第百四十三話『情緒に敏感であれ』−【奈良篇】数学者 岡潔−
2018-05-26 14:54

第百四十三話『情緒に敏感であれ』−【奈良篇】数学者 岡潔−

日本の数学者で、奈良女子大学名誉教授だった岡潔(おか・きよし)が亡くなって、今年で40年になります。
先ごろ、テレビドラマにもなったその波乱の人生は、全て数学に捧げられました。
現代数学の歴史を一変させてしまうほどの命題を解いた岡は、文化勲章の授賞式で、「数学を研究することは、人類にとってどんな意味があるんですか?」という記者の質問に、こう答えたといいます。
「野に咲くスミレは、ただスミレとして咲いていればいいのであって、そのことが春の野原にどのような影響があろうと、スミレのあずかり知らないところであります」。
岡は数学者でありながら、日本人にとってイチバン大切なのは、情緒だと言い続けました。
情緒が個性をつくり、個性が共感を生む。
彼はある日、奈良の美術館で絵画を見たあと、庭園を散歩します。
そこにはたくさんの松の木が生えていました。
岡は、松の枝ぶりを見て感動するのです。
「この枝ぶりには、ノイローゼ的な絵に感じる、怒りや不満、ましてや有名になりたいという欲などなにもない。ただそこに立ってシンプルに太陽の光を受けている。そいでそいで、いろんなものをそぎおとして生まれる美しさが、そこにある。こういう自然のままのものを見て、美しいと思える心、それが情緒だ。日本人は、それを忘れちゃいかん。そして…学問を極めるためにも、情緒は必要なんだ」。

岡は、日本文化発祥の地と言われる奈良を愛しました。
文化遺産と言われるものだけではなく、なんでもない風景こそ、次の世代に残すべきだと考えたのです。
晩年は、日本の行く末、特に日本の若者を憂いました。
何かを極端にやってみること、とことん極めてみること、そうすれば必ず好きになる。好きになれば、情緒が敏感になる。
恋をしたひとが、落ち葉に心を痛めるように。
孤高の数学者・岡潔が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

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