたね。 これ麻酔として使えるんですね。
魔力が切れてMPを回復するためにエーテルを飲んで回復したって思って、そうしたらだんだん手足が痺れてきて眠たくなってくる
そんな状態になりかねないっていうことですよね。 もうガバガバ飲むものではありません。
そしてジエチルエーテルは労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則でも規定されている有機溶剤になります。
まあこれどういうことって思うかもしれないんですけど、 ジエチルエーテルの蒸気ってあんまり体に良くないんですよね。
必ず換気する設備が必要になります。
法令に則ると定期的にこの辺りの環境にジエチルエーテルが溜まってないかっていう環境測定が行われたりとか
健康診断も必ず受けないといけないです。 実験室で扱うときはドラフトっていう換気が整った実験設備で扱ったり
それがないときは有機ガス用の防毒マスクっていうのをつけないといけないですね。 だから科学を扱う人間からするとエーテルを飲むっていうと麻酔薬を飲んだりとか
有機溶剤の中毒になるようなものを扱っているっていうような印象を受けちゃうんです。 エーテルが健康に良くないんだったら飲まずに振りかけるだけだったらいいでしょうって
思うかもしれないんですけど 健康的なところだけじゃないんですよね
エーテルの怖さって めちゃめちゃ燃えます
ジエチルエーテルっていうのは消防法で言う特殊引火物っていうものに該当します ガソリンとか火を近づけると引火して燃えますよっていう話ありますよね
それと一緒です 消防法で引火する液体っていうのは何種類かに分類されています
比較的安全なものから第4石油類ってなって 第3、第2、第1ってだんだん厳しくなってきます
ガソリンが第1石油類に分類される かなり危険な液体なんですよね
じゃあジエチルエーテルがどれくらい危険なのかって言いますと 第1石油類のもっと上
特殊引火物に該当します 引火性液体の中では最上級に危ないやつです
FFのシチュエーションを考えてみましょう
みんなで頑張って戦ってパーティーが傷ついて MPが減ってきました
じゃあエーテルで回復してあちこちでエーテルの瓶が開けられていきますね
エーテルっていうのは空気より重たいんで足元とか下の方にガスが溜まっていきます
使っていくとだんだんパーティーの周りにエーテルのガスが溜まっていきますね
MPが回復されて元気になった魔法使いがファイヤーを勢いよと使います
そうすると 火が出た瞬間に自分の周りのガスに引火して大爆発です
もっと言うとこういうジエチルエーテルみたいなかなり爆発しやすいガスが充満しているときは
静電気でも一瞬で引火して爆発します
エーテルの概念の再考
実は化学プラントの現場っていうのは静電気対策ってかなりしてます
引火して爆発しちゃうからなんですよね
至るところにパースを取ってたり ここの現場に入るときは一旦この棒を触って静電気除去してから入ってくださいとか
そういうものもあります だからファイヤー撃つなとかそういう話じゃなくてサンダーもダメですし
なんなら革の服着て絹ズレなんかもダメですね 静電気が出ちゃいます
というわけで色々とエーテルが危険だみたいな話をしちゃったんですけど まあ一旦冷静になって戻ってみましょう
当然FF出しているスクエアニックさんも現実のジエチルエーテルを扱ったりしているわけじゃないと思いますね
実はエーテルっていう言葉は化学物質以外にも意味があるんですよね もともと古代のギリシャの哲学で
ギリシャ語で上空の澄んだ空気を意味する言葉とか 醍醐原素みたいなそういうものを指す言葉だったみたいです
ですからFFに出てくるエーテルっていうのは古代の概念としてのエーテルの方ですね つまりは高純度な魔力の塊を液体状にしたものって考えるのが正しいんでしょうね
これなら飲んでも多分眠くならないし ファイヤー撃っても爆発しないと思います
ちなみに今回取り上げたジエチルエーテルってかなり危険な部類のエーテルなんですけど エーテルは総称でしたね
ジエチルエーテル以外にもエーテルっていろいろあります もう一個よく使うのがジブチルエーテルっていうやつですね
酸素があってその両手に炭素2個ずつっていうのがジエチルエーテル 酸素の両手に炭素4つずつっていうのがジブチルエーテルです
この化学構造式になるとインカテンも上がってきて 火災の危険性っていうのがだいぶ落ちてきます
消防法でいうところの第二石油類っていうものに該当するんですけど インカテンが25度なので冬場の例えば10度とかそんな温度だとインカしないぐらいの安全性になります
もし本当にFFで化学でいうエーテルを使っていたら こんな感じで化学構造がそもそも違うんだろうなっていう感じは思いますね
だいたいメインの話どころ終わって そのタイミングで子供が起きちゃったんで 一旦別口の収録に切り替えています
最後にアドベントカレンダーの話だけさせてください 今回ポッドキャストアドベントカレンダー2025という企画に参加していまして
そこの12月14日の枠をもらっています 12月1日から25日まで一つずつ番組がバトン形式で配信をしていくっていう
企画になってまして アドベントカレンダーって聞いたことありますかね
そういうお菓子があるんですけどそれになぞって ポッドキャストを配信しましょうっていう企画ですね
私が12月14日でその前日13日が里野さん 声でたどる物語
12月から連想するニルスの不思議な旅っていう 私の子供の時にちっちゃい時に読んだ本の話してくれてますね
その翌日12月15日の方はポッドキャスト 静まぬ枕さんが放送してくれるとのことです
最低限すいませんけどバトンつなぐ形で紹介させていただきました 今回はここまでですお聞きいただきありがとうございました
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