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いちです。おはようございます。
今回のエピソードでは、危険だと思うことが危険な化学物質
DHMO、次ヒドロゲンモノオキシドの話題についてお届けします。
改めまして、いちです。
このエピソードは、2023年8月31日に収録しています。
このポドキャスト、STEAM.fmは、僕が毎週お送りしているニュースレター
STEAMニュースの音声版です。
STEAMニュースでは、化学、技術、工学、アート、数学に関する話題をお届けしています。
今回のエピソード、STEAM.fmエピソード149では
STEAMニュース第144号から、危険だと思うことが危険な化学物質
DHMOについてお届けします。
DHMOというのは、次ヒドロゲンモノオキシド
日本語で言うと、一酸化二水素という物質なんですね。
皆さんは、次ヒドロゲンモノオキシド、DHMOという化学物質のことを聞いたことがあるでしょうか。
DHMOの性質
財団法人食品分析開発センターによると、
次ヒドロゲンモノオキシド、つまりDHMOは以下の性質を持っています。
DHMOはヒドロキシ酸の一種であり、無色、無味、無臭である。
DHMOは比較的古くから工業に使用されてきたが、
産業の巨大化や軍事技術の発展に補充を合わせて、使用量が飛躍的に増加した。
DHMOはナトリウム、カリウム、カルシウムなどの金属を犯し、水素ガスを発生させる。
DHMOは毎年無数の人を死に至らしめ、
その多くはこの物質を液体のまま吸引したことによる呼吸不全が原因である。
個体となったDHMOに接触すると、身体組織に著しい損傷を引き起こすことが実験的に確かめられている。
DHMOは不妊男性の性液、死亡した胎児の溶水、
がん細胞から大量に検出されている。
DHMOは犯罪者の血液や尿に多量に含まれ、
暴力的犯罪のほぼ100%がこの物質を摂取した後、24時間以内に起こっている。
以上の性質にもかかわらず、
DHMOは食品に無制限に添加することが認められています。
いいんでしょうか。
リスナーの皆さんの中には、すでにオチをご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
オチ、ヒドロゲン、モノオキシド、つまりDHMOとは、
一酸化二水素、H2O、つまり水のことなんです。
これらの性質は科学的に全く妥当な主張です。
それでもこの主張だけを聞くとあるいは読むと、
なんて危険な物質なんだろうというふうに思いませんか。
実際、アメリカカリフォルニア州オレンジ群のアリソビエホ市では、
DHMO規制の条例が採択寸前まで行きました。
僕は弱小というよりは底辺の科学者であり、社会活動家であろうと心がけていますから、
社会に対して線上的な情報に気をつけてください。
科学的根拠に目を向けてくださいと伝える立場にあります。
しかし、こちらでご紹介したDHMOに関する話題は、
科学的に全く妥当な主張だけを並べたものです。
つまり、都合よく選ばれた科学的根拠に目を向けるだけでは不十分ということなんですね。
科学的根拠も使いようによっては、プロパガンダにもなり得ることを我々は意識しなければならないんです。
DHMOに関するジョーク
ジヒドロゲンモノオキシド、DHMO、つまりは水がいかに危険な物質であるかというジョークの初出は、
1983年のエイプリルフールだったそうです。
僕は個人的にはこのジョークが、生化学者でもあった作家アイザック・アシモフによるものと誤解していましたが、
実際にはクレイグ・ジャクソンというアメリカ人によるものでした。
思い込みはいけませんね。
DHMOに関するジョークは毎年繰り返されており、
今年2023年の福島第一原発アルプス処理水の海洋放出という文脈において、こんなジョークがつぶやかれていました。
政府が隠そうとしている事実、実は処理水にはDHMO、一酸化二水素という液体が多く含まれている。
人間が吸引すると死亡するだけではなく、
防虫剤や殺虫剤の主成分であり、鉄を錆びつかせるほど強力なもの。
原発でよく使われ、2011年以降、日本全国の水道水にも確認されている。
一酸化二水素で海を汚さないで。
これ、もちろんジョークです。
繰り返しますが、DHMO、あるいは一酸化二水素はただの水です。
水も飲みすぎれば中毒になりますし、歴史の原因だって水なのですが、
だからといって水が我々の生命を脅かす物質とは言えません。
それどころか我々は水なしでは生きていけません。
そしてDHMO、つまり水に関する主張は科学的に全く正しいのです。
つまり、科学的に正しい主張を読むときには、
何が書かれていないのか、科学的に正しい主張は他にもないのか、
といったことに目を向ける必要があるのです。
科学的主張のミスリード
科学的主張が人々をミスリードするもう一つの例をご紹介したいと思います。
こちらはココナッツによる死、デスバイココナッツと呼ばれている事象です。
1984年、パプアニューギニアミルン州立病院のピーター・バルス博士は論文、
落下するココナッツによる不祥について、こういう風な主張をしているのです。
当院の過去4年にわたる集計では、けがで入院する患者の2.5%はココナッツ落下による不祥であり、
うち少なくとも2人が死亡している。
ココナッツの実は固く、大きなものは4kgに達するそうです。
また、ココナッツをつける小林は大きいものでは高さ30mに達します。
直径30cmのココナッツの空気抵抗係数、これ実はちょっと計算してみたんですね。
空気抵抗係数CD値、およそ0.4ぐらいになるそうです。
この数値をもとに、4kgのココナッツが30mを自由落下するとどのぐらいの速度になるのか計算してみました。
結果ですね、時速36kmに達することがわかりました。
ココナッツですよ。最大4kgのココナッツが時速36kmで衝突する。
これ直撃したらたまらんですな。
ミルワン州の人口がおよそ30万人、4年で2人がココナッツで亡くなっていることから、
平均すると毎年60万人に1人がココナッツで亡くなっている計算になります。
ここまでの主張は科学的なものです。
しかし2002年に至ってこの数値は誤って引用され、
全世界で毎年150人がココナッツによって死んでいると環境活動家ジョージ・バーゲスによって主張されました。
この主張に基づいてオーストラリア・クインズランド州の観光地ではココヤシの伐採も計画されました。
もちろんこれは過剰反応で統計のご用にあたります。
ココヤシは南国の植物で世界中に分布するわけではありませんから、パプアニューギニアの死亡率を世界に当てはめるわけにはいきません。
DHMOの例と同じく何が語られていないかについて僕たちはいつも気にしないといけないという例になっているわけですね。
なお最初の論文を書いたバルス博士2001年にイグノーベル医学賞を受賞しています。
ちょっと羨ましいです。
今年2023年8月24日から福島第一原発アルプス処理水の海洋放出が始まりました。
当事者の東田のほか各省庁からアルプス処理水放出の安全性の科学的根拠が示されています。
アルプス処理水放出に関しては科学的に安全という主張に対して科学的根拠だけでいいのか、
あるいは科学をかくれみのにするなという新聞記事も見られます。
もっともこれらの記事も中身は科学コミュニケーションの重要性を説いたもので、
若干ツリータイトルな気もするわけですが、
科学を語る者への信頼という大きなテーマを突きつけているようにも僕には見えます。
僕たちが気をつけないといけないことは、まず科学的根拠がすべてテーブルの上に載せられているかどうかということでしょう。
アルプス処理水に関しては国際原子力機関IAEAによるレビューまでされていますから、
安全性の求める感情
意図的に隠されたあるいは誰もが気づいていない科学的根拠が今後出てくるということは考えにくいんじゃないかなとは思います。
ただし、人間は科学的根拠のみで物事を決断するわけではありません。
心理的安全性、経済的安全性、そして宗教的安全性を求めることも立派な個人的感情です。
心理的安全性というのは怖くないこと。
経済的安全性というのは損をしないということ。
そして宗教的安全性というのはけがれがないということですね。
どうしてもやっぱり求めてしまうのが人間なんじゃないでしょうか。
アルプス処理水は福島第一原発の溶け出したコアに直接触れた水からトリチウム30水素を除く放射性物質を取り除いて浄化したものです。
そのためどれだけ浄化しても一度けがれに触れてしまったものという印象を与えがちです。
僕が住んでいた大阪府では滋賀県と京都府の下水を浄化して浄水にしていたので、
水道水豊かで薄めた下水やんという状態ではあったんですね。
なのでアルプス処理水をけがれた水、それをまして神聖なる海に流すのはけしからんという気持ちわからなくはないです。
僕だってけがれた水を飲んで育ったわけですからね。
ただちょっと気になることがあるんです。
X、つまり旧ツイッターですね、このXでのどちらかというと不毛な喧嘩を見ていると、
薄めれば安全という主張がもとより、薄めてもいやという主張も科学的な根拠を持ち出そうとしていることなんですね。
今の時代、けがれが怖いというのは理由として主張しづらいのかもしれません。
しかしそのために科学を主張に合わせて利用しようとする態度はよろしくありません。
科学的根拠に基づいて考えるならば、例えば魚ではなくて肉を食べようということになるわけです。
科学的根拠と安全性の関係
今や海よりも大気の方が汚染されているはずだという主張なんですね。
実際、僕たち考古学研究者は1950年以降の大気化学汚染の影響を多大に受けていまして、
BP、Before Physics、物理学以前という年代単位まで作っています。
これは放射性炭素年代測定法という方法を使って、これが今から何年前の植物であるかということを計測する方法なのですが、
1950年以降というのは大気中の核汚染によって使い物にならなくなっているんですね。
そのために1950年から遡って何年前かということを調べることしかできなくなっています。
これをBPと言うんですね。
アルプス処理水放出は科学的におそらく問題はないのでしょうが、
それでも科学コミュニケーション的にはまだまだ改善の余地があるのかもしれません。
さすがに抗菌の投入というのは難しいかもしれないのですが、
それでも海を沈めるお祓いであるとか、人心を沈める仏教行事なんかは海洋放出に先立ってすべきだったのかもしれません。
このポッドキャストを支えてくださっているsteamニュースのリクミン、そしてsteam.fmリスナーの皆さんが、
科学や技術だけではなく、アートも大切だよというふうに言ってくださるのは、
科学もまた人の営みだと知っているからだと思います。
このメッセージは科学者にこそ届いてほしいなと、一体編、科学者として願っています。
今回のsteam.fmエピソード149は、
日本の福島第一原発アルプス処理水放出という環境に関するテーマでもありました。
こちらはですね、科学系ポッドキャストのテーマ企画、
2023年9月は環境というテーマでお送りすることになっていたのですが、
それに沿った番組内容にさせていただきました。
科学系ポッドキャストのテーマ企画は、毎月10日に共通テーマについて、
それぞれのポッドキャスト視点で語る取り組みです。
今月のホスト、2023年9月のホストは、福雑さんでした。
科学系ポッドキャストのテーマ企画は、毎月10日前後に一斉に放送されています。
今後もよかったらフォローしてくださいね。
X、旧ツイッターでハッシュタグ科学系ポッドキャストで検索していただくと、
最新エピソード追いかけやすいかなと思います。
最後まで聞いてくださってありがとうございました。
メールでお送りしているニュースレッダー、Steamニュースの方も無料でご登録いただけますので、
この機会にご検討いただければ幸いです。
今週からは、ノエル・ジョンソン、ネバーニュー・ユーを聞きながらのお別れとなります。
改めまして聞いてくださってありがとうございました。
Steam.fmのイチでした。
次の動画でお会いしましょう。
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