第三百二十四話『自分から目を離さない』-【三重篇】画家 フランシスコ・デ・ゴヤ-
2021-11-13 14:02

第三百二十四話『自分から目を離さない』-【三重篇】画家 フランシスコ・デ・ゴヤ-

三重県のJR津駅から歩いて10分ほどのところにある三重県立美術館は、三重県とスペイン・バレンシア州との友好提携が結ばれたことを契機に、1992年からスペイン美術がコレクションに加えられました。
中でも、ある画家の『闘牛』を描いた銅版画の連作は、全国でも類を見ない貴重な展示になっています。
その画家とは、ディエゴ・ベラスケスと並び、スペイン最大の画家と言われる、フランシスコ・デ・ゴヤ。
ラ・タウロマキア、闘牛を、ゴヤは生涯、愛しました。
彼は、闘牛の歴史を辿りつつ、過去の名場面を思い出し、膨大な素描にしたためました。
目の前の決定的なシーンを、さっと描く素描。
もともと宮廷画家としてエリート街道を歩いていたゴヤにとって、素描は無縁のものでした。
しかし、飛ぶ鳥を落とす勢いだった46歳のとき、彼は、重病に倒れ、ベートーヴェンのように聴覚を失ってしまうのです。
コミュニケーションをうまくとれない歯がゆさや苛立ちを、彼は素描することで解消していきました。
素描は、彼に自由な発想をもたらし、さらに時代や風俗を写し取る魔法を授けました。
代表作『裸のマハ』『着衣のマハ』や、数多くの肖像画、時代の目撃者として戦争を描く冷静な視線が有名ですが、一貫して彼が心を砕いたのは、美しいものだけではなく、悪や人間の醜さ、黒い部分から目をそむけない、ということでした。
その真骨頂が、晩年の『黒い絵』シリーズ。
『我が子を喰らうサトゥルヌス』という絵の凄みは、発表当時からセンセーショナルを巻き起こし、今もなお、私たちの心に、人間の業について、生きるということについて問いかけてきます。
もし彼が聴覚を失うことがなかったら、これほどまでに自由で奥深い領域に辿り着けなかったのではないか、そう考える見識者もいます。
ゴヤは、じっと見つめました。
時代を、人間を、そして、自分を。
革命と動乱のスペインを生きた伝説の画家、フランシスコ・デ・ゴヤが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

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