1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #429 日本語をすこし冷静に見..
2022-03-29 10:17

#429 日本語をすこし冷静に見直そう from Radiotalk

口蓋化のエピソード
https://radiotalk.jp/talk/307687

Twitter▶︎https://bit.ly/3Gu2SNW
Instagram▶︎https://bit.ly/3oxGTiK
LINEオープンチャット▶︎https://bit.ly/3rzB6eJ
オリジナルグッズ▶︎https://bit.ly/3GyrvsL
おたより▶︎https://bit.ly/33brsWk
BGM: MusMus▶︎http://musmus.main.jp/

#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
00:05
始まりました、志賀十五の壺。みなさんいかがお過ごしでしょうか。
暴力反対、野坂幸之です。
この番組は言語学の番組ということで、日本語の話もよくしてるんですよね。
普段みなさんが当然と思ってるっていうか、意識していない日本語の特徴の話もたくさんしています。
今回のトークもそういった類のものとなっています。
今からちょっと言う話は当たり前すぎますけど、書くっていう動詞がありますよね。
字を書く、絵でもいいんですけど、書く。
この否定形は書かないですよね。
条件形は書けばとなりますよね。
あるいは、勝つっていう動詞がありますね。
かしかりの勝つ。
これの否定形は勝さない。
条件形は勝せばとなります。
当たり前ですね、日本語母語話者だったら。
では勝つ、勝負ごとに勝つの勝つの否定形はどうなるかというと、勝たない。
条件形は勝てばとなります。
これは勝つの場合だけちょっと変だなということに、なんか気づかないですかね。
まあ気づかないと思います。
どういうことかっていうと、書くと勝つの場合は、なんか全部真が同じなんですね。
書くっていう場合は、けいのシーンにあたるようなものは破裂音が使われて、書く、書かない、書けばとなっているわけですけど、
まあ同様に勝つの場合もそうですね。
これは摩擦音と言われるもので、勝つ、勝さない、勝せばとすべて同じシーンが現れています。
一方、勝つの場合は、このつっていう音はちょっと難しいですけど、専門的には摩擦音と言われる音で、
まあ今言った破裂音と摩擦音が混ざったような音なんですね。
破裂が起こった後、摩擦が起こる音です。勝つ。
ただ、否定形と条件形は勝たないと勝てばっていう風に破裂音になってるんですね。
もし他の動詞と同じように活用するんだったら、勝つの否定形は勝たない、条件形は勝せばにならないとおかしいわけです。
03:00
まあアホらしいと思われるかもしれませんけど、もし皆さんが日本語母語話者じゃなくて、
この日本語の規則性っていうのをどうにか見出そうとした場合、
今言ったように勝つの否定形は勝さない、条件形は勝せばという風に推測したと思います。
ただ母語話者にとっては、もう母語っていうのは当たり前なので、なんていうかな、そういう規則とかもうどうでもいいんですね。
勝つの否定形は勝たないだし条件形は勝てば、もうそれでおしまいなわけですけど、
少し冷静にこの日本語っていうのを見てみると、勝つっていう動詞の変化活用っていうのは、なんかルールに沿ってないんじゃないかなっていうことになるんですね。
言語学ではこれをどう考えるかというと、順番が逆で、つまり勝つっていうのは勝つじゃないとおかしいと考えるんですね。
勝たないとか勝てばっていう風に破裂音が出てくるのが、ある意味、なんていうかな正しい形で、
勝つとなるべきところが勝つになってる、こういう風に考えます。
これも専門的な言い方ですけど、公害化っていう言い方をするんですね。
勝つっていうのがまさにそういった例で、潜在的には勝つという形なんですけど、
後ろに続いている母音がうという母音なので、公害化という音変化が起こって勝つになってると考えるんですね。
同様のことはいわゆる連用形にも言えて、勝ちますってなりますよね。
これも勝ちますっていうのが潜在的にあるんですけど、後ろの母音がいいという母音なので公害化が起こって勝ちますになってるということです。
こういう風に単語の変化と音の仕組みっていうのを連動して考える言語学の分野を、形態音韻論と言ったりします。
この形態音韻論という分野では、今言ったように潜在的にはこういう形だけど実現する形はこうだっていう風に考えるんですね。
こういう形態音韻論の立場にのっとれば、さっき言った書くとか勝すっていう動詞と同じように勝つっていう動詞も平行的に考えられるっていうか統一的に考えることができるというわけなんですね。
公害化っていう現象、つまり勝つが勝つになるのは何も日本語に限った話じゃなくて、世界のあらゆる言語で見られる現象ですね。
06:00
日本語の中でも他にもあって、まあサシスセソのこれもやっぱりシーという音ですね。これもローマ字で書くときはSHっていう風に書きますよね。
だからシーじゃなくてシーという発音にやはり公害化しているということです。
波行についても同じで、ヒーっていう発音はハーっていう発音のシーンと違うんですね。
どちらも摩擦音なんですけど、ハーの方は、まあ専門的な言い方ですけど、専門摩擦音といって喉の一番奥の方っていうかな、で発音している摩擦を起こしている発音なのに対して、
ヒーっていうのは口の中で発音されてます、摩擦されてます。専門的には口交外摩擦音と言われる音です。
こういう風に潜在的には同じシーンなんだけど、その実現形、まあ顕在的な形っていうかな、現れる形は異なるという風に言語学では考えるんですね。
歴史的に考えるとカツっていう動詞の発音はカトゥだったと考えられています。
つまりタチツテトっていうこの多行の発音は、全部破裂音でタティトゥテトだったと考えられているんですね。
まあもちろん録音データがあるわけじゃないんで何とも言えませんけど、まあおそらくそうであっただろうと。
でだんだんだんだん口外化という現象が起こって、現代ではタチツテトになっているわけなんですね。
なので、現代を生きる我々はティーとかトゥーとかいう発音を聞くと、すごいなんか外来語っぽい感じがしますよね。
まあ実際ホットティーとかブルートゥースとかそういう外来語にしかティーとかトゥーっていう発音は見られないわけなんですけど、
まあある意味これは復活した発音ということになりますね。
昔の日本語にはティーとかトゥーっていう発音はあったんですけど、それらは口外化でチーとかツーっていう発音になって、
一旦なくなっちゃったんですけど、外来語のその導入でティーとかツーという発音が復活したと、そういうわけなんですね。
というわけで今回のトークはいつも使っている日本語ですけど、ちょっと冷静に捉え直してみると、なんか変だなというところがあると。
それらは潜在と顕在というか、言語学ではよく規定形と表層形とか言ったりするんですけど、その潜在的にある形が実際に発話されるときは違う形になっていると。
09:10
そういう理屈を説明する形態応員論というね、分野があるというお話でした。
問題は今回のトークのタイトルをどうするかですね。これ難しいんだよな。僕は大抵そのタイトルは後付けタイプなんですけど、どうしようかな。
ここまで聞いてくださった方はそのタイトルを見て多分聞いてくださっていると思うんですけど、どういうタイトルになるかはお楽しみにっていう感じですね。
お楽しみにっていうかもう配信されちゃってるから関係ないんですけど、難しいんですよねこれねタイトル付けるのね。
まあ多分これも配信するまでしばらく時間があると思うので取り溜めしているのでゆっくり考えようと思います。
というわけで最後まで聞いてくださってありがとうございました。
お便り等は随時募集しておりますのでどうぞよろしくお願いします。
お相手はシガー15でした。
10:17

コメント

スクロール