1. ストーリーとしての思想哲学
  2. #39 ディストピア1
2023-10-15 06:37

#39 ディストピア1

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みんな大好きディストピア。ディストピア概念の成り立ちからアーレントの「悪の不在」概念まで話します。

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ストーリーとしての思想哲学
思想染色がお送りします
今回から、何回かに分けてディストピアについて話していきたいと思います
ディストピア、みんな大好きだよね。僕も大好きです
まずは、好きな人はすごい好きなこのディストピアという概念の説明から始めます
砕けて言うと、ディストピアっていうのは超すごい監視社会みたいなもんです
それで、効率だけを重視した社会で、人間性とか人の複雑な感情とかは考慮されずに排除されます
例えば、食事も栄養だけ取れればいいから、完全栄養食のカロリーメイトみたいなブロックが配給されて
みんなずっとそれだけを食べてる、飲み物は当然水だけみたいな
こういう物質的な効率だけが重視された暗黒社会をユートピアの逆ということでディストピアと呼びます
自分は絶対住みたくないですけど、このような社会を舞台にした作品っていうのはだいたい面白いです
SF的な文学作品でジョージ・オウエルの1984年とか、ハックスリーの素晴らしい新世界とかがあります
あとは映画のブレードランナーやマイノリティリポートとかもディストピア作品ですし
アニメの新世紀エヴァンゲリオンなんかもディストピア要素が強いです
ディストピアとは辞書的には反理想教とされています
ということは反理想教という概念を理解するには理想教という概念を知らないといけないということになります
理想教というのはいわゆるユートピアのことです
はい、ユートピアという本があってですね
トマス・モアというイギリス人がいて1516年に出版した本がユートピアっていう名前の本でした
ユートピアというのは造語でどこにも存在しない場所という意味です
なんかイギリスっぽいというか皮肉なネーミングで面白いですよね
ユートピアイコール楽園イコールどこにも存在しない素晴らしい場所というダブルミーニングです
1500年頃の当時はアメリカ大陸が発見された時代で新大陸とか新世界への興味というのが人々の強い関心事でした
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これすごいニュースだったんです
第20回の魔女についての回で言ったことの繰り返しですが
キリスト教的にはすべての人類はアダムとイブの子孫なわけで
地続きの範囲にしか行けないと思われていました
というのも最も進んだ人間はヨーロッパ人であり
ヨーロッパ人がまだ行くことができていない地球の裏側には行く方法がないと思われていたから
そんなところには人類はまだ到達できていない
したがって人類が住んでいるなんて絶対ありえないと思われていました
これは神の学問と書く神学ですでに決着済みのテーマとして扱われていただけに
海の遥か彼方地球の裏側にも人間がいた
つまり神学が間違っていたという衝撃でした
そんな外部環境の中
すごく自然な発想としてまだ発見されていない世界が実はまだまだあって
こんな世界もあり得るかもっていう発想で書かれたのがこのトマス・モアのユートピアです
もしかしたら未知の新世界には超平等な社会があって
もしあるとしたらこんな感じやろうなっていうのが書かれています
面白いのがユートピアと言いつつユートピアの住人は結構がっつり働いているんですよ
ユートピアでは労働は1日6時間
でも国民は全員働いていて遊びほうけている人はいません
これは1500年代の話ですから
時代的には1日6時間労働はすごく短いということだと思います
で、労働時間が短くて済むのには理由があって
ユートピアでは欲望が抑制され禁止されているからです
飲酒は禁止で国民はみんな同じ国民服を着ます
それから黄金、ゴールドはいやしいものとして軽蔑されています
トイレの便器に黄金を使うことで黄金のような贅沢をけなしめようとしている
つまり贅沢はユートピアでは軽蔑されています
他にも物は全部無料で国民同士、住民同士で共有しています
都市人口が増えすぎたら移住させて都市の人口を調整します
安楽死もOKです
新世界に超平等な社会が平等を突き詰めた社会があったとしたら
こんな感じだなっていう作品なわけですが明らかに皮肉ってるよね
平等を突き詰めるとこんな感じになってしまうよねという
ユートピアという言葉はどこにも存在しない素晴らしい場所という意味でしたが
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平等を突き詰めるとこんな感じになってしまうから
だから理想郷は結局のところどこにもないというわけです
以上まずはユートピアの話でした
次回ディストピアの話に続きます
次回もよろしくお願いします
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